情報センター通信第14号
2001.8.31発行


市民に開かれた市政とは
〜多摩都市モノレールの情報公開を巡って


文責:編集部

モノレール町田導入の実現性・妥当性は
現在、多摩センター〜上北台間が営業運転されている多摩都市モノレール(事業者は、都・地元市・民間企業の共同出資による第三セクターである多摩都市モノレール株式会社)について、町田市では1991年3月に現市長が「建設促進協議会」に対して参加の申請をし、以後、「町田ルート」の導入を検討してきました。この間のいきさつについては、センター通信第4号に『処分場跡にモノレール基地構想』として詳しく述べられていますので省きますが、これまでの導入に関する委託調査費を列記してみると以下のようになります。
1991年度/約320万円、1993年度/約500万円、1994〜1997年度/毎年度約300万円、1998年度/約700万円(この年度から指名競争入札)、1999〜2000年度/毎年度約300万円。
上記のように、これまでに約3,300万円が調査委託費として支出されたことになります。交通政策は都市計画上の重要課題であることはいうまでもありません。しかし、モノレール導入を含めた町田市の交通政策について市民の声はどのように反映されてきたのでしょうか。また町田市の説明責任が果たされないまま年々支出される委託調査費を、私たち市民はどう受け止めたらよいのでしょうか。さらに、モノレール導入の前提となる当該地区の区画整理事業の工事着手についても予定では2006年(平成16年)となっていますが、さらに繰り延べが予想されています。モノレール導入の検討を開始してから既に10年、計画の実現性や妥当性についての議論がもっと行なわれるべきではないでしょうか。

審査会の答申が「市の説明責務の観点」について言及
町田市の情報公開条例に基づいて行われた公開請求に対して町田市側が下した部分公開決定を不服とする市民が異議申立てを行なった事案(2000年1月26日付、文書名「多摩都市モノレール(町田ルート)の導入に関する基本計画調査報告書1999年1月」)に関して、今年8月24
日に町田市情報公開・個人情報保護審査会(藤原靜雄会長)の答申が出されました。
部分公開(つまり部分非公開)となっていたのは、@起工回議書や現場代理人の経歴書等の契約関係書類と、A駅位置等に関する情報、及びB事業の採算性に関する情報です。異議申立て人は@については個人情報が含まれるので非公開が当然としながらも、A及びBについては、既に概要版において明記されており、公開されるべきと主張しました。
これに対する市側の主張は、Aについては、既に公開した概要版よりも明確に駅位置が表示されているため、これが公開されると「将来の値上がりを見込んで先行取得されるなど投機の対象とされる恐れがある」、「特定のものに利益・不利益を与えるとともに、悪用されるなど今後の事業執行に著しい支障が生じる恐れがある」として、情報公開条例第5条1項3号および4号に該当するとしています。また、Bについては、詳細な資料を公開すると市民に誤解を与え、実際の事業の運営に悪影響が生じる恐れがあるとして、同第5条1項3号および4号に該当するとしています。
審査会は、Aについては「未だ最終決定はされていない未成熟な情報であり〜(中略)、公表することは、誘致運動、土地の投機的取得等を招来するなど、公正かつ適正な意思決定に著しい支障を生じると認めることができる」と市側の主張を認めましたが、Bについては、「公開した場合、あたかも試算された詳細な数字が事実上確定しているものであるかのように受け取られる可能性は否定できない。〜中略、町田市の今後の事業の適正な実施を困難にすることは否めない」、としながらも、「収支等の結果が概要版で説明されているのであり、行政がその説明責務を果たすという観点からは、結果の根拠となる数字をできる限り明らかにすることが望ましいといえ、〜(中略)数字の信頼性が問われることはあっても、事業の実施に著しい支障が生じる恐れがあるとまではいえない」として、「実施機関(町田市)のおそれの主張は、具体性に欠けるといわざるを得ないのであって、近時の第3セクター、外郭団体の累積赤字の問題を考えても、直ちには受け入れがたい主張である。」と結論づけました。今後、この答申を基に市長は別途判断を下すことになります。

事業の採算性とモノレールの導入計画
ところで、異議申立て人が当該の情報公開請求後、さらに「多摩都市モノレール(町田ルート)検討調査(その5)2001年3月資料編」の公開請求(2001年4月19日付)を行なったところ、いったんは、「未成熟な情報であり、公開することにより不正確な理解や誤解を与える恐れがある」として、条例第5条1項3号に該当するため部分公開(2001年5月11日付決定通知書)と通知しましたが、同年6月6日に「再度慎重に検討した結果、前記処分を取り消します」と、公文書部分公開決定の取り消しをしてきました。この文書は、小山田緑地から小野路西部に至るモノレールのルート(仮称:都市計画道路3・4・20号線となる)について、事業の採算性に関わる概略的シュミレーションを行なったものですが、前述の異議申立てに係る審査会の答申を待たずに一転して公開に踏み切ったことは評価できます。
公開された文書によれば、この区間の事業収支予想はほとんどのパターンでマイナス(最大予想△37.6億円)となり、収支がプラスに転じるには減歩率(区画整理によって減ずる面積割合をいう。この場合は「保留地減歩=整備された宅地の内、一部を売却し事業の費用にするために充当するためのもの」で、整備された宅地地積と保留地として減じた地積の面積割合)が65%必要とされています。そして、この場合、減歩による減価補償金(減歩率が56.7%より高くなると発生する)は30.5億円と試算されています。

開かれた市政のために
市民とのパートナーシップ・協働がこれからの分権社会のキーワードです。その前提になるのが情報の共有であり、信頼関係の醸成です。市民に開かれた市政の確立に向けて、まだまだ行政側の課題は山積していますが、市民とのパートナーシップや協働を建前や掛け声だけに終らせないためにも、今後の市の判断に注目し期待したいところです。
つまるところ、開かれた市政をつくるには、私たち市民自身がその役割と責務についてしっかりと自覚し、行動する必要があります。市政の主役は私たち市民自身に他ならないのですから。


※この文章は、情報公開請求および不服申立てを行なった市民から、資料などの提供を受けて編集部がまとめたものです。なお、答申文から引用した「 」書きの部分は、原文のままです。