曲目紹介


■ 矢代秋雄 : 式典序曲

矢代秋雄(やしろ・あきお)は、1929年東京生まれ。父は美術評論家の矢代幸雄。1951年東京音楽学校研究科修了。修了後、フランス共和国給費留学生として黛敏郎とともに渡欧し、パリ国立音楽院に留学。オリヴィエ・メシアン、ナディア・ブーランジェ女史等について学び、1956年に帰国した。
帰国後は、演奏会用の作品だけでなく記録映画や演劇のために作曲する一方で、母校の東京芸術大学で教鞭をとり多くの弟子を育てたが1976年47歳の若さで急逝した。
この「式典序曲」は1975年(昭和50)年の第30回みえ国体のための式典音楽として作曲された「ファンファーレ」、「式典序曲」、「国体讃歌」、「式典終曲」の4曲のうちの1曲である。(ちなみに「国体讃歌」は遠藤周作氏の作詞による)
■ ジョセフ・オリヴァドゥティ : 「バラの謝肉祭」序曲
作曲者のジョセフ・オリヴァドゥティ(Joseph Olivadoti)は1893年にイタリアに生まれ、早くからホルンやサキソフォン、クラリネットを学び、後にオーボエを専門とした。
1911年18才の時にアメリカに移住。オーボエ奏者としてオーケストラや音楽大学で教鞭をとったのち、1942年に海軍軍楽隊に入り、退役後はカリフォルニア州ロングビーチに住み、市民バンドのオーボエ奏者として活動するかたわらバンド向きの易しい曲をたくさん作曲し1977年に83才で没した。
この「バラの謝肉祭(Carnival of Roses)」序曲は1947年に作曲、出版された。曲は序奏−早い−遅い−早いという三部形式で書かれており、美しいメロディに満ち溢れた、構成の大きな変化に富んだ作品となっている。
■ ヨハン・セバスチャン・バッハ(リード編) : 主よ人の望みの喜びよ
原曲は、1716年に作曲され1723年に改作された教会カンタータ第147番「心と日々のわざもて、主の証しとなさん」の中の曲で、合唱と管弦楽で演奏される。
バッハ(1685-1750)は、その後半生をライプツィヒの聖トマス教会カントル(合唱長)として礼拝で歌われるカンタータなどの作曲に当たっており、およそ200曲のカンタータを作曲した。
イギリスの女流ピアニスト、マイラ・ヘスが1920年ロンドンのバッハ祭でこの曲に魅せられアンコールピースとして以来、バッハの作品のなかでも広く親しまれるようになった。
今回は、アメリカの作曲家アルフレッド・リード(1921-2005)の編曲によるものを演奏する。
■ グスターヴ・ホルスト : 組曲「惑星」作品32より「木星」
ホルスト(1874-1934)はイギリスの作曲家。幼少から音楽に親しみ、王立音楽院でトロンボーンと作曲を学んだ。
若いころから東洋思想やサンスクリットを学んでインド哲学にひかれていたホルストは、1913年に劇作家のクリフォード・バックスから占星術について教えを受けてから占星術に傾倒するようになり、その結果ホルストの名声を決定づけた「惑星」は生まれた。
作曲は、第一次世界大戦が勃発する直前の1914年から1916年にかけて行われ、完成後に非公開の部分的な試演が重ねられのち、1920年にロンドンで作曲者自身の指揮により全曲が初演された。
同時代のストラヴィンスキーやシェーンベルクの音楽、フォークソング・リバイバル、イギリスの古楽、民謡などに由来する多くの要素が混在した大作である。

組曲「惑星」では、太陽系9つの惑星の内、「地球」と「冥王星」を除く7つの惑星が取り上げられている。「冥王星」は、作品が完成した時点で未だ発見されていなかった(1930年に発見)ので含まれていない。 (2000年にイギリスの作曲家コリン・マシューズが「冥王星」を追加作曲して話題になった。)
作品は実際の惑星の並びとは異なり、次の順に演奏される。

 第1曲:火星 - 戦争の神 (Mars - the Bringer of War)
 第2曲:金星 - 平和の神 (Venus - the Bringer of Peace)
 第3曲:水星 - 翼のある使いの神 (Mercury - the Winged Messenger)
 第4曲:木星 - 快楽の神 (Jupiter - the Bringer of Jollity)
 第5曲:土星 - 老年の神 (Saturn - the Bringer of Old Age)
 第6曲:天王星 - 魔術の神 (Uranus - Magician)
 第7曲:海王星 - 神秘の神 (Neptune - the Mystic)

上記のように各曲には曲名のほかにサブタイトルが付けられている。このサブタイトルが重要で、ホルスト自身述べているように、この作品は天文学的なイメージで表題音楽のように各惑星を写実的に描写したものではなく、各惑星に古代から与えられて来た神話的、占星術的イメージを音楽にしたものだといえる。
「快楽の神」のサブタイトルのとおり「木星」では7曲の中で最もスケールが大きく、壮大で祝典的な音楽が展開される。曲は三部形式で構成されている。
まず第一部では、3つの主題がホルンを中心に奏でられる。第3主題は4分の3拍子の民族舞曲風のもの。中間部では後にホルスト自身が独立した合唱曲に編曲したように、民謡風の親しみやすく雄大な旋律が奏でられる。そして第三部では、最初の3つの主題が中心となって転調が巧妙に繰り返された後、力強く結ばれる。
■ リチャード・ロジャース : サウンド・オブ・ミュージック
自然溢れるオーストリアを舞台にマリアとトラップ一家との交流を描くブロードウェイ・ミュージカルの名作。「回転木馬」、「南太平洋」、「王様と私」なども手がけた作曲リチャード・ロジャース(1902-1979)、作詞オスカー・ハマースタイン二世(1895-1960)の名コンビが音楽を担当した。
ミュージカルとして1443回もの公演を記録したロングラン・ヒットとなった後、1965年には「ウェスト・サイド物語」のロバート・ワイズ監督(1914-2005)、ジュリー・アンドリュースの主演で映画化され、その年最大のヒットとなりアカデミー賞の5部門を獲得している。
物語は、第二次世界大戦中のオーストリアで自由奔放に生きる修道女マリアは、院長の命令でトラップ大佐の子供達の家庭教師を務めることになる。厳格な父親の下で育った7人の子供達にマリアは手を焼かされるものの、得意の歌を通して子供達と交流を深めてゆき、やがては厳格なトラップ大佐とも恋が芽生えて、2人は結ばれる。しかし、ナチスの恐怖がオーストリアに忍び寄り、一家は音楽祭を利用して亡命を試みるというもの。
劇中で歌われる「ドレミの歌」や「エーデルワイス」、「マイ・フェイヴァリット・シングズ(わたしのお気に入り)」などの曲は、今ではスタンダード・ナンバーとして世界中で親しまれている。


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