和歌山県官僚(和歌山県民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

 知事選で自民党の推薦を得られるよう国会議員や県議らに働きかけてくれたり、木村知事の再選阻止を目指すグループの中心人物に運動をやめるよう要請するなどしてくれた丸山組など特定業者には工事受注の便宜によって見返りを与え、他方、選挙での対立候補を支持した業者には受注妨害をして、仕返しを徹底する。収賄した金を出納長に管理させ、しかも私的に使う。これが、いわゆる「改革派知事」前木村知事の人に知られたくなかった部分である。県知事が与えられた権力を利用して、就任直後から県民、国民の税金を自分と自分の味方を利するための道具として使ったそのやり方は県民、国民に長く記憶されるに違いない。この私物化のパターンは他の汚職事件と酷似しており、和歌山県や木村前知事だけに特有のものでないことは、他の自治体での恥ずべき事例と読み較べる事により、よく理解できるものと思う。木村前知事は2007年4月10日大阪地裁での初公判で、検察側起訴事実を全面的に認めたという。

 なお、文中の茶色文字があれば、それはは筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。



和歌山県編目次

  1. 和歌山前知事44日ぶり保釈
    (出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)
  2. 和歌山前知事を再逮捕 談合事件1000万円収賄の疑い
    (出典:2006年12月07日朝日新聞朝刊)
  3. 和歌山前知事100万円受領 収賄容疑、近く再逮捕
    (出典:2006年12月05日朝日新聞朝刊)
  4. 和歌山前知事 収賄容疑再逮捕へ
    (出典:2006年12月03日朝日新聞朝刊)
  5. 和歌山知事 「対立業者受注外せ」 就任直後、前出納長に指示
    (出典:2006年11月21日朝日新聞朝刊)
  6. 和歌山知事 裏金、大半を私的使用 飲食費やゴルフ代に
    (出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)
  7. 和歌山知事へ談合仲介役から時計3個、270万円 他に22個押収
    (出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)
  8. 「改革知事」腐敗の沼 ワンマン6年、自負強烈 談合捜査…一転弱気
    (出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)
  9. 和歌山県知事を逮捕 県工事談合の疑い 収賄も調査
    (出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)
  10. 和歌山知事 就任直後から談合主導 大阪地検立件へ最終調整
    (出典:2006年11月15日朝日新聞朝刊)
  11. 秘書室から知事の裏金 和歌山談合 数百万円を発見
    (出典:2006年11月12日朝日新聞朝刊)
  12. 大阪地検談合共犯容疑で和歌山県知事近く聴取
    (出典:2006年11月09日朝日新聞朝刊)
  13. 和歌山談合 指名「知事の意向」 前出納長供述 選挙支援見返り
    (出典:2006年11月05日朝日新聞朝刊)
  14. 和歌山知事が辞任否定 談合事件、出納長ら起訴
    (出典:2006年11月02日朝日新聞朝刊)
  15. 業者選定「知事が指示」 和歌山談合出納長が供述
    (出典:2006年11月01日朝日新聞朝刊)
  16. 和歌山知事 談合容疑者から車 選挙で借用 会社に助言も
    (出典:2006年10月14日朝日新聞朝刊)
  17. 和歌山談合容疑 「地元業者入れよ」県出納長ら逮捕
    (出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)
  18. 進む「談合決別」摘発も急 和歌山出納長ら逮捕 業界混乱、密告の渦
    (出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)
  19. 和歌山談合 県出納長に逮捕状 競売入札妨害容疑 受注業者を了承
    (出典:2006年10月12日朝日新聞朝刊)
  20. 大阪地検 県幹部ら近く捜査 和歌山のトンネル談合
    (出典:2006年10月11日朝日新聞朝刊)

[和歌山前知事44日ぶり保釈]
(出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合・汚職事件で、収賄と競売入札妨害(談合)の罪で起訴された同県前知事の木村良樹被告(54)に対し、大阪地裁は28日、保釈を許可する決定を出した。保釈保証金1500万円を納付し、同日保釈された。11月15日に談合容疑で逮捕されて以来、大阪拘置所での勾留生活は44日に及んだ。

[和歌山前知事を再逮捕 談合事件1000万円収賄の疑い]
(出典:2006年12月07日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は6日、受注業者選定に介入するのを認める見返りとして現金1千万円を授受したとして、同県前知事の木村良樹容疑者(54)=競売入札妨害(談合)容疑で逮捕=を収賄容疑で、大阪府河内長野市のゴルフ場経曜営会社元代表井山義一容疑者(56)=同=を贈賄容疑でそれぞれ再逮捕した。木村前知事は容疑を認め、「00年の初当選後から井山元代表に年数百万円もらっていた」と供述しているという。

 特捜部は同日、下水道工事をめぐる談合に関与したとして、木村前知事を競売入札妨害(談合)罪で起訴した。井山元代表の処分は今後決める。

 調べでは、木村前知事は、井山元代表が県発注工事の受注業者選定に介入し、特定業者に工事を受注させることを承諾。2期目を目指した知事選直前の04年6月ごろ、その見返りとして1千万円を受け取った疑い。

井山元代表は県庁内で前出納長の水谷聡明被告(60)=談合罪で起訴=と会い、「選挙などで金がいるだろうから、知事のために使ってください」と言って現金を提供。前出納長は受領を前知事に報告し、前知事は元代表に直接電話して「ありがとう」と礼を述べたという。

 前知事は前出納長に「管理しておいて」と指示し、うち約500万円を前知事に批判的な複数の業界紙を抑え込むための「選挙工作資金」などに充てさせたほか、残りを秘書課で管理していた裏金に組み込ませたとされる。

 木村前知事は、11月2日に辞職を表明、同15日に下水道工事に絡む談合容疑で逮捕され、12月2日付で辞職した。

[和歌山前知事100万円受領 収賄容疑、近く再逮捕]
(出典:2006年12月05日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、同県前知事の木村良樹容疑者(54)=競売入札妨害(談合)容疑で逮捕=が、県側とゼネコンを仲介したゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)=同容疑で逮捕=から受け取ったとされる現金の総額が約1千万円に上ることが4日、分かった。大阪地検特捜部は一両日中にも、木村前知事を収賄容疑で、井山元代表を贈賄容疑で再逮捕する。調べに対し、井山元代表は前知事に約1千万円を渡したことを認めており、前知事も現金の受領を認めているという。

 調べによると、井山元代表は、04年11月10日に入札があった「国道371号(仮称・平瀬トンネル)特殊改良一種工事」と「国道168号(仮称・切畑トンネル)道路改築工事」、「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド工事」の3工事でそれぞれバザマ、東急建設、熊谷組を中核とした共同企業体(JV)が受注できるよう談合したとして逮捕されている。

 井山元代表は入札前の同年夏ごろ、特定の受注企業を指名する「天の声」を出したり、元代表の談合への介入を認めたりしてもらう見返りに、現金約1千万円を木村前知事に渡した疑いが持たれている。元代表は入札直後にハザマと東急建設、熊谷組の3社から受注謝礼として計約1億7千万円を受け取ったことが判明している。

[和歌山前知事 収賄容疑再逮捕へ]
(出典:2006年12月03日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、県側とゼネコンとの仲介役だったゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)=競売入札妨害(談合)容疑で逮捕=が大阪地検特捜部の調べに対し、同県前知事の木村良樹容疑者(54)=同容疑で逮捕、2日付で退職=側に現金数百万円を渡したことを認める供述を始めたことがわかった。現金は、元代表がゼネコンから受け取った受注謝礼金の一部とみられ、特捜部は、前知事が入札で便宜を図った見返りに現金を受け取ったと判断。前知事を収賄容疑で近く再逮捕する方針を固めた。

調べによると、井山元代表は、04年11月10日に入札があった「国道371号(仮称・平瀬トンネル)特殊改良一種工事」と「国道168号(仮称・切畑トンネル)道路改築工事」、「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド工事」の3工事でそれぞれ、ハザマ、東急建設、熊谷組を中核とした共同企業体(JV)が受注できるよう談合したとして逮捕されている。

 元代表は入札直後にハザマと東急建設、熊谷組の3社から受注謝礼として計約1億7千万円を受け取ったことが判明しており、このうちハザマと東急建設から受け取った約1億2千万円を隠していたとして、所得税法違反(脱税)容疑で再逮捕された。特捜部は同容疑での処分を保留、下水道工事での談合容疑で元代表を3度逮捕した。調べに対し、元代表は「04年末ごろ、木村前知事側に現金数百万円を渡した」との供述を始めたという。

[和歌山知事 「対立業者受注外せ」 就任直後、前出納長に指示]
(出典:2006年11月21日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注の下水道工事をめぐる談合事件で、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕された県知事の木村良樹容疑者(54)=辞職表明=が00年の県知事選で初当選した後、対立候補を応援した建設会社に県発注の工事を受注させないように、前出納長の水谷聡明容疑者(60)=同容疑で再逮捕=に指示していたことが、大阪地検特捜部の調べでわかった。特捜部が押収した木村知事の当時の執務ノートに、複数の対立侯補系の会社名が書かれており、「受注からはずす」と記されていたという。特捜部は、木村知事が就任当初から業者の選定に深くかかわっていたことを裏付ける証拠とみている。

 OO年9月の知事選は、木村知事が前県議の大江康弘氏(現民主党参院議員)らを破って初当選した。調べによると、木村知事は初当選直後の00年秋、水谷前出納長を知事室に呼び、知事選で大江氏を応援した建設会社のリストをつくらせた。そのうえで、「自分を応援しなかった会社には受注させるな。(受注高は)半分に減らしてもいい」などと指示したという。

 さらに、特捜部は今年9月に県庁知事室を捜索した際に、木村知事が就任したOO年9月から記していた執務ノートを押収。初当選直後に大江氏を応援したとされる複数の会社の名前が書いてあり、「入札審査会の前に受注リストからはずす」と記されていたとされる。

[和歌山知事 裏金、大半を私的使用 飲食費やゴルフ代に]
(出典:2006年11月19日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、県庁秘書課に保管されていたことが発覚した裏金の大半が、同県知事の木村良樹容疑者(54)=辞職表明=の個人的な飲食費や遊興費などに使われていたことが、大阪地検特捜部の調べでわかった。裏金を集めていた地元建設会社などの複数の担当者が任意の調べに対し、「県との取引や工事を請け負う上で、便宜を図ってもらおうと思った」と、趣旨について供述を始めていることも判明。特捜部は裏金のわいろ性が強まったと判断、贈収賄容疑での捜査を続けている。

 調べによると、裏金を集めていたのは、木村知事を支援する県内の建設会社など十数社からなる「翔樹会」と、地元の金融機関やメーカーなど十数社が加盟する「21会」の二つの親睦団体。翔樹会は和歌山市内の砂利販売会社の社長が幹事を務めており、会長らが談合容疑で逮捕された建設会社「丸山組」(同県海南市)も加わっていたという。

 各社は会費として毎月3万円を金融機関への振り込みで支払っており、現金は秘書課で管理していた。遅くとも木村知事が就任した00年から続いており、総額は03年からの3年間で約4千万円にのぼるとみられる。

 特捜部が裏金の使途について調べたところ、高級レストランなどでの飲食費、ゴルフのプレー代、自宅の光熱費など、大半が木村知事の個人的な活動費や生活費に使われていたことが分かった。県幹部も「知事が自由に使える『裏交際費』だった」と話しているという。

 特捜部は、裏金は木村知事の個人的な交際費に当たると判断。加盟社に対し、入札で便宜を図るなどの行為がなかったか木村知事を取り調べるとみられる。

 木村知事の弁護士は18日、朝日新聞などの取材に対し、「知事は『裏金ではなく親睦会費で、親睦会にしか使っていない。管理は秘書課に任せていた』と言っていた」と話した。

宮崎知事の辞職県議会が勧告へ

 宮崎県議会(坂元裕一議長、42人)は18日、県土木部長らによる官製談合事件を受けて、安藤忠恕知事に辞職勧告する方向でほぼまとまった。最大会派の自民にも「辞任やむなし」の声が強まっており、同会派の永友一美会長も「辞職勧告でまとまるのではないか」と言っている。週明けに改めて議会としての意思統一を図るが、安藤知事は同夜、報道陣に「なぜ辞職しなければいけないのか」などと語った。

[和歌山知事へ談合仲介役から時計3個、270万円 他に22個押収]
(出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめる談合事件で、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕された同県知事の木村良樹容疑者(54)=辞職表明=が、談合の仲介役とされるゴルフ場経営会社元代表の井山義一容疑者(56)=同罪で起訴、所得税法違反(脱税)容疑で再逮捕=から受け取った3個の高級ブランド腕時計は、総額270万円相当になることが大阪地検特捜部の調べでわかった。また、特捜部が知事公舎を捜索した際、この3個を含む計25個の高級腕時計を押収していたことも判明。総額は約2千万円に上るという。

 木村知事は、3個については元代表からもらったことを認めているが、ほかの22個については自分で買ったと説明しているという。しかし、特捜部は業者などから受け取った可能性もあるとみて、入手先の特定を急ぐとともに、入札に便宜を図った見返りだった可能性もあるとして、収賄容疑での捜査を続けている。

 特捜部は今月9日、和歌山市にある木村知事の公舎を捜索。25個の外国製高級腕時計と、保証書を発見し、押収した。鑑定した結果、価格が総額で2千万円相当に上ることがわかった。うち、元代表から受け取った3個のブランドは「フランク・ミュラー」「ショパール」「ブルガリ」で、総額は270万円相当だった。木村知事は調べに対し、3個の腕時計について「04年8月の再選直後に当選祝いとしてもらった」と供述。元代表は「海外旅行に行ったときの土産として渡した」と語しているという。

 木村知事については、建設会社などでつくる親睦団体が3年間で計約4千万円の裏金を集めていたことが判明している。

[「改革知事」腐敗の沼 ワンマン6年、自負強烈 談合捜査…一転弱気]
(出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)

 和歌山県を舞台にした談合事件は、県のナンバー3の出納長からトップの知事に関与が波及した。大阪地検特捜部は15日、知事の木村良樹容疑者(54)を競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕した。「改革派」を目指して全国発信に余念がなかった半面、足元では「脇が甘い」「ワンマン」との声があり、信頼できる側近を持てなかった。知事は、任意同行を求められ6年余りを過ごした公舎を後にした。

 「今までの知事が2期8年かかって出来なかったようなことを、この3年半でやってきた」  半年後に2期目の知事選を控えた04年2月ごろ。木村知事は記者たちに話し始めた。  「宮城の浅野知事はやり手だ。長野の田中君もセンスはいい。高知の橋本も、ばっさり切り捨てるところはすごい。島取の片山は時々よくわからないことをする」。浅野史郎、田中康夫、橋本大二郎、片山善博の各氏。全国の「改革派知事」たちの評価にも及んだ。  自民党県議団や一部首長による「木村降ろし」が公然化していた時期。「今辞めてしまうと、和歌山は確実に後退する」。「改革派」の強烈な自負を見せていた。

  ■  大阪府池田市の出身。幼いころ父を亡くした。府立北野高から京大法学部へ。「学生時代はマスコミ志望だった」というが、先輩たちが官僚になるのを見て74年、自治省(現総務省)に入る。 OO年9月の就任直後から、強烈な個性で県庁を引っ張った。しかし、和歌山県とのつながりは、県総務部長を務めた93年からの3年間のみ。「大阪から来た知事」への風当たりは強かった。 「木村知事は和歌山のことを『近畿のおまけ』と言った」。地元紙のインタビューを受けた木村知事の言葉が独り歩きした。実際は、和歌山をパロディーにした「キンキのおまけ」という歌のタイトルに触れただけだった。だが、地元政財界には『おまけ』は本音でないか」という反発が広がった。 ワンマン、独断専行とも評される。ある県関係者は「自分が一番、頭がいいと思っている」。

   ■  「何でも持って行ってくれ」。9月20日、大阪地検特捜部が県庁知事室を家宅捜索した際、木村知事は係官に向けて語気を強めた。 10月4日夜、知事公舎前。記者を前に特捜部の知事室捜索を批判した。「地検が本気でうれしそうにやってるんだったら、もう少し勉強してからやれという感じ。何のつもりか知らんけど、荒っぽいというか、頭が悪い」と言い放った。 特捜部の捜査は、確実に知事周辺に迫った。一転、弱気になり、「逮捕されるぐらいなら死んだ方がまし」と知人に電話をしたこともあった。 前出納長が起訴された11月1日。木村知事は「退職金返上、給与半額カット」を発表して続投を宣言。翌2日午前の定例部長会議で、20人近い幹部に「新聞に出ている『知事は死に体』と言ったのは誰ですか」と切り出した。出席者はみな言葉を失った。 それから約6時間後。木村知事は辞職表明会見の席上にいた。「ものすごく、和歌山県絡みでいろんな、僕はいいことをしてきた」。最後まで改革派のつもりだった。 任意同行の直前、木村知事は知人に電話で心境を伝えた。「無罪がとれると信じている。むしろ(地検が来てくれてほっとしている。針のむしろだった」

[和歌山県知事を逮捕 県工事談合の疑い 収賄も調査]
(出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は15日、同県が04年に入札を実施した下水道工事を受注した共同企業体(JV)に知事選で支援を受けた地元企業を参入させたとして、同県知事の木村良樹容疑者(54)=辞職表明=を競売入札妨害(談合)の共犯容疑で逮捕した。知事が談合容疑で逮捕されたのは初めて。同県首脳の逮捕は前出納長水谷聡明容疑者(60)に続き2人目になる。

 調べに対し、木村知事は「和歌山では以前から談合があると知っていたが容疑についてはよく思い出してから話したい」と供述しているという。

 木村知事をめぐっては、ゼネコン側から多額の「受注謝礼金」を受領したとされる大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)=所得税法違反容疑で再逮捕=から高級ブランド腕時計を贈られたり、地元業者でつくる親睦団体から過去3年間で計4千万円を超える裏金を集めたりしていたことが判明。特捜部は今後、木村知事が受注業者選定で便宣を図る見返りに、関係者から利益提供を受けていた可能性もあるとみて収賄容疑でも調べる。

 調べでは、木村知事は水谷容疑者や業界内の土木工事の談合を仕切っていた大手ゼネコン「大林組」の元顧問日沖九功被告(64)=競売入札妨害罪で起訴=らと共謀。04年11月に入札が実施された同県岩出市の「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド工事」(予定価格約11億5千万円)を準大手ゼネコン「熊谷組」のJVが受注するよう談合し、公正な入札を妨害した疑い。熊谷組のJVは約11億1800万円で落札、予定価格に占める落札額の割合は96.8%と高率だった。

 木村知事は入札前、当時、知事公室の審議監として入札を取り仕切っていた水谷容疑者に対し、同県海南市の建設会社「丸山組」を受注JVに組み込むよう指示。これを受け、水谷容疑者は日沖被告に丸山組の社名を示したうえで「入れてほしい」と要請したとされる。

 関係者によると、丸山組会長の田渕利都容疑者(80)=競売入札妨害容疑で逮捕=は同年8月にあった知事選で、木村知事の再選阻止を目指すグループの中心人物に運動をやめるよう要請。00〜05年には、同容疑者らが木村知事側の2政治団体に計170万円の献金をしていた。

 丸山組が受注JVに参入できた背景について、水谷容疑者が特捜部の調べに対し「知事から『知事選で世話になった丸山組に工事を受注させてやってほしい』と言われた」と供述していた。

 事件をめぐっては、下水道工事と同じ日に入札があった4件のトンネル道路改良工事で談合があった疑いが強まり、特捜部が今年9月20日以降、同県庁知事室や大林組本店(大阪市)などの家宅捜索に着手。木村知事は一貫して談合への関与を否定したが、水谷容疑者が再逮捕された今月2日、「県政に混乱を招いたた責任を取る」として辞職を表明した。

キーワード 和歌山談合事件

和歌山県発注のトンネル工事で談合したとして、大阪地検特捜部は10月12日、前出納長と木村知事の知人のゴルフ場経営会社元代表らを競売入札妨害(談合)容疑で逮捕。11月1日、この2人と、談合の仕切り役だった大林組元顧問ら計5人を同罪で起訴した。同2日、前出納長を別の下水道工事に絡む談合容疑で、元代表をゼネコン側から受領した「受注謝礼金」を申告しなかったとして所得税法違反容疑でそれぞれ再逮捕。同9日には知事公舎を捜索し、木村知事の選挙を支援した同県海南市の丸山組会長ら3人を談合容疑で逮捕した。

[和歌山知事 就任直後から談合主導 大阪地検立件へ最終調整]
(出典:2006年11月15日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、木村良樹知事(54)=辞職表明=が00年9月の初当選直後から、ゴルフ場経営会社元代表の井山義一容疑者(56)=所得税法違反容疑で再逮捕=が大型公共工事の受注業者選定に介入し、ゼネコン側から「口利き料」を受け取ることを了承していたことが14日、わかった。大阪地検特捜部は、木村知事が就任直後から談合を主導していたことを裏付ける事実と判断。04年の下水道工事入札に絡む競売入札妨害(談合)の共犯容疑での立件に向け、最高検と協議しており、15日にも結論を出すとみられる。

 調べなどによると、木村知事は00年9月に初当選した直後、井山容疑者が実質的に経営する大阪市内の飲食店で同容疑者らと会談した。井山容疑者は木村知事に対し、「県の大型工事を受注する業者については、私に任せてほしい」と要望。受注業者選定への介入で業者側から「口利き料」を受領することをほのめかし、木村知事は「わかった」と了承したという。  井山容疑者は、大阪府河内長野市のゴルフ場経営を通じて和歌山県内に幅広い人脈を持ち、同年の選挙で業界側に木村知事を支援するよう強く求めるなど、初当選に尽力していた。

 木村知事は04年8月に再選。その直後、井山容疑者から「海外旅行の土産」として高級ブランドの腕時計を受領した。一方で、井山容疑者は同年11月に入札が実施された4件のトンネル道路改良工事で、うち2件を受注した2共同企業体(JV)の中核ゼネコンから「受注謝礼金」として計約1億2千万円を受け取るなどしていたとされる。

 これまでの調べで、木村知事から井山容疑者を紹介された同県前出納長の水谷聡明容疑者(60)=競売入札妨害容疑で再逮捕=が「5億円以上の大型土木工事は、知事の指示で受注する地元業者を選んだ」「知事から、受注業者を選ぶ際には井山容疑者の意見に従うよう指示された」などと供述していることも判明している。

 木村知事は、04年11月に入札が実施された「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド」で、水谷容疑者に対し、同年の知事選で支援を受けた建設会社「丸山組」(同県海南市)を受注先のJVに参入させるよう指示したとされる。大阪地検は14日、談合の共犯容疑での立件に向け、最高検との最終協議にはいっている。

[秘書室から知事の裏金 和歌山談合 数百万円を発見]
(出典:2006年11月13日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部が県庁を家宅捜索した際、知事室の隣にある秘書室から現金数百万円を発見していたことが11日、わかった。県幹部らからの任意の事情聴取で、この現金は、木村良樹知事(54)=辞職表明=が県内の建設会社など支援企業から集めた金であることが判明。特捜部は、木村知事が自由に使える裏金だったとして、入手先の特定を急いでいる。
 特捜部は一連の談合事件で、9月以降3回にわたり県庁の知事室などを家宅捜索している。関係者によると、捜索の際、特捜部の係官は、秘書室から、現金数百万円を見つけたという。

 特捜部が任意で県幹部らから事情を聴いたところ、この現金は県の予算とは別に地元の建設会社から集めたもので、送り主の中には一連の談合の舞台となった公共工事を受注した業者も含まれているという。現金については木村知事の指示を受けて秘書室で金の出入りを管理していたという。

 調べに対し県幹部は「木村知事を支援している企業からもらった。選挙のときなどに自由に使える裏金で、いつも数百万円程度保管していた」と説明しているという。

 特捜部は木村知事の個人の裏金とみており、入手先の特定を急ぐとともに、公共工事の入札などの際に見返りとして便宜を図るなどの行為がなかったか調べを進める。

 また、特捜部が9日に木村知事の公舎を捜索した際、多数の高級ブランド腕時計を押収していたこともわかった。うち数個について、木村知事は、業者側と県との仲介役で知事と親しい大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)=所得税法違反容疑で再逮捕=からもらったと説明したという。

 井山容疑者も調べに対し、「木村知事が04年8月に再選した直後、海外旅行したときに土産として買ってきた」と供述しているという。いずれも1個数十万円の高級品だったといい、特捜部は授受の趣旨や経緯について調べているとみられる。

 木村知事は、事件で県政を混乱させた責任を取って2日に辞職を表明。談合とのかかわりは一貫して否定している。

[大阪地検談合共犯容疑で和歌山県知事近く聴取]
(出典:2006年11月09日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は8日、競売入札妨害(談合)容疑の対象となった下水道工事を受注した共同企業体(JV)に同県海南市の建設会社が参入したことについて、木村良樹知事(54)=辞職表明=が直接関与していた可能性が高いと判断、談合の共犯容疑で本格捜査に乗り出す方針を固めた。近く、木村知事から事情を聴くとみられる。

 同容疑で再逮捕された前県出納長水谷聡明容疑者(60)は調べに対し「木村知事の指示で同社に受注させた」と、知事の関与を全面的に認める供述をしていることが判明。同社は04年8月の知事選で木村知事を支援しており、特捜部は近く同社幹部からも事情聴取する方針で、選挙活動と同社の工事受注との関連について捜査を進める。

 調べによると、水谷容疑者は、業界内で談合を仕切っていた大林組元顧問の日沖九功被告(64)=競売入札妨害罪で起訴=と共謀。04年11月に入札があった「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド工事」(予定価格約11億5千万円)を準大手ゼネコン「熊谷組」のJVに受注させるよう談合したとされる。

 この際、木村知事が海南市の建設会社について、知事選支援の見返りに熊谷組のJVに入れるように水谷容疑者に指示。同容疑者が日沖被告に対し、同社の名前を挙げ、「この工事を強く希望しているので入れてほしい」と要請した疑いが持たれている。  参入の経緯について、水谷容疑者は「木村知事から『知事選で世話になった同社にシールド工事を受注させてやってほしい』と言われた」と供述しているという。また、特捜部は県幹部や地元業者の担当者らからも任意で事情を聴いており、水谷容疑者と同様の供述を得ているとみられる。

 関係者によると、同年8月の知事選では、同社の幹部が地元票の取りまとめ役となり、自民党の推薦を得られるよう国会議員や県議らに働きかけた。さらに事務所用地を提供したり、集会で同社社員らを動員したりするなど、選挙を熱心に支援したという。

 また同社はOO〜05年、木村知事が代表を務める「新世樹の会」と、木村知事の後援会組織の政治団体「木村よしき後援会」に対し、役員らの名前で計170万円を献金している。

 木村知事は事件への関与については一貫して否定している。

元和歌山出納長踏切内で自殺か 談合巡り聴取

 8日午後O時20分ごろ、和歌山市栄谷の南海本線の孝子7号踏切内で、和歌山県の元出納長(71)が和歌山市発難波行きの普通電車(4両編成)にはねられ、約1時間後に病院で死亡が確認された。出血性ショツク死だった。約30人の乗客にけがはなかった。 和歌山北署は自殺とみている。元出納長は、県発注工事をめぐる談合事件で大阪地検特捜部から、任意の事情聴取を受けていた。

 元出納長は、競売入札妨害(談合)容疑で再逮捕された前出納長水谷聡明容疑者(60)の4代前の出納長。

[和歌山談合 指名「知事の意向」 前出納長供述 選挙支援見返り]
(出典:2006年11月05日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注工事をめぐる談合事件で、競売入札妨害(談合)容疑で再逮捕された前県出納長水谷聡明容疑者(60)が大阪地検特捜部の調べに対し、容疑の対象となった下水道工事を受注した共同企業体(JV)に知事選で貢献した企業を参入させたのは木村良樹知事(54)の意向だったと供述していることが4日、わかった。さらに水谷容疑者は「5億円以上の大型土木工事は木村知事の指示で受注する地元業者を選んでいた」と述べ、知事の関与を全面的に認めているという。特捜部は一連の「官製談合」が知事主導だったとみて解明を進める。

 調べでは、水谷容疑者は、04年11月10日に入札があった「紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線シールド工事」(予定価格約11億5千万円)で、同県海南市の建設会社を参入させるよう、業界内で談合を仕切っていた大林組元顧問の日沖九功被告(64)=競売入札妨害罪で起訴=に要請していたことが明らかになっている。同社は、同年8月の知事選で木村知事が自民党の推薦を得られるように県議らに働きかけるなど再選に貢献したとされる。水谷容疑者は特捜部の調べに対し、同社を指名したのは木村知事の意向で、知事選支援の見返りだったと供述しているという。

 和歌山県は、発注金額が5億円以上の大型土木工事は、95年から、業者を公募、審査したうえで指名する公募型指名競争入札を導入している。

 水谷容疑者は特捜部の調べに対し、知事公室審議監に就任した00年10月から、ゼネコンと地元業者がJVを組む大型土木工事について、受注させるJVの中核ゼネコンを選ぶ際は、日沖被告と話し合いながら決めていたことを認めた。JVに参加する地元業者については「木村知事から指示を受けて選定していた」と供述しているという。

 特捜部は、一連の官製談合は知事が主導していたと判断。談合の全容解明とともに、県側と業者との仲介役で、所得税法違反容疑で再逮捕された大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)が受注業者から受け取った資金の流れや使途についても捜査を進める方針。

[和歌山知事が辞任否定 談合事件、出納長ら起訴]
(出典:2006年11月02日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注のトンネル工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は1日、同県出納長の水谷聡明容疑者(60)ら5人を競売入札妨害(談合)罪で起訴した。5人は談合の事実を認めているという。特捜部は「官製談合」の実態解明に向け、水谷容疑者らを近く再逮捕する。併せて、木村良樹知事の談合への関与についても調べを進める。

 木村知事は同日午後、記者会見し、辞任する考えのないことを改めて表明。2期目の退職金約5千万円相当を返上するとともに、月給(約120万円)の半額を1年間カットする考えを示した。

 起訴されたのはほかに、業界で土木工事の談合を仕切っていたとされる大林組顧問(当時)の日沖九功(64)▽大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表の井山義一(56)▽ハザマ非常勤顧問の丸岡紘一(64)▽東急建設営業部社員の谷本治(59)の各容疑者。同容疑で逮捕されたハザマ元常務(62)と同社和歌山営業所長(56)は処分保留で釈放された。

 特捜部の調べでは、ハザマ、東急建設の受注調整担当だった丸岡、谷本両容疑者が、木村知事と親交のあった井山容疑者に工事を受注できるよう依頼。井山容疑者から両社の共同企業体(JV)受注を求められた日沖容疑者が県側の意向を確認したところ、水谷容疑者が「その通りでいいです」と同意したという。

 井山容疑者は受注工作費としてハザマから5900万円、東急建設から6千万円を受領したとされる。調べに対し、井山容疑者は「ハザマの5900万円のうち手元に残ったのは3千万円で、残りは別の人にあげた。東急建設からは3千万円しかもらっていない」と説明しており、特捜部は資金の流れや使途についても捜査する方針だ。

[業者選定「知事が指示」 和歌山談合出納長が供述]
(出典:2006年11月01日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注のトンネル工事をめぐる談合事件で、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕された県出納長の水谷聡明容疑者(60)が大阪地検特捜部の調べに対し、一連の談合に木村良樹知事が関与していたことを認める供述を始めたことが分かった。知事と親しく、同容疑で逮捕された大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表井山義一容疑者(56)について、「知事から、受注業者を選ぶ際に井山容疑者の意見にすべて従うように指示された」と述べたという。

 木村知事は、談合への関与について一貫して否認していた。しかし、側近の最高幹部が知事関与を認めたことで、責任問題に発展するのは必至だ。

 特捜部は、勾留期限が切れる1日に水谷、井山両容疑者らを起訴し、「官製談合」の実態解明のため、週内にも別の工事をめぐる談合容疑で両容疑者を再逮捕する。さらに、木村知事が水谷容疑者に指示した具体的な内容や、井山容疑者がハザマ側から受け取ったとされる約5900万円の使途についても調べを進めるとみられる。

 調べでは水谷容疑者は、OO年10月に土木部次長から知事公室審議監に就任した直後、木村知事から井山容疑者を「親しい友人」と紹介された。「極めて信頼のおける人なので、県の工事では井山容疑者の意見に従い受注業者を選ぶよう指示された」と供述しているという。その後も、知事とともに数回、井山容疑者と面談したと認めている。
 審議監時代の水谷容疑者は、木村知事の特命で、県発注工事の入札を取り仕切る立場にあった。受注調整を認めたうえで、「井山容疑者を通じて知事の意向を確認しながら業者を選んだ」と話しているという。
 さらに水谷容疑者は、容疑の対象となったトンネル工事についても「ゼネコン側から提案された受注する共同企業体(JV)を了承したうえ、JVに入れる地元業者を選定した」と述べ、県主導の官製談合だったことを認めているという。

 木村知事は、大阪府で総務部長、副知事だった98年か99年に井山容疑者と出会い、井山容疑者が経営していたゴルフ場でプレーしたり、政治的なアドバイスを受けたりしたことを認めている。

[和歌山知事 談合容疑者から車 選挙で借用 会社に助言も]
(出典:2006年10月14日朝日新聞朝刊)

 和歌山県発注のトンネル工事をめぐる談合事件で、同県の木村良樹知事(54)が、競売入札妨害容疑で大阪地検特捜部に逮捕された大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表、井山義一容疑者(55)から、知事選の際に車を一時、借りていたことが分かった。木村知事は井山容疑者を「友人の一人」と認めており、井山容疑者が経営する会社の法的手続きについて助言したこともあったという。井山容疑者は、こうした交友関係を利用しながら、県との太いパイプを誇示し、大手ゼネコンや県幹部に談合の働きかけをしたとみられる。

 木村知事は、00年の知事選で初当選した。現在2期目。
 関係者の話や木村知事の説明などによると、知事が井山容疑者から車を借りていたのは、同年の知事選。木村知事は朝日新聞の取材に対し、経緯について「和歌山の知事選をするのに、大阪ナンバーの車では具合が悪いということから、1日か2日でその車を使うのはやめた」と説明している。

 木村知事によると、大阪府で総務部長、副知事だった98年か99年に出会い、井山容疑者が経営していた河内長野市のゴルフ場でプレーしたこともあるという。
 木村知事は井山容疑者から、経営難になったゴルフ場経営会社について相談されたときには、民事再生法の適用申請を助言したという。特捜部に逮捕された出納長の水谷聡明容疑者(60)も知事室に行った際に井山容疑者を紹介されたという。

[和歌山談合容疑 「地元業者入れよ」県出納長ら逮捕]
(出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)

 和歌山県が発注した4件のトンネル工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は12日午後、競売入札妨害容疑で取り調べていた同県出納長の水谷聡明容疑者(60)ら5人を逮捕した。水谷容疑者は4件をそれぞれ落札する共同企業体(JV)に特定の地元4業者を入れるよう、業界内の談合を仕切っていたとされる大林組の幹部(64)からの電話で伝えていたことが新たに判明。水谷容疑者は逮捕容疑を否認しているが、特捜部は、一連の受注調整が県主導による「官製談合」だったことを示す事実とみている。

 4件の入札は04年11局に実施され、大手ゼネコン・中堅ゼネコン・地元業者で構成する14JV42社が参加。ハザマ、東急建設、大林組、奥村組がそれぞれ中心となったJVが落札した。 調べによると、入札の約4ヵ月前の同年7月ごろ、大林組幹部から水谷容疑者に電話があり、4工事を受注するJVとJVの構成メンバー案が伝えられた。 この案に対し、水谷容疑者は「大手と中堅ゼネコンの組み合わせは任せるが、地元業者についてはこちらが決めたい」と言い、地元の4業者の社名を挙げてそれぞれのJVに入れるよう指示したという。 幹部から水谷容疑者の意向を伝えられた4JVの中心ゼネコンの担当者は指名された4業者をJVに組み込み、希望した工事をそれぞれ落札したとされる。 幹部は特捜部の任意の事情聴取に「地元業者の指定はまさに『天の声』で、従わざるを得なかった」と供述したという。 特捜部は4業者の担当者からも任意で事情を聴き、水谷容疑者が特定の地元業者を指名した経緯などを調べるとみられる。


 大阪地検特捜部は12日、水谷容疑者のほか、ハザマ常務で前大阪支店長の片山富雄(62)▽同社非常勤顧間で前大阪支店副支店長の丸岡紘一(64)▽同社和歌山営業所長の新家久男(56)▽ハザマが受注後に5900万円を提供したとされる大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表井山義一(55)の4容疑者を競売入札妨害容疑で逮捕した。

 調べでは、5人は04年11月に7JVが参加して実施されたトンネル道路改良工事の入札で、ハザマのJVが落札できるよう共謀。入札の約1ヶ月前、残りの6JVの担当者にハザマのJVの入札金額を超える額で応札するよう指示するなどし公正な入札を妨害した疑い。さらに水谷、井山両容疑者はこの工事と同じ日に入札があった別の工事を東急建設のJVに落札させるため、ほかの入札参加JVに東急建設のJVの入札額を超える額で応札させた疑い。

 井山容疑者は容疑を否認し、片山容疑者は「コメントを差し控えます」と供述。丸岡、新家両容疑者は認めているという。

[進む「談合決別」摘発も急 和歌山出納長ら逮捕 業界混乱、密告の渦]
(出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)

 出納長が逮捕される事態となった和歌山県発注工事の談合事件。先月末には福島県で知事の実弟らが逮捕されるなど、各地で「官」を巻き込んだ談合の実態が次々と明るみに出ている。昨年12月に大手ゼネコン4社が「談合決別」を申し合わせて以降、業界秩序が大きく崩れつつあることも相次ぐ摘発の背景となっている。建設業界はウミを出し切り、公共工事依存の体質を変えることができるのか。

 「談合決別は結構なことだ。しかし、それ以前にやってきたことの責任はとってもらう」 大阪地検の任意聴取を受けたゼネコンの談合担当者は、調べの中でこう言われて背筋が寒くなったという。

 今年1月、制裁強化を柱とする改正独占禁止法の施行を機に、大手4社は「談合決別」に踏み切った。「業務」と呼ばれる談合担当者は配置換えとなり、和歌山の官製談合事件で「天の声」を受けたとされる大林組幹部(64)も実務から外された。彼が10年近く束ねてきた関西の土木談合組織のメンバーは1月上旬、ゴルフ場で解散コンペを開いた。

 だが、皮肉にも各地の談合組織が機能停止に追い込まれた直後から、談合摘発が加遠した。 東京地検は、防衛施設庁発注工事をめぐる官製談合事件に続き、福島県では、ゼネコンの談合組織に強い影響力を持つ佐藤栄佐久・同県前知事の実弟(63)を競売入札妨害容疑で逮捕した。名古屋地検特捜部は、愛知県瀬戸市発注工事をめぐる談合事件に続き、名古屋市発注下水道工事の談合疑惑を捜査中だ。

 同時多発的な捜査の背景には、突然の「談合決別」がもたらした業界の混乱がある。  圧倒的な競争力を持つ大手の一方的な「決別宣言」は、中小の業者には「勝ち逃げ」に映った。その不満から、以前行われていた談合の捜査の端緒となる情報が、検察や警察に次々ともたらされているという。  「福島から東北談合に飛び火するのでは」「九州では公正取引委員会が動いている」。うわさが飛び交い、各社は「ヤメ検」と呼ばれる検事出身弁護士の確保に懸命だ。  「鉄の結束を誇った組織は崩壊した。いつ密告されるかと思うと、夜も眠れない」。業務の経験のある大手の役員が嘆いた。

競争進み落札率低下■仕事減 業者淘汰も

 和歌山で、談合の疑いが持たれる四つのトンネル工事の予定価格は計約59億4千万円。ハザマと東急建設は、県に影響力を持つゴルフ場経営会社の元代表(55)に5900万円と約6千万円をそれぞれ提供したとされる。法外な裏金を使っても利益が出るのはなぜか。

 「全国市民オンブズマン連絡会議」は先月、都道府県などが昨年度に発注した公共工事の「談合疑惑度」調査の結果を公表した。予定価格に対する落札価格の比率(落札率)が最も低い長野県は平均74.8%。全自治体が同水準なら、調査対象事業1兆9728億円は少なくとも3539億円(18%)節減される。

 長野県は03年2月、だれでも入札できる受注希望型入札を採用。どこが参加したか分からなくして事前の調整を防ぐため開札直前まで職員も入札書を読めなくした。同県は「発注者の努力で談合はかなり防げる」と話す。

 国交省発注工事の大手ゼネコンの平均落札率も昨年4〜12月は99〜95%だったが、今年は8割前後に急落した。国交省は極端に低い価格は下請けへのしわ寄せやずさんな施工につながるとして、02年から「低入札価格調査」を強化。その件数も激増の一途だ=グラフ。担当者は「安くて良いならいいが、そうではないという危機感を持っている」と話す。

 だが、財務省からは冷ややかな声が聞こえてくる。「予定価格そのものが、適正に設定されていないのではないか」


 「建設業界が再編に追い込まれるのか。見方は分かれる」と国交省の課長の一人は語る。省内では業界保護より市場原理で淘汰される業者が出ても仕方がない、といった考え方が次第に幅をきかせているとされる。

 建設業者数は、90年代の不況下も増え続け、00年に60万を突破。その後は減少傾向で、06年3月現在54万業者となった。「続出する談合摘発、低価格入札がボディーブローのように効いてくる。来年につぶれるゼネコンも次々出てくるだろう」と大手ゼネコンの役員は漏らした。「大手も危ないかもしれない」

 東京大学大学院の松井彰彦教授(経済学)は「談合は麻薬のようなもの。産業を劣化させる。健全な競争で生き残る企業の方が手抜き工事の可能性も少ないはず。談合屋の計画経済と、優良企業による市場経済のどちらが望ましいかだ」と話した。

[和歌山談合 県出納長に逮捕状 競売入札妨害容疑 受注業者を了承]
(出典:2006年10月12日朝日新聞朝刊)

 和歌山県が発注した4件のトンネル工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は、受注業者の決定に関与したとされる同県の水谷聡明出納長(60)と、うち1件の工事を受注した共同企業体(JV)の中心ゼネコンのハザマ(本社・東京)の常務・大阪支店長(62)ら同社の幹部3人、同社から現金5900万円を受け取ったとされる大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表(55)の計5人について、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕状を取った。12日にも一斉に取り調べに踏み切る。同県発注の公共工事を舞台にした一連の談合事件は、県の最高幹部とゼネコンが関与した官製談合事件に発展した。

 調べなどによると、水谷出納長らは、県が04年11月に入札を実施したトンネル道路改良工事4件のうち、「国道371号(仮称・平瀬トンネル)特殊改良一種工事」をハザマのJVに、「国道168号(仮称・切畑トンネル)道路改築工事」を東急建設のJVにそれぞれ受注できるように共謀し、公正な入札を妨害した疑いが持たれている。

 入札前、元代表は業界内で土木工事の談合を仕切っていたとされる大林組の幹部(64)に対し、「ハザマと東急建設の2JVに落札させてあげて欲しい」と依頼。当初幹部は断っていたが、元代表が再三にわたり要請してきたため、承諾したという。  この幹部は入札前に水谷出納長に直接電話をして2JVが受注することを伝えた。これに対し水谷出納長は「その通りでいいです」などと了承したとされる。

 特捜部は、ゼネコンの担当者や元代表らが決めた受注業者について、出納長が最終的に承認する形の官製談合だったとみており、業者の選定過程や金の趣旨について、詳しく調べるとみられる。

佐藤工業会長を東京地裁が保釈

 福島県発注の下水道整備工事をめぐる談合事件で、東京地裁は11日、競売入札妨害の罪に問われている地元大手「佐藤工業」会長の佐藤勝三被告(67)の保釈を許可する決定をした。  保釈保証金は1千万円。佐藤会長は同日夕、東京拘置所から保釈された。

[大阪地検 県幹部ら近く捜査 和歌山のトンネル談合]
(出典:2006年10月11日朝日新聞朝刊)

 和歌山県が発注した4件のトンネル工事入札をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は10日、受注業者を指名したとされる同県最高幹部や、談合にかかわったとみられる複数のゼネコン担当者らに対し、近く競売入札妨害(談合)容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めた。ゼネコン側から受注の見返りに現金を受け取ったとされる大阪府河内長野市のゴルフ場経営会社元代表(55)についても立件に向けて詰めの捜査を進めているとみられ、「官製談合」の全容解明を目指す。

 調べでは、この県最高幹部は、県が04年11月に入札を実施したトンネル道路改良工事4件(予定価格総額約59億4千万円)のうち、「国道371号(仮称・平瀬トンネル)特殊改良一種工事」をハザマの共同企業体(JV)に、「国道168号(仮称・切畑トンネル)道路改築工事」を東急建設のJVにそれぞれ受注させることを計画。入札の数日前、業界内で談合を仕切っていた大林組の幹部(64)に2JVをそれぞれ受注業者にするよう伝え、公正な入札を妨害した疑いが持たれている。残りの2件は業界主導で談合し、大林組と奥村組がそれぞれ受注したとされる。

 4件の予定価格に占める落札額の割合(落札率)は99.0〜96.8%と高率だった。

 元代表は受注を決めたハザマ側から5900万円を受領したほか、03年まで代表取締役を務めていた土木建築会社が大林組の下請けとしてトンネル出入り口付近の建設工事を請け負うなど、一連のトンネル工事を受注したゼネコン側から利益提供を受けていた疑いが強いことがすでに判明している。

Initially posted July 1, 2007