経済産業省官僚(国民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。



[東電処分見送り 保安院、甘い問題意識 解明途中の決定に疑問]
(出典:2002年9月14日日本経済新聞朝刊)

 東京電力の原発トラブル隠しで、経済産業省原子力安全・保安院は13日、29件の改ざん疑惑について刑事告発や行政処分を見送る方針を示した。「確証がなく違反と断定できない」との理由からだが、東電の社内調査結果の発表も待たずに早々と一切の処分を行わない方針を決めたことで、保安院の認識の甘さが問題になりそうだ。
 調査結果で保安院は、炉心隔壁(シュラウド)のひび割れを何年も放置した問題など6件について、電気事業法や原子炉等規正法に違反する可能性を指摘。5件については省令で定めた報告義務に違反する疑いがあるとしたが、いずれも「可能性を指摘しているだけ」(松永和夫次長)として、処分の見送りを明言した。
 保安院が処分に及び腰な理由の一つは、ひび割れなどがあったとされる機器の多くがすでに交換されている点。電気事業法の違反を問うためには、機器が損傷し、同法で定める技術基準に適合しないことを示す必要があるが、現物がなければそれを確かめられないからだ。
 だが、調査結果では、東電が、点検のために原子炉内を撮影したビデオテープから、ひび割れの映像を除いて編集するよう下請け会社に指示した疑いが浮上。未承認の工法でひび割れを修理したことが発覚するのを恐れ、ひび割れそのものがなかったかのように記録を改ざんするなど、悪質な手口が判明した。
 東電は週明けにも社内調査結果を発表し、これらの記録改ざんについて認める方針。その発表を待たずに、処分の見送り方針を明言する保安院の姿勢には疑問が残る。

 理解できない 技術評論家の桜井淳氏の話
 まだ、中間報告した出ておらず、第三者の評価委員会などによる事実解明がこれからという段階で、告発や行政処分の見送り方針を示すのは全く理解できない。保安院が幕引きを急いでいるのが見え見えだ。調査をきちんとしたならば、保安院自身の責任問題に及ぶ可能性があることを恐れたのかもしれない。
 内部告発者の氏名を東電に漏らしたり、疑惑の公表後も原子炉の運転を続けさせるなど、一連の調査では保安院の不手際が目立つ。保安院が本気で事実解明をするつもりがあるのか疑いたくなるし、監督官庁がそのような姿勢だから東電の認識も甘くなる。
 そもそも今回の調査結果も、現場を持つ東電が先に出し、保安院の調査とつき合わせるのが筋。東電、保安院ともいまだに事態の重大さが分かっていないのではないか。
(告発から公表まで2年を要した保安院が、第三者の評価委員会の最初の会合が開かれたその日に東電処分見送りの決定をやってのけるとは、東電の報告遅延さえ保安院と東電の連係プレーではないかと疑われる。保安院は原子炉の安全を妨げる行為を国民の目に触れないようにする役割を立派に果たしたので、ないほうがよい。保安院は当事者であり裁かれる立場であるのに、裁く側にいるなど茶番もいいところ。検察に委ねた方が余程国民の安全が図られるのではいか。保安院を退職した者が東電に再就職しているかどうかの報道も欲しいところだ。)



[東電トラブル隠し 告発から公表 なぜ2年も]
(出典:2002年9月13日日本経済新聞夕刊)

 東京電力の原発トラブル隠しで、経済産業省原子力安全・保安院の調査過程を検証する評価委員会が13日午後、始まった。調査を巡っては内部告発から発表まで2年を要した点に批判が集中。告発者の氏名を記した資料が東電側に渡っていたことも判明した。東電の不正とともに、保安院の調査自体の妥当性が焦点になっている。

 ●申告委の開催間隔
 保安院の調査は、なぜ約2年もかかったのか。2000年7月に内部告発を受け、保安院の申告委員会は現在まで計8回開かれている。申告内容に基づく調査の進展を検討する同委員会だが、同年7月の第3回から同年11月の第4回まで4ヶ月の間隔が開き、さらに同年12月の第5回から翌年に開催されるまで間隔が約8ヶ月に開いていることについて妥当性が問われる。
 さらに、昨年12月に開かれて以降、今年8月に公表されるまで一度も開催されていないなど、間隔が延び延びになっていたことが調査期間の長期化の要因になったとの指摘がある。

 ●東電側への対応
 保安院が「非協力的だった」としている東京電力側への対応上の問題も重要な論点。一つは、東電側が改ざんした点検作業について、任意の「自主点検作業」としていた点の妥当性。点検を会社側に一任していた不正を誘発した可能性があるためだ。
 また、調査の初期段階となる2000年7月時点の口頭による調査指示や、同年12月の文書による調査依頼についても、法律に基づく形で立ち入り検査を行ったり、期限をつけて報告させる方法が取れなかったのかどうかが問題になる。
 結果的に、文書での調査依頼から東電側が報告を出す2001年8月までに約8ヶ月かかったことについては「督促などの積極的な対応を行うべきだったのではないか」とする声がある。

 ●公表時期は妥当か
 調査に約2年間を要する必要性があったとしても、公表時期については早められたのではないかという指摘がある。
 @申告者(まま。告発者の誤りか)が身元を明らかにしてよいと表明した2000年11月時点A米ゼネラル・エレクトリック(GE)関係者の情報提供で、検査報告書の改ざんの裏づけが示唆された今年1月時点BGE本社から追加の情報提供があった今年5月時点−などの段階で公表できなかったのかが、評価委員会の検討課題になっている。



[制度逸脱 官民とも−東電トラブル隠し]
(出典:2002年9月13日日本経済新聞朝刊)

 東京電力の原発トラブル隠し問題で、内部告発者の氏名はなぜ、原子力安全・保安院から東電に伝わったのか。臨界事故後の痛切な反省から設けられた制度の趣旨を踏みにじるかのような事態に加え、これまでの保安院の説明との食い違いも浮き彫りになった。官民の不明朗な"もたれあい"。問題の闇がさらに深まった。

 告発保護おざなり 保安員調査 揺らぐ信頼
 東京電力の原発トラブル隠しで、経済産業省原子力安全・保安院が告発者の氏名を含む資料を東電側に渡していた問題は、これまで「告発者の保護が最優先」としてきた保安院の姿勢と明らかに逆行している。
 保安院は2000年7月の内部告発から調査が2年間を要した理由について、東電側の協力が得られなかったことに加え、「告発者に不利益が及ぶのを防ぐため、慎重に調査を進めた」と説明。記者会見でも告発者の保護を強調し、所属や名前については一切明らかにしていない。
 しかし、当時のエネ庁職員が資料を手渡したうえ、告発者の氏名を特定したと、指摘する関係者もいる。
 一方、保安院の松永和夫次長は資料を渡したことを認めたうえで、「2000年11月に告発者から『身元が特定されても構わないので調査を進めてほしい』と連絡があった」と説明。氏名を特定したとされる点については否定した。
 ただ、書類から氏名などの情報を消さずに東電側に渡した点については、「(黒塗りするなどの)選択肢があったのかもしれないが、本人からは了解をもらった話なので・・・」と明確な説明はなかった。
 また、保安院はこれまで、告発者から身元を明かすことへの了解を取った時期について、「2001年11月」と説明していた。しかし、12日になり、この日付を「2000年11月」と突然1年繰り上げた。
 保安院はこれまで、告発後の調査の過程について、「昨年11月に告発者が転職し、GE側に問い合わせができるようになったため調査が進んだ」と説明しており、この日付が変更されれば、保安院自身の調査が妥当だったかどうかにも疑問が出てくる。
 経産省は保安院の調査の過程について、13日から開催する検討委員会で検証することを決めており、保安院はこの従来の日付との矛盾についても、合理的説明を求められることになる。
 企業倫理に詳しい若杉敬明東大教授は、今回の保安院側の対応について、「何があったにせよ、内部告発者の氏名が出ること自体、告発を受ける側の責任の重さを理解していない。内部告発者が(公表を)了承しているかどうかという問題ではない」と指摘する。「企業や官庁だけでなく社会全体が規律を失い、内部告発制度の必要性が高まっているが、基本的な精神が無くては何の意味もない」と話している。


Initially posted August 16, 2003.Updated October 20, 2004