曲目紹介


■ 中村 均:マーチ・エレガント

昭和50年度の日本国民音楽振興財団の公募作品の入賞曲。1986年度中部日本吹奏楽コンクールの課題曲にもなった。
■ グスターヴ・ホルスト:吹奏楽のための第1組曲変ホ長調作品28の1
ホルストは1874年イギリス生まれ。組曲「惑星」などの作品により、エルガー、ヴォーン・ウィリアムズらとならぶ近代イギリスの大作曲家として、現代に彼の名を残している。
1909年に作曲されたこの曲は、オリジナルな吹奏楽曲として草分けの作品である。
第1楽章は「シャコンヌ」という形式で書かれている。冒頭で低音楽器群で奏でられる主題に15の変奏が繰り広げられ、最後は輝かしく終わる。
第2楽章「間奏曲」は軽やかなスケルツォである。
第3楽章は、伝統的なバンド・マーチのパターンにのっとった「行進曲」である。冒頭のトリルを除いて中間部までは金管楽器のみで演奏されるのが興味深い。
■ アルフレッド・リード:序曲「春の猟犬」
日本の吹奏楽で最も多くの作品が演奏されているのがこのアルフレッド・リード氏の作品であろう。「春の猟犬」はカナダ・オンタリオ州のジョン・フォスター高校バンドの委嘱で作曲された。
曲はイギリスの詩人アルジャノーン・チャールズ・スウィンバーン(1837-1909)が28歳の時に書いた詩の一節に基づいて作られた。この詩の持つ"若い快活さ" "優しい愛の甘さ"という二つの要素を表現しようとしたもので、6/8拍子を主体とした軽快なリズムと4/4拍子の美しいメロディーが対比的に書かれている。
作曲者アルフレッド・リードは1921年1月25日ニューヨーク市生まれ。10才からトランペットを15才から作曲を学んだ。18才で放送局の作曲編曲副指揮者となり、1942年から第529陸軍航空隊バンド副指揮者、ディレクターとして活躍。その後ジュリアード音楽院でヴィットリオ・ジャンニーニ(1903-1966)に作曲を学び、1953年ベイラー大学シンフォニーオーケストラの指揮者になりました。1955年から66年までニューヨークのハンセン出版社で編集責任者を勤めたあと、1966年から1993年までマイアミ大学音楽学校の作曲と理論の教授を勤めた。日本では1988年から2005年まで洗足学園音楽大学客員教授。2005年9月17日、臓器不全のため米フロリダ州で死去、84歳。

■ リヒャルト・ワーグナー:歌劇「ローエングリン」よりエルザの大聖堂への行列

ワーグナー(1813-1883)が1850年に初演した歌劇「ローエングリン」の第二幕の終わりでブラバント王国の王女エルザが結婚式のために宮殿から大聖堂へ進む、婚礼の行列の音楽。結婚の歓びと不安が見事に表現されている。

■ ヤン・ヴァン=デル=ロースト:交響詩「スパルタクス」

スパルタクスとはギリシアのトラキアに生まれた古代ローマの剣士の名である。彼はローマの奴隷となったのち養成所に入れられ剣士となり、剣士の中の勇者として知られた。しかし紀元前73年に奴隷たちを率いて大反乱を起こし、ローマを苦しめたが、後に鎮圧され6万人の奴隷とともに処刑された。
作品は連続して演奏される4つの部分からなり、それぞれのつなぎの箇所にはソロが配されている。
導入部は、打楽器と中低音楽器の重厚な響きに木管楽器が絡みながら進行し、木管楽器などの鋭利な上昇旋律に導かれてアレグロ・モデラートの最初の主部に入る。ここではスタッカートやアクセントが多用され、剣士の格闘を表すかのような自由なフレーズがいくつも組み合わされて演奏される。
フルートとそれを引き継ぐアルトサックスのソロに導かれてゆったりとしたテンポで演奏されるのが2つ目の部分で、ここでは剣士たちの束の間の安息が描かれ、次第に大きくなる雄大なホルンのフレーズが印象に残る部分となっている。
3つ目の部分は打楽器群のマーチのようなリズムに導かれて始まる。進軍と戦闘をイメージさせる部分で、音楽も突然サックスのアンサンブルが現れたり、つぎつぎと転換する。
最後の部分は、哀愁を帯びたアルトサックスのソロに導かれてはじまる。その後、音楽はこれまでのシーンを回想するかのように、先に演奏された幾つかのフレーズを断片的に演奏したあと、クライマックスへとなだれ込んでいく。

作曲者ヤン・ヴァン=デル=ロースト(1956-)はベルギーのドゥッフェルで生まれた。レメンズ音楽院とゲントの王立音楽院で専門教育を受け、吹奏楽曲以外にもピアノ曲から合唱曲・管弦楽曲に至るまで幅広い作曲活動を行っている。また作曲活動以外にもレメンズ音楽院で教鞭をとるかたわら指揮者として活躍している。この曲は1988年に作曲された。

■ ピエトロ・マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

ヴェリズモ(現実主義)オペラで名をあげたイタリアの作曲家ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の代表作「カヴァレリア・ ルスティカーナ」は、作家ヴェルガの同名小説を題材とする悲劇である。
舞台はイタリアのシチリア島。村娘サントゥッツァは、その恋人トゥリッドゥが彼の昔の恋人で今はアルフィオの妻となっているローラとよりを戻し、自分を捨てたことに絶望し、アルフィオにトゥリッドゥとローラの関係を話してしまう。復讐を誓うアルフィオに話してしまったことを後悔するサントゥッツァ。2人は決闘し、トゥリッドゥは殺されてしまう。
オペラのクライマックスの前に、教会の中で復活祭のミサが行われているあいだに演奏されるこの間奏曲は、平和と愛の憧れを暗示するかのような美しい旋律のなかに、嵐の前の静けさをも思わせる間奏曲となっている。
なお「カヴァレリア・ルスティカーナ」とは田舎の騎士道という意味である。

■ フィリップ・スパーク:オリエント急行

1883年に開通したヨーロッパ大陸横断鉄道、オリエント急行での旅を音で描写した楽しい作品。
曲は、旅への期待を表すようなファンファーレで始まる。出発駅の賑わいにも似た喧騒がおさまると、発車を告げる笛に続いて汽笛が鳴り、いよいよ汽車は走り出し加速してゆく。
汽車が快調に走り出すと、車窓の風景は移り変わり旅の楽しみが描かれるが、そこには旅の寂しさや不安も入り交じっている。後半は再び元のテンポに戻り、前半のメロディが再現する。そして汽車は終着駅に到着し旅も終わりを告げる。

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