市役所周辺施設の大気ダイオキシン調査 


◆町田市役所の屋上で測定されている大気ダイオキシン類の調査から、コプラナーPCBの内、モノオルトPCBの値が突出していることが、これまでのデータで明らかになっています。その原因は何なのでしょうか。


●町田市では、リサイクル文化センター周辺地域とは別に、市内3ヶ所で大気中のダイオキシン類測定を年4回行ってきました。その結果、市役所大気のダイオキシン値が他の地点と異なる傾向を示していたことから、2006年夏(8月17日~24日)の調査では、市役所周辺地域の4ヶ所を加えた環境大気のダイオキシン調査を実施しました。

●環境大気のダイオキシン規制値は0.6pg-TEQ/㎥で、これをオーバーした地点はありません。下の表1の右側の値が、環境保全課のWEBページに掲載された値です。このサイトをどれだけの市民が観たかは不明ですが、残念ながら市民の関心を呼ぶ工夫はされていません。単位は、ピコグラム-TEQ毎立方メートル。ピコグラムとは、重量を表す単位で1兆分の1グラム。TEQ(毒性等量)とは、最も毒性が強い2,3,7,8-TCDD(四塩化ジベンゾーパラージオキシン)の毒性に換算した値をいいます。

●左の数値は「実測値」といって、実際に計測された値を示しています。市役所の値だけは他の地点とは明らかに異なることが解ります。

表1

地     点  実測値  毒性当量
市役所(屋上) 130 0.064
町田第1小学校(屋上) 13 0.021
町田第1小学校(校庭) 19 0.027
市役所中町分庁舎(屋上) 26 0.033
東京都町田合同庁舎(屋上) 11 0.024

●この値だけでは何が違うのかよく解りませんので、図1以下、詳細に見ていきます。

●先ず、図1は、市役所を含めた5地点の大気ダイオキシンの実測値の比較です。比較し易くするために、数値軸の最大値を下げてあります。この図からは、市役所以外の地点での実測値は4塩化ジベンゾフランの値が最も高いという類似した傾向にあることが解ります。


●市役所の値はコプラナーPCBというダイオキシン類の内、モノオルトPCBsの値が突出していることが解ります。これは他の地点と明らかに異なる傾向です。


図1



●では次に、ダイオキシンの同族体の全体に占める割合を見ていきます。
図2は、5ヶ所の地点別の同族体の割合を示しています。
図3はより解り易くするために、%の数値軸の値を下げています。
それぞれのダイオキシンの同族体の割合も、市役所と他の地点では異なることが解りますまた、他の4ヶ所は、最も高い4塩化ジベンゾフラン、次に高い5塩化ダイオキシンの割合もほぼ同じことが解ります。


図2

図3


●次に、コプラナーPCBだけにしぼって比較してみましょう。図4から、どの地点でも#81から#189の占める割合は類似していることが解ります。しかし、その実測値は図5に示したように、明らかに異なることが解ります。

●市役所周辺施設のダイオキシン類の同族体存在量比は、一般大気のものと類似していますが、市役所の突出したmono-orthoPCBsの出どころは何処なのかという疑問が生じます。

朝日新聞の記事に,有害化学物質として1972(S.47)年に製造中止となったPCB(ポリ塩化ビフェニル)が,1972年以前に施工されたポリサルファイド系シーリング材の可塑剤(※)として含まれているという記事が報道されました。これは、兵庫県が2000年に実施したダイオキシン類の環境調査で,県内の公共82施設のうち8施設でシーリング材からPCBが検出されたと公表されたことによるものです。建築用シーリング材とは,建物の外壁などを構成するガラスやサッシ,パネルなどの各種部材間(目地)に防水性・気密性を確保する目的で使用される材料です。1972年にPCBの生産が中止になっていますから、PCBを用いたポリサルファイド系シーリング材が施工されたのは1972年夏頃までと考えられます。
※)可塑剤とは…建物の目地は,気温や湿度の変化,地震や風圧などの自然条件によって目地幅が変化することがあるため,シーリング材にはそれらの動きに追従する柔軟性が求められます。可塑剤は,その柔軟性を付与するために用いられる材料です。

町田市役所は1970年の建設です。指摘されている同様のシーリング材を使用していることも考えられますダイオキシンの毒性当量(TEQ値)は確かに環境基準値以下ですが、これだけ突出したPCBが検出されている以上、その要因や、もし、建材由来であるなら、市民に対して説明があってしかるべきです。そもそも市役所は、PCB規制が強化された際、このことについて、調査を行ったのでしょうか。工業会の説明によれば、PCBの特性から,その含有量が経年によって大きく減少することは考えられません。」とあります。基準以下とはいえ、説明責任が果されるべきはないでしょうか。
※参考:日本シーリング材工業会のホームページ  http://www.sealant.gr.jp/


●このシーリング材の問題について、市長への質問状を2008年6月に提出しました。その質問(シーリング材の分析結果について)への回答は「PCBは検出されない」とのものでした。
そこで、再度9月に分析調査の詳細を質しました。結果は町田市庁舎の9箇所(B1~3Fのサッシ等)をサンプリングし、硝酸への溶解テストの結果、「全く溶解しない」との判定結果を得た、よって全試料とも非ポリサルファイド系シーリング材というものでした。

しかし、相変わらず市役所のPCB(特に#118のco-PCB)は他と比べて以上に高い数値を示しています。(図6参照)



図4

図5


図6