情報センター通信
第25号 2004.7発行


福祉の町・・町田はどうなってしまっているの!! 

障がい者の一人の親として(要約)

                      小西 みさえ


1.すみれ会(障がい児・者の親の会)の会報を読んで

 先日、すみれ会の会報を読ませて頂きました。重度重複の31歳になる、お子さんを持つお母さんの文章が記載されていました。それは・・「どうかしちゃったの、町田の障がい者福祉は・・」という題から始まるものでした。

 私の娘は重度重複の障がいをもって町田に生まれ、31歳になりました。私も障がい者の親を31年間やってきましたが、今ほどひどい状況は初めてです。町田の障がい者福祉はどうしてしまったのでしょうか? 不安で気の滅入る日々です。4月から実施された「障がい者福祉事業の見直し」によって、町田市が市独自で助成してきた従来の補助制度は廃止されました。国や都の制度では足りない部分を、町田市は障がい者が安心して生活できる町として=福祉の町として独自に創りあげてきた制度を自ら切り捨ててしまいました。それを切り捨ててしまうことは、「福祉の町」を止めることにつながってしまうのでしょうか?

  今回、まっ先に廃止された「補装具の自己負担の助成制度」は、昭和47年度(1972年)に始まっています。「健常者との格差を保障する意味から、補装具の購入、修理等の際の自己負担金を全額市で助成し、補装具の取得を容易にする。」(近藤秀夫氏作成「福祉年表」)という見地から作られた制度です。車いすや舗装靴等の装具を必要とする身体障がいを持つ人は、それらを取得して初めて健常者と同じになるという考えから、町田市が保障したのです。なんてやさしい、障がい者の人権を認めた制度だったのでしょう!

 この助成制度が無くなってしまうことで、作りかえの頻度の高い成長期のお子さんをお持ちの方々はどれほど大変な事でしょう。そして、自己負担の金額は親の収入に応じた負担となるのです。成人になっても、いつまでも親の保護義務が付いてくるのです。今回の廃止は、「どんなに障がいが重くても成人になった人は、親とは別の独立した人格として認めよう!」というノーマライゼーションの理念と逆境するものです。ここに町田市の障がい者福祉の理念の変質を見た思いです。

 

2.障がい者を持つ親として

 さらに、文章には「身体・知的障がい者緊急一時保護事業」のベット数が、身体3床・知的3床へとそれぞれ1床ずつ削減されたことへの怒りが綴られていました。この一時保護事業は、障がい者を家庭で介護している親にとって、とても助かる事業なのです。万が一、親が急病で入院をしなければならなくなった時や、やむを得ない事情で、遠方に出かけなければならなくなり、介護している障がい者を連れて行けない場合等、安心して利用できる制度なのです。それが、合計8床だったものが、6床になると、いままでも空きが無く、ようやくの思いで利用していたのが、益々利用しづらくなってしまうのです。むしろ、今の時代は、介護で疲れた親のためにレスパイト(息抜きをしたり、リフレッシュ出来る制度)が必要とされているのですから。施設に入所させないで、生まれ育った町田で、在宅ケァしている親が益々苦しい立場に押しやられていくことになるのです。「一人の人権を守れずに万人の人権は守れない」、これが町田市の福祉の原点であったと思うのですが?こんな状況を知れば知るほど、町田市で生まれた我が子が安心して町田で暮らし続けられるのだろうかと不安になってしまいます。       

 障がい児を持った親も、日々の生活を一生懸命に生き、育てています。どの親とも同じように。そして少しでも長く、家庭で、地域で、生きていきたいと願っています。重度重複の子ども・・・20歳を過ぎていたら、もう子どもなんていえませんが・・・を自宅で支えようと頑張れば、頑張るほど、親に対しては肉体的にも、経済的にも重い負担がのしかかって来る現実は、厳しいものです。

 その親たちへの応援(在宅支援)が必要と考え、国・都に先駆けて町田市は独自にこれらの制度を作って来たのだと私は思っているのです。確かに、ここ数年の税収の減収のため、障がい福祉の財政も厳しい状況に追い込まれているのだと思うのですが、私も、重度重複の障がい者の親として切実な思いに駆られています。会報に書かれたお母さんの悲鳴は、この私の悲鳴でもあります。でも、私は信じていきたいとおもいます。

 私たち親が、運動を積み重ねて作ってきた「制度」は、私たちだけで勝ち得たものではありません。当事者の方々や、行政に携わっていた人たち、そして今、障がい福祉施設(とくに小さく、貧しい作業所など)で頑張って活動してくれている人たちなど、多くの人たちの力で、作られてきたものです。今回の「後退は」、「一歩後退、二歩前進」へのステップとしていきたいと思うのです。

3.「見直し」を見直して・・・の請願の結果?

 3月議会に提出された、この「障がい者福祉事業の見直しに対する請願」は採択されました。でも、一方で、予算がそのままで採択されましたので、予算の裏付けのないものとなってしまいました。それでも、多くの心ある議員のかたがたのお力で、努力するよう付帯決議がつけられました。6月あるいは9月の議会にて、正しく「見直される」よう期待します。