今日は何の日?〜大剣豪が生まれちまった日〜
サンジは悩んでいた。
悩みというよりは、落ち込みというかショックを受けていた。
コトの起こりは3日前。
いつもよりは早い時間に、男部屋へと引き上げた。
扉を開けるとルフィ達の騒ぎ声。
「何やってんだ、お前ら。」
呆れたように梯子を降りていくと、きらきらと目を輝かせてルフィ達が振り返って告げた事。
「ゾロってば女をブイブイ言わしてたんだ!」
その時の衝撃は今でも忘れない。
頭を後ろからがつんと殴られたようだった。
興味ないように装ったが、その晩は一睡も出来なかった。
『そりゃーあの年だ・・・ふつー経験あるよなぁ・・・』
サンジにはセックスの経験はない。
興味がないわけではない。
しかし幼い頃から海の上で暮らし、ゼフと出会ってからはそんな余裕など無かった。
少しでもゼフに近づくために、寝る間も惜しんでいたのだ。
もしこれがルフィやウソップならここまでショックを受ける事はなかっただろう。
ゾロだからだ。
今までで唯一心を奪われたヤツだからだ。
初めて恋をし、焦がれ、想いが通じ合った唯一。
そんな男の過去を無意識のうちに考えないようにしていた。
それを知らされた時、人はどうするのだろう。
深夜、サンジは次の日の仕込をしていた。
目の前の鍋を見ながら考えるのはゾロのこと。
ゾロにどう接していいのかわからない。
もし自分に経験が無いなんて知れたら、どんな反応が返ってくるだろう。
もう、ため息しか出てこない。
小皿にスープをすくい、味を見る。
すこし塩気が足りないと思い、塩に手を伸ばしたとき。
昔、コック仲間が言っていた事を思い出した。
『一度経験しちまうと、またやりたくなるんだ』
なら、ゾロは?
そう思ったらゾクッとした。
サンジがこの船に乗ってから、ゾロがセックスをしたような気配はない。
でも、一度経験してしまった快感を忘れた訳ではないだろう。
奇跡的といってもいいくらいに想いが通じたとはいえ、
いずれ自分から離れてしまうかもしれない。
そうならないためには・・・
「サンジくん、まだ仕込み?」
ナミの声で我に返った。
「あ、もう少しだよ。ナミさんは?」
笑顔で振り返ると、ナミはペンを置き軽く手を振った。
「うーん、もう少しだけど今日はやめようかな。手も痛くなったし。」
「そりゃ大変だ。あんまり夜更かしだと、美容にも良くないぜ。」
「サンジくん、最近なんかあった?」
「え?」
「ため息が多いし、それにゾロとも喧嘩しないしね。」
思わず、俯いてしまった。
クルーにはゾロとの事は秘密にしている。
しかし勘のよいナミにはそのうち気づかれるだろう。
現に今も、サンジの些細な変化を気づかれている。
「あのさ、ナミさん。」
「ん?」
意を決してサンジは顔を上げた。
「オレ、ゾロが好きなんだ。」
「!」
「それで・・・ゾロもオレのこと、好きでいてくれる。」
ナミの顔がみるみる内に赤くなった。
「それって、普通じゃないんだけど、でも好きなんだ。ゾロのことが。」
「でも、サンジくんにはそれが普通でしょ?」
「・・・え?」
「他の人がどうというより、自分の気持ちが一番だもの。
なんか嬉しいな。サンジくんが教えてくれて。」
ナミが本当に嬉しそうに笑ってくれるから、サンジも笑顔になる。
だれよりもナミが理解してくれた事が嬉しい。
その時、キッチンの横をドカドカと通りすぎていく足音が聞こえた。
「・・・これは、ゾロね。」
「・・・そうだね。」
「あ、もう少しでゾロの誕生日じゃない?」
「うん。」
11月11日はゾロの誕生日。
キッチンのカレンダーはもう11月になっている。
「プレゼントなんて考えたの?」
「いや、まだ・・・」
「気候も安定してきたし、そろそろ島に着くわ。
そこでなにかあるといいわね。」
「うん・・・」
「あー、今夜は良く眠れそう!」
「そうかい?」
「うん!じゃ、お休みなさい。サンジくん。」
「お休み。・・・ありがと、ナミさん。」
ナミが出て行った後、サンジはナミのためにデザートの仕込みに入った。
ナミに知られてから、サンジはなんだかスッキリした気持ちになった。
時折ナミにからかわれてしまうけど、決してそれは意地悪な気持ちからではないから。
ついナミの好物をおやつや食事に取り入れてしまう。
今もナミの好きなハーブティーを運んでいる。
「ナミさん、どうぞ。」
「あら、ありがとう。」
「あのさ、あとどのくらいで島につけるかな。」
「うーん、明日にはつけるかな?さっきウソップが島影らしきものを見たから。」
「そっか・・・あのさ、お願いがあるんだけど・・・」
「なに?」
「もし明日島に着いたら・・・」
サンジは覚悟を決めたのだ。
ナミの言ったとおり次の日の昼過ぎ、ゴーイングメリー号は小さな島に着いた。
小さいとはいえちゃんと街のある中々にぎやかな島だった。
そこでサンジは一人船を降りた。
急ぎ足で歩き出した。
ナミとの約束の時間は四時。
それまでに見つけなければならない。
島中歩き回り2,3買い物をして、やっとこざっぱりとしたホテルを見つけ一つ部屋を取った。
小さなソファのテーブルに買ってきたものを取り出し、
サイドテーブルの時計の時計で時間を確認してから、ベッドに横たわる。
大きく深呼吸して目をつぶる。
サンジが覚悟した事。
それはゾロとセックスすること。
偶然なのか今日はゾロの誕生日。
だからそれがプレゼント。
「レディでもねーのになぁ・・・レディなら可愛いんだろうけど。」
ちょっとだけあほらしく思えて、笑ってしまった。
ナミに告白をしてから考えた。
誰かにゾロを取られる前に、その体に自分を焼き付けようと。
その上でゾロが他の人を選ぶようなら、それはそれ。
もし、ゾロが拒否したら・・・
あまり考えたくは無いが、それもその時だ。
何もせず燻って考えているだけより、答えを出してしまいたかった。
ナミには初めての誕生日を二人で祝いたい、としか言っていない。
ナミにゾロを連れ出してもらう手はずになっている。
わざわざ連れ出してもらうのは、完全に二人になる空間が欲しかったのと
その前に一人になりたかったから。
男を受け入れるというのは、想像以上に怖かった。
ふと目を開け、時計を見るともう四時十五分前。
慌てて飛び起きると、サンジは約束の港に近いカフェへと急いだ。
少し洒落たカフェの前できょろきょろしていると、後ろから背中を叩かれた。
振り返ると、ナミが嬉しそうに立っていた。
「ごめん、ナミさん。遅くなっちゃって。」
「ううん。良いトコ見つかった?」
「あ、うん。」
「じゃぁ、バトンタッチね。がんばってね!」
「ありがと・・・ナミさん。」
ナミはにっこり笑うと一度店に戻り、荷物を手に取り船へと戻っていった。
サンジは一度深呼吸すると、カフェの中へと足を入れた。
目当ての人物は凄い形相で、壁を睨んでいてすぐに見つけた。
「おい、無闇に睨んでんじゃねぇ。クソ剣士。」
声を掛けると驚いたようにゾロが、見上げてきた。
あまりの驚き様に、呆れてしまう。
「お、まえ・・・」
「来いよ。」
何と言っていいのか判らず、顎で外を指し店を出た。
後ろからゾロがついて来たことにほっと安堵する。
ホテルへと一歩一歩近づくにつれ、緊張が増す。
そのためか、ゾロに声も掛けられずずんずんと歩くのみ。
訳の判らないゾロの、戸惑いとイラつきを背中に感じながら。
「・・・おい・・・」
ホテルの前に来たとき、初めてゾロが声を掛けてきた。
それを無視して小さく『ここだ』と言って、中へと入った。
カウンターでさっき預けた鍵を受け取り、部屋へと向かう。
ゾロが焦って何か言ったが、また無視した。
部屋の前に来ると、ドアを開きゾロに無言で中に入るよう促す。
訝しげに一歩入ったゾロが戸惑い立ち止まったとき、後ろから思い切り背中を蹴った。
いつもならかわすゾロなのだが、戸惑いの為か無防備にベッドに転がった。
「っ!てめっ、なにす・・・」
怒って振り返ったゾロに、サンジは覆いかぶさった。
突然のことにゾロがぎょっとした。
「・・・今日、何の日か知ってっか?」
「は?なんの・・・!」
ゾロが言いかけたのを塞ぐ様に、キスをした。
もう、サンジには余裕はない。
挑むようにゾロを睨みつけた。
「今日はな・・・、未来の大剣豪が生まれちまった日だ。」
声が震えてしまわないよう、睨み続ける。
「だから、オレが・・・全身全霊で・・・祝ってやる。・・・てめぇの好きにしな。」
言い終わると、カッと体が熱くなった。
「それって・・・」
「ごちゃごちゃ言うな!」
火が出そうになったとき、今度はゾロから口付けてきた。
重ねるだけではなく、深い深いキス。
訳がわからなくなりそうになった時、やっと開放されゾロが覗き込んできた。
「いいのか?」
「言っとくけどな、てめぇだからだ。てめぇだから腹ぁ括ったんだ。」
そう言うと、ゾロが泣きそうに顔を歪めた。
「・・・ありがとな。」
「・・・ゾロが今まで抱いたレディに負けねぇよ・・・?」
ゾロの泣きそうな顔を見たせいか、つい本音が漏れてしまった。
するとゾロが切なそうに、そっとサンジの頬を両手で包んだ。
「てめぇからのプレゼント、俺も全身全霊で受け取る。」
そのまま、唇を重ねる。
優しく愛おしむ様なキス。
何度も角度を替え、段々と深くなってくる。
サンジの口の中でゾロの舌が器用に動き、サンジはそれを夢中で追いかける。
「・・・ん、んん・・・」
気がつけばいつの間にか、ジャケットが脱がされ
シャツが肌蹴られていた。
ゾロの熱い手のひらが、腕や脇腹を撫でるたびに
サンジは、体が熱くなっていく。
それ以上に下着の中は熱く、苦しくなった頃
カチャカチャと聞こえると、ズボンの前が広げられ
急に視界が反転し、ゾロの顔の向こうに天井が見えた。
「すげぇな・・・もうこんなになってる。」
低い声に気がつけば、サンジは産まれた姿にされていた。
「あ・・・」
恥ずかしさに言葉を失ったサンジの前で、ゾロもシャツと腹巻を脱ぎ捨てた。
サンジの首筋に顔を埋めながら、右手はサンジ自身を愛撫していく。
「あ!やぁっ・・・くっ・・・」
「もう、こんなにヌルヌルしてるぞ・・・」
「言う・・・な!」
「ここも、コリコリしてて・・・」
そう言って、胸の尖りに舌を這わせる。
もう片方の尖りは、左手で摘み上げられ
サンジは急な愛撫についていけなくなった。
「もう、はっ・・・あぁ・・・で、そう・・・」
「そうか、じゃぁこれでイけ。」
ゾロが胸から離れ、ほっと息をついたのもつかの間。
さっきから涎をたらしているサンジ自身が、ゾロの熱い口内に入れられた。
「あ!そん、なトコ!」
「キモチ良いだろ?」
「しゃべんな!」
ゾロが咥えたまま喋ると、その刺激が直にサンジを襲う。
「あ、あ、・・・あー!!」
足の先がピンと伸び、サンジはゾロの口の中に放出してしまった。
はぁはぁと射精の余韻に浸っていると、ゾロが口元を拭いながら覗き込んできた。
サンジは自分のしてしまった事を思い出し、カッと赤くなった。
「て、めぇ!なんてコト・・・!」
「別に、いいだろ?美味かったぜ?」
さらっと言い退けるゾロに、サンジは全身真っ赤になった。
クスリと笑ったゾロは、軽いキスを落としてきた。
その時、ゾロのズボンのポケットで何かがカサリと音を立てた。
「?何か入ってるぞ?」
「ん?あぁ、さっきナミに貰ったヤツだ。」
出てきたのは、何の変哲もない紙袋。
その中から出てきたのは、愛のローション。
「んな!?何貰ってんだよ!」
「・・・お前、ナミに何言ったんだよ・・・」
「オレはただ!二人だけで祝いたいって!」
「まぁ、ナミだしな・・・」
勘の良い彼女は、サンジの思っていることなどお見通しだったようだ。
「まぁ、折角のプレゼントだ。ありがたく使わせて貰うか。」
そう言ってゾロはローションの蓋を開けると、サンジの股間に垂らした。
とろりとした液体は、サンジのペニスを伝い奥の方まで流れた。
「う、わぁ・・・」
その感触にゾクリとしゾロへと視線を向けると、野獣のような瞳でニヤリとこちらを見ていた。
「こっからどうするか、判るか?」
「・・・へ?」
不安と疑問の中のサンジに構うことなく、ゾロはサンジの中にぐっと指を入れた。
「ぐっあ!なっ!?」
そこは、普通なら決して自分でも触れない主に『排泄』に使うところ。
サンジも知らなかったわけではないが、急な事についていけない。
「くっ・・・そん、なとこ・・・」
「知らないのか?男同士は『ココ』でするんだぜ?」
そうしている間に、ゾロの指はどんどん深くなり本数も次第に増えていった。
「流石に・・・キツイな。」
「あ・・・あぁ・・ふっ!」
ただ圧迫感と異物感で、サンジ自身は力なく横たわり
サンジもシーツを握り締めるのが、精一杯だった。
そんなサンジに気がついたのか、ゾロは体を起こすと軽くキスを落とした。
「苦しいか?」
「す・・・こし・・・」
「もうちょっとまて。確か・・・」
「ぐ・・ん!ふぁっ!」
そうこうしている内に、ゾロの指が何かを掠め、サンジはまた射精感が襲ってきた。
「な・何!?」
「ここか・・・ここが、お前のイイトコロだ。」
にやりと告げたゾロの顔は、今までに見たことの無いもので。
いたずらっ子のような色を残してはいるが、明らかに欲情している。
思わずサンジは息を呑んだ。
この男は、こんなことで欲情するのか。
いくら恋人と言っても、男のペニスを目の前に男の排泄の穴をいじくって。
「・・・てめぇ、何か勘違いしてるだろ。」
「え・・・かん、ちがい?」
ゾロはムッとしたように、身を起こしサンジを間近で睨みつけた。
「俺が変態とか、そう思ってんだろ。」
「変態・・・」
「そーゆー目ぇ、しやがって。あのなぁ、俺はお前だから、こんなに興奮してんだ。
第一、俺は男は初めてだし女相手でもこんなに夢中になった事はねぇぞ。」
知らずしらず間にゾロを見る目が、疑わしい物になっていたようだ。
ゾロは自分だから興奮していると言った。
なんだか悪い事をしてしまったようで、素直に言葉が出た。
「悪い。」
「わかりゃぁいいんだよ。じゃあ、いくぞ。おらっ!」
ぐっと指の届くところまで、一気に突っ込まれサンジは息を呑んだ。
「ひっ!」
「そろそろ俺も限界だ。いいか?」
「げんっか、い?」
仰け反った顔をゾロに戻すと、切羽詰ったような余裕のないゾロがいた。
こんな顔は初めて見た。
何がいいのか、よく判らなかったが思わずこっくりと頷いてしまった。
「さんきゅ。」
そう言ってゾロは、身を起こしそっとサンジに口付けた。
軽く角度を変えて繰り返されるキス。
ちろりと唇を舐められたと思ったら、ゾロの舌がサンジの歯列をなぞり進入してきた。
「・・ん、ふぅ・・あ、あぁー!!」
キスに夢中になっていたサンジを、激痛が襲った。
ゾロのペニスが、サンジの中に割り込んできたのだ。
メリメリと音が聞こえてきそうな程の痛み。
「ッ・・・あ・・あっ・・・」
言葉にならない音しか出てこない。
裂かれる痛みに、涙が滲んだ。
「・・・痛ぇか?」
ゾロの問いかけにも、答える事かできず顔を背け痛みに耐える。
その時、サンジのペニスに熱い掌が触れた。
そのまま上下する熱に意識を奪われる。
「・・・ゾロ・・・?」
「ここはどうだ?」
同じ男だからだろうか。
ゾロのなぞる処は、正確にサンジを突いてきた。
「んぁ・・・あぁ・・・」
「ん?こっちはどうだ。」
右はサンジのペニスに触れたまま、左の手が胸の尖りを摘んできた。
「ひゃ!あ、あ・・・」
もうどうすることも出来ない感情に、サンジはただ喘ぐのみだ。
それを見計らったかの様に、ゾロが進入してきた。
もうさっきまでの痛みはない。
ゾロが的確にサンジの中を突いてくる。
ぐりっと前立腺をこすり、ずんっと奥まで突く。
サンジは快感と衝撃の繰り返しの中、目の中がチカチカしてきた。
「あ、あっああっ、あー!!!!」
白いシーツの上で、サンジは仰け反った。
覚えているのは腹の中の熱い熱と、体を包んだゾロの匂いだけだった。
ふと、サンジは目が覚めた。
まだ部屋の中は暗く、夜中である事が分かった。
朦朧としながら、身を起こそうとすると自分の体が拘束されていることに気がつく。
拘束していたのは、ゾロの逞しい腕。
素肌のゾロを見て、ナニをしたのかありありと思い出された。
瞬時に紅くなったが、ベトベトになったはずの体は綺麗になっている。
どうやらゾロが洗い流してくれたらしい。
恥ずかしさと、自分の余裕の無さに腹が立った。
思わず隣のゾロの鼻を弾いた。
一瞬、眉間に皺を寄せたが、すぐに元に戻ってしまった。
ゾロの寝顔を、暫し見つめる。
寝顔なら甲板で見慣れているが、こんな安らかな表情は初めて見た。
まるで何も知らない子供のようだ。
少し開いている唇をそっとなぞる。
ハッピーバースディ、ゾロ。
昨夜、伝えることが出来なかったけど。
この先、何時まで言えるかは分からないけど。
今の自分から、ありったけの愛をこめて―――
きゅーさん、ありがとうございましたァ〜vvv
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