曲目紹介


■ ジム・アンディ・コーディル : 吹奏楽のための民話
コーディルは1931年アメリカ、ケンタッキー州生まれ。少年時代からコルネットを、高校時代からは作曲も学んだ。公立高校の教師を経てケンタッキー州のパイクビル大学の助教授もつとめた。
タイトルのように民謡風の表情豊かな数々のメロディがちりばめられており、昭和40年にはじめて日本に紹介されて以来吹奏楽曲の代名詞のように親しまれている。
長く多くの人に演奏されることが名曲の条件であるとすれば、これほどの名曲は希有であろう。
■ フランク・エリクソン : 序曲祝典
エリクソンは1923年アメリカ、ワシントン州生まれ。幼少の頃からトランペット、ピアノ、作曲を学び、第2次世界大戦中は陸軍軍楽隊のメンバーとして実地に編曲の経験を積んだ。
戦後は南カリフォルニア大学で作曲を学び、出版社で編集を経験した後1958年から61年にかけてカリフォルニア大学で作曲を教え、サンノゼ州立大学の教授をつとめた後1996年に亡くなった。
この「序曲祝典 Overture Jubiloso」は、ミズーリ大学のバンド創立50周年記念の委嘱により作曲された。急緩急の3部形式で、最初の速い部分では2つの主題が華やかな雰囲気を盛り上げ、中間部ではコラール風のメロディが歌い出される。その後再び速い部分にもどり最後に第1主題が拡大されて低音楽器にあらわれクライマックスとなり堂々と終わる。
■ ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン : 「エグモント」序曲、作品84
エグモント伯は16世紀オランダに実在した人物で、スペイン王国の圧政に抵抗しオランダ独立のために戦ったが囚われ死刑を宣告される。彼を愛するクレールヒェンは彼を救い出そうとするが失敗し、エグモントは処刑されクレールヒェンも自殺してしまうという悲劇的な史実に基づいてドイツの文豪ゲーテが戯曲にした。
ゲーテを敬愛していたベートーヴェン(1770-1827)は1809年ウィーン宮廷劇場の支配人ヨーゼフ・ハルトルの依頼により、この序曲を含め10曲からなる劇音楽を作曲した。
現在では「エグモント」劇がベートーヴェンの音楽で上演されることはほとんどないが、この序曲だけは独立した音楽として頻繁に演奏される。短い時間の中に悲劇が凝縮された傑作である。
■ ピョートル・イリイッチ・チャイコフスキー : スラヴ行進曲作品31
1876年、セルビアのトルコからの独立をかけた戦いがはじまり、同じスラブ民族に属するロシアはセルビアを援助した。この曲はその当時のモスクワ音楽院の院長ニコライ・ルビンシュタインが主催した戦争の負傷兵救援の音楽会のために作曲されたものである。
行進曲の名称がつけられているが実際には交響詩といってよく、セルビアの民謡やロシア国歌が主題として組み込まれた愛国心を昂揚させるような作品である。
■ リヒャルト・ワーグナー : 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は1867年ワーグナー(1813-1883)円熟期の作で、ワーグナーとしては唯一ともいえる明るい筋書きによる傑作である。3幕からなる全曲の演奏には4時間超(CDで4枚)を要する大作である。
マイスタージンガーとは職人的な歌手の親方の称号のことであり、劇は中世の南ドイツ、ニュルンベルクの町が舞台。青年騎士ヴァルターがマイスター(親方)であるザックスに助けられながら困難を乗り越え、金細工師の娘エーファの花婿の座をヨハネ祭の歌合戦で勝ちとると人々はマイスターの芸術をたたえヴァルターを祝福するというもの。
この第1幕の前奏曲は、楽劇全体の予告編とも思える構成になっており、劇中に登場する様々な動機(テーマ)が盛り込まれている。曲頭いきなり提示される親方歌手の動機から、愛の動機、親方歌手の行進の動機、親方歌手の芸術の動機、情熱の動機などをへて、曲は華やかに力強く結ばれる。

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