OCADクリニック報告
楠見 耕介
5月19-20日に三木ホースランドパークで開催された「OCADクリニック・リーダーコース」に行ってきました。前から参加するつもりだったのですが、参加費をクラブでもってもらえるというのにくらっときてしまいました。以下、感想も含めて報告します。
CA−MAP研究会主催のクリニックですが、今回はJOAの後援がついています。最新の国際地図規定のISOM200がコンピュータ作図前提のものになったことは、すこしは影響したのでしょうか。参加者は東は宇都宮から西は佐世保までの25名です。世界選手権の地図調査に必要ということで、玉木さんも急遽ノートパソコンを購入して参加していました。講師は、おなじみプロマッパー山川さんとOCADの新バージョンの担当兼アシスタントとして東大OLKの的場さん、それから、OLPの尾上さんでした。
内容その1 OCAD自己診断
OCADそのものに日本語版がないこと、マニュアルも基本的なものしかないこと、それから、これが一番の原因だと思うのですが、マウスがほどほどに使えればそれなりに地図ができてしまうので、OCADの便利な機能が知られていないということがあります。まず、このことを実際に作業をしながら参加者各自でたしかめていきました。
私はOCAD6の作図経験しかありませんでした。それで、OCAD7になって加わった機能はよく理解していなかったのです。mergeのアイコンができたり、破線の調整用ダッシュポイント、渡れない川の輪郭などを描くための曲線の"平行"移動機能、それから、"To graphics"の機能などです。これは、題字などを図形化して拡大縮小を簡単にできるようにしたり、フォントを持たないほかのパソコンで表示させたりするのに役立つ機能です。このように、ずいぶん便利になっていることを思い知らされました。OCAD7にバージョンアップしながらも、OCAD6で「天野」の作図をした山田さんには、ずいぶんよけいな苦労をかけたことに気づきました。もちろん、コーナー点など、以前からあった機能でも1/3ぐらいは使えていない機能がありました。
尾上さんがまとめられた診断項目を最後に引用していますので、細かいところはそちらを参考にしてください。
内容その2 ISOM2000
OCADの扱い方を知っているだけではだめ!基本になる地図について知らないと!!という「リーダーコース」らしい内容です。典型的なのは、最近すっかりふつうになった1:10000の地図やパーク用の地図で規定やガイドラインに反するものが多いというお話です。
ISOM2000では、「3.1 縮尺」で、1:10000の地図やパーク用の1:5000の地図は、線や記号を1:15000のときの1.5倍に拡大して描かなければならないとしています。ところが、最近作られた1:10000の地図でも、線の太さや記号の大きさが1:15000と同じものが多いのです。
これは、OCADの縮尺設定が間違っているからだということでした。新規ファイル作成の際に縮尺を設定するのですが、「(仕上がりの)縮尺は1:10000だから、1:10000にしないと・・。」とやってしまうわけです。すると、記号の大きさや線の太さが1:15000と同じの、10年ぐらい前まで多かった「黒添池」のようなスタイルになるというわけです。規定で1.5倍に作図しなければならないというところを、そのままの太さや大きさで作図しているということになります。つまり、線が細すぎたり、(点状の)記号が小さすぎたりというわけです。規定どおりの1:10000、つまり「箕面U」のような「見やすい1:10000」のスタイルにするためには、最初の縮尺の設定は1:15000にして仕上がりの地図印刷の際に1:10000を指定というやり方をしなければなりません。ただし、コントロールを示す円や面状のスクリーンは、1:15000と同じ大きさとされているので、別のサイズの記号を定義して対応します。
もちろんこの他にも、等高線の最小間隔の話とか、サイズの許容範囲が手書きの20%からCAMAP前提の5%に厳しくされた話など、いろいろな話題が出ています。
内容その3 グリッド
地図全体に方眼のマス目(グリッド)をかけて、そのグリッドによって位置あわせを行うのがOCADの仕組みなのです。しかし、グリッドなしに調査をして複数のメンバーが分担して作図をして、それを貼り合わせて最後に1枚の地図にしようという荒業が結構あるという話もありました。クリーンコピーをつなぎ合わせるとき、微妙に角度や大きさがずれて境界があわないというのは、手書き作図でさんざん経験したことですが、手書きでは何とかごまかせるものが、CAMAPではなかなか大変で、地図全体の回転や縮小拡大を試行錯誤してつなぎ合わせるということになるそうです。最初のボタンのかけ違いが・・・というやつです。
今回のクリニックでは、このグリッドを手作業なしで入れる方法も紹介されました。多くの行政図には、経度緯度とは別に一定の距離間隔の座標が記入されているそうで、その真北をさす座標をそのままOCADのグリッドに利用するというものです。もちろん、O−MAPは磁北に合わせて正置しますから、OCAD上で磁北の偏差だけ数値を入力して逆にグリッドを右に回転させます。その傾いたグリッドに、行政図の持っている座標をあわせれば、(もちろん、地図のふちについている座標からグリッドを描くために直線の定規は必要ですが)「目利き」なしに位置あわせが完了というわけです。OCADには以前から、"Real world coodinates"としてこの一般図の座標を利用する機能があったのですが、私たちが、行政図にこの座標がのっていてそれが簡単に利用できることにまったく気づかなかった、というわけです。
内容その4 記号編集(色定義→角処理)
記号のサイズや色をいろいろ変更できることは、CAMAP研究会のwebページのTipsで見ていたのですが実際なかなか活用できずにいました。ところが、1:10000のところで触れたようにいろいろ記号を編集することが不可欠になってきています。ただし、実際に作図するときには、こういう修正をした記号ファイルをコピーすればOKでしょう。
ひとつ例をあげると、2番や3番の道の「角処理」というのがありました。
二重線の主要道路から2番や3番の道が45度ぐらいで分岐すると、主要道路の二重線の間の薄茶色の部分に道の角がはみだしてきたないという問題があります。ペン作図では、はみ出た部分をカッターで削ってハイ!おしまいだったのですが、CAMAPではなかなかやっかいで、明戸さんなどパイオニアのみなさんが苦労されたところです。 こういう問題があったのは頭の隅っこにはあったのですが、実際の作図の時には、どうでもよくなって、見づらい仕上がりにしたことがあります。
これが、記号の編集によって簡単に解決するのです。一見同じように見える黒でもOCADでは何種類か定義されていて、2番3番の道の黒を「主要道路のふちの黒」に変更するだけで、はみでた道の角が主要道路の薄茶色に隠されるようになります。会場でも、最初からそう定義してくれてあればいいのにという声があがりましたが、「向こうのテレインは、道が少ないからこんなの問題にならない。」という山川プロの説明に、一瞬で納得した様子でした。
内容その5 コース印刷ほか
コース作図のときに、地の地図の部分が変更されないようにプロテクトをかけるとか、全コントロール図を先に作図して、コントロールキーを押しながら必要なコントロールを複数選択して、コース図用のコントロールの記号に、Fill or make borderの機能を使って変換するという(あたりまえ?かつ意外)便利な方法が紹介されました。また、コースごとにコントロール記号を定義し分けて、Hideコマンドをつかって1つのファイルで複数のコースを表示し分ける方法など、目からうろこの活用法でした。また、OCAD8では位置説明が自動作成できる機能や、パープル印刷を透明にプリンタから印刷できる機能も加わっていることも紹介されました。OCAD7のユーザーはβ版をダウンロードできるそうです。
また、4色オフセット印刷を活用して費用を安く上げる方法も紹介されました。いままでは、地図の色ごとに、墨・青・茶・黄・緑・パープルの5つの版をつくって、特別の色を調整して印刷してきました。これを、普通のカラー印刷のように、赤・青・黄・黒の4色の細かい点に分解して地図を印刷してしまうというものです。関での東海・西日本大会や、根ノ上高原のマップで使われています。この方法だと、完全なEPSファイルを持ち込めば、5・6万円でカラーマップが仕上がるそうです。仕上がりの色は、何度かやってみないと思うようなのは出しにくいそうですが、OCADだけでも、印刷用の角トンボなど、完全原稿の作成は可能ということです。また、公園マップなど、小さな地図を2枚同時に印刷するときに、向きを変えたり、縮尺を変えたりする方法も紹介されてます。
内容その6 番外編
こういう場では当然ですが、参加者の持ってきた地図を肴に、かるく飲むことになりました。「天野」ももっていったのですが、先ほど少し触れた角処理や、激斜面のテレインということで、コンタを編集して細く定義していたのが、以前の20%ルールも大きく越えて細くしていたこと、道路と、渡れない水路が並行しているところで、最小間隔がまもられてなかったというような規定破りが明らかになりました。(山田さん、あしからず・・。)、あとISOMでは、競技用の地図はA3までという規定ができたので、「天野」や「箕面U」は、コースに関係ないところを切り落として小さくしないと規定破りということになります。
また、山田さんの大輪言の連載も、「細かいところまで丁寧に書いている」との山川プロからのコメントでした。作図をしてみようというときは、まず、山田さんの連載を読んでからということになりますね。
以下、尾上さんまとめの診断項目です。
2001.5.19
OCADクリニック自己診断項目
- 曲線モードで曲線(コンター)を描く。線を継続して描くには?
- 描いてある曲線を繋ぐには? → [Merge] 同時に複数のmerge可能
- 面状オブジェクトのmerge。(植生などに応用)
- 直線モードで、鉛直あるいは水平に描く。→ Altキー。移動にも適用できる。
- 数値入力。円、直線などに応用 → Window上でクリック
- 線オブジェクトを部分的に切り取るには?(はさみツールの使い方)
- 面オブジェクトの下絵を見るには? → Hatched area(F11に設定)
- 面オブジェクトを分割するには?(はさみツールの使い方)
- 面オブジェクトに穴をあけるには?(穴あけツール)
- ある中心点から正確な円を描くには?(公園マップなど)
- 面から縁を描くには/縁から内部を塗るには?(池、池のふちなど、コントロール記号を正確な位置に描く、同じ位置にオブジェクトの複製を作る)
- 任意の方向をもった点状オブジェクト(湧水点など)を描くには? → ドラッグ
- 記号の方向を変更するには? → 矢印キー(一方向に走れる林、ブドウ畑も同様)
- Protect Hideの活用法
- 記号の複製/削除するには? コントロールの円の部分カット(上方にカットし、矢印キーで方向変更) 記号を複数選択するには?
- 面状/線状オブジェクトの一部をトレースするには?
- 線の修正に伴うトレース部分については、はさみツールを活用する。
- トレースによる穴あけ。
- ダッシュ点による修正。道の分岐
- 送電線、リフト。コーナー点を所定の位置に挿入。フェンスも同様
- 反転は、始点と終点を入れ替えるという意味。
- 平行移動(小道の脇の岩がけ、フェンスなど) 必要部分を複製後、平行移動する住宅密集地の隙間
- 道路の交差
- 主要道路脇の駐車場を作成 グラフィックにして変形?
- 直前のノードは描画中に修正できる。
- コーナー点の作成。
- ベジェ曲線は2つの湾曲(接線)を持てる。
- スムーズ化(曲線へ) smooth, to curve
- To join
- To graphic フォントの図形化、文字の変形 ファイルが大きくなるので注意
- Measure コース距離など
- Dim template
- 建物の描き方
- 背面オブジェクトを直接選択する。
- Optimize(最適化)
- ライン文字
- 磁北線を引く/凡例の平行線
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