SC-88ProとGS規格




[トップページ] / [MIDIとDTMの広場]


【はじめに】

SC-55から始まり、SC-155、SC-33、SC-55mkII、SC-88、SC-88VL、SC-88Proと、SCシリーズには多くの種類があります。大きな節目となったのは、SC-88とSC-88Proでしょうか。SC-88では、音色が大幅に増加し、ディレイやEQが使えるようになりました。SC-88Proでは、さらに音色が多数追加され、さまざまな効果がかけられるインサーションエフェクト(EFX)が使えるようになっています。エフェクトに関しては、バリエーションエフェクトが使えるXG音源に、ようやく肩を並べることができたといえます。

ここでは、SC-88Proに備わっている機能を紹介するとともに、SC-88やGS規格についての話題も書きます。


【音色】

SC-88は654音色でしたが、SC-88Proでは1117音色になっています。SC-55(mkII)とほぼ同じ音色と、SC-88と同じ音色のマップが用意されているため、SC-88やSC-55と同じような状態にしてデータを聴いたり作ったりできます。

SC-88やSC-88Proにはマップという概念があるので、同じ音色でもマップが違えば、ニュアンスの異なる音になります(中には同じ音もあります)。同じMIDIデータでも、マップを切り替えることによって、やや雰囲気の異なる演奏が楽しめるのです。ただし、マップを変更すると、演奏に違和感を覚える音色も存在します。やはり、データ作成者の意図する状態にして聴くのが一番でしょう。

音についての感想としては、SC-88Proならではのよさを感じる音もあれば、55MAPのほうが素直で使いやすい音もあるという感じです。Slap Bass 2、Trumpet、Alto Saxなどは、ちょっと使いにくいと思いました。ちなみにこの音は、88MAPも好きではありません。

SC-88Proになって特に増えた音色は、オルガン、クリーンギター、オーバードライブギター、シンセベース、オーケストラヒット、ブラス、シンセリード系全般、などです。そのほかの音色でも、88ProMAPになって新たな音になっているものが結構あります。

クリーンギターは、そのままでもリアルで使いやすい音色や、歪み系のEFXをかけて使うのに適した音色もいくつか追加されています。Overdrive Gtのバリエーションに、歪みが激しいMore Driveがあるのもポイントです。また、Gt.HarmonicsのバリエーションのGt.Feedback2に歪み系のEFXを使うと、エレクトリックギター特有のハウった感じの音が出せます。

このように、バリエーション音色は充実していますが、キャピタル音色のエレクトリックギターは、88MAPの音色のほうがいい感じがします。気に入らなければ、88MAPボタンを押せば済むことなのですが、下位音源のマップの音のほうがいいというのは、ちょっと残念です。

ここで、SC-88Proに入っている、特徴的でおもしろい音を挙げます。

PCBank音色名コメント
020033Theater Org.某料理番組で流れるオルガン?
032009Gt.Feedback2ギターでハウらせたいときにどうぞ。
039024Arpeggio Bs超楽しいアルペジオで発音します。
040026RND Bassランダムに発音します。音が妖しい。
040028Bubble Bassこれまた妖しげなベース。
054008Voice Dahsダーダー言ってます。
061024F.Horn Rip音の出だしが駆け上がっていきます。
062016Brass Fall音が勝手に下がっていきます。88MAPにもある音色です。Bank17のTrumpet Fallも同様です。
064010Reso Brass装飾音がイケてます。でも、このくらいは序の口。
072016Multi WindG4までは、ごく普通の音なのに、いきなりA4からFlute 2:のような音になります。というか、同じ?
073009Nay TremoloBank8のNayにトレモロをかけた音色。トレモロ具合が激烈。
076017Zampona Atkすごい音。Bank16のZamponaのアタックに使えということなんでしょうか。
082044Cheese Saw 2これまた強烈な音。Cheese Saw 1を激しく震わせた感じです。
085009Acid Guitar1こんなのばっかり。変すぎ。
092010AuhAuhイイ。ワウワウ〜と聞こえます。
097002African wood左右から交互に音が出て、ノートオフ時には妙な高さでまた音が出ます。
102009Falling Down言葉で表現するなら、水中お化け屋敷。ここのバンクには変なのがいっぱいあるので、要チェックです。Bank16のSweep FXがイチ押し。
104016New Centuryまさしく新世紀。その後ろの7th Atmos.やGalaxy Wayもおすすめ。
110008Didgeridoo謎な音色。やけに音が低く、一定間隔でポクポクと鳴る音が怖すぎます。
116016Angklungカタカタいってます。次のバンクのAngkl Rhythmはもっと妖しい。
121008Gt. FX Menuギターの特殊な奏法が、ノート別に入っています。
121011Chord Strokeこの音を聞くと、必ずあのフレーズを弾きたくなります。
121013Biwa Tremolo琵琶のトレモロ。
123016Pink Noiseザーッというピンクノイズです。Bank17にはホワイトノイズもあります。EFXでも出せる音です。
125008ScratchKey激しいスクラッチが最高。
125009TapeRewindテープを巻き戻した音らしいです。人の声が、何と言っているのか気になります。
125010Phono Noiseレコードをかけたときに出るノイズです。この音はEFXでも出せます。

ドラムセットは、SC-88が24種類だったのに対して、42種類になっています。ドラムセットも、マップによって音が違うものがあります。たとえば同じSTANDARD Set1でも、88MAPと88ProMAPではスネアドラムの音に違いがあったりするわけです。SC-88用データであれば、88MAPで聴けば作成者の意図した演奏になるので、互換性に問題はありません。

私はSC-55と同じ性能のCM-300をずっと使っていたのですが、SC-88の音を知らないままSC-88Proを購入しました。SC-88Proのドラムセットは、非常に魅力的なものに感じましたが、88MAPだけでもかなりよいと思いました。とにかくSC-55系の音とは段違いです。特に、各ドラムセットによって、さまざまなスネアドラムの音が入っているのが大きな違いです。88MAPでは、STANDARD 1、STANDARD 2、ROOM、POWER、JAZZなど、普段よく使うドラムセットが、どれも「使える」音になっています(ちなみにDANCEのスネアもカッコいい)。SC-88Proでは、55MAPの音と88MAPの音と88ProMAPの音が入っていて、さらに88ProMAPには新しいドラムセットが追加されているのですから、非常に充実しているといえます。

ただ、ドラム音色に対するエディットは、XG音源に比べて貧弱です。音色を変化させるには、ピッチ(音の高さ)を上げ下げする程度の操作しかできません。音はすばらしいけれどエディットがあまりできないSC-88Pro、音色自体に不満があるもののエディット機能が充実したMU90。両方の良いところをくっつけられないものでしょうか。


【エフェクト】

・システムエフェクト
リバーブ、コーラスは、SC-55のころからずっと同じです。SC-88から加わったディレイも、SC-88Proで同様に扱えます。これらの種類が増えていないことについては、私は特に不満はありません。

・インサーションエフェクト
SC-88Proでは、インサーションエフェクト(EFX)が64種類入っています。かなりの数があるように感じますが、リバーブやコーラス、ディレイ系のエフェクトがやたら多いです。また、Distortion→Chorus、Guitar Multi1(Cmp-OD-CF-Dly)などの直列接続のエフェクト21種類、Chorus/Delayなどの並列接続のエフェクト9種類も、64の中に含まれています。こういう数え方をするのなら、MU90のエフェクトは、バリエーション62+インサーション43×2なので、これを直列にしただけでも相当な数になりますが :-)

やはり歪み系のエフェクトは重宝します。今までXG音源の独擅場でしたが、これで太刀打ちできるようになりました。個人的には、歪み系のエフェクトをかけた音は、SC-88Proのほうが好きです。ただし、異なるエフェクトで同時に使えるのは2つまでで、並列接続のOD1/OD2を使います。ちなみにMU90では3つ使えますが、基本的に、複数パートには使用できません。3つの異なる設定で同時に使いたい場合にはMU90でないと無理ですが、同じ設定でもいいから多くのパートにEFXを使いたいときにはSC-88Proが有利です。

ほかには、人間の声のように母音が付くHumanizer、ラジオやレコードノイズ、ハムノイズまでも入れられるLo-Fi2、定位を回転させる3D Autoと3D Manualなど、特殊なものもあります。

それぞれのEFXに対して、最大で20種類のパラメータが用意されています。直列や並列のEFXがあるので、これくらいはあって当然かもしれませんが、思ったより多くて意外でした。エフェクタとしての機能は十分にあります。

SC-88Proのインサーションエフェクトは、複数パートにかけられます。対象となったパートの音はミックスされ、リバーブ、コーラス、ディレイ、EQの値が共通になります。また、モノラルのエフェクトを使用すると、そのパートのパンポットが無効になり、エフェクトのパラメータにあるパンポットの設定が使われます。よって、モノラルエフェクトを複数パートに使用すると、それらのパートのパンポットは同じになります。

【EQ】

SC-88から、2バンドのEQが使用できるようになっています。ただ、MU80などの5バンドEQに比べたら、非常に貧弱なものです。周波数が200Hz/400Hzのどちらかと、3KHz/6KHzのどちらかからしか選べません。その中間あたりのゲインが上げ下げできないのが難点です。これでは、MU90に搭載されたパート別に設定する2バンドEQにも劣ります。よい点は、パートごとに、EQをオンにするかオフにするか決められることくらいです。

SC-88Proには、EFXの中に4バンドEQがあり、こちらのほうが細かい設定が行えます。ただし、それ以外の用途にEFXを使えなくなってしまうため、わざわざEFXでEQを使うという気にはなれません。


【エクスクルーシブ送信】

SC-88Proには、データ送信機能があります。パートパラメータや、EFXのパラメータをボタン操作で送信でき、シーケンスソフトで取り込めます。XG音源に備わっているショーエクスクルーシブ機能はないものの、この送信機能によってSC-88Proの設定を簡単に行うことができます。

また、ボタン操作で、ドットを使った絵を描くことができます。さらにそれを送信することもできます。

SC-88ST Proでは、マップ選択のボタンが1つあるだけで、他のボタンや液晶ディスプレイがないので、何もできません。打ち込みをするのであれば、完全に音源を操作できるソフトがない限り、このモデルは不適でしょう。たとえそのようなソフトがあっても、音源の設定が正しく行われているのかを知るのが難しいので、あまりおすすめできません。


【ボタン操作】


SC-88Proにはボタンがたくさん付いています。XG音源と比べると、操作性にかなりの違いが見られます。

XG音源は、PLAY、EDIT、UTIL、EFFECTなどのボタンで機能を選んで、PARTで対象となるパート、SELECTで項目を選び、VALUEで値を上げ下げするという操作が基本です。ENTER、EXITというボタンもあります。メニューは整然とした階層構造になっていて、多少ボタンを押す回数が多くなるものの、操作が統一されています。これから機能が追加されても、ボタンの数を増やす必要性はあまりないでしょう。

一方、SC-88Proでは、LEVEL、REVERB、CHORUSなどのボタンがあり、パートを選んだらダイレクトで値を上げ下げできるようになっています。これは確かに便利ですが、たとえばディレイのボタンがKEY SHIFTのボタンと共通になっているなど、無理のある操作が多々見られます。具体的には、88MAPボタンを押しながらKEY SHIFTを押す、あるいはEFX TYPEのボタンで操作します。液晶ディスプレイの表示にも無理があります。これは、SC-55と同じ配置のボタンとディスプレイを使っているため、機能が増えれば増えるほど、割り当てが強引になっているのです。

MU90のディスプレイは、すべてのドットが細かく、広い表示領域で文字が表示できるのに対し、SC-88Proのディスプレイは、文字が表示できるのは最上行のみです。これが原因で、どうしても少ない情報しか出力できません。しかも、パネルが少し奥になっているので、音源が低い位置にあると、文字が読みにくくなります。

下のほうにもボタンがいくつかあります。これはSC-88にもあったもので、音色のエディットやユーザー音色の設定をするために設けられていたボタンです。SC-88Proでは、ここでEFXの設定も行います。やはりこれも、強引に割り当てたという印象を受けます。このボタンで、バリエーション音色をワンタッチで選ぶことができたり、アタックなどのパラメータの値を増減させることもできるなど、慣れればそれなりに楽ではありますが。

本体のシステムに関する機能を使う場合などはかなりひどく、全く関連性のないボタンの同時押し操作がいくつもあります。一覧が書かれた下敷きがほしいくらいです。

ボリュームつまみはボタンにもなっていて、押すと発音します。プレビュー機能といい、好きな高さの音を、本体の操作だけで鳴らすことができるので、非常に便利です。

SC-88Proの操作性には不満が残りますが、SC-8850で一新されました。XG音源に似たインターフェイスに変更されています。


【互換性】

XG音源では、適応性というキーワードから、音源の性能によって音色自体も積極的に差し替えられていくものになっていますが、今のところGS音源は、マップという概念を用いて、下位音源の音をすべて残しつつ音色数を増やしています。

昔の話になりますが、SC-55と、SC-55mkII以降の音源では、フィルタの効果が違う、代理発音しなくなった、などの互換性が問題になりました。そこから、旧GSと新GSという分け方がされることがあります。しかし、凝ったデータほど再現性が低くなるのは、XG音源も同じですし、今となっては新GSが事実上の標準なので、以前ほど問題にはならなくなりました。

旧GS音源のCM-300と、SC-88Proの55MAPとを比べて、初期状態の音が明らかに異なるのはクラッシュシンバルくらいです。もちろん、細かいことを気にしたらキリがありませんが。パラメータをいじれば、ほかの音色でも違いが生じる可能性が高いですが、いちいち調べていられないですし、もうCM-300は手元にないので調べられません。SC-55mkIIとの互換性は、かなり高いのではないかと思われます。これも私は調べることができません。

SC-88との互換性も非常に高いです。マニュアルに、「55MAPはSC-55/55mkIIとほぼ同じ音色」あるいは「同じような音色」と書かれているのに対し「88MAPはSC-88と同じ音色」と言い切っているので、特に問題はないといえそうです。

そうなると、さまざまな音源間の互換性は、GS規格よりも、SC-88レベルのほうが高いといえます。SC-88、SC-88VL、SC-88Proの88MAPで、音の差がほとんどないとすると、SC-88用として作ったデータが最も再現性が高くなります。

気になるのが、半端な音色数のVSC-88ですが、ソフトウェア音源まで考慮するようなデータを作ろうとすると、さすがに大変というか面倒です。データ作成者が嫌がるのは、ハードウェア音源で作ったデータを、ソフトウェア音源で聴いて評価されることです。以前、VSC-55にGSマークがついているのを見ていやんなった私ですが、VSC-88も同じように、ちょっとうっとうしい存在です。もちろん、こういう技術を否定するわけではありませんが、今まで「これがSC-88というものです」というスペックが確立されていたものに、ちょっと違うくせに「これもSC-88です」なんて言われた日には、どうしたものかと思うわけです。

話題を戻します。SC-88Proの、それぞれのマップでの互換性が高いものと考えると、聴く際の問題は、どのマップが選択されているかという点に絞られます。どのマップで聴いたらよいのかはデータによってさまざまですので、ここで適切なマップ選択のしかたについて考えてみます。

本体のALLランプが消灯している状態にして、マップのボタンも全パート消灯させ、まずはすべてのパートが88ProMAPになっている状態にしてください。それでデータを演奏させたときのランプの点灯状態によって、どのようにして聴くのが最適か、だいたい判断できます。

・どのパートを見てもマップのランプが点灯していない
SC-88Pro用データなら、そのまま聴きましょう。全パートを88ProMAPに設定してあるデータか、全然マップの指定をしていないデータか、あるいは一部のみ88ProMAPを指定しているデータのどれかですが、最初にすべて88ProMAPにしてあれば、どれであっても演奏は同じです。

SC-88用データなら、ALLランプを点灯させ、88MAPランプを点灯させてから聴きましょう。88ProMAPで聴いたほうが気に入れば、別にいじる必要はありませんが、データ作成者の意図した演奏ではないものとなります。

GS汎用データだと、少し判断が難しいです。SC-55などで作られたデータであれば、ALLランプを点灯させ、55MAPランプを点灯させてから演奏させます。SC-88以上の音源で作られたデータであれば、あえて作成者がマップを指定しなかった可能性が高いです。たいていは、どのマップで聴くのが最適なのか書いてあると思います。

GM用データであれば、演奏前に好きなマップにしておけばOKです。演奏の違いを楽しみましょう。この場合も、どのマップが最適か書かれているかもしれません。

・演奏しているパートがすべて88MAPになっている
マップが指定してあるSC-88用データです。そのまま聴けます。ほとんどの場合が、88MAPで最適なバランスで調整してあるはずなので、あえて88ProMAPで聴く必要性はないでしょう。

・演奏しているパートがすべて55MAPになっている
これはSC-55(GS)用データです。SC-88以上の音源を持っているデータ作成者が、SC-55系の音源を対象として作ったデータです。多くの人に聴いてもらうために、やや音楽のクオリティを犠牲にして作った可能性がありますが、バランスは整っているはずなので、そのまま聴くのが無難です。

・88MAPになっていたり55MAPになっていたりする
マップが指定してあるSC-88用データです。55MAPも使っているのは、88MAPの音が気に入らないからでしょう。そのまま聴くべきデータです。演奏前であれば、オール88MAPにしてあっても、該当するパートのみ55MAPになるので、正常に演奏できます。演奏中にALLランプを点灯させて88MAPを点灯させると、全部88MAPになってしまいます。

・88MAP、55MAPになっていたり、消灯していたりする
SC-88Pro用データであれば、気に入らない88ProMAPの音があって一部88MAPや55MAPを使っている、マップ指定がしてあるデータでしょう。くどい説明ですね。ここまで読んだらわかると思いますが、何も触る必要はありません。

SC-88用データなら、たまにマップ指定を忘れているデータかもしれません。あるいは、作成者がSC-88Proを持っていて、SC-88用データでありながら、SC-88Proで聴くとさらによい演奏になるデータかもしれません。または、マップ指定は基本的にしていないけれど、特定の音色だけ55MAPのほうが好きなので、そこだけ指定したデータかもしれません。これは判断の難しいデータですが、オール88MAPにしてから聴けば、とりあえず問題ないでしょう。

GS用データなら、88MAPが点灯することはないでしょうが、あるパートだけ55MAPを指定してあるデータなら、上記のように特定の音色だけは必ず55MAPで聴いてほしいという希望が込められているのでしょうか。作成者の音源がSC-88であれば、演奏前にオール88MAPにするのが無難でしょう。SC-88Proで作られたデータあれば、最適な演奏方法が書かれているのではないでしょうか。

・いきなりALLランプが点灯する
XG用データである可能性が高いです。XG互換モードの項目を参照してください。

マップ選択ボタンによる動作は、なかなかややこしいので、ここでもう一度説明したいと思います。

ALLボタンが消灯しているときは、各パート個別にマップの指定が行えます。SC-88Proの場合は、ランプが消えている状態が88ProMAPですが、例外もあります。ALLランプを点灯させてから88MAPか55MAPランプを点灯させ、ALLランプを消灯させると、マップ指定のランプは消えた状態になります。ただし、88ProMAPになっているわけではありません。この状態では、たとえば先ほどの操作で88MAPにしていたとすると、SC-88にある音色しか選べなくなります。つまり、88MAPと55MAPの音色は使えますが、88ProMAPの音色は使えなくなります。55MAPにしていたのなら、55MAPの音色しか使えなくなります。

マップ指定のしてあるSC-88用データでは、演奏前ならオール88MAPにしてあっても、55MAPの音も使われて正常に演奏できると書きました。このとき、ALLランプを消灯させたり点灯させたりするのはかまいません。ですが、ALLランプ点灯時に88MAPランプを消してはいけません。ノーマル音色に変化はないようですが、ドラムパートの各楽器の設定が初期値に戻ってしまいます。さらに、88MAPランプを消してしまったあと、再度点灯させると、今度は全パート88MAPになってしまいます。気をつけましょう。

何だか非常に複雑に感じるかもしれませんが、すべてマップ指定がしてあるデータであれば、特にボタンを操作する必要はありません。もし楽をしたいのなら、TMIDIのような、マップを制御するソフトを使用するのも手です。こういったソフトで最適なマップが判別できるよう、データのタイトル部分には、どの音源用のデータかを明記するのが望ましいです。MIDIデータを作るかたは、頭に入れておいていただきたいと思います。


【XG互換モード】

SC-88Proには、マニュアルには何も書かれていませんが、こっそりXG互換モードが用意されています。XGシステムオンのエクスクルーシブを送ることによって、SC-88ProはXG互換モードになります。一瞬だけEFXランプが緑色に光り、ALLランプが点灯した状態になりますので、なんとなく怪しげな動作をしていることがわかります。

いったん、このモードになったら、何もボタンを触れません。何かボタンを押すと、もとに戻ってしまうのです。どうやらパラメータの値を見せたくないようです :-)

気になる再現性について、いくつか報告します。

・音色
88ProMAPの音色が使われているようです。パラメータをいじっているのかどうかまではわかりません。SC-88Proには、XG音源と全く雰囲気の異なる音色も多数ありますので、再現性はいまいちです。また、代理発音が行われないため、無効なバンクの音は、前に使われていた音色がそのまま使われます。

ドラムに関しては、まず音が違うと言っていいでしょう。変になるというよりは、むしろよくなると感じるものもあります。XG音源には、NOTE#34にOpen Rim Shotというスネア系の音があるのですが、SC-88Proでも、それに近い音が鳴ります。ただし、やや音が小さいです。

最も気になるのは、ギターハーモニクスの音の高さが1オクターブ高くなることです。XG音源用データにはギターを使ったデータが多いので、これによって、かなり違和感を覚えます。

・エフェクト
リバーブやコーラスは、どういう設定がされているのかわかりません。

バリエーションエフェクトは反応するようです。どの種類のEFXになるのかは謎ですが、とりあえず歪み系は、同じく歪み系のEFXになりますし、AUTO PAN、PHASERなどのエフェクトでも変化が見られます。そこそこの演奏にはなりますので、とりあえず喜びましょう。

XGのバリエーションエフェクトは、音色のようなバンクによる配列になっています。似ているエフェクトは、MSBが同じでLSBのみ異なります。SC-88ProのXG互換モードは、LSBは見ずに、MSBのみで判断しているのではないかと思われます。これによって、たとえばMU90で追加されたXG必須ではないCOMP+DISTORTIONでも認識して、とりあえず音が歪むのです。

MU80以上にあるインサーションエフェクトは無視します。XG規格でもインサーション専用エフェクトは定義されていないはずなので、これはしかたないでしょう。

・その他のエクスクルーシブ
マスターボリューム、ランダムパンを認識するのは確認しています。

【謎】

・音が小さくなることがある
特定の音色で、アタックをプラスにして演奏させると、たまに音が小さくなってしまう現象が起こります。CM-300では起こりませんでした。音色は、Saw Waveなどで確認しました。

・ピッチベンドの変化が半端
急激にピッチベンドの値を大きくしたゲートタイムの短いデータを演奏させると、上がりきらないことがあります。これもCM-300やMU90では正常に演奏できます。ただ、シーケンスソフトで、そのパートのみ演奏させると正常でした。音色は、Pan Fluteで確認しました。

・やりすぎの音色
たとえばSC-88用でデータを作るなら、全部を88MAPで作りたいところなのですが、どうしても気に入らない音色があって、55MAPにせざるを得ないときがあります。その典型が、音色の所で挙げたSlap Bass 2やTrumpetなどです。せっかく上位の音源を持っていても、クセのありすぎる音色を入れてもらっては、55MAPを使うしかなくて悲しいものがあります。こういう音はキャピタルではなく、バリエーションに入れればいいのに、と思います。

マップを指定していないデータでは、いろいろなマップで演奏を楽しみたいときもあります。しかし、このせいで特定の音色だけが妙な音になるので、オール88ProMAPやオール88MAPにして手軽に聴けないというのが残念です。

・GS音源のこれから
とりあえず、SC-88ProもGS音源なのですが、SC-88が出たらSC-88用データ、SC-88Proが出たらSC-88Pro用データと、これからも音源が発売されるたびに、専用データが作られることになるのでしょう。そうすると、GS規格の存在価値って何なのでしょうね。

せっかく下位音源の音も入っているわけですから、どのようにしたら下位音源でも聴けるデータになるのかという情報が、もっとあってもいいのではないかと思います。


[トップページ] / [MIDIとDTMの広場]