曲目紹介


■ エドワード・エルガー : 行進曲「威風堂々」第1番 OP39-1

近代英国の大作曲家エルガー(1857-1934)の最も有名な作品の一つ、行進曲「威風堂々」は全部で5曲が書かれた。「威風堂々(Pomp and Circumstance)」という原題は、シェイクスピアの『オセロ』にあるオセロの台詞から採られたものである。
第1番は1901年に作曲された。中間部(トリオ)の旋律はイギリス国王エドワード7世の耳をとらえ、のちに「戴冠式頌歌」にも用いられてからは第2の国歌として今も愛唱されている。
■ フィリップ・スパーク : イヤー・オブ・ドラゴン
1951年ロンドンに生まれたスパークは王立音楽院時代にトランペット、ピアノ、作曲を学んだ。主に金管バンドの作品が多いが、最近は自ら金管バンドの作品を吹奏楽用に書き直したりオリジナルの楽曲を書いて人気を得ている。この曲ももともと金管バンドのために書かれた作品である。
曲は、ウェールズ(イギリスの西部)のシンボルである赤い竜をテーマにしており、トッカータ、間奏曲、フィナーレの3曲からなっている。
■ 兼田 敏 : 三重国体記念マーチ
兼田 敏(かねだ・びん)は1935(昭和10)年に旧満州国新京に生まれた。戦後に京都の上京中学、堀川高校の吹奏楽部でコルネットを担当、この頃から作・編曲を手がけるようになる。
東京芸術大学で作曲を専攻、卒業後も吹奏楽と関わり特に1964(昭和39)年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲「バンドのための楽章”若人の歌”」を作曲して広く知られるようになった。代表曲として「パッサカリア」「交響的瞬間」「シンフォニック・バリエーション」「バラード」など。
この曲は1975(昭和50)年の第30回みえ国体を記念して書き下ろされたものである。
1999年岐阜大学大学院教育学研究科(音楽)教授を退職。2002年5月17日逝去。
■ アルフレッド・リード : 序曲「春の猟犬」
リードは1921年ニューヨーク生まれ。ラジオやテレビ局の専属作編曲家として活躍したのち、1966年にはマイアミ大学の教授になり、さらに1980年フレデリック・フェネルの後をうけ同大学のウインドアンサンブルの指揮者に就任した。吹奏楽のための多数の優れた作品があり、日本でも人気が高い作曲家である。2005年9月17日没。
1980年に作曲されたこの曲は、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(1837-1909)の詩に基づいて書かれた急−緩−急の三部形式の序曲である。
曲は8分の6拍子を主体とした軽快なリズムで始まり、やがて4分の4拍子の木管を中心とした美しいメロディーからなる中間部に受け継がれる。ホルンの抒情的な旋律が奏でられた後、テンポは再び軽快になり、華やかに幕を閉じる。
■ フランツ・リスト : 交響詩「レ・プレリュード」(前奏曲)
リスト(1811-1866)の作品といえば彼自身がピアノの名人であったことからピアノ音楽がまず思い浮かぶが、それ以外にも13の交響詩(リストはこの形式の創始者)や「ファウスト交響曲」、歌曲など多くの作品が残され現在も演奏されている。
交響詩「レ・プレリュード」は第3番目の交響詩にあたり、1854年にワイマールでリスト自身によって初演された。リストは楽譜の序文として次の文章を掲げている。
『人の一生は、その最初の厳粛な音が死によって奏される未知なる讃歌への一連の前奏曲でなくてなんであろう?愛はあまたの存在の輝かしい暁である。だがその荒々しい息吹が美しい幻を吹き散らかし、激しい電光が祭壇をぶちこわしてしまうような嵐の怒りにより、至福の最初の喜びが中断されてしまわないようなどのような運命があるというのだ? そのような激動の後、もっとも深く傷を負った魂が、田園生活の美しい静けさのうちで、その思い出をとりのぞこうとしないような人がいったいいるのだろうか? にもかかわらず、人は、一度は心楽しんだ優しい自然の気分のうちの慈悲ある平安のなかに長くは耐えられないであろう。 危険を告げるラッパが鳴ると、戦士の列に彼を呼ぶいくさがなんであろうと、彼は、そのいくさによって自分のまったき意義と、自分の力のまったき把握を再び獲得せんと、最も危険な場所へと急ぐのである。』
これは、フランスの詩人アルフォンス・ド・ラマルティーヌ(1790-1859)の「詩的瞑想録」の一部である。このプログラムと音楽の結合がリストの手によって見事に実現されているといえるだろう。
全曲は4つの部分からなっている。作品の冒頭すぐに優しく奏される旋律が主要主題で、このテーマをもととした自由な変奏によっている。人生の朝ともいいうる愛を扱った第1部。嵐を暗示する第2部。ホルンの音楽ではじまる田園生活の美しい静けさを描いた第3部。再び自分の力を試みるため運命に立ち上がる第4部でクライマックスを迎えて全曲を終わる。


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