情報センター通信第14号
2001.8.31発行


宴会出席官僚名黒塗りの警察庁

前田 功 (会社員)「市民オンブズマン・町田」

「諸謝金」が怪しい

政府予算各費目の中で、いかにも怪しげなのが「報償費」(機密費)と「諸謝金」である。「報償費」は例の外務省元室長の横領事件で多くの人の知るところとなった。しかしこの費目は外務省、内閣官房など限られた省庁にだけ存在するもので、その額も政府全体で60数億円。ところが、あまり報じられていないが、「諸謝金」はほとんどすべての官庁に配分されており、その額、総額450億円余り。(この450億という額は予算書にその使途を記載せず「諸謝金」となっているものだけで、他に「政府開発援助諸謝金」…この「政府開発援助」というのがまた大変胡散臭いという人もいる…など、予算コード上の諸謝金は700億を超す。)

請求対象を絞る

情報公開市民センターでは全省庁に「諸謝金」の請求を行った。他の省庁へも請求したが、条例上の期限までに決定の出た警察庁について、以下報告したい。警察庁の「諸謝金」12年度予算は10億超。この支出にあたってどのくらいの書類が作られるのか、どのくらいの頻度で支出されているのか、われわれ外部の者にはわからない。今回の請求は、小手調べのようなもの。大量請求だという理由で、決定延期されたくはない。それで、請求対象を13年2月、3月分に限った。さらに、「個人のうち公務員と法人に支払われたもの」に絞った。(公開請求書の「請求する行政文書の名称等」は、「法人および公務員に支出された諸謝金の支出証拠書類およびその執行伺い(平成13年2月3月分)」とした。)
私は、役所と利害関係のない市井の個人が招請されて講演した講演料などを調べたいと思っているわけではない。この「諸謝金」が官僚たちの仲間うちで使われているのではないか、天下り先に流れているのではないか。一般個人に支払われたものは、個人情報に該当するということで非開示にされるだろう。しかし、公務員や法人への支払分は、公開されるはず。そう考えて、このように請求対象を絞った。

開示結果

結果は、写真のとおりの黒塗り部分開示であった。
対象文書としては、
(1)警察情報通信学校教養、外来講師謝金(平成13年1月12日から3月12日までに実施した分)
(2)道路交通情報高度化検討会謝金(平成12年12月19日10時から12時に実施した分)
(3)生活安全研究会第3回セキュリティシステム小委員会謝金(平成13年1月31日14時から15時に実施した分)
(4)警察行政研究会(平成13年2月2日5時〜8時30分実施)
の4案件についての、それぞれの「執行伺い」「支出負担行為支出決議書」「債主内訳書」「支給調書」である。

このうち(1)と(4)は個々に支給した金額欄は開示だが、氏名・住所などは黒塗り、(2)と(3)は逆に氏名(住所は黒塗り)は民間人であっても開示、個々に支給した金額欄は黒塗りである。いずれも、その案件についての謝金総額は開示されている。

長官主催の宴会出席は保護されるべき個人情報?
各個人にいくら払ったか(各個人にいくら収入があった)ということは保護すべき個人情報だという言い分はわからなくはない。一般個人部分について金額の黒塗りはよしとしよう。しかし、(4)の「警察庁行政研究会」は、長官、次長、審議官ら警察庁中枢の官僚17名が出席し、他の省庁の官僚など11名を招いて行われた研究会である。この会の外部(警察庁以外)委員出席者6名(5名は欠席)の内4名は公務員であるが、その氏名・肩書は黒塗りである。この「研究会」は、会議は5時からの1時間半だけ、後は庁費を使っての宴会である。このことは開示された「執行伺い」に添付された案内状からわかる。
決定通知書の「不開示とした部分とその理由」によると、「警察庁行政研究会」について名前を隠した理由は、法5条1号(個人識別情報)だけでその他の理由(4号公共の安全、5号審議、検討、6号事務・事業などに支障をきたすおそれ)は挙げられていない。氏名が公開された(2)(3)とこの会合との違いは、会議の後に宴会がセットされているかいないかである。警察庁官僚たちは、この宴会への出席が個人情報として保護されるべきものと考えているのだろうか。それが彼らの常識なのだろうか。
公務員であっても、アフターファイブに自分のポケットマネーで宴会に出た場合、そのことは個人情報として保護されるべきことかもしれない。しかし、長官主催の「研究会」(実質は、税金で行われた宴会)に出席した他省庁の官僚の名前など、個人情報として保護されるべきものではない。
黒塗り部分に圧倒されそうな開示文書であるが、警察官僚の意識が垣間見えて面白い。