宮崎県官僚(県民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

 安藤被告側は宮崎地裁に2007年6月21日に保釈を申請し、22日に1500万円の保釈保証金による保釈を認められた。宮崎地検が取り消しを求め準抗告を申し立てたが棄却され、安藤被告は23日午前零時すぎ、2006年12月8日の逮捕以来、約半年ぶりに保釈された。逮捕前には黒かった髪が白く変わっていたといわれる。安藤前知事は、これまで起訴事実を否認する姿勢を示している。

 文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であり、原文と区別して読まれたい。



宮崎県編目次

  1. 宮崎前知事再逮捕へ 収賄容疑来月にも
    (出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)
  2. 2000万円受領認める 宮崎県前知事収賄視野に捜査]
    (出典:2006年12月19日朝日新聞朝刊)
  3. 前宮崎知事、談合認める
    (出典:2006年12月18日朝日新聞朝刊)
  4. 宮崎県前知事に2000万円 初当選直後ヤマト設計から]
    (出典:2006年12月12日朝日新聞朝刊)
  5. 前次長に「談合」念押し? 宮崎前知事、伝達経路熟知
    (出典:2006年12月10日朝日新聞朝刊)
  6. 知事権力 逮捕ドミノ 選挙の恩 腐敗の構図 つけ込む業者・・・ここでも
    (出典:2006年12月09日朝日新聞朝刊)
  7. 宮崎談合 安藤前知事 揺れる発言 指南役との関係・5000万円の趣旨
    (出典:2006年12月08日朝日新聞朝刊)
  8. 宮崎談合 県次長ら再逮捕へ
    (出典:2006年12月07日朝日新聞朝刊)
  9. 宮崎の官製談合 逮捕の森林部長「知事から指示」
    (出典:2006年12月05日朝日新聞朝刊)
  10. 宮崎県知事が辞職 談合、混乱の引責
    (出典:2006年12月04日朝日新聞朝刊)
  11. 追い詰められ一転 宮崎県知事、なお「潔白だ」
    (出典:2006年12月04日朝日新聞朝刊)
  12. 宮崎県知事失職に傾く 出直し選には意欲]
    (出典:2006年12月03日朝日新聞朝刊)
  13. 宮崎談合 「知事の指示受けた」 受注調整容疑出納長を逮捕
    (出典:2006年11月30日朝日新聞朝刊)
  14. 宮崎県出納長きょう聴取 官製談合関与の疑い
    (出典:2006年11月29日朝日新聞朝刊)
  15. 宮崎談合「県外業者を」天の声に絶句 地元勢は泣く泣く「我慢」
    (出典:2006年11月24日朝日新聞朝刊)
  16. 宮崎県知事近く聴取 談合関与 幹部が示唆
    (出典:2006年11月18日朝日新聞朝刊)
  17. 宮崎県も官製談合容疑 土木部長ら10人逮捕
    (出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)

[宮崎前知事再逮捕へ 収賄容疑来月にも]
(出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注の橋の設計業務をめぐる官製談合事件で、優先受注に絡む現金授受があった疑いが強まったとして、県警は、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕している前知事の安藤忠恕容疑者(65)を収賄容疑で再逮捕する方針を固めた。

 一連の談合事件で受注したとされるヤマト設計(東京)の社長から2千万円を受け取った疑いがあるほか、県警は前知事周辺で複数の不透明な金銭の流れがあることを把握。いずれにも社長側が前知事に入札などで便宜を図ってもらうことを期待したわいろ性があるとの見方を強めており、談合容疑での前知事の勾留期限が切れる来年1月半ばにも、容疑事実を絞って強制捜査に乗り出す見通しだ。

[2000万円受領認める 宮崎県前知事収賄視野に捜査]
(出典:2006年12月19日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の幹部らによる官製談合を主導したとして競売入札妨害の容疑で逮捕された前知事の安藤忠恕容疑者(65)が、入札で便宜を受けたとされるヤマト設計(東京)社長の二本木由文容疑者(56)=同容疑で逮捕=から現金2千万円を受け取っていたことを認める供述をしていることが18日、分かった。2千万円については二本木社長らが渡したことなどを認めていたが、前知事は授受そのものを否認していた。関係者によると、前知事は「(二本木社長に)無理やり置いていかれたが、返却した」と供述しているという。県警は収賭容疑にあたる可能性があるとみて、現金の趣旨を中心に調べを進めている。

 県警や関係者によると、2千万円の授受があったのは03年7月の前回知事選の直後で、前知事の政治指南役とされる元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)=同=も同席したという。 この現金の趣旨について、石川元秘書は調べの中で、「『あうん』の呼吸だった」と、二本木社長が何らかの見返りを期待していたことを示唆。受け渡した場所については「おそらく前知事の私邸に持参した」と話しているという。一方、二本木社長は「知事選の後片づけの費用」と説明、わいろ性を否定している。 安藤前知事は2千万円のうち、2年後の昨年夏にまず1千万円を二本木社長に直接返却。残りの1千万円は同年末に石川元秘書を通して返却したとされる。

 県警は、2千万円がヤマト設計の会計部門から出されていたことを示す文書類を入手。現金の授受の事実は揺るがないとして、今後は返却に至った経緯などを調べる。

[前宮崎知事、談合認める]
(出典:2006年12月18日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の官製談合事件で、競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕された前知事の安藤忠恕容疑者(65)が、県警の調べに対して容疑を認める供述を始めたことが17日、わかった。設計コンサルタント会社「ヤマト設計」(東京)の受注を増やすよう「県幹部に指示した」と話しているという。前知事は逮捕前の記者会見などで一貫して事件へのかかわりを否定し、逮捕後も否認を続けていた。

 安藤前知事は最近になって調べに対し、県幹部に「ヤマトをよろしく」と伝えて談合を指示したことを認め、「前の県政の時代からもあったので仕方ない」などと話している。一方で、供述内容が揺れている部分もあるという。

 県警は、前知事が官製談合を主導した経緯の裏付けを急ぐとともに、ヤマト設計社長の二本木由文容疑者(56)らとの間で授受があったとされる多額の現金の流れについても解明する方針。

[宮崎県前知事に2000万円 初当選直後ヤマト設計から]
(出典:2006年12月12日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の官製談合事件で、前知事の安藤忠恕容疑者(65)が初当選した前回知事選の直後、ヤマト設計(東京)社長の二本木由文容疑者(56)が前知事に現金2千万円を提供していたことが11日、県警の調べでわかった。前知事の政治指南役で元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)と一緒に持参したという。県警は、前知事に何らかの便宜を図ってもらうことを期待したわいろの疑いがあるとみて、慎重に捜査している。

 調べでは、2千万円の授受があったのは03年7月の前回知事選の直後。二本木社長と石川元秘書はともに事実関係を認めたが、現金の趣旨について前知事に具体的な説明はしなかったという。

 二本木社長は「選挙費用として500万円を出した」と周囲に語り、石川元秘書は前知事に選挙対策などを指導していた。知事選後には、二本木社長が石川元秘書へ顧問料名目で約1干万円を提供、前知事の後援会からは石川元秘書に5千万円が渡ったとされる。

 二本木社長と石川元秘書は県発注事業をめぐり、ヤマト設計の受注額を増やすよう前知事に要求。二本木社長は05年6月ごろ、知事公舎を訪ねて直談判したといい、その後に受注が急増した。

 県警は、一連の金の流れと今回の談合事件に結びつきがあるとみて解明を進める方針だ。

[前次長に「談合」念押し? 宮崎前知事、伝達経路熟知]
(出典:2006年12月10日朝日新聞朝刊)

   宮崎県の官製談合を主導していたとして競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕された前知事の安藤忠恕容疑者(65)が、出納長や部長に「天の声」を発しただけでなく、伝達ルートの中間にいた前土木部次長(8日付で同部参事)の柴岡博明容疑者(58)にも直接働きかけていた疑いがあることがわかった。柴岡前次長は前知事とのやりとりを認める供述をしているという。県警は、指示が伝わる経路を熟知していた前知事による「念押し」だった可能性もあるとみて捜査している。

 調べでは、安藤前知事は設計コンサルタント会社のヤマト設計(東京)が県発注事業を多く受注できるように、前出納長の江藤隆容疑者(63)と環境森林部長の税所篤三郎容疑者(58)に、それぞれ別の案件で談合を指示した疑い。容疑を否認しているという。

 柴岡前次長は、「前出納長ルート」では宮崎土木事務所長として、「環境森林部長ルート」では土木部次長として、それぞれ「天の声」の仲介役を果たしたとみられている。

 柴岡前次長が前知事からじかに受注調整の働きかけを受けたとされるのは環境森林部長ルート。今年7月にあった橋の設計業務の入札をめぐり、前次長は高岡土木事務所長の長峰清雄容疑者(58)に「ヤマトにとらせることになっている」と伝えた疑いが持たれているが、それ以前に前知事から呼び出されたという。

 一方、前出納長ルートでは、05年11月にあった橋の設計業務の入札で、当時土木部次長だった前同部長(8日付で県参事)の藤本坦容疑者(59)が、宮崎土木事務所長だった柴岡前次長に「台風災害の工事があればヤマトに回すように」と指示していたという。  県関係者らによると、庁内の仕組みとして土木部次長には、土木事務所長を通じて「天の声」を業者側に伝える役割があり、仕事が取れなかった業者からの苦情の処理も請け負う立場だという。



[知事権力 逮捕ドミノ 選挙の恩 腐敗の構図 つけ込む業者・・・ここでも]
(出典:2006年12月09日朝日新聞朝刊)

 8日逮捕された宮崎県の安藤忠恕前知事(65)はスーツ姿で知事公舎を出た。笑みを浮かべていた。

 「こういう日を迎えるのは、あのころから見えていた」。安藤前知事が初当選した03年夏の知事選を手伝った元県職員は振り返る。「選挙を通じて、いろんなタイプの人間が集まってきたから」

 6期続いた長期県政のしがらみを断ちたい。安藤前知事は選挙戦で「改革」を強調し、引退した現職の後継候補らを破った。

 安藤陣営は当初、組織力で劣勢だった。それが覆ったのは、「実は業界のお陰だった」と当時の選対関係者は打ち明ける。告示直前に元国会議員の後援会が安藤前知事支援を決め、多くの建設業者らが実動部隊に加わったのだどいう。

 当選後、業者たちは次々と安藤前知事の周辺に群がった。その一人がヤマト設計(東京)の社長二本木由文容疑者(56)。「選挙で500万円を出した」と吹聴し、後援会に出入りを始めた。

 彼を安藤前知事に引き合わせたのは、元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)だ。安藤前知事は県職員時代に石川元秘書と知り合い、選挙を通じて急速に親しくなった。政界人脈や後援会づくりの方法を教わった。

 石川元秘書は安藤前知事によって後援会の統括事務局長に迎えられたが、周囲の反発ですぐにはじき出された。謝罪の意を込めたのか、後援会から石川元秘書へ5千万円という不明朗な大金が渡る。その運び役を務めたのは二本木社長だ。
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 安藤前知事は当初、業者への便宜には消極的だったように見える。二本木社長からの受注要請は「石川さんに相談を」とかわす一方、「石川さんの面倒をみてほしい」とも付け加えた。二本木社長から石川元秘書へ総額約1千万円が流れた。

 ところが、二本木社長が思ったほどの見返りがない。「方向違いのやつを知事に推してしまった」。こんなぼやきを聞かされた業者もいる。  「仕事が少ない。もっと欲しい」。不満を爆発させた二本木社長は昨年6月、知事公舎や知事室に乗り込んだ。

 追いつめられた安藤前知事は県幹部を呼び、その場で「天の声」を発したとされる。「ヤマトに8千万円ぐらいの仕事をやってくれ」
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 「福島、和歌山と同一視してもらっては困る」と言い切った安藤前知事。しかし、選挙での「借り」につけ込まれる構図は、さきに逮捕された2知事と同じだった。

 和歌山県前知事の木村良樹容疑者(54)は、「すべては選挙のためだった」と容疑を認める供述を始めている。「落下傘」侯補だった木村前知事を支えたのは、大阪府副知事時代からの知り合いだったゴルフ場経営会社元代表の井山義一容疑者(56)だった。当選後、木村前知事が井山元代表に声をかけた。「県の工事を仕切ってみませんか?」

 福島県でも、佐藤栄佐久前知事(67)の実弟・祐二被告(63)が県発注工事の受注調整にあたり、業者からの資金を知事選の資金として取りまとめていたとされる。

 わずか2ヵ月の間に、3県の知事が逮捕されるという事態は、宮城と茨城の両知事が起訴された93年のゼネコン汚職の規模を上回る。絶大な権力、群がる業者や代理人、選挙と公共事業。知事がなぜ事件に手を染めるのか、背景を探る。

前知事ボーナス支給差し止め

 宮崎県は、期末手当(ボーナス)について、安藤忠恕・前知事と江藤隆・前出納長への支給差し止めを決めた。前知事には260万4千円、前出納長には186万9千円が支払われる予定だった。特別職の給料に関する条例で、支給前日までに逮捕や起訴された場合は支給差し止めができる。前知事については「公務への信頼確保に重大な支障がある」と判断した。

首長逮捕、今年15人目

 《解説》今年、競売入札妨害容疑や収賄容疑など入札がらみの犯罪で逮捕された首長は、3知事を含め計15人にのぼる。摘発が続くのはなぜか。

 ひとつには、警察や検察の大きな方針転換がある。「談合事件は(被疑者が多く)捜査負担が重いが、積極的に対応すべきだ」。松尾邦弘前検事総長は今年2月、全国の検事正が集まる年に1度の会議でそう訓示した。

 捜査当局の方針転換を後押ししたのは、今年1月の厳罰化を盛り込んだ独占禁止法改正だ。

 談合の排除は、日米協議の重要な課題だった。十数年前、交渉に当たった元法務省幹部は直接交渉の席上、米国側から「日本の捜査当局は談合があるのに、刑事告発に動かない。ほえない犬だと責められ、返す言葉がなかった」と振り返る。

独禁法は改正を重ねてきたが、今回の改正では、正直に談合を申告すれば、先着3社に限り、課徴金など処分が大幅に軽くなるルールが取り入れられた。欧米流の「密告奨励」の仕組みだが、これが日本でも力を発揮した。

 旧首都高速道路公団発注工事の談合では、三菱重工業が公正取引委員会にいち早く申告し、課徴金を全額免除された。談合に参加した他の4社は計約10億円を納めた。ある捜査幹部は、密告制度以降、「寄せられる情報がより具体的になり、幅広い捜査ができるようになった」という。  談合事件の摘発が重なり、世論も不正な入札を罪悪視するようになった。捜査当局が競売入札妨害罪をためらいなく使う支えになった。

 だが、知事経験者たちからは相次ぐ逮捕劇をいぶかる声も出ている。「地方への財源移譲をいやがる霞が関(官僚)が国策捜査で首長をたたいている」「地域振興のためにはなお公共事業が頼り。地方の苦しさを捜査当局はわかっていない」 しかし一連の捜査が暴いたのは、地域振興の名の下に、選挙資金が必要な首長が、資金調達を助けた業者に便宜をはかる後ろ暗い姿だ。改革派を名乗る知事までもが、そのシステムにのみ込まれていた。(三橋麻子)

「地方分権に影響を懸念」 全国知事会長

 安藤前知事の逮捕について、全国知事会長の麻生渡福岡県知事は8日夜、県庁で記者団に対し、「地方の統治能力への信用を失墜させる事態で、誠に遺憾だ。地方分権の進展にマイナスの影響が懸念される」と述べた。

 官製談合については「恣意的な介入を防ぐやり方を作らないといけない。信頼回復に全力を挙げたい」と語り、全国知事会で策定に取り組んでいる談合防止策を実行に移す必要性を強調した。

[宮崎談合 安藤前知事 揺れる発言 指南役との関係・5000万円の趣旨]
(出典:2006年12月08日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の官製談合事件をめぐる捜査は、安藤忠恕・前知事(65)=4日付で辞職=の立件に向けて最終局面を迎えた。前知事はこれまで一貫して身の潔自を主張してきたが、発言を追うと矛盾やぶれもちらつく。事件の背景に何があったのか。県警は前知事への強制捜査で真相解明を目指す。

 今年9月。安藤前知事の後援会から元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)=競売入札妨害容疑で逮捕=に不明朗な5千万円が渡っていた問題が発覚した。現金のやりとりがあったのは03年7月の前回知事選の直後。現金の運び役は「天の声」で県発注事業を落札したとされるヤマト設計(東京)の社長二本木由文容疑者(56)=同=だった。

 「政治の指南役です」。9月15日、問題発覚を受けて記者会見した前知事は、石川元秘書についてこう表現し、「(自分が)県選挙管理委員会の選挙係をしていた約30年前から知っていた」と明かした。

 知事選への立候補を目指して県を退職した98年以降、県政界の人脈などについて「私から教えてくださいということが多かった」。一方で、「知事選には一切かかわらず、後援会にも入っていなかった」と強調した。

 同26日の県議会全員協議会では、石川元秘書からの指南について「後援会組織の作り方、支持者拡大、演説、団体への推薦要請などのやり方を指導してもらった」と具体的に述べた。ところが、「選挙期間中は接触しなかった」とも説明。議員から「それで選挙にかかわっていないというのはおかしい」と突っ込まれた。

 石川元秘書に渡った5千万円の趣旨は何か。その説明も「長いことお世話になった謝礼」(9月14日、知事公舎前で)→「指南に対する対価」(同15日、記者会見で)→「コンサルタント料」(同26日、県議会全員協議会で)と二転三転した。

土木部長ら8人談合容疑再逮捕

 宮崎県発注工事の設計入札をめぐる官製談合事件で、県警は7日、競売入札妨害(談合)容疑で逮捕した県土木部長の藤本坦容疑者(59)や同部次長の柴岡博明容疑者(58)、ヤマト設計社長の二本木容疑者、元国会議員秘書の石川容疑者ら8人を別の入札の談合にかかわったとして同容疑で再逮捕、新たに設計会社フェニツクスコンサルタント(宮崎市)社員の前田哲朗容疑者(49)を逮捕した。

 県警はいずれの入札も、安藤前知事の働きかけでヤマト設計が落札したとみており、複数の容疑を裏付けることで官製談合への前知事の関与を明確にする方針だ。

 調べでは、藤本部長らは7月、県高岡土木事務所発注で宮崎市にある橋の設計の指名競争入札で、ヤマト設計に落札させるよう談合した疑い。

 宮崎地検は7日、昨年11月の県発注の設計入札をめぐる競売入札妨害容疑で逮捕した容疑者12人のうち、二本木容疑者と石川容疑者を同罪で起訴した。一方、7日に再逮捕されなかった黒木勝男・県道路保全課長(57)と香月正直・設計会社長(64)、西田靖・設計会社長(47)を処分保留で釈放した。江藤隆・前出納長(63)は勾留中だ。

談合摘発は最多の38件 警察庁、今年まとめ

 全国の都道府県警察が今年摘発した談合や競売入札妨害事件は6日現在で38件に上り、記録が残る89年以降で最多になっていることが警察庁のまとめで分かった。

 同庁によると、摘発件数は93年までは1〜4件だったが、94年に21件と急増。96,97年はそれぞれ29件だった。その後、昨年までは11〜20件で推移し、昨年は17件だった。今年の38件のうち、千葉県成田市長ら5人の首長が逮捕されている。

[宮崎談合 県次長ら再逮捕へ]
(出典:2006年12月07日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の官製談合事件を捜査している県警は6日、今年7月の災害復旧工事の入札で談合したとされる、いわゆる「環境森林部長ルート」で、県土木部次長の柴岡博明容疑者(58)や設計コンサルタント会社ヤマト設計(東京)社長の二本木由文容疑者(56)ら数人を再逮捕する方針を固めた。柴岡次長らは、すでに「出納長ルート」で逮捕されていた。県警はいずれの談合容疑にも安藤忠恕・前知事(65)が関与した疑いを強めており、全容解明のためには再逮捕し、さらに裏付け捜査をする必要があると判断した。

 県警によると、7日には2人のほか、元国会議員秘書で、安藤前知事の「政治の指南役」だった石川鎮雄容疑者(68)も再逮捕する方針。

[宮崎の官製談合 逮捕の森林部長「知事から指示」]
(出典:2006年12月05日朝日新聞朝刊)

   宮崎県の官製談合事件で、新たな災害復旧工事の入札に絡んだとして競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕された県環境森林部長の税所篤三郎容疑者(58)が「知事からの指示だった」と、談合への安藤忠恕・前知事の関与を明確に認める供述を始めていることが4日、明らかになった。税所部長は3日に逮捕された後、「上からの指示があった」と前知事の関与を示唆していたが、その後、明確に名前を挙げるようになったという。県警は4日夜、税所部長と同じ談合容疑で、県高岡土木事務所長の長峰清雄容疑者(58)も逮捕。一連の事件で県幹部の逮捕者は6人となった。

[宮崎県知事が辞職 談合、混乱の引責]
(出典:2006年12月04日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の安藤忠恕知事(65)は3日、県庁で記者会見を開き、県発注工事をめぐる官製談合事件などで県政を混乱させた責任を取り、辞職する意向を表明。4日付の辞職願を県議会に提出した。知事は会見で、談合事件への自身の関与を改めて否定した。辞職に伴う出直し選挙に立侯補するかどうかは「考える段階ではない」と述べるにとどめた。

 安藤知事は会見の冒頭、「一連の県政混乱に関する責任は重大で、自ら職を辞することで混乱の長期化を避けたい」と辞職を表明。「県民の皆様に心から深くおわびします」と頭を下げた。

 1日に県議会が不信任決議をした後は、「辞職すれば(疑惑を)認めることになる」と失職を選ぶ考えを示唆してきた。辞職に転じた理由は「失職期限の11日まで時間が空きすぎる。一日も早く決断して県民におわびしたかった」と説明した。

 05年入札の談合事件では、土木部長らが「上の指示だった」と供述して知事の関与を示唆しているほか、出納長も知事からの指示を供述。ヤマト設計社長の二本木由文容疑者(56)も受注の要望を知事に伝えた経緯を認めている。県警は、05年入札の事件と、環境森林部長が逮捕された06年入札の談合事件はいずれも、「知事を頂点とする官製談合」とみており、安藤知事本人から事情を聴く方針を固めている。 二本木容疑者から元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)へ受注絡みで1千万円が渡された疑いも浮上。県警は贈収賭容疑でも捜査している。

 安藤知事は1期目。64年に宮崎県庁に入り、商工労働部長などを歴任。98年に退職し、99年の知事選に出たが現職に敗れた。03年7月の知事選に再び挑み初当選した。 不信任決議を受けた知事の辞職は、76年の岐阜県以来2例目。出直し知事選は1月下旬投票の見込み。 05年入札の事件で逮捕された県出納長の江藤隆容疑者(63)も、3日付の辞職届を弁護士を通じて知事あてに提出した。


 宮崎県警は3日夜、県環境森林部長の税所篤三郎容疑者(58)を競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕した。県幹部の逮捕は5人目。7月に橋の設計業務の指名競争入札が行われた際、設計コンサルタント会社ヤマト設計に落札させるよう指名業者側に伝え、同社を上回る価格で入札するよう協定を結ばせた疑い。容疑を認めているという。

知事ドミノ なぜ起きた

 福島、和歌山に続き、宮崎県知事が辞職に追い込まれた。なぜ、「知事ドミノ」は起きたのか。

 その理由のひとつは政治の権力構造の変容だ。かつて政官業のピラミッドの頂点には有力国会議員がいたが、十数年にわたる政治改革に小泉改革が加わって、派閥や族議員が没落した。そして、相対的に知事の存在感が大きくなった。  もうひとつが贈収賄での立件から談合そのものにメスを入れる捜査方針の転換である。


 ことし4月、慶応大の湘南藤沢キャンパス。前宮城県知事の浅野史郎教授は初講義で言った。  「いま、知事から国会議員になったのは3人で、国会議員から知事は9人。国会から知事が出世コースです」  国会議員に比べて知事の力が強まった実感を、冗談めかして披露した。

 浅野氏は宮城、茨城両県知事らが捕まった1993年のゼネコン汚職を機に、知事になった。政界のドン、金丸信自民党副総裁の巨額脱税が発端の事件である。公共事業を一部の有力国会議員が仕切る「竹下派支配」が暴かれた。知事たちの犯罪は、その政界捜査の副産物といえた。  だが今や知事たちが談合疑惑の「主人公」だ。(論説委員・坪井ゆづる)

[追い詰められ一転 宮崎県知事、なお「潔白だ」]
(出典:2006年12月04日朝日新聞朝刊)

 1期目途中での「退場」を余儀なくされた宮崎県の安藤忠恕知事(65)は、3日の記者会見で「無念」「不本意」と繰り返した。官製談合事件による県政の混乱、議会からの不信任決議、自らへの疑惑……。追いつめられ、孤立感を深めた末の決断だが、事件への関与は改めて否定。「潔白だ」との主張を変えることなく、4日にも県議会の同意を得て県庁を去る。

 午後4時半、県庁2階の講堂。安藤知事は神妙な面持ちで入ってきた。手には会見の説明資料。こわばった表情で一礼し、席に着いた。まばたきが、やまない。

 「県政混乱の責任は重大。自ら職を辞することで、混乱の長期化を避け、県民におわびする」  「第51代宮崎県知事安藤忠恕」と署名した文面を一気に読み上げた。  さらに「事実経過のご報告」と書いたA4判3枚の文書を報道陣に配布。「出納長に談合を指示した疑いが持たれ、連日報道されているが、私の認識と報道は大きく乖離している」と自身の潔自を主張した。

 文書は、事件の舞台となった設計入札を談合で受注したとされる設計コンサルタント会社ヤマト設計社長の二本木由文容疑者(56)=競争入札妨害容疑で逮捕=との関係にも詳しく触れた。二本木社長に「前県政時代は1億円くらい仕事をもらった」「仕事が少ない、もっとよこせ」などと言われたが、「断った」。「私は二本木氏に怒りさえもっていた」と記し、「便宜を図るわけがない」と切り捨てた。  安藤知事はこれまで、辞職も議会解散もせず、失職を選ぶことを示唆していた。だが会見では「一日も早く処し方を決めて、県民におわびしたかった」と述べ、「熟慮に熟慮を重ね」「誰にも相談せずに」辞職を決めたと説明した。2日夜に決意を固め、妻に「県民の方に十分おわびすることですね」と言われたという。

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 安藤知事が辞職の決断を事前に伝えた関係者は多くない。

 「辞職を考えている」

 2日夜。知事の後援会幹部の家に、安藤知事から電話があった。「辞職しない、と強く言っていたので驚いた」と幹部。別の幹部宅には3日朝、改めて知事から「辞職することにしました」と連絡があった。「一晩中眠らずに決断したのだろう。声は力強かった」  県議会の坂元裕一議長の携帯電話が鳴ったのは、記者会見の約30分前。「明日付で辞職したい。手を煩わせます」と知事。坂元議長は「分かりました。お疲れ様でした」と応じた。短い会話の最後に知事は付け加えた。
 「身の潔白は今後とも主張していきます」

 一方、知事を支えてきた後援会の佐藤公一会長には、会見前に「決断」の連絡はなかった。佐藤会長は「知事が関与したかどうかは分からないが、県幹部が逮捕された知事の責任は重い。出直し選挙には出馬すべきではない。出馬しても、私はもう会長は引き受けない」と突き放した。  安藤知事は不信任が決議された1日タ、知事応接室に県幹部を集めて言った。「ここーカ月、正義とは何かと考えてきたが、自分一人が正義だとしか思えない」。それを聞いた幹部の一人は「知事が談合に関与した疑いが周囲で強まっていることが悔しくて、孤立感が深まったのでは。もともと大事なことは自分一人で決断する人。突然の辞職の決断も、誰にも相談することなく決めたのだろう」と推し量った。

「8000万円分、発注を」 知事の相談 出納長詳述

 宮崎県の官製談合事件で、ヤマト設計に落札させたとして競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕された県出納長の江藤隆容疑者(63)が県警の調べに、「知事から『ヤマトが8千万円分(の工事を)欲しがっている。何とかしてほしい』と相談されたが、(ヤマト設計の)二本木(容疑者)とは離れるべきだと忠告もした」などと、安藤知事とのやりとりを詳述していることが分かった。県警は、知事の事件への関与を裏付ける供述とみて注目している。

 調べなどによると、知事から相談を持ちかけられた江藤出納長は土木部長の藤本坦容疑者(59)に「ヤマトが8千万円の工事を要求している。(05年度中に)どれくらいの工事があるのか調べて」と依頼。藤本部長は「困ったですね。調べてみましょう」と応じた。  結局、5千万円分の工事しか見つからず、これを県側がヤマト設計社長の二本木由文容疑者に示したところ、仕事の内容を「えり好み」されて江藤出納長は憤慨。その後は、知事からの「天の声」はなくなったという。

[宮崎県知事失職に傾く 出直し選には意欲]
(出典:2006年12月03日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注事業での官製談合事件で、県議会から不信任を決議された安藤忠恕知事(65)は2日、「自分から辞めることは考えていない。議会の解散は県政を混乱させる」と述べ、明言は避けたものの不信任に対して「自動失職」の選択に傾いている気持ちをにじませた。失職した場合は、「県民の信を問いたい」と出直し知事選に出る構えもみせた。

[宮崎談合 「知事の指示受けた」 受注調整容疑出納長を逮捕]
(出典:2006年11月30日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注の災害復旧工事の設計入札をめぐる官製談合事件で、同県警は29日、県出納長の江藤隆容疑者(63)が受注調整に関与していたとして競売入札妨害(談合)の疑いで逮捕した。江藤出納長は容疑を認めたうえで「(安藤忠恕)知事から(落札業者を優遇するよう)指示を受けた」と供述しており、県土木部長らの逮捕後2週間足らずで、事件は一気に核心に迫る。県警は安藤知事(65)からも事情を聴く方針をすでに固めている。一方、県議会は同日、安藤知事の辞職勧告決議案を全会一致で可決。安藤知事の進退は窮まりつつあるが、知事は改めて事件への関与を否定、辞職しない構えだ。

 調べでは、江藤出納長は05年11月にあった橋梁設計の指名競争入札で、県土木部長の藤本坦容疑者(59)に指示し、他の入札参加業者を交えた談合によって、設計コンサルタント会社ヤマト設計(東京都)に受注させた疑い。

 江藤出納長は入札前の昨年5〜6月ごろ、藤本土木部長を出納長室に呼び、05年度中にヤマト設計の受注が増えるように指示したという。  この事件では江藤出納長の他に、土木部次長の柴岡博明(58)や道路保全課長の黒木勝男(57)、ヤマト設計社長の二本木由文(56)、元国会議員秘書の石川鎮雄(68)の4容疑者ら計11人が逮捕されている。  これまでの調べで、容疑について藤本部長らは「上からの指示だった」「ヤマト設計への受注総額について『8千万円分くらい回せないか』と言われた」などと供述。また、柴岡次長は、藤本部長から04年に「ヤマト設計に仕事を回すように」と言われたことや、05年には「ヤマト設計に5千万円くらい何とかならないか。出納長から言われてる」と具体的な受注額や経緯まで明かされたことなどを供述していることも新たに判明した。

 柴岡次長はこうしたやりとりから「(指示は)出納長を通じた安藤知事からだ」と受け止めていたという。そこに昨年秋、台風が同県を襲来。藤本部長から改めて「復旧工事で橋梁があればヤマトに回すように」と要請されたため、事件となった入札をヤマト設計に落札させることにしたという。

 一方、安藤知事は江藤出納長の逮捕を受けて29日夜開いた記者会見で「出納長は談合にまったく関与していないと話していただけに、信じられない」と述べたうえで、県民に「信頼を裏切る行為で申し訳なく、おわび申し上げる」と謝罪。しかし、「県民の信頼回復に全力を傾けたい」とし、辞職しない意向を改めて表明した。

 辞職勧告決議は、事件について「土木部幹部の逮捕だけでなく出納長の関与も疑われ、県行政に重大な支障が生じた」とし、「県の最高責任者として、政治的、道義的責任は極めて重い」と指摘した。  それでも安藤知事は「管理監督責任は感じるが、事件には関与していない。私に非はない」と強気を見せた。

[宮崎県出納長きょう聴取 官製談合関与の疑い]
(出典:2006年11月29日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注の災害復旧工事設計の入札をめぐる官製談合事件で、宮崎県警は、談合に関与した疑いが強まったとして江藤隆出納長(63)を競売入札妨害(談合)容疑で29日に事情聴取する方針を固めた。すでに同容疑で逮捕された県幹部らが調べに対し「(談合は)上からの指示だった」などと供述していたが、その後の調べで、江藤出納長の関与が明確になったという。江藤出納長はこれまで官製談合への関与を一貫して否定してきたが、捜査は県最高幹部への強制捜査に進展する見通し。

 今回の事件で逮捕されているのは、県土木部長の藤本坦(59)、同部次長の柴岡博明(58)、道路保全課長の黒木勝男(57)の県側の3容疑者と、容疑対象の設計入札を落札した東京都の設計コンサルタント会社「ヤマト設計」社長、二本木由文容疑者(56)と入札に参加した他の設計会社社長ら7容疑者。それに元国会議員秘書で安藤忠恕知事(65)の「政治の指南役」だった石川鎮雄容疑者(68)の計11人。

 調べでは、いずれも05年11月、県宮崎土木事務所発注の「県道鰐塚山田野停車場線」災害復旧工事設計の指名競争入札で、ヤマト設計に落札させるよう申し合わせた疑い。

 この談合で、当時土木部次長だった藤本容疑者は宮崎土木事務所長(当時)の柴岡容疑者らにヤマト社に落札させるよう指示、柴岡容疑者は同社の担当者に落札させる旨の県側の判断を伝えたとされる。逮捕された県幹部らは「県上層部の指示」があったなどと供述。当初から安藤知事の関与を示唆していたが、その後の調べで江藤出納長の関与が先に明らかになったとして、まず出納長の事情聴取が必要と判断したとみられる。

 江藤出納長はこれまで朝日新聞の取材に、事件への関与について「かかわりはない。一つひとつの発注工事なんて知らない」と関与を強く否定。逮捕された県幹部らへの指示などについても「全くない」と話していた。

[宮崎談合「県外業者を」天の声に絶句 地元勢は泣く泣く「我慢」]
(出典:2006年11月24日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注の工事をめぐる官製談合事件で、「天の声」を受けた東京都の設計コンサルタント会社「ヤマト設計」が、地元4社を押しのけて落札した談合の詳細が、関係者の話や県警の調べで分かった。天の声には地元側が猛反発したが、最後は「天の声は官の命令」と矛を収めたという。

 昨年11月中旬。JR宮崎駅近くの旅館にスーツ姿の男たちが集まった。1階フロントの奥、蛇腹の仕切りがある「会議室」のいすに腰掛けた。  事件の舞台になった橋梁設計の入札を数日後に控えていた。指名業者5社の担当者がそろうと、ヤマト設計宮崎支店長だった野崎清春容疑者(63)=競売入札妨害容疑で逮捕=が切り出した。  「県から『ヤマトがやることになった』と天の声が出ます」  他社の担当者は言葉を失ったという。現場は2ヵ月前に大規模土砂災害が起きた被災地。県測量設計業協会に加盟する地元業者の若手が現地に交代で泊まり込み、被災状況の把握を続けていた。

 ヤマト設計は非加盟社だ。「警戒は命がけだった。それなのにヤマトに天の声を出すなんて」。ある業者は憤る。県宮崎土木事務所長だった柴岡博明容疑者(58)=同=のもとに協会副会長の2人=同=が駆けつけて確認したところ、「間違いない」との返答だったという。 結局、地元業者も「官製談合」を承諾し、旅館から500bほど離れたホテルの一室で談合を仕切り直した。入札日、ヤマト設計は落札率94.1%の690万円で設計業務を落札。地元業者の関係者は自分に言い聞かせるように語る。 「不満はあったが、天の声に逆らえば次から県の仕事は取れない。ゼネコンから地方の中小企業まで等しく業界の常識だ。我慢するしかない」

[宮崎県知事近く聴取 談合関与 幹部が示唆]
(出典:2006年11月18日朝日新聞朝刊)

 宮崎県が発注した県道の災害復旧工事の設計をめぐる談合事件で、談合を主導したとして競売入札妨害の疑いで逮捕された県土木部長の藤本坦容疑者(59)ら県幹部が県警の調べに対し、官製談合について、安藤忠恕知事の関与があったことを示唆する供述を始めた模様だ。県警は、慎重に供述の裏付げを進める一方、近く知事本人から事情聴取する方針を固めた。

 県警の調べで、逮捕された県幹部は「(官製談合は)上からの声だった」などとし、より「上層部」からの指示で談合を行ったことを認めたうえで、知事の関与を示唆する供述を始めたという。

 この事件で、藤本容疑者のほかに逮捕されたのは県土木部次長の柴岡博明容疑者(58)と県道路保全課長の黒木勝男容疑者(57)の県幹部2人と、設計会社「ヤマト設計」(東京都)社長の二本木由文容疑者(56)、元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)など計9人。  10人は05年11月、県宮崎土木事務所が発注した県道の災害復旧工事の設計業務の指名競争入札で、ヤマト設計に落札させるように申し合わせた疑い。

 当時、藤本容疑者は同部次長、柴岡容疑者は同事務所長、黒木容疑者は事務所次長で、これまでの調べに3人は、藤本容疑者が部下の2人に談合の指示を出していたことを認めていた。

 また、これまでの調べで、ヤマト設計は03年夏に安藤知事が初当選を果たした翌年度から県からの受注が急増。県土木部技術検査課の資料によると、同社は01年度以降の5年間に同部発注の設計業務を18件受注しているが、このうち3分の2にあたる12件が04年度以降の2年間に集中していた。

宮崎県も官製談合容疑 土木部長ら10人逮捕
(出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)

 宮崎県発注の工事入札で談合の疑いが強まったとして、宮崎県警は16日、県土木部長の藤本坦容疑者(59)ら県幹部3人と、設計会社「ヤマト設計」(東京都)社長の二本木由文容疑者(56)ら業者側7人の計10人を競争入札妨害容疑(談合)で逮捕した。県警は土木部長らが主導した「官製談合」とみて、さらに調べを進める。福島、和歌山両県で相次いで立件された官製談合が宮崎県にも波及した。

 同県の安藤忠恕知事(65)の後援会が03年の知事選直後、元国会議員秘書に5千万円を提供しながら政治資金収支報告書に記載しなかった問題が今年9月に発覚。二本木容疑者は、元秘書への手渡し役だったとされる。県警と宮崎地検は今後、「官製談合」の実態と知事周辺のカネの流れの全容解明とともに、5千万円授受への知事の関与についても調べる。

 ほかに逮捕されたのは、県土木部次長の柴岡博明(58)、県道路保全課長の黒木勝男(57)、社団法人宮崎県測量設計業協会副会長の大坪邦彦(66)の各容疑者ら。元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)=電磁的公正証書原本不実記録などの疑いで逮捕=は再逮捕。石川容疑者は容疑を否認、ほかの9人は認めているという。

 調べでは、10人は05年11月、県宮崎土木事務所が発注した県道の災害復旧工事の設計業務の指名競争入札で、ヤマト設計に落札させるように申し合わせた疑い。入札には計5社が参加し、ヤマト設計が690万円で落札した。落札率(予定価格に対する落札価格)は94.1%だった。  知事や関係者によると、安藤知事が03年7月の知事選で初当選した後の9月、知事の後援会側から石川容疑者に5千万円が届けられた。5千万円を運んだのは二本木容疑者とされる。5千万円は返却され、知事公舎に2ヵ月間保管された後、後援会に預けられたという。二本木容疑者は、知事が「政治の指南役」と呼ぶ石川容疑者から紹介されたという。

辞職は考えず 安藤・宮崎知事
 県幹部3人の逮捕を受け、安藤知事は16日夜に記者会見した。自身の談合への関与を否定したうえで、「(幹部が)談合に関与したのなら、あってはならない。県民に県政への不信感を抱かせ、おわび申し上げます」と陳謝。知事の責任間題について、「道義的責任は感じるが、辞職は考えていない」と述べた。


Initially posted July 2, 2007.