技 練
朽ちない鉄
ディンプルって何?
夢の青色
the divine proportion
オーパーツ
キーボードの配列

朽ちない鉄
法隆寺建立時に使われた飛鳥釘は,現在でも錆びることなく利用されているが これは,日本古来の製鉄法であるタタラ(蹈鞴・踏鞴)から生まれた和鉄を用いているためである。 では,和鉄はなぜ錆びないのか?

現在の溶鉱炉法では,鉄鉱石を効率よく還元するために化石燃料を利用するが, 化石燃料には硫黄が多量に含まれており,これが鉄に入ると,鉄が非常にもろくなり, 加工が非常にしにくい。そのため,マンガンを添加して(硫化マンガンにして)加工性を 向上させるのであるが,このマンガンや脱酸化剤として添加されるシリコンが鉄を 錆びやすくする不純物だと言われている。
一方,タタラ製鉄で生産する和鉄は,木炭の燃焼熱と還元作用で砂鉄を製錬する方法で 不純物が溶鉱炉鉄に比べ非常に少ない鉄が生成できる。唯一,溶鉱炉鉄より多い不純物は, チタン(ここでは,未還元のチタン酸化物)であり,これが錆びにくくしている原因である。 このように,飛鳥釘は,錆びやすくする不純物の少なく,錆びにくくする不純物が
多いために「錆びにくい」といえる。

しかし,純度が高いだけで鉄が朽ちにくいとは思えない。鉄の話で思い出すのは,千数百年前頃にシリア周辺で作られていた, ダマスク鋼の刀剣である。 この刀剣は,「絹のスカーフがそこに落ちると,その重みで真っ二つになり,鉄の鎧を きっても刃毀れしない」といわれたもので,鉄そのものの純度のほかに,鍛冶技術 (焼入れや鍛錬方法)が卓越していたことを想像させる。

タタラという高度な製鉄技術と鍛冶技術が今でも利用できる和鉄を生んだのではと思うのである。

基本的に金属は錆びる。例えば金は,何年たっても輝きを失ってはいないが 錆びるスピードが非常に遅い(錆びにくい)性質を持っているからである。また, ステンレス鋼が錆びないのは,既に錆びている膜(保護膜)で 覆われているためであって,その膜が剥げれば錆びてしまう。


ディンプルって何?
ゴルフボールのあのデコボコ,それをディンプルと呼ぶのですが, なぜついているか知っていますか? 理由は,ゴルフボールの歴史に隠れています。

ゴルフの起源は,皆さんがよく知っているスコットランド説のほかにオランダ説,イングランド説, ローマ説と多岐にわたり,実際のところどれが正解かをはっきり示す資料がありません。 歴史上,初めて「golf」という言葉が出てくるのは,1457年のスコットランドのジェームス2世が 公布したゴルフ禁止令です。その当時のゴルフボールは木製のものが使用されていたようです。

時が進み,17世紀頃のになると,フェザリー・ボールと 呼ばれる大量のガチョウの羽毛を硬く圧縮 したものが利用され始め,牛か馬の革で包んだものが,さらに19世紀になると,ゴムの一種であるガッタ・パーチャを ボールの形に圧縮したものが発明されました。このときには,表面はまだつるつるで表面にはディンプル はありませんでした。しかし,このガッタ・パーチャ・ボール がディンプルを生んだきっかけとなったボール といわれています。

当時,ガッタ・パーチャ・ボールは非常に高価で,何度も何度も同じボールを使いまわしていたそうです。 そして使えば使うほど,ボールは凹み,傷がついていきます。でも, 「凹んだり傷ついたボールの方が, 新品のボールより飛びがいい」ことが経験的に分かったのです。

これが,ディンプルの始まりで,20世紀の始めにはディンプルつきのボールが商品化され,その後, ハスケル・ボール(糸巻きボール),ツーピースボール,スリーピースボールと進化を遂げています。

ディンプルがついた理由が「よく飛ぶから」(実は方向性もディンプルありの方がいい)ということが 分かったと思いますが,では,「なぜディンプルつきのボールがディンプルなしより飛ぶのでしょうか?」 これは,ディンプルつきボールでは乱流が発生し,その乱流が剥離位置を後方へ移動させ,その結果, ボールの進行方向とは反対側にできる低圧部をディンプルなしより小さくすることができ,ボールに 与える抵抗力が小さくなるためです。 (誤解を招く可能性があるのでより知りたい方は流体力学関係の本をご覧ください。)
また,このディンプルなしのボールで行うゴルフ(ケイマンゴルフ)もあります。 考案者はジャック・二クラウスで,奥さんと楽しくラウンド するために,自分はディンプルなしのボールを使用していたそうです。


夢の青色
「錬金術」とは,卑金属から貴金属(特に黄金)を製造する術をいい、 場合によっては不老長寿の薬や万能薬を作る術をも含んで用いられる。 錬金術と聞くと,現代人にはうさんくさい雰囲気があるが, これが化学の発展にとどまらず,文化・芸術にまで影響を及ぼしている。

例えば,プルシャンブルーとは,18世紀から19世紀によく使われた濃い青色の絵の具のことだが, これは、ベルリンで絵の具製造業者ディースバッハ が錬金術師ディッペルの協力のもとに ”偶然”に発見したものである。

プルシャン・ブルーができるまで青色顔料として主に利用していた 貴石(宝石に次ぐ石)のラピス・ラズリ(瑠璃)の粉末は, 同じ重さの黄金との交換でなければ手に入らないと言われていたので安価で色あせしない プルシャンブルーは芸術家にとって夢の青色だったのでしょう。

まぁディッペルは錬金術師だから別の目的があったのかも知れませんが・・・。


the divine proportion
ミケランジェロレオナルド・ダ・ビンチの絵、 ミロのヴィーナスや エジプトのクフ王のピラミッドの魅力的な美しさに, 黄金比が関係していることは有名である。
黄金比とは,AとBとの割合が,A:B=B:(A+B)の関係にあり, 数値では1:1.618・・・(近い整数比は55:89)であらわされる比率のことをいう。 これは,古代エジプトで考案され,ギリシャ時代に芸術・美術に実用化されたもので, 中世ではその比率の神秘性から神授比例法と呼ばれていたときもあった。

1:1の関係はシンメトリーと呼ばれているが,この関係は非常に安定しているため 動きのない”静”のイメージを与え,時には荘厳感がある。この効果を利用して,祭壇や教会 での配置はシンメトリーが多くなっている。 これに対し,黄金比率では大小のアンバランスさが”動”を生みだしているので, 人体の造形美の理想として,この比率の芸術作品が多く生まれたと考えられる。

だだし,この比率が絶対的な美や調和を生むものではなく,あくまでも目安であると思うので これに拘る必要はたぶんないと思うが・・・。

日本の古い家屋等では,1:1や1:2,1:3などの単純な整数比を使っているものが多く,整数比の明快な 分かり易さが,美しさや威厳を与えているように感じる原因かもしれません。また,黄金分割のほかに 現代でもよく使われる比率に,ルート矩形があります。縦・横比1:1.4142(ルート2)の矩形は, 2つに折ってもそのまた半分に折っても性質が変わらないという特徴があるため,用紙のA判・B判の規格は, ルート矩形を採用しています。


オーパーツ
その時代にあったはずがないほど,高度な技術や知識が利用されている遺物・ 遺跡などをオーパーツ(Out Of Place Artifacts)「場違いな遺物」と呼ばれています。
1929年、トルコの博物館の保管棚からある地図が発見された。 この地図(ピリ・レイス地図)は後にオーパーツとして有名になるのだが,それは その当時発見されていなかった「南極大陸」北部の一部が描かれていたからである。 (南極大陸は,1772年クックの世界旅行の途中で発見されたのが最初とされている。)
さらに,不思議な地図はこれだけでない。 オルテリウス,コルネリス・ウィトフリート,オロンス・フィネ,W.J.ブラウ等が 16〜17世紀に作成した地図にも南極大陸が描かれていて,その存在が一部の人たちに知識 として認識されていたことが伺える。

では,彼らはなぜそのような知識を得たのか。

実は,さらに古代から,南極大陸(氷に覆われる前)の存在を認識していた ”ふし”がある。 例えば,アレクサンドリア大図書館にあったとされる古代エジプトのイネブニイ方形像には, 「我々の大地は球形を成し,北から南へつらなる地軸によりバランスが保たれている。 その南に未知なる大陸より・・・」という記述があり,また,哲学者シッダと 科学者ビデイヤハラが 「月の下だが雲の上」という所から描いたという南極大陸の地図もあるらしい。

ピリ・レイス地図などはこのような古文書等を元に再現をしたのかもしれない。 しかし,古代の人たちはどうやって「南極大陸の存在」を知ったのか。 その方法は現在でも謎のままである。まぁ技術の解明をゆっくりと待ちましょうか。

オーパーツという分類(考え方?)は,非常に重要であると思う。たとえば,オーパーツのような 世の中にある不思議なものをすべて歴史に組み込もうとすると,過去と未来が逆転し,いままでの歴史 が覆ってしまう可能性がある。そこで,それらを,一旦,「オーパーツ」というカテゴリーに入れてしまって, 今の歴史の中に簡単に入れないようにし,整合性を保っていると思われる。 しかし,この意味において,すべてのオーパーツを解明しない限り, 本物の歴史はみえないのでしょうね。


キーボードの配列
最初にキーボードをさわったとき、なんて煩わしい配列なんだと 思った方が多いと思います。その感想は間違いなく、わざと打ちにくい配列になっているです。

もともと、キーボードタイプライター のために開発されたものでした。 当時のタイプライターは、キーを押すと先端に活字のついたバーが移動し、 紙に印字するというものでした。そのため、一定の間隔で文字を打たないと 機械の中でバーとバーとが交錯し、故障する可能性があったので、文字配列を わざと使いにくくし、入力スピードを制限する必要があったのです。 (英語の中でもよく使う、eやr、tが左手の上の方にあるのはそのためです。)

便利がいい方にばっかり技術が進むわけではないのですね。

その理由は「経済」デファクトスタンダードに記述しています。 ちなみに、現在よく使われているキーボードの配列はQWERTY配列 と呼ばれています。



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