町田市長 石阪 丈一 様

 

指定管理者制度について

 

2003年の地方自治法改正で導入された「指定管理者制度」に係る条例整備について、既に町田市は、各当該施設設置条例、情報公開条例および個人情報保護条例において改正規定を置いている。しかし、「PFI」や「市場化テスト」など、今後さらに進んでいくと思われる官製市場の民間開放については、委託業務の公正と透明性を確保するための法整備が必要であり、単に市場原理に委ねるのではなく、市民自治・住民自治の原理の基に置かれるべきとの観点から、下記の点につき提言をすると共に、貴職の見解をお尋ねします。文書にてご回答ください。

 

 

1.指定管理者の指定制限(欠格条項)について

既に条例改正により「指定管理者」についての整備をおこなっているが、何れの規定においても指定制限(欠格条項)は置かれていない。周知の通り欠格条項については、地方自治法第92条の2において、「請負」禁止規定があり、議員のみならず、首長など3役や教育委員等にも適用されるが、その趣旨は、議会運営や行政執行の公正を確保することにあり、ここにいう「請負」は、民法の請負にとどまらず、物品納入契約、業務委託契約など、広く業務としてなされる営利的・経済的な取引一般を指すと解されている。ただ、この請負禁止規定は指定管理者には適用されない。なぜなら指定は、自治体の「行政処分」であり、自治体と業者との「契約」ではないからとされている。

しかし、議員・首長等は請負の場合と同様に指定に関与する立場にあり、権限や地位の影響力を用いて私利を図れば、適正な議会運営と公正な行政執行が損なわれる点は、請負と異なるところがないのであって、兼業による不正・腐敗の防止が必要なことはいうまでもない。この点について総務省も「各地方公共団体の判断により、条例で『長や議員本人又は親族が経営する会社』は指定管理者になることができないこととすることも可能」と『指定管理者のすべて(第一法規)』で付言している。

よって、上記の趣旨に基づく制度改正を早急に図る必要があり、欠格条項については、新たに「政治倫理条例」や「指定管理者条例(公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例)」(資料1.2.3の多摩市、千代田区、福岡県飯塚市の条例参照)を制定することが必要であると考えます。
貴職の見解をお聞かせください。

 

2.指定管理者の情報公開について

指定管理者の情報公開は、いかに実効性を担保させるかが重要であり、処分権限を有する指定管理者だけでなく、処分権限のない指定管理者に対しても、その管理業務に関する情報について、実施機関への開示請求権を認めると共に、実施機関が保有しない情報については、実施機関の提出要請と指定管理者の提出義務を定める必要がある。

しかし、町田市情報公開条例においては処分権限を有する指定管理者も実施機関とは定めないまま、第14条(指定管理者の情報公開)において努力規定を置いているにすぎない。また、指定管理者の従業員について非開示規定では除外されておらず、同様に企業情報の非開示規定からも指定管理者の業務は除外されていない。

一方で、個人情報保護条例においては、第12条3(受託者の責務規定)で責務規定を置くだけでなく、同第35条(事業者に対する立入り調査等)で立入り調査等への協力並びに是正または中止の指導の規定を置き、さらに罰則規定(同第41〜45条)を定め、制度運用の徹底を図っている。

よって、非開示規定から指定管理者の業務および従業員を除外すると共に、多摩市や和光市の条例(資料4.5参照)のように、開示請求に対応しうる実効的な規定を置くことが必要であると考えます。
貴職の見解をお聞かせください。


●資料1

<多摩市公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例

第3条2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる団体は、指定管理者の指定の申請をすることができない。ただし、第3号については、教育委員会の職務に関する公の施設に限る。

(1) 市議会議員又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体

(2) 市長、助役若しくは収入役又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体(市が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)

(3) 教育委員会委員又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体(市が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)

●資料2

<千代田区公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例>

(欠格事項)

第6条 区議会議員が、代表者その他の役員である団体は、指定管理者たることができない。

2.区長、助役又は収入役が、代表者その他の役員である団体(区が資本金その他これに準ずるものの二分の1以上を出資している団体を除く。)は、指定管理者たることができない。

3.教育委員会委員が、代表者その他の役員である団体(区が資本金その他これに準ずるものの二分の1以上を出資している団体を除く。)については、当該教育委員会の職務に関して、指定管理者たることができない。

●資料3

<飯塚市公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例

(申請資格)

4条 次の各号のいずれかに該当する団体(法人以外の団体はその代表者)は、指定管理者の指定を受けることができない。

(1) 法律行為を行う能力を有しない者

(2) 破産者で復権を得ないもの

(3) 法第244条の2第11項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者

(4) 地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の4第2項(同項を準用する場合を含む。)の規定により、本市における一般競争入札等の参加を制限されている者

(5) 指定管理者の指定を委託とみなした場合に、法第92条の2、第142条(同条を準用する場合を含む。)又は第180条の5第6項の規定に抵触することとなる者を構成員とするもの

(6) 国税及び地方税を滞納している者

●資料4

<多摩市情報公開条例>

(指定管理者の情報公開)

第31条2項3号

 実施機関は、指定管理者が保有する指定管理業務に関する情報であって、実施機関が保有していないものについて開示請求があったときは、指定管理者に対して当該情報を実施機関に提出するよう求めるものとする。

第31条2項4号

 指定管理者は、前項の規定により情報の提出を求められたときは、速やかに、これに応じなければならない。

資料

<和光市情報公開条例>

(指定管理者の情報公開)

第25条2項3号

 実施機関は、指定管理者が保有する当該指定管理者が行う管理の業務に関する情報であって、実施機関が保有していないものについて開示請求があったときは、指定管理者に対して当該情報を実施機関に提出するよう求めるものとする。

第25条2項4号

 指定管理者は、前項の規定により情報の提出を求められたときは、速やかに、これに応じるよう努めるものとする。