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__俺はお前を深く愛していた。この世でただ一人、お前だけを愛していた。俺のお前への思いがどれほど
激しく強いものか、お前には死んでも分かるまい。この情愛がもし形に出来たなら、それは燃えさかる炎とな
って俺とお前の身体を焼き尽くしただろう。だがそれでも構わない。俺はお前と出会ってから今まで、ただお
前の為だけに生きてきた。お前と生きる為にだけ、この辛い現実を耐えてきた。俺は幸福だった。それは俺に
対するお前の情愛が本物だと、知っていたからだ。しかしそれも、今日で終わった。お前は自ら進んで、あの
男と交わった。舌を噛む事も出来た。毒を呷ることも出来た。なのにお前はそれもせず、あの男に足を開いて
見せた。お前はお前自身を殺した。俺が愛したお前を、自分の手で殺して見せた。俺はお前が憎い。心底憎
い。いっそこの手で縊り殺してやれたなら、どんなにか楽だろう。しかしそうするには俺はお前を愛しすぎた。
情けない話だが、お前を手に掛けてやることも出来ぬ。だがこれからお前がその姿のまま、世間を闊歩する
のも許せぬ。だから俺はお前を抹殺する。お前の命を取らぬまま、お前をこの世から抹殺する。覚えておけ、
これが愚かなお前に対する、俺の最後の情愛だ。感謝されこそすれ、憎まれる筋合いは無い。
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