官僚(国民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。



[税のずさん管理露呈−国税職員が納税記録改ざん]
(出典:2003年5月8日日本経済新聞朝刊)

 東京国税局の職員が会社役員らからわいろを受け取り、税金を納めたように税務署のコンピュータを不正操作していた事件は、納税額にミスがあった場合に修正する「振り替え」を悪用していた。不正は見抜かれることなく2年9ヶ月もの間繰り返されており、"血税"の管理のずさんさが浮き彫りに。事態を重く見た国税庁は全国の税務署で事務手続きの見直しに乗り出した。
 東京地検特捜部の調べによると、元芝税務署国税調査官、上田和史被告(36)=加重収賄、詐欺罪などで起訴=は今年5月まで計52回、三法人が源泉所得税計約18百万円を納めたように「国税総合管理(KSK)システム」の記録を改ざんし、約690万円の謝礼を受け取っていた。
 不正操作が発覚したのは偶然だった。「(上田被告が)今月の徴収に来ない」という電話を別の職員が受けたことから、同被告が担当の職務ではない税金の徴収を勝手に行っていたことが発覚。調べたところ、記録の改ざんも見つかったという。
 改ざんが発覚しなかったのは、上田被告が税務署全体の税収が変わらないよう、つじつま合わせの偽装をしていたためだ。手続きミスで納税額に変更があった時などにデータを入力し直す「振り替え」を悪用し、正しく収めた会社の納税額をシステム上で減額していた。
 本来、振り替えを行うには上司の決済が必要だが、上田被告は全く決済を受けず、周囲に気付ることはなかった。上司も決済書類と実際の操作履歴の照合を怠っていたため、不正を発見できなかった。
 その間、上田被告は芝税務署の管轄外である神奈川県の会社の納税記録を改ざんするために、管内に会社の支店があるという虚偽の情報を入力することまでしていた。
 源泉所得税データの操作は、税務署にいる十数人の担当職員全員が自由に行えるが、「こんな不正は初めて」(国税幹部)。職員が長期にわたり納税記録を簡単に改ざんしていた事実に、国税庁は衝撃を受けている。
 同庁は今後、全国の税務署で報告書類と実際の「振り替え」データを比較し不正がないかチェックすると同時に、振り替えに複数の職員が関与するように手続きを見直す方針だ。
 ただ、全国のKSK端末へのデータ入力数は膨大で、意図的な不正をすべて未然防止するのは困難。ある幹部は「二重三重の事後チェックを徹底するしかない」と話している。

 ▼芝税務署の納税偽装事件 東京地検特捜部の調べによると、東京国税局芝税務署の元国税調査官、上田和史被告(36)は2000年8月から今年5月にかけて、会社役員、長谷川昭雄被告(52)=贈賄罪などで起訴=らから依頼され、同被告らが関係する二社と一医療法人が源泉所得税計約1830万円を納めたように「国税総合管理(KSK)システム」の記録を改ざんし、謝礼としてわいろを受け取った。
 贈賄側でほかに起訴されたのは、歯科医師、阿比留隆仁(46)、行政書士、生田目洋文(54)、建築業杉崎和彦(37)の三被告。
 上田被告は今年1月から4月にかけて、権限がないのに税金の徴収を行うと偽って、東京都港区の会社役員から現金約385万円をだまし取っており、詐欺罪でも起訴された。

(ここでも、内部統制組織の整備がなっていない。このような犯罪を2年9ヶ月も発見できずにいたとは、国税庁長官の責任は極めて重い。税務調査をする側として、天下の国税庁の恥でもある。)


Initially posted August 16, 2003.Updated October 20, 2004