▲ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)及び、
コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)を総称してダイオキシン類といいます。
●町田市では、リサイクル文化センター周辺地域とは別に、年4回、市内3ヶ所で大気中のダイオキシン類の測定を行っています。
これまで何回か「広報まちだ」に、この大気中のダイオキシン測定の昨年度実施分のデータ(実測値とTEQ値)が掲載されました。
※3ヶ所の地点の内、鶴間会館は1999年8月から、市役所と小山センターは2002年5月から測定を実施しています。
※大気のダイオキシン濃度基準値は0.6pg-TEQ/m3です。
※TEQ(毒性当量)とは、それぞれの異性体の実測値に、ダイオキシン類の内、最も毒性の強い4塩化ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)
の数値に換算する係数(TEF)を掛けて求めた値です。
●以下の図表のデータは、2002年5月から2005年8月に実施した測定データに基づくものです。
その後のデータについては、詳細データを入手次第、順次解析して掲載していく予定です。
●そもそもこの測定は、鶴間・瀬谷地区にあった産業廃棄物処理場からの煤煙被害で、住民からの請願を受けて、議会でダイオキシン調査の予算が確保されたことによるものです。 ※現在、産廃処理業者の焼却施設は撤去されています。
●下記のグラフ(図1〜3)は、測定した実測値に基づいて、ダイオキシン類の同族体の存在量の割合を%でグラフ化したものです。
この同族体の存在量比を見ることで、それぞれの地点間の類似や相違の傾向が明らかになります。
※市役所のデータだけ、mono-orthoPCBsの存在量が突出しているために、最大パーセント値を変えてあります。
実際には、ほとんどのデータで90%以上を占め、最大値では96%にもなっています。他の2ヶ所は、最大値でも62%です。
そのため、少し判りづらくなっていますが、データの内、Co-PCBを除くと、ほぼ4塩化のPCDFの値が高い傾向を示しています。
そして、04年2月のデータだけは、8塩化のPCDDが高い傾向になっているのが判ります。
●図4〜6は、測定日毎の地点別実測値を、Co-PCB(コプラナーPCB)以外のPCDDとPCDFだけのデータをグラフ化したものです。
このデータを見ると、Co-PCB以外の他のダイオキシン同族体のデータは、類似していることが解ります。
そして、2002年5月では4塩化のPCDFから、2004年2月では8塩化のPCDDにトップ値が移行しているのが判ります。
●さて、ダイオキシン類の同族体の存在量比は、一般大気のものと類似していますが、市役所の突出したmono-orthoPCBsの出どころは何処なのかという疑問が生じます。
●朝日新聞の記事(昨年4月19日付夕刊)に,有害化学物質として1972(S.47)年に製造中止となったPCB(ポリ塩化ビフェニル)が,1972年以前に施工されたポリサルファイド系シーリング材に含まれているという記事が報道されました。これは、兵庫県が2000年に実施したダイオキシン類の環境調査で,県内の公共82施設のうち8施設でシーリング材からPCBが検出されたと公表されたことによるものです。建築用シーリング材とは,建物の外壁などを構成するガラスやサッシ,パネルなどの各種部材間(目地)に防水性・気密性を確保する目的で使用される材料です。
●町田市役所は1970年の建設です。指摘されている同様のシーリング材を使用していることも考えられます。ダイオキシンの毒性当量(TEQ値)は確かに環境基準値以下ですが、これだけ突出したPCBが検出されている以上、その要因や、もし、建材由来であるなら、PCBの揮発防止なとについて、説明があってしかるべきです。そもそも市役所は、PCB規制が強化された際、このことについて、調査を行ったのでしょうか。
●図7〜9は、各地点のダイオキシン類の内、Co-PCBだけを抜き出して、IUPAC(※)による異性体構成比をグラフ化したものです。
これにより、測定時期に由らず何れの地点でも、#118(P5CBの内2,3',4,4',5-PeCB)の値が高いことが判ります。
次いで#105が高く、3番目に鶴間会館と小山センターでは#77が、市役所では#156が高くなっています。
そして、それぞれの地点での測定時期による変化はほとんど見られないことから、それぞれ同じ原因物質に拠るものと推察できます。
また、その実測値(図10〜12)をみると何れの異性体も11〜2月に低く、6〜8月に高くなる傾向があります。
●香川県環境保険研究センター所報第2号(2003年)によれば、PCB製品(KC-300、KC-400、KC-500)の異性体構成比率は、
何れも#118が最も高く、#77はKC-300で高くなっています。
そして#105はKC-400、KC-300、KC-500の順に構成比が高くなっています。
※IUPACとはInternational Union of Pure and Applied Chemistry(国際純正および応用化学連合)の頭文字。
#81〜#189は、IUPACの国際基準によるもの。
●地点別のCo-PCB異性体構成比データからは、#118が50%を超え、#105が20%前後という特徴がみられ、五塩化ビフェニルを主成分とするKC-500(家電用コンデンサ、蛍光灯の安定器、プラスチック製品の絶縁用や難燃用の可塑剤などに使用されていた)の異性体構成パターンに類似していることが判ります。
ただ、KC-500は#157や#167の方が#77よりも構成比が高いという特徴があり、その点だけ捉えると、鶴間会館と小山センターの分布パターンは市役所と若干異なり、KC-400(家電用コンデンサ、蛍光灯の安定器などに使用されていた)のパターンに類似しています。
しかし、何故、市役所のCo-PCB実測値が突出(鶴間会館や小山センターの最大約50倍)しているのか、疑問が残ります。
延床面積による量の違いなのか、使用された製品の違いなのか、研究者の見解を待ちたいと思います。
※参考:日本シーリング材工業会のホームページ http://www.sealant.gr.jp/
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