曲目紹介


■ 大栗 裕 : 吹奏楽のための「神話」〜天の岩屋戸の物語による

1973年(昭和48年)に、大阪市音楽団の委嘱により同団の創立50周年記念作品として作曲・初演された。
この曲は、サブタイトルが示すように、日本神話にみられる「天の岩屋戸」の物語を題材にし、あたかも目の前で場面場面が展開してゆくように音で描いている。
作曲者大栗裕(おおぐり・ひろし)は1918年(大正7年)大阪生まれ。戦後は関西交響楽団(現在の大阪フィル)でホルン奏者として活躍しながら独学で作曲を学び多くの作品を残した。1982年(昭和57年)に亡くなった。
■ アルフレッド・リード : 序曲「パンチネルロ」
この曲はウェスタン・イリノイ・シンフォニック・ウインド・アンサンブルのために作曲され1973年に初演された。
速い−遅い−速いの典型的な序曲形式でかかれているが、この曲は劇音楽として作曲されたものではなく、曲自体に何か物語的な意味を込めているということでもない。
ただ、タイトルの「パンチネルロ(道化師)」とサブタイトルの「ロマンティック・コメディ」が、この曲に対する聴き手のイメージを促すものである。
速い部分では、次から次へと息をつく暇も旋律がつながりからみあっている。まさにめまぐるしく変化して行く道化役者の舞台の様である。遅い部分では、ゆったりと流れる旋律がノスタルジックな雰囲気を醸し出す。
■ ペーター・イリイチ・チャイコフスキー : 序曲「1812年」
この「1812年」は、歴史上有名なナポレオンのロシア侵攻と敗北を描写したもので、1881年の夏に予定されていたモスクワでの工業博覧会の開会式のために依頼され、作曲された。初演は1882年8月8日、モスクワでロシア音楽協会によって行なわれた。チャイコフスキー(1840-1893)40歳のときの作品である。
チャイコフスキー自身は作曲にも気がすすまず、それほど芸術的に高い作品とは考えていなかったようである。しかし、この曲はロシアの愛国的な主題を、聖歌や民謡、さらにフランスとロシア両国の国歌を組み込んで、絵画的にわかりやすく描き上げた作品として広く知られることとなった。

曲は三つの部分からなり、いくつかの主題が絡み合う。まず厳かにギリシア正教の聖歌が引用され将来の苦難を暗示する。
第2の部分ではまず、木管とホルンに、ロシア軍を表わす記号音風の動機が聴こえてくる。やがて、フランス軍を表わすフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の断片が、金管群に何度も顔を出す。
これがいったん静まると、美しい民謡風の主題が現れ、舞踏風の主題も聴こえる。
やがて、曲は戦闘描写となり、ロシア軍とフランス軍の両主題が入り乱れるが、ついにフランス軍は敗走する。
第3の部分は、第1の主題が全管楽器とともに壮大に響き、鐘の音も鳴りわたる。ロシアの大勝利である。やがて曲は速度を速め、最後には金管がロシア国歌を吹き鳴らし、勝利の大砲の音の中で大団円へと向かう。


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