情報センター通信第14号
2001.8.31発行


Free play brings us fun and friends.
子ども広場を考える会・代表  岡本恵子

●冒険遊び場って?
 冒険遊び場、またはプレーパークと呼ばれる遊び場をご存知ですか?規制の多い公園ではしにくい、穴掘り、木登り、たき火、水遊び、大工仕事、調理等、自分のしたい遊びを自分の責任で自由にすることができる遊び場のことです。
20数年以上の歴史を持つ世田谷区のプレーパークをはじめ、最近全国的にそのような遊び場を作ろうとする市民の動きが活発になっています。
 町田市にも2年前に「三つ又冒険遊び場たぬき山」(成瀬三つ又バス停横)ができました。地主さんのご厚意で提供された土地に、「子ども広場を考える会〜あそべこどもたち〜」のメンバーがひとつひとつ手作りで作り上げた遊び場で、毎週水曜日と第3日曜日の活動日には多くの子どもや大人が遊びに来ています。
 午前中には、近くの保育園の子どもたちや乳幼児を連れたお母さんたちが、泥んこになりながらもゆったりと過ごしています。午後2時を過ぎた頃から次々現れる小学生たちが広場をうめる頃にはあちこちで様々な遊びが展開します。持ってきた食材でバーベキューを始める小学生、ベーごまの勝負をするグループ、黙々と何かを作っている子どもや大人、倉庫の屋根を伝って飛び回る、猿か!と思うような身軽な鬼ごっこ、子どもたちと一緒にずぶぬれになりながらウォータースライダーをしている大人・・・・閉園時間通りに閉まることはまず有り得ない活動日の様子です。

● 自由な遊び場のもたらすもの
題名の英文はそんな遊び場の様子を表しており、資金集めのために作った、
たぬき山のTシャツにもプリントされています。先の遊び場の様子でもわかるように、自由な遊びは私たちに思いっきり遊ぶ楽しさと仲間をもたらしてくれます。規制のある空間、時間では遊びきることはむずかしいですし、一緒に何かをしたり、同じ空間、時間を過ごすことである意味共犯者のような仲間意識が芽生えてくるものです。遊びは危ない、きたない、うるさいもので、それを一緒にする大人と子どもは共犯者と言えるでしょう。
たぬき山を見たある人が「アジトのようだね。」と言ったことがあります。私自身たぬき山で過ごしている時に、大人と子どもで作っている共同体(コミューン)のような気がしてくることがあります。遊び場での時間は生活そのものです。英文のusをchildrenにしなかったのはそんな気持ちをこめてでした。アジトのアは遊びのア、ジは自由のジ、トは友だちのトと置き換えられることに後から気がつき、いっそうアジトのような遊びの拠点を作りたいという思いが強くなりました。そのような拠点があることで、地域のいろいろな人が出会い、地域のつながりもより強くなっていくことを感じています。

●プレーリーダー
もう一つ冒険遊び場に欠かせないものがプレーリーダーの存在です。小さい頃から自由の本当の意味に慣れてきていない子どもたちは知らず知らずに自分の心にストップをかけていることがあります。大人も子どものことを考える余り、つい余計なお世話を焼きすぎて待ったをかけたり、先回りした知恵を伝えてしまい、子どもの伸びるチャンスを奪ってしまうことがよくあるのではないでしょうか?プレーリーダーの本当の役目はそんなしがらみを子どもからも大人からもほどいていくことにあるように思います。プレーリーダーの動きや言葉を見ていると、遊び場は決して教育やしつけをするところではなく、真に遊びきることだけを目的にしているのだということがわかります。プレーリーダーは遊びの指導者ではありません。しかし、遊びがより発展し得る環境作りを考え、ある時はガキ大将として遊びを刺激したり、子どもの心に寄り添って子どもの言葉を受けとめ、必要な時にはそれを大人に発信したり、取り返しのつかない事故を未然に防ぐ大人の目と行動力を持ち、いざという時には頼りになる救急隊員でもあり、「あそこに行けばあいつがいる」というような遊び場のシンボルにもなる人のことだと思います。
たぬき山も2年間日本生命財団の助成金をいただいているおかげで、プレーリーダーを現在は置くことができています。彼が来てから子どもたちの数も遊びのダイナミックさも増しました。また彼との言葉のやりとりは、大人が子育て観を振り返るきっかけにもなっていると思います。親でも先生でも子どもでもない存在は子どもにも大人にも貴重な存在と言えます。

●全国的な動きとこれからの課題 
今たぬき山の課題は、来年助成金が切れた後プレーリーダーをどうやって確保していくかです。遊び道具や場の整備はボランティアの手が多く集まれば何とかなっていきますが、プレーリーダーの確保にはその人の生活保障のこともあり、ボランティア意識にだけ頼る訳にいかないですし、逆にその人員確保ができなければ連日開催という真に日常的な遊び場作りはむずかしいのです。  
2001年7月に行われた第2回冒険遊び場全国研究集会においてもプレーリーダーの確保は共通の課題でした。また、プレーリーダーたちの中にも自分たちの資質向上と職業的地位の向上について学びあいたいという機運が高まり、12月にプレーリーダーの全国集会を企画しています。
また、冒険遊び場全国集会において、多摩地域に10ヶ所近い冒険遊び場活動があることがわかり、今そのうちの数ヶ所が集まり多摩地域プレーパーク連絡会が発足しました。お互いのノウハウを持ち寄り、より楽しい遊び場作りを支え合っていきたいと思っています。町田市の中にも、いくつかの健全育成委員会が冒険遊び場を立ち上げたいと動き出しており、たぬき山も仲間が増えてきたことをたいへん嬉しく思っています。そのような仲間が集える楽しい研修会を企画していきたいと考えています。やはり自由な遊びは大人にも子どもにも楽しさと友だちをもたらしてくれるのです。