「共同浴場」という響きは、安かろう、悪かろうの代名詞のようなもので、毛嫌いしている向きも多いようだ。確かに、設備と管理の行き届いていないところは数多くある。
しかし、ワタシは共同浴場が大好きである。法律の世界には湯口権というものがあるそうで、昔から権利をもっている共同浴場に湯量の心配はない。ここ、野沢温泉の13もある外湯は温泉街の方々のお手入れにより、実に清潔、快適なのだ。しかもタダ。こんなパラダイス、立ち寄らなくてどうする?
駐車場にクルマを置いて、さて、どこへ行けばいいものか。こんなとき、頼りになるのがジジババである。向かう先にはいい湯があるに決まっているのだ。ひたすら、あとをついていく。
大湯の入口には「賽銭箱」があった。しかし、皆、気づかないふりをして入っていく。当然、ワタシもあとへと続く。感謝の念を込めながらね。
野沢菜色のお湯がなみなみと流れ込んでいる湯船。手前に脱衣箱があるのだが、服を脱いでるすぐそばで、ジャバジャバお湯をかけてるおばさんなんかがいたりする。「熱め」「ぬるめ」と、湯船は一応2つに分かれているが、下の方ではつながっている。熱いのがダメなおばさんが水をジャンジャン入れるので、足だけ熱い湯の方へ投げ出していたのだが、とうとう我慢できなくなって、誰もつかっていない熱い湯に入ってしまった。フゥ〜。
外は四月だというのにバカに暑い日。セーターを脱ぎ捨てパジャマの上を羽織ったのだが、なかなか汗が引かなかった。湯沢温泉発祥の地である麻釜(温泉街の人たちが野沢菜や玉子をゆでてるところ)まで温泉街をブラブラ散歩。そこに湧き出す温泉ならぬ冷水を口に含み、ほっと一息つくことになる。
賽銭箱を無視した分、野沢菜を3袋買い、おそばを食べた。こうして、経済は成り立っているのだ。
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