情報センター通信 第26号


介護保険と支援費制度の統合問題

まちだ在宅障がい者「チェーンの会」代表 安藤信哉

 

10月20日(金)に「どうなる介護保険〜介護保険と支援費制度の統合について〜」というテーマでシンポジウムを開催しました。中西正司さんは、障がい当事者の立場から高齢者福祉と障がい者福祉の違いを主張されていました(表1参照)。石渡さんは、障害保健福祉部の立場から(介護保険との統合の前に)障がい者の種々の制度を統合化していくべきという「グランドデザイン案」を基に説明されていました。なぜ当事者である障がい者は介護保険と支援費制度の統合に反対なのでしょうか。 昨今、介護保険と支援費制度の統合が議論され始めています。この議論の背景には、障がい者福祉を取り込み、現行の介護保険の被保険者を「40歳以上」から「20歳以上」とし、20歳以上の国民からも保険料を徴収することで、財源を確保していこうとする狙いがあると考えられます。制度施行一年目から財源問題に苦しんでいる支援費制度にとっても、介護保険の保険料50%・公費50%の財源確保の方法は、利点があるといえます。 しかし、もしも支援費制度が介護保険に吸収される形で統合された場合、自立生活をしている全身性障がい者にとっては、不利益な点が多いと言われています。私なりにいくつか問題点を挙げるならば、「要介護度」や「ケアマネージャー」、「社会参加」、「ヘルパー資格」があると考えています。

要介護度 

介護保険では最高の要介護5でも身体介護1日3〜4時間が上限です。24時間介護が必要な重度な全身性障がい者にとって在宅で独居生活することは不可能となります。

ケアマネージャー 

身体障がい者にとっての自立生活は、自薦ヘルパーを駆使し、当事者主体で日常生活を決定していくことにその意味があると私は考えています。今日において多くの障がい者が、様々な公共サービスを駆使し、自立生活を実現させてきています。

社会参加

支援費制度では通院やレクレーション参加等は介護の対象ですが、通勤・通学は介護の対象となってはいません。介護保険制度においても同様に通勤・通学は介護対象ではありません。保険制度において通勤・通学が介護対象になるかは疑問であり、またこの点から見ても、パーソナルアシスタンス制度の実施が望まれます。今後は障がい者のニーズの中でも就労参加の声がますます大きくなっていくでしょう。

ヘルパー資格

これまで町田市では慢性的なヘルパー不足と財源の少なさにより、障がい者福祉では当事者が主体となって資格を問わない自薦ヘルパー制度を活用してきたという実績があります。高齢者の在宅介護ではヘルパーに経験が要求されるかもしれませんが,障がい者の在宅介護では,利用者本人が説明や教育が行えるので,経験があまり関係しません。学生にとっても実践勉強とアルバイト料が得られてメリットが多く、言い換えれば,(多くの障がい者福祉の現場で言えることですが)学生ヘルパーの実践教育の場であったと言えるでしょう。こうしたことから言って,ヘルパー不足を解決する意味においても障がい者福祉市場は,高齢者福祉市場への「ヘルパー実践教育の場」と考えていくのも重要ではないかと考えます。こうしたことから財源の問題を理由に高齢者福祉と障害者福祉を統合させていくのは疑問が残ります。