福島県官僚(県民からの行政の受任者)の犯罪というより
検察・マスメディア・裁判所によるでっちあげの疑い濃厚な事件の備忘録


福島県編目次

  1. 東京地検特捜部の判断は常に正しい、のか
    (出典:2010年01月19日 Egawa Shoko Journal)
  2. 「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか
    (出典:2009年10月17日 マル激トーク・オン・ディマンド第445回 プレビュー)
  3. 土地の時価差額、わいろ性否定 福島県前知事汚職判決
    (出典:共同通信2009/10/14 23:13)
  4. 福島前知事有罪
    (出典:河北新報2008年08月09日土曜日)
  5. 福島県ダム汚職、佐藤前知事と実弟に有罪判決]
    (出典:2008年8月8日14時05分 読売新聞YomiuriOnLine)
  6. 民、社推薦の佐藤氏が初当選/福島県知事選
    (出典:2006年11月13日四国新聞社ShikokuNews)
  7. 福島前知事弟に有罪 買収など
    (出典:2007年01月23日朝日新聞朝刊)
  8. 福島前知事弟 求刑2年6月 知事選買収事件
    (出典:2007年01月17日朝日新聞朝刊)
  9. 佐藤工業前会長、談合指示認める 福島県発注工事で初公判
    (出典:2006年12月09日朝日新聞朝刊)
  10. 知事選買収8人起訴 福島前知事関与問えず
    (出典:2006年11月29日朝日新聞朝刊)
  11. 福島前知事実弟買収罪起訴へ]
    (出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)
  12. 1億7000万円収賄罪 福島前知事を起訴
    (出典:2006年11月14日朝日新聞朝刊)
  13. 収賄事件 福島前知事、容疑認める 土地取引「受注の謝礼」]
    (出典:2006年11月02日朝日新聞朝刊)
  14. 土地取引「前知事に報告」 福島県汚職 弟、関与認める供述
    (出典:2006年10月31日朝日新聞朝刊)
  15. 福島汚職土地取引 時価より4億円高 東京地検 収賄額を特定へ
    (出典:2006年10月28日朝日新聞朝刊)
  16. 福島県汚職 「役員から知事外せ」 前田建設元副会長「疑われる」進言
    (出典:2006年10月27日朝日新聞朝刊)
  17. 福島前知事逮 5期18年の果て 下 投票率上げるため裏金
    (出典:2006年10月26日朝日新聞朝刊)
  18. 福島前知事「前田建設は営業熟心」 ダム入札 弟の受注調整承知か
    (出典:2006年10月26日朝日新聞朝刊)
  19. 佐藤前知事 「天の声」93年まで 他県の汚職摘発で中断 弟が引き継ぐ]
    (出典:2006年10月25日朝日新聞朝刊)
  20. 1億円上乗せ「変だ」 土地取引捜沓の端緒
    (出典:2006年10月24日朝日新聞朝刊)
  21. 福島談合 知事選裏金3000万円 談合罪で弟を起訴 前知事関与解明へ
    (出典:2006年10月16日朝日新聞朝刊)
  22. 前知事弟、調整認める 福島談合受領のカネは「謝礼」
    (出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)
  23. 福島知事選 裏金で買収の疑い 公選法違反も視野
    (出典:206年10月09日朝日新聞朝刊)
  24. 知事選裏資金 前知事弟、県議らに配布役 福島談合 辻被告が集金
    (出典:2006年10月07日朝日新聞朝刊)

[「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか]
(出典:2009年10月17日 マル激トーク・オン・ディマンド第445回 プレビュー)

 佐藤栄佐久氏はクリーンさを売りものに福島県知事を5期も務めた名物知事だった。しかし、それと同時に佐藤氏は、国が推進する原子力発電のプルサーマル計画に反対し事実上これを止めてみたり、地方主権を主張してことごとく中央政府に反旗を翻すなど、中央政界や電力、ゼネコンなどの有力企業にとっては、まったくもって邪魔な存在だった。

 その佐藤知事に収賄疑惑が浮上し、5期目の任期半ばで辞職に追い込まれた後、逮捕・起訴された。ダム工事発注をめぐる収賄罪だった。知事は無罪を主張したが、一審は執行猶予付きの有罪判決だった。そして、その控訴審判決が14日、東京高裁で下された。

 今回は一審からやや減刑されたが、依然として懲役2年、執行猶予4年の有罪判決だった。主要メディアもほぼ例外なく「前福島県知事、二審も有罪」の見出しでこのニュースを報じていたので、最近は知事の不祥事が頻発していたこともあり、必ずしも世間の耳目を引く大きなニュースとはならなかったかもしれない。

 しかし、この判決の中身を詳細に見た時に、その内容の異常さに驚かされる人は多いはずだ。判決文からは「無形の賄賂」や「換金の利益」などの驚くような言葉が次々飛び出してくるからだ。判決文は、佐藤前知事が一体何の罪で有罪になったのかが、全くわからないような内容になっているのだ。  もっとも驚かされるのは、二審では一審で佐藤前知事が弟の土地取引を通じて得ていたと認定されていた賄賂の存在が否定されたにもかかわらず、「無形の賄賂」があったとして、裁判所が有罪判決に踏み切ったことだ。

 元々その賄賂の根拠というのは、佐藤氏の弟が経営する会社が水谷建設に土地を売却した際、その売却額が市価よりも1割ほど高かったので、その差額が佐藤氏に対する賄賂に当たるというものだった。ところが、その建設会社はその後更に高い値段で土地を売却していることがわかり、「市価より高い値段による賄賂」の大前提が崩れてしまったのだ。

 そこで検察は「換金の利益」つまり、仮に正当な値段であったとしても、土地を買い取ってあげたことが「無形の賄賂」の供与にあたると主張し、裁判所もそれを認めた。つまり、取引が正当な価格でなされていたとしても、土地取引そのものが賄賂にあたると認定されたわけだ。

 「セミの抜け殻のような判決」。二審判決についてそう話す佐藤氏は、そもそも事件そのものが検察によってでっち上げられた作り話だと主張し、一審から徹底して無罪を争ってきた。

 他にもこの事件は、そもそもこのダム事業が一般競争入札案件であるにもかかわらず、佐藤氏の「天の声」を認定していたり、弟の土地取引から得た利益を佐藤氏自身が受け取ったわけではないことを認定しながら、佐藤氏を収賄で有罪としているなど、不可解な点は多い。

 にもかかわらず、「換金の利益」だの「無形の賄賂」だのといった不可思議な論理まで弄して裁判所が佐藤氏を二審でも佐藤氏を有罪としなければならなかった最大の理由は、佐藤氏自身が取り調べ段階で、自白調書に署名をしていることだったにちがいない。

 今回宮台氏のピンチヒッターとしてマル激の司会初登場となった元検事で名城大学教授の郷原信郎氏は、「佐藤氏のような高い地位にあった方が、罪を認めていることの意味はとても重い。自白があるなかで裁判所が無罪を言い渡すことがどれほど難しいか」と、とかく自白偏重主義が指摘される日本の司法の問題点を強調する。

 しかし、佐藤氏はこの点については、苛酷な取り調べによって自白に追い込まれたのではなく、自分を応援してきてくれた人達が検察の厳しい取り調べに苦しめられていることを知り、それをやめさせるために自白調書にサインをしたと言う。また、早い段階で自白をしたおかげで、真実を求めて戦う気力を残したまま、拘置所から出てくることができたと、自白調書に署名をしたこと自体は悔やんでいないと言い切る。

 佐藤氏が原発に反対し、原発銀座とまで呼ばれ10基もの原発を有する福島県で原発が止まってしまったことが、日本の原発政策全体に多大な影響を与えていたことも、今回の事件と関係があるのではないかと疑う声がある。しかし、これについても郷原氏は、「今検察はそれほど高級な論理で動いてはいない」と一笑に付す。

 恐らく、東京地検特捜部はある見込みに基づいて、かなりの予算と時間と人員をかけて捜査に着手したのはよかったが、見込み違いがあったのか、なかなか大物が捕まえられずにいたところを、敵が多く、恐らくたれ込みネタも豊富であろう佐藤氏に白羽の矢がたったのだろうと、郷原氏は見る。「見込み違い」「幹部の保身」「筋の悪いたれ込み情報に振り回された結果」といったところが実情だったのではないかと言うのだ。

 佐藤氏自身は、自分が検察に狙われなければならない理由はわからないとしながらも、1年以上もの長期にわたり、佐藤氏の周辺を検察が捜査しているとの情報はあったと言い、最初から佐藤氏を狙った捜査であった可能性を排除はしていない。しかし、いずれにしても佐藤氏は最後まで無罪を主張して闘う意向を明らかにしている。

 今週はマル激特別版として、郷原信郎氏を司会陣に迎え、今回の判決が露わにした数多くの「なぜ?」とその背後にある日本の刑事司法の病理を佐藤栄佐久前福島県知事と議論した。

<ゲスト プロフィール>
佐藤 栄佐久(さとうえいさく)前福島県知事
1939年福島県生まれ。63年東京大学法学部卒業。日本青年会議所地区会長、同副会頭を経て、83年に参議院議員選挙で初当選。87年大蔵政務次官。 88年、福島県知事選挙に出馬し当選。第5期18年目の06年に辞職後、ダム工事発注をめぐる収賄容疑で逮捕・起訴。著書に『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』。

郷原 信郎(ごうはら のぶお)名城大学教授・コンプライアンス研究センター長
1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。同年三井鉱山入社。80年司法試験合格。83年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事などを経て06年退官し、09年より現職。著書に『思考停止社会』、『検察の正義』など。

飯田 哲也(いいだ てつなり)環境エネルギー政策研究所所長
1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て、96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。92〜06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90〜92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、編著に『自然エネルギー市場』、共著に『日本版グリーン革命で雇用・経済を立て直す』など。

[土地の時価差額、わいろ性否定 福島県前知事汚職判決]
(出典:2009/10/14 23:13【共同通信】)

 福島県発注のダム建設工事をめぐる汚職事件で、収賄罪に問われた前知事佐藤栄佐久被告(70)と、実弟で元衣料メーカー社長祐二被告(66)に14日、一審判決より刑を軽くした東京高裁は、メーカーによる土地取引を違法行為と認める一方、「(わいろとして得たのは)土地を現金化した利益にとどまる」とし、検察側が主張した時価との差額約1億7千万円のわいろ性を否定した。

 検察立証の柱の一つが退けられ、東京高検は遺憾の意を示した。無罪を主張していた弁護側も上告の意向。

 若原正樹裁判長は、栄佐久被告について「当時の県土木部長に特定企業が受注することが望ましいと受け取れる発言を行った。県の職務に対する社会の信頼を失墜させかねず、強い非難に値する」と指摘した。

 一方で「土地売却で利益を得るとの両被告の認識は認められるが、売買代金と時価との差額の利益を得るとの認識は、祐二被告はともかく、栄佐久被告には肯定しがたい」と述べた。

 判決によると、栄佐久被告らはダム工事入札で前田建設工業(東京)に便宜を図った謝礼として2002年8月、祐二被告経営のメーカー本社があった福島県郡山市の土地を、前田側の意向を受けた水谷建設(三重県桑名市)に約8億7千万円で購入させた。

 判決は昨年8月の一審東京地裁判決を破棄し、栄佐久被告を懲役2年、競売入札妨害(談合)罪にも問われた祐二被告を懲役1年6月とし、それぞれに執行猶予4年を付けた。

[福島前知事有罪]
(出典:河北新報2008年08月09日土曜日)

 「一切、事実がないことは、わたしが一番よく知っている」。福島県汚職事件で有罪判決を受けた前知事佐藤栄佐久被告(69)は8日、判決後に都内で記者会見し、無実の主張をことごとく退けた判決への不満を抑えた口調で語った。「戦う知事」時代の政策をアピールし、全国知事会の現状を憂う言葉も口にした。法廷で、「一緒に戦った」検察官や裁判官らにも一礼してみせた姿は最後まで、「誇り高い知事」のままだった。

 栄佐久被告は判決直前の取材に「知事在任18年間の歴史を、何らかの形で整理したい」と述べ、今秋、単行本の刊行を予定するなど、活動再開への意欲を見せていた。会見でも「弁護団は真実の足跡を一つ一つ丁寧に調べ、裁判所もその足音を聞こうとしてくれた」と公判を総括し、判決への手応えを感じていた心中を明かした。

 だが、続けて「(栄佐久被告が業者への便宜を示唆したとの)元県土木部長の証言と、弟(祐二被告)が(収賄の舞台となった)土地取引を報告したとの供述は虚偽という、わたしが一番知っている事実は認めてもらえなかった」と述べ、無念さをにじませた。

 「古巣」との闘いに敗れた宗像紀夫主任弁護人(元東京地検特捜部長)も「判決は誤判で、真実に到達できていない。承服できない」と控訴を検討する意向を示した。

 栄佐久被告の収賄認定の決定打となる自白をした祐二被告は会見に姿を見せず、文書で「人格を否定し、事実をねじ曲げる検察を許容する裁判所による刑事司法が許されれば、誰もが犯罪者に仕立て上げらてしまう」と判決を痛烈に批判した。

 一方、東京地検の渡辺恵一次席検事は「有罪は証拠上、当然だ。主張の一部が認められず、執行猶予が付いた点については判決を検討し、今後の対応を決めたい」と話した。

 具体的な実践で自分を磨くことを意味する中国の思想家・王陽明の言葉「事上磨錬(じじょうまれん)」が座右の銘だと、会見で披歴した栄佐久被告。だが、判決はわいろが選挙資金と親族会社の再建資金に還流したと指摘。同じ王陽明の言葉で、認識と行動の私欲による分断を戒めた「知行合一」は、否定された形となった。

 会見の終盤、「多選は腐敗を生むと思うか」と問われた栄佐久被告は「今、ここでどうこう言うことではない」と述べ、会場を後にした。

検察側、薄氷の勝利

【解説】福島県汚職事件で前知事佐藤栄佐久被告と実弟祐二被告を有罪とした8日の東京地裁判決は、検察側の主張に沿って被告・弁護側の無罪主張をほぼ全面的に退けたが、事実認定には苦心の跡もうかがえる。職務権限を持つ栄佐久被告がわいろとされた土地取引に直接関与せず、金銭的利益も得ていない特異な事件は、検察側立証の証拠構造のぜい弱さも浮き彫りにした。

 判決は最大の争点だった兄弟の共謀を認めたが、贈賄側と郡山三東スーツとの土地取引を栄佐久被告に報告したとする祐二被告の自白が、根拠の中心になった。

 栄佐久被告の犯意の認定では、本人の政治活動と三東スーツとの密接な関係を重視。従業員が支援者でもある同社の経営再建は政治生命に直結するだけに、栄佐久被告も土地取引が贈賄側の利益供与であることを認識できた―とするやや強引な検察側主張を追認した。

 わいろの評価では、売買契約後に被告側に支払われた1億円を土地代から除外して、起訴事実よりわいろ額を軽減。売買価格も「仲介の不動産会社が許容できないほど高額とは認められない」とするなど検察側主張より後退する認定もあった。

 執行猶予が付いたことも含め検察側の圧勝ではなく、薄氷の勝利と言える。自白に過度に依存した旧来の汚職捜査手法が、従来にない構造の事件に十分に対応できない限界感も示した。

 弁護側は控訴を検討しており、「知事の刑事責任」をめぐる攻防は今後も続く可能性が高い。ただ、関係者の有罪が確定した下水道工事をめぐる談合事件や知事選をめぐる選挙違反事件を含む一連の裁判が突き付けた課題は待ったなし。

 あぶり出されたのは、根深い建設業界の談合体質を背景に、公共事業で業者が得る利益の一部が強大な権力を持つ首長周辺に還流し、選挙資金などに使われていた構図。福島県も入札制度改革に取り組んでいるが、こうした構図の根絶こそ、くみ取るべき最大の教訓だ。(福島総局・佐藤崇)

<額考えれば温情的/前田雅英・首都大学東京法科大学院教授(刑法)の話>
 捜査段階の自白について背景事情とも符合すると信用性を認め、時価も8億円を超えないと判断している。こうした前提に立てば判例に照らしても有罪を認定できる。わいろ額の大きさを考えれば、執行猶予は温情的な判決と言える。個人の経済的利益のためではなく、背景に会社の窮状があったことを重く見たのだろう。

<簡単かつ雑な判断/郷原信郎・桐蔭横浜大法科大学院教授(経済刑法)の話>
 あまりに簡単かつ雑な判断で収賄罪を認定しており、判決として理由をなしていない。一般競争入札で知事が特定業者にどのような便宜を供与できるのかが、職務権限に関する最大の論点だが、判決は全く触れていない。特異な構図の事件だが、今回の判決が他事件の判決に影響を及ぼすことはないだろう。

[福島県ダム汚職、佐藤前知事と実弟に有罪判決]
(出典:2008年8月8日14時05分 読売新聞YomiuriOnLine)

 福島県ダム汚職事件で有罪判決を受けた佐藤栄佐久被告(8日、弁護士会館で)=立石紀和撮影 福島県ダム汚職事件で、収賄罪に問われた佐藤栄佐久前知事(69)と、収賄、競売入札妨害(談合)の罪に問われた実弟の佐藤祐二被告(65)の判決が8日、東京地裁であった。

 山口雅高裁判長は、祐二被告が経営する会社が行った土地取引がわいろの提供に当たると認定し、栄佐久被告に懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役3年6月)、祐二被告に懲役2年6月、執行猶予5年(同2年6月)の有罪判決を言い渡した。祐二被告には、わいろとして認定された約7372万円を追徴した(求刑は2人に計約1億7372万円)。

 山口裁判長は、「栄佐久被告は、知事の実弟という立場を利用した祐二被告の不正を黙認していたのに、公判で反省の態度も示さず、責任は重い」と述べた。戦後、知事在職中の収賄で有罪判決を受けたのは7人目(1人は無罪確定)。

 栄佐久被告は祐二被告と共謀し、2000年に県が発注した木戸ダム建設工事の入札で、準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体が落札できるよう便宜を図った見返りに、02年8〜9月、祐二被告が経営していた紳士服会社「郡山三東スーツ」の土地(時価8億円)を、工事を下請け受注した中堅ゼネコン「水谷建設」に約9億7372万円の高値で買い取らせ、差額約1億7372万円をわいろとして受け取ったとして起訴された。

 2人は公判で無罪を主張。判決は、栄佐久被告らの捜査段階の自白の信用性を認め、栄佐久被告が祐二被告から土地取引の報告を受け共謀したと認定した。

 ただ、02年9月に水谷建設が追加して支払った1億円については、栄佐久被告が報告を受けていなかったとして、起訴されたわいろの額から除いた。また、事件は祐二被告の主導で行われたと指摘。判決は「祐二被告が栄佐久被告の選挙資金に充てるため、県発注工事で受注業者を選定し、見返りに金銭の供与を受けることを繰り返していた」と指摘した。

[民、社推薦の佐藤氏が初当選/福島県知事選]
(出典:2006年11月13日四国新聞社ShikokuNews)

 佐藤栄佐久前知事の辞職に伴う福島県知事選は12日投票、即日開票の結果、無所属新人で前参院議員の佐藤雄平氏(58)=民主、社民推薦=が、いずれも無所属新人の弁護士森雅子氏(42)=自民、公明推薦、県労連議長小川英雄氏(57)=共産推薦=らを破り、初当選を果たした。

 投票率は58・77%で、過去最低だった前回の50・76%を8・01ポイント上回った。

 前知事が県発注工事をめぐる談合事件で辞職、告示日直前に収賄容疑で逮捕される状況の中、佐藤氏が事実上の与野党対決を制した。10月の衆院補選で2敗した民主党は、19日の沖縄県知事選への弾みが付くと同時に、来年の統一地方選や参院選に向けても好材料となりそうだ。

 佐藤氏は民主党を離党し「県民党」の立場を強調。推薦を受けた連合福島の労組票や、国会議員秘書時代からの政治経験で培った人脈を生かし、保守層からも幅広く支持を集めた。

 森氏は「若さ」と「清新さ」をアピール。自民、公明両党の閣僚や幹部が続々と応援に駆け付けて激しく追い上げたが、事件の影響で自民党県議らの動きが最後まで低調だったのが響いた。小川氏は談合、汚職事件の徹底解明を訴えたが支持が広がらず、元県議川田昌成(63)、発明家高橋喜重氏(58)も及ばなかった。

[福島前知事弟に有罪 買収など]
(出典:2007年01月23日朝日新聞朝刊)

 04年の福島県知事選で佐藤栄佐久前知事(67)陣営が多額の裏金を使ったとされる事件で、公職選挙法違反(買収など)の罪に問われた、前知事の実弟で前縫製会社社長の佐藤祐二被告(63)の判決公判が22日、福島地裁であった。大澤廣裁判官は「民主主義の根幹である選挙の公正さを揺るがした」として、祐二被告に懲役2年6ヵ月執行猶予5年(求刑懲役2年6カ月)の判決を下した。

 判決によると祐二前社長は04年の知事選前、佐藤前知事を当選させるために、ゼネコンから計2275万円の資金を集め県内各地区の責任者に選挙資金として配った。

 大澤裁判官は、祐二被告が「多額の現金をほぼ全県下にばらまく、大規模かつ組織的な犯行を選挙ごとに繰り返してきた」とした。

 また、.福島地裁は同日、同選挙で現金500万円を受け取ったとして同罪に問われた、選対幹部で元会社役員日下健一被告(59)に、懲役1年6ヵ月執行猶予5年(求刑懲役1年6ヶ月)の判決を言い渡した。

[福島前知事弟 求刑2年6月 知事選買収事件]
(出典:2007年01月17日朝日新聞朝刊)

 04年の福島県知事選で前知事の佐藤栄佐久被告(67)=収賄罪で起訴=の陣営が数千万円の裏金を使った事件で、公職選挙法違反(買収など)の罪に問われた、前知事の実弟で縫製会社前社長佐藤祐二被告(63)ら2人の論告求刑公判が16日、福島地裁であった。検察側は祐二被告に懲役2年6カ月を求刑した。また、買収の資金500万円を受け取ったとして同罪に問われた元会社役員の日下健一被告(59)に懲役1年6ヵ月を求刑した。

 両被告に対する判決は22日に言い渡される。

[佐藤工業前会長、談合指示認める 福島県発注工事で初公判]
(出典:2006年12月09日朝日新聞朝刊)

 福島県発注工事を巡る談合事件で、競売入札妨害罪に問われた、地元大手「佐藤工業」前会長の佐藤勝三被告(67)の初公判が8日、東京地裁で開かれた。佐藤前会長は社員に対する談合への指示などは認めたものの、「共謀したとされる人物と面識はない。入札金額を談合したとされる場所には行っていない」などと自身の直接的な関与は否認した。

 検察側は冒頭陳述で、佐藤前会長が01年5月から05年5月までの間、県建設業協会の会長を務め、協会の複数の支部にまたがる区域で施工される大型工事の談合の仕切り役として、本命業者を決定していた、と指摘。

 社内の談合担当には副社長らベテランを置き、社内会議では、受注を希望する工事があれは「ぜひうちで工事を取りたい。取れるだろうな」と、社命として談合を指示していたという。

 これに対し、佐藤前会長は被告人質間で、「各社間の受注調整や談合の仕切り、上納金の集金などはやっていない」と反論した。

 起訴状などによると、佐藤前会長は、04年8月に県が発注した阿武隈川流域の下水道工事の入札で、設備会社社長の辻政雄被告(60)=同罪で起訴=や入札参加業者と共謀。佐藤工業と準大手ゼネコン「東急建設」の共同企業体が落札できるよう、他の入札参加業者と入札額を仙台市の建設会社事務所で相談するなど談合したとされる。

[知事選買収8人起訴 福島前知事関与問えず]
(出典:2006年11月29日朝日新聞朝刊)

 04年の福島県知事選で、前知事の佐藤栄佐久被告(67)=収賄罪で起訴=の陣営で多額の裏金が使われていたとされる問題で、福島地検は28日、前知事の実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二被告(63)=競売入札妨害、収賄の罪で起訴=と、前知事の後援会幹部の飛田新一・福鳥県議(49)、総合選対本部長の坪井浮夫・元県商工会議所連合会長(76)ら8人を公職選挙法違反(買収・被買収など)の罪で在宅起訴した。飛田県議は同日、県議会議長に辞職願を出し、許可された。

 ほかに起訴されたのは、前知事の政治団体の事務を担当していた馬場幸蔵・私設秘書(53)や、後援会幹部の会社役員佐藤祐二被告ら。

 起訴状などによると、佐藤前社長は、前知事が5選を決めた04年9月の知事選届け出前の7月下旬〜8月上旬、飛田県議ら後援会幹部や選対幹部に、選挙運動の報酬などとして計約2300万円の裏金を渡した。飛田県議は8月上旬、郡山市内の選対事務所で支援者らに配る目的で渡された計555万円を受け取った。他の6人も自らへの報酬や支援者に配るためとして100万〜数百万円を受け取ったとされる。8人はいずれも起訴事実を大筋で認めているという。

 ただ、前知事自身の関与は「認められなかった」としている。

 関係者によると、裏金は、前社長とともに県発注の公共工事の談合で仕切り役をしていた設備会社社長、辻政雄被告(60)=競亮入札妨害の罪で起訴=が、工事を受注したゼネコンなど十数社からそれぞれ100万〜数百万円を集めていた。これを佐藤前社長が受け取り、県議らに配布する役だった。2人の役割分担は、04年以前の知事選でも同様に行われていた疑いがあるという。

 04年の知事選での裏金の総額は計約2億円に上ったとされるが、前知事陣営が県選挙管理委員会に提出した選挙運動収支報告書の支出額は計1966万円だった。

 福島地検は、在宅起訴した8人のうち、佐藤前知事との連座制の対象となる佐藤前社長ら4人について、迅速に裁判を進めるための「百日裁判」を福島地裁に申し立てた。

談合・汚職…捜査区切り

〈解説〉中堅ゼネコン水谷建設」の脱税事件きっかけにした検察当局の「福島知事ルート」の捜査は、04年9月の福島県知事選で動いた票買収の裏金について、前知事の佐藤栄佐久被告(67)の実弟や県議ら選挙の実動部隊の刑事責任を問うことで区切りを迎えた。

 東京地検特捜部が前知事の汚職事件の摘発を目指した捜査の過程で選挙違反の証拠を集めた。だが、地方選挙は本来、地元地検の管轄であることや、オンブズマンから公選法違反容疑の告発が福島地検に出されたことなどから、東京から福島に捜査を移送する手続きがとられた。その後、福島地検が検討し、起訴相当と判断した。

 検察側が投開票から2年以上経過した知事選での選挙違反を摘発するのは極めて異例だ。検察当局が、あえて立件したことは、今後の他の選挙違反捜査にも影響を与えることになりそうだ。

 一連の捜査では、ゼネコン各社からの資金が実弟の元に集められ、県内各地で前知事の選対幹部を務めていた県議らに裏金として配布されていた実態が浮かび上がった。前知事が圧勝した選挙を支えた、票買収の約2300万円を含めた裏金総額も約2億円とけた外れに多かった。

 検察内部では一時期、「選挙直後に地元の県警が立件すべき事案」「選挙から時間もたちすぎている」など、立件に慎重な意見もあった。

 だが、検察当局は、立件に足る証拠が集まった選挙違反の事実を見過ごすことはできないという立場に加え、裏金の「質」も重大視した。県発注工事でゼネコン側に便宜を図り、その見返りに現金を受け取る構図で生まれた裏金が、前知事の長期政権を支えていた。その事実を明らかにしてこそ、談合、汚職と続いた一連の捜査が完結するとして、公選法違反事件を福島知事ルートの捜査の終着点に位置づけたとみられている。  特捜部は引き続き、水谷建設の脱税事件で明らかになった裏金の解明などの捜査を継続している模様だ。(西山貴章)

[宮崎県前知事に2000万円 初当選直後ヤマト設計から]
(出典:2006年12月12日朝日新聞朝刊)

 宮崎県の官製談合事件で、前知事の安藤忠恕容疑者(65)が初当選した前回知事選の直後、ヤマト設計(東京)社長の二本木由文容疑者(56)が前知事に現金2千万円を提供していたことが11日、県警の調べでわかった。前知事の政治指南役で元国会議員秘書の石川鎮雄容疑者(68)と一緒に持参したという。県警は、前知事に何らかの便宜を図ってもらうことを期待したわいろの疑いがあるとみて、慎重に捜査している。

 調べでは、2千万円の授受があったのは03年7月の前回知事選の直後。二本木社長と石川元秘書はともに事実関係を認めたが、現金の趣旨について前知事に具体的な説明はしなかったという。

 二本木社長は「選挙費用として500万円を出した」と周囲に語り、石川元秘書は前知事に選挙対策などを指導していた。知事選後には、二本木社長が石川元秘書へ顧問料名目で約1干万円を提供、前知事の後援会からは石川元秘書に5千万円が渡ったとされる。

 二本木社長と石川元秘書は県発注事業をめぐり、ヤマト設計の受注額を増やすよう前知事に要求。二本木社長は05年6月ごろ、知事公舎を訪ねて直談判したといい、その後に受注が急増した。

 県警は、一連の金の流れと今回の談合事件に結びつきがあるとみて解明を進める方針だ。

[1億7000万円収賄罪 福島前知事を起訴]
(出典:2006年11月14日朝日新聞朝刊)

 福鳥県発注の工事をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は13日、前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)と、実弟で縫製会社「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)=競売入札妨害罪で起訴=を収賄罪で起訴した。ゼネコンが購入した三東スーツの土地の価格約9億7千万円と時価相当額8億円の差額約1億7千万円がわいろと認定された。2人とも起訴事実を大筋で認めている。

 起訴状などによると、佐藤前知事は佐藤前社長と共謀。同県が発注した「木戸ダム」建設工事の一般競争入札で、準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体が落札できるよう受注調整した見返りとして、下請けをした中堅ゼネコン「水谷建設」に、三東スーツの所有地を時価より高い価格で買い取らせたとされる。

 特捜部は、1億7千万円のほか、ゼネコン側から土地を換金する利益を供与してもらったこともわいろと認定した。


 東京地裁は13日、前知事の保釈を許可する決定をした。保釈保証金は2千万円。前知事は同日夜、保釈された。前知事は「県民の皆様、私をご支持・ご支援頂いた皆様には大変ご迷惑、ご心配をおかけしましたことにつき深くお詫び申し上げます。事件の真相につきましては、裁判で明らかになると思います」とのコメントを発表した。

「代役」汚職にメス 水谷建設裏金なお捜査

〈解説〉福島県前知事の汚職事件の摘発は、実弟という「代役」を利用した公共工事の受注調整システムを暴いた。

 前知事実弟の経営会社とゼネコンの不透明な土地取引が浮上し、東京地検特捜部は1年半以上の捜査を続けた。この会社の土地売買行為が前知事のわいろにあたるかなどの壁が立ちふさがった。

 だが、特捜部は関係者の供述などから、前知事と実弟が一心同体だったとする証拠を固めていく。最終的に兄弟双方から、「謝礼の趣旨だと知っていた」との供述が得られた。

 「代役」構造ができたのは、特捜部が93年に摘発したゼネコン汚職事件にさかのぼるとみられる。それまでは首長本人が受注業者を選定する「天の声」を出していたところがいくつもあった。福島県でも前知事が同様に最終決定権を握っていたが、ゼネコン汚職の摘発後、天の声を出す役割は実弟に移ったという。

 水谷建設の脱税事件を起点とした捜査は、前知事の起訴で一つの区切りを迎えた。だが、同社の裏金は多方面にばらまかれていたとされ、特捜部は引き続き、こうした資金の解明を進めるものとみられる。(西山貴章)

吉田松陰の人生読み返す 弁護人に「責任を取ります」拘留22日、保釈

 東京拘置所から13日に保釈された福島県前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)は22日間の勾留中、1日5時間程度の取り調べ時間以外、弁護人が差し入れた本を読んで過ごしたという。

 関係者によると、前知事が特に差し入れを希望したのが、幕末の思想家、吉田松陰の人生を描いた本だった。前知事の蔵書の一つで、若いころに読んだという。前知事は、志半ばで安政の大獄により29歳で亡くなった松陰の人生を、繰り返し読み返していた。

 ほぼ連日あった弁護人との接見は、日々の暮らしや調べの状況をしっかりした口調で説明。食事も十分にとり、体調は良好だった。

 接見で、県政や出直し知事選の話題に触れたことは一切なく、家族のことを心配して、弁護人に伝言を頼むこともあった。また同じ拘置所で勾留が続く実弟の佐藤祐二容疑者(63)を気遣う言葉も口にした。

 逮捕直後の取り調べでは「知らん」との言葉を繰り返し、強気の姿勢を崩さなかったが、11日目の今月2日には、「断腸の思い。責任を取ります」と弁護人に話した。収賄容疑を調べで認め始め、弁護人には「事件のために県政を混乱させてしまった」と反省の弁を述べたという。

 保釈された前知事は13日午後7時前、無言のまま、迎えの車に乗り込んだ。後部座席で一瞬笑みを浮かべたが、その後は硬い表情に戻った。

[収賄事件 福島前知事、容疑認める 土地取引「受注の謝礼」]
(出典:2006年11月02日朝日新聞朝刊)

 福島県発注のダム工事をめぐる汚職事件で、同県前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)が、東京地検特捜部の調べに対し、わいろとされた土地取引について、「工事受注の謝礼だった」などと、収賄容疑を認める供述を始めていたことが、関係者の話でわかった、前知事はこれまで容疑を一貫して否認していたが、供述を一変させた。特捜部は、前知事がダム工事の受注調整に関与した実態や、見返りの土地取引を認識した経緯などについて、さらに解明を進める。

 前知事の実弟で縫製会社「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)も、土地取引を受注謝礼と認識し、前知事に報告したなどと既に供述。受注調整や土地取引を行っていた実弟が前知事の関与を認めたことで、前知事も容疑を認める姿勢に転じたとみられている。

 準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体は、同県が00年8月に入札を行った木戸ダム建設工事を受注。同社は02年、前社長らによる受注調整の謝礼として、下請けの「水谷建設」に指示し、三東スーツが同県郡山市内に所有していた工場用地を購入させた。わいろとされたこの土地取引以外にも、水谷建設が99年に三東スーツの別の土地を購入したり、前田建設工業とその子会社が01年に三東スーツに計4億円を融資したりしていたことも判明した。

 前知事は逮捕前、朝日新聞の取材に対し、「三東スーツの経営には関与していない。土地売却も知らなかった」と話していた。逮捕後の調べでも「納得がいかない」などと否認していたという。

 前知事は三東スーツの大株主で、土地取引の3ヵ月前02年5月まで同社取締役を務めた。

[土地取引「前知事に報告」 福島県汚職 弟、関与認める供述]
(出典:2006年10月31日朝日新聞朝刊)

 福島県発注のダム工事をめぐる汚職事件で、前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)の実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)が東京地検特捜部の調べに対し、わいろとされた土地取引について「兄に報告した」と前知事の関与を認める供述を始めていたことが、関係者の話でわかった。さらに、「土地取引は工事を受注したゼネコン側からの受注の謝礼と認識しており、兄も謝礼の趣旨だと知っていた」とも供述しているという。

 特捜部は、取引を主導していた前社長が前知事の関与についての供述を始めたこどを重視。前知事の関与実態などについてさらに調べを進めている模様だ。関係者によると、前社長はこれまでの調べに対し、土地取引に関し、前知事の関与を一貫して否定していた。しかし、最近の調べでその供述を変えたという。

 同県が00年8月に入札を行った木戸ダム建設工事で、前社長らの受注調整により、準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京都千代田区)などの共同企業体(JV)が落札。前社長は、前田建設工業側に依頼し、この工事の下請けの中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)に三東スーツの福島県郡山市内にある本社工揚用地を、受注の見返りとして購入してもらった。前社長は調べで、この取引を前知事に報告し、前知事も見返りであることを認識した、との説明を始めたという。

 これに対し、前知事は逮捕前、朝日新聞の取材に対して「(三東スーツの)経営には関与していない。土地売却についても知らなかった」と話し、逮捕後の調べにも、逮捕容疑について「納得がいかない」などと否認しているという。

[福島汚職土地取引 時価より4億円高 東京地検 収賄額を特定へ]
(出典:2006年10月28日朝日新聞朝刊)

 福島県発注工事の汚職事件で、収賄容疑で逮捕された同県前知事・佐藤栄佐久容疑者(67)が受け取ったわいろとされる土地取引の価格約9億7千万円について、東京地検特捜部が、時価よりも4億円以上高いとみていることがわかった。特捜部は前知事と実弟の佐藤祐二容疑者(63)の受注謝礼への認識などを調べ、わいろの金額を特定させるとみられる。

 わいろとされた問題の土地約1万1千平方bは、同県郡山市の住宅街にある。祐二容疑者が社長を務めていた縫製会社「郡山三東スーツ」の本社工場があった場所で、現在は大手スーパーなど店舗が立っている。

 贈賄側とされる「前田建設工業」元副会長の指示で、下請けの「水谷建設」が02年、約8億7千万円で購入し、03年2月までに代金を1億円上積みした。前社長が三東スーツの経営難解消のため約10億円が必要と見積もって、ゼネコン側に購入を要求したとされる。

 特捜部は、この取引について、土地評価額の報告書などを入手し、関係者への調べを進めた結果、実際は5億円前後が妥当で、9億7千万円は時価を大幅に上回った額とみている模様だ。

 この土地について、福島県内の不動産会社社長も「9億7千万円は不当に高い」と言う。

 「地価が下がり続けていた状況だった。その中で、売買実績などから算定される路線価を上回った価格で買うなんてあり得ない。土地も広く、買う人が限られるから、路線価より低くするのが普通ではないか」と話す。

 ただ他方では、「高すぎることはない」という声もある。別の不動産会社社長は「商業店舗に貸した場合、投資額に見合った利回りが見込める。問題の土地はスーパーなどに貸しており、9億7干万円は妥当だ」と語る。

 特捜部は、土地売買の行為自体をわいろと認定。特に、代金上積みの1億円は不当な利益供与の疑いが強いとみている模様だ。

総額とれば9億7000万円 ワイロ算出に二つの説

 佐藤栄佐久・前福島県知事が受け取ったとされるわいろは一体いくらなのか。専門家の間でも意見がわれている。実弟が経営する会社から、贈賄側が買い取った土地の価格は約9億7千万円。この総額を「わいろ」と見る説と、時価との差額に限られるとする説だ。これまでの最高額は、ロッキード事件で田中角栄・元首相が受け取った5億円。「史上最高のわいろ」の記録は塗り替えられるのか。

 だまされて10万円のつぼを50万円で買わされた・・こんな場合、法律家は、被害は差額の40万円でなく、50万円と考える。「本当のことを知っていたら、そもそも、そんなつぼは買わなかった」とみなすからだ。

 関東学院大の足立昌勝教授(刑法)は、こうした考えを念頭に、佐藤前知事のケースについて「わいろの意図がなければ、土地の亮買が成立しなかったのでは。取引全体が不正な意図にもとづくのであれば、わいろは総額の9億7千万円だ」と語る。元東京地検特捜部長の河上和雄さんも「総額」派。「時価分を差し引くことは考えられない」と断言する。

 「実はこれ難問です」と語るのは首都大学東京の前田雅英教授(刑事法)。「刑法の教科書にもどちらの説が正しいとは書いていない。これまであまり議論されてこなかった」。熟考の末、差額説に軍配をあげた。法務省のある検事も「常識的には差額分では」。

 ゴルフ場建設の汚職事件で、福岡高裁は93年、贈賄側が町職員から時価より高く買った土地の総額をわいろとした一審判決を破棄。「対価なしに支払われた場合と同一視するのは相当でない」とし、売買価格と時価の差額をわいろと認定した。

 汚職の歴史を見れば、わいろは金銭に限らない。「有形、無形を問わず、人の需要や欲望を満たすべき一切の利益が含まれる」とされる。大正3年、詐欺の容疑者だった女性に、立件を見送るかわりに「情を通じ」るよう求めた警察官がいた。大審院はこの「異性間の情交」もわいろにあたると認定した。

 「結局、東京地検が今回の事件をどうとらえるかによる。起訴状を見てみないことには分からない」と専門家たちは口をそろえる。(谷津憲郎)

[福島県汚職 「役員から知事外せ」 前田建設元副会長「疑われる」進言]
(出典:2006年10月27日朝日新聞朝刊)

 福島県の汚職事件で、贈賄側企業とされた準大手ゼネコン「前田建設工業」の元副会長(74)が99年以降、収賄容疑で逮捕された同県前知事・佐藤栄佐久容疑者(67)の実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)に対し、前知事をスーツ社役員から外すよう何度も進言していたことが、東京地検特捜部の調べでわかった。「知事が役員だと土地取引や融資がわいろと疑われる」と話したという。特捜部は、02年に役員を辞任した前知事の取引への認識を裏づける事実とみている模様だ。

 調べによると、前田建設工業元副会長は、同社の共同企業体が受注した木戸ダム建設工事の入札前の99年11月、佐藤前社長からの要求を受け、下請けの「水谷建設」元会長の水谷功被告(61)に郡山市内のスーツ社駐車場用地を約3億5千万円で購入させた。この際、わいろと疑われてしまうため、同社の役員に登記されていた前知事を外すように勧めたという。

 さらに元副会長は、工事の受注後の01年、前田建設工業と子会社がスーツ社に4億円を融資する際も、前知事が役員のままだったことを知り、「知事が役員として登記されている会社に融資するのはまずい」と再び話した。その後、02年8月に、元副会長の指示で、水谷建設がスーツ社から工場用地を約8億7千万円で購入。元副会長は購入前に、前知事の役員登記に気づき、改めて佐藤前社長に要求したところ、同年5月に前知事は役員を辞任した。関係者によると、佐藤前社長は「前知事が心配するので、知らせずに役員から外した」と説明しているという。

 特捜部は、一連の土地取引や融資を認識したうえで、前知事が役員を辞任したのではないかとみて調べている。

[福島前知事逮 5期18年の果て 下 投票率上げるため裏金]
(出典:2006年10月26日朝日新聞朝刊)

 1976年8月、福島県の大物知事が収賄容疑で逮捕された。当時4期目だった木村守江知事。福島地検の検事として、この汚職事件を手がけたのが同県出身の宗像紀夫・元東京地検特捜部長(64)だ。

 30年を経て宗像氏は今、佐藤栄佐久・前知事(67)の弁護人を務める。リクルート事件やゼネコン汚職事件などで名をはせた元特捜検事が、今回は古巣と対峙する立揚になった。

 「知事の実弟の会社が利益を得たことと、知事の刑事責任がどう結びつくのか。今回の特捜部の捜査手法には、疑間を感じる点も多々ある。知事側にも十分に反論の余地はある」。宗像弁護士は反証に自信を見せる。

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 木村元知事は選挙に強かった。しかも「圧勝」にこだわった。76年春、最後の選挙では75万票を集めた。

 88万票、83万票、78万票、70万票、こちらは佐藤前知事の過去4回の選挙での得票数だ。共産党が支援する対立候補に大差をつけた。ただ、選挙のたびに票は減り、最近2回は低投票率の記録を更新している。

 「多くの人に政策を知ってもらいたい、という前知事の考え方に沿って後援会が動けば動くほど金がかかった」。前知事の側近が振り返る。  だが、大勝が続き知事選への関心は遠のいた。「投票しなかった有権者の票は佐藤前知事に行くはずの票だった」(後援会幹部)という焦りから、必要以上に金をかける悪循環を生み出した。

 04年の前回知事選で、前知事が選挙運動の支出として収支報告書に記載した費用は2千万円弱。しかし、前知事の実弟、佐藤祐二容疑者(63)は、ゼネコンや地元建設業者から集めた裏金のうち約3千万円を票のとりまとめのために県議らに配っていたとされる。

 前知事の後援会の一つを切り盛りした幹部の一人は、「前知事を支援する多くの県議には『横に立つ』金の半分は渡っている」と話す。「横に立つ」金とは、紙幣の長辺を下にしても倒れない100万円の札束を指す。

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 26日告示の出直し知事選は、県政与党同士が争う18年ぶりの本格的な選挙戦となる。

 候補者選びは迷走した。途中まで相乗りを模索した自民、民主がそれぞれ推薦する候補者が出そろったのは告示まで1週間を切った19日のことだった。  共産党を除くオール与党体制に憤れ、「野党に転落したくない」という両党県連が独自侯補の擁立に傾いたのは、「談合で知事が辞めたのに、政治まで談合なのかと批判される」(自民県連幹部)という危機感が強かったからだ。

 「対決の構図」とは裏腹に前知事を支えてきた勢力の動きは鈍い。

 佐藤前知事の地元、郡山市では政財界が一体となって支援してきた。「郡山から出した人のことで『事故』を起こしたんだから、今回は静観するしかない」。長年支援してきた郡山商工会議所の大高善兵衛会頭はそう語る。

 前知事をこぞって支持してきた県内の商工業者や建設業界も多くの関係者が東京地検の事情聴取を受け、身動きがとれない。商工会や農協の政治団体も早々、「自主投票」を決めた。

 ある国会議員経験者は「従来の票読みは通用しない。イメージ先行、風だよりの選挙にならざるを得ない」と語った。(神庭亮介、斎藤智子、立松真文、永田工)

[福島前知事「前田建設は営業熟心」 ダム入札 弟の受注調整承知か]
(出典:2006年10月26日朝日新聞朝刊)

 福島県発注の木戸ダム建設工事をめぐり収賄容疑で逮捕された同県前知事・佐藤栄佐次容疑者(67)が00年夏の入札前、同ダムの受注について「前田(建設工業)は熱心に営業活動をしている」と県幹部に話していたことが、関係者の話でわかった。その前後に、実弟の佐藤祐二容疑者(63)が大手ゼネコン支店幹部らと受注調整し、前田建設工業に木戸ダム工事を落札させたことも判明。特捜部は佐藤前知事が受注調整を承知したうえで発言していた疑いがあるとみて調べている。

 関係者によると、佐藤前知事が前田建設工業に言及したのは00年前半。同ダム工事の入札は同年8月に行われている。前知事は当時の県土木部幹部と話した際、前田建設工業がダム受注に向け「熟心に営業活動をしている」などと話題にしたという。前田建設工業は、前知事に対する贈賄側企業の一つとされた。

 この数年前から、前田建設工業は受注工作を展開。同社の元副会長(74)が99年秋ごろ、仙台市内で、元県土木部長(70)や鹿島東北支店元幹部と会合を持ち、木戸ダム建設の受注希望を伝え、協力を依頼した。下請けに入る予定だった「水谷建設」(三重県桑名市)元会長の水谷功被告も同席していたという。

 前田建設工業はこれとは別に、同県の公共工事の受注調整で最も影響力ある人物として、前知事の実弟である佐藤・郡山三東スーツ前社長にも接触し、同ダム受注への協力を頼んだという。

 佐藤前社長は、元県土木部長と連絡を取り合ったうえ、談合組織の仕切り役だった鹿島東北支店元幹部に前田建設工業に落札させるよう要請。鹿島側はこれを実質的に同県の「天の声」と受け止め、前田建設工業などの共同企業体(JV)を落札予定会社に決めた。佐藤前杜長は当時の県土木部幹部にこの決定を連絡、落札できるよう配慮を頼んだという。前田建設工業のJVは00年8月の入札で木戸ダム工事を約206億円で落札した。

[佐藤前知事 「天の声」93年まで 他県の汚職摘発で中断 弟が引き継ぐ]
(出典:2006年10月25日朝日新聞朝刊)

 福島県発注の工事をめぐり収賄容疑で逮捕された同県前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)が、93年ごろまで、工事の入札前に発注者が受注業者を指名する「天の声」を出していたことが、関係者の話でわかった。同年のゼネコン汚職事件を契機に天の声をやめ、代わりに実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)が談合の仕切り役を務めるようになったという。東京地検特捜部も関係者から同様の情報を得て、贈収賄事件の背景事件として調べている模様だ。

 佐藤前社長は、知事の弟としてゼネコン各社に強い影響力を持っていたため、前社長の業者選定が、実質的に県側の「天の声」として受け止められていたという。

 しかし、90年代初めの時期までは、仙台市を拠点とするゼネコン東北支店の談合組織に対し、同県発注工事の受注業者を指名する、前知事自身の意向が伝えられることがあったという。

 その後、93年に特捜部がゼネコン汚職を摘発し、当時の仙台市長や宮城県知事などを次々と逮捕した。この事件では、ゼネコン各社の役員が、自治体首長に直接面談し、工事の受注希望を伝えていたことが明らかになった。

 この事件をきっかけに、福鳥県では前知事による「天の声」が出されることがなくなった。代わりに、実弟の前社長が、ゼネコンの受注調整に介入し、癸言力を強めていったという。

 また、前社長から県OBなどを通じて、県側に受注調整の結果が伝えられ、県側は落札予定社が入札指名から外れないよう配慮していたという。

 贈収賄事件の対象工事となった、準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京都千代田区)の共同企業体が、00年8月に約206億円で落札した「木戸ダムL建設工事でも、前社長が同社の依頼を受け、落札できるように受注調整していたことがわかっている。

 特捜部は、同県発注工事をめぐる受注調整の実態を調べる中で、こうした経緯を把握した模様だ。このため、前知事が、前社長による受注調整を十分に認識し、関与していた疑いがあるとみて調べている。

知事公館も捜索

 東京地検特捜部は24日夕まで、前知事・佐藤栄左久容疑者(67)の自宅や個人事務所、県庁などを家宅捜索した。午後からは県庁近くの知事公館も捜索先に加えられた。

 県庁や個人事務所の捜索は午後5時ごろ終了。自宅の捜索は約9時間に及び、押収した資料を詰めたとみられる段ボール箱約30箱がワゴン車に積み込まれた。

---------- 福島県知事逮捕 5期18年の果て 中 ----------

 首都機能移転へ空港・地方博… 統率力強大、時に裏目


 「1期、2期目では何か発言しても軽んじられた。4期、5期と当選を重ねて初めて、国に対して対等にモノが言えるようになった」

 収賄容疑で逮捕された福島県の前知事、佐藤栄佐久容疑者(67)は辞職後の10月初め、淡々と話した。

 国の三位一体改革で地方が揺れた03,04年、義務教育費国庫負担金の税源移譲を巡り、全国知事会で激論が続いた。移譲に反対する文部科学省が各知事の切り崩しを図る中、知事会では副会長だった佐藤前知事の「激」が毎回のように飛んだ。

 「腰をふらつかせてどうするんだ。一枚岩になって行かなければなめられる」「目先のエサにふらついてはだめだ。武士は食わねど高楊枝だ」  大舞台で、国に一歩も引かない姿勢を貫いた。

■■

 「ぶれない知事」。そんなイメージも実はここ10年ぐらいのことだ。

 プルサーマル計画を白紙撤回し、核燃料サイクル政策に異議を唱えた佐藤前知事も就任当初は、原子力政策についてほとんど知識がなかった。

 原子力推進にもともと批判的だったわけではない。資源エネルギー庁幹部は「むしろ理解ある知事だという印象があった。それが徐々に変わった」と振り返る。

 きっかけは01年、同県広野町の火力発電所の増設計画が凍結されたことだった。東京電力が連絡なく凍結を公表したことに激怒した。

 「東大に入るときよりも勉強した」。周囲にそうもらすほど、原子力政策を研究した。地元から地域振興を期待してプルサーマル受け入れを求める声があがっても、最後まで折れなかった。

■■

 長期政権で勝ち得た強力なリーダーシップは裏目にも出た。

 佐藤前知事は90年代初め、首都機能移転の推進を打ち出す。空の玄関口、福島空港の滑走路を整え、空港に至る自動車専用道路「あぶくま高原道路」を事業化した。今、その空港は利用者減に悩む。一部開通した高原道路の利用も低調だ。首都機能移転の熱が冷めた後も、「福島に『首都』を」という夢にこだわった。04年12月の県議会。共産党の県議に「首都移転はもうやめるべきでは」と問われると、撫然とした表情で切り返した。「意義、必要性は一層高まっていると確信しております」。強い口調に、ヤジを飛ばす県議はいなかった。

 佐藤前知事の肝いりで01年夏に開催された地方博「うつくしま未来博」でも、総事業費230億円のうち150億円を県費から支出しながら、来場者が目標を大きく下回った。後に、県が3千枚余の入場券を無料配布していたことが発覚、「成功にみせかける帳尻合わせ」と批判を浴びた。

 計画段階から、佐藤前知事は県議会で批判を浴びたが、耳を傾けようとしなかった。

 「結局、自分の選挙でたたかれるのが怖いから、議員は最後まで誰も逆らえなかった」。県議の一人が漏らした。

[1億円上乗せ「変だ」 土地取引捜沓の端緒]
(出典:2006年10月24日朝日新聞朝刊)

 この1億円は変だ」。03年、中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)のリベート疑惑を調べいた国税当局は、購入代金が後から1億円上乗せされるなど、同社が福島県郡山市内の土地を買取った取引に注目したという。

 検察当局も、佐藤栄佐久・前知事の実弟の会社が絡むこの土地取引を知り、汚職の疑いがあるとみて内偵捜査を始めた。

 東京地検特捜部は05年12月、助成金を不正受給した疑いがあった建設会社の関連先として、水谷建設を捜索。その半年後の今年7月には、東京国税局と連携し、法人税法違反(脱税)容疑で水谷建設への強制捜査に踏み切った。関係先を広範囲に捜索する中に、前知事の実弟の佐藤祐二容疑者(63)が社長を務めていた縫製会杜「郡山三東スーツ」も含まれていた。

 「スーツを作る会社が、ゼネコンから資金提供を受けるのは不自然だ」。当初から検察幹部らは、三東スーツをめぐる土地取引に疑惑の目を向けていた。  特捜部は、水谷建設の脱税事件をステップとして、福島県発注の公共工事をめぐる談合事件の捜査に着手。佐藤前社長が、受注調整の仕切り役を務めていた実態を突き止めた。

 さらに、04年9月の知事選をめぐり、佐藤前社長が、ゼネコン側から提供された裏金を選挙資金に使っていた実態も明らかになった。  土地取引をめぐっては、前田建設工業や水谷建設の関係者から、土地取引などが、大型ダム工事を受注できた謝礼として仕組まれたものだったとの供述を引き出すことに成功した。

 一連の捜査の原点とされる土地取引疑惑。3年越しの捜査が実り、23日、前知事の収賭容疑での逮捕に踏み切った。

おわび・反省 地元に激震

 福島県発注のダム工事を巡り佐藤栄佐久前知事が逮捕されたことに、県庁や県政界、地元の建設業界には激震が走った。

 県庁では23日午後7時半から、佐藤前知事の辞職後、知事職務代理者を務める川手晃副知事が緊急記者会見を行った。「県民にとって大きな裏切りで、深くおわびする。知事を補佐する立場にありながら、把握できなかったことに責任を感じている」と述べた。

 ダムを巡る疑惑については一切知らない。前知事からも『知らなかった』と聞いていた」。今後は、入札制度改革を強く進める考えを示した。

 自民党福島県連幹事長の遠藤忠一県議は「我々としては5期18年、与党として支えてきた責任があり、反省も必要だ」。

 競売入札妨害の罪で起訴され、保釈中の地元大手「佐藤工業」会長、佐藤勝三被告(67)は「前知事は県政のことを一生懸命やってきた。気の毒だ」。佐藤前知事は、政府を相手にプルサーマル計画に反対してきた。

 「原子力政策推進で目の上のたんこぶだったから、結局は国家権力につぶされたんじゃないの」とも話した。

知事経験者はこう見る 選挙後は味方がこわい
 元宮城県知事の浅野史郎慶応大学教授の話

 最初の選挙のときに、私の側近も当選数日後、支援者に「味方をしたよな」と見返りを要求された。恩知らずだと思われたかもしれないが、絶縁した。選挙が終わった後は敵より味方がこわい。青臭いと思われても、「知事とはこういうもんだ」「選挙には金がかかるもんだ」「政治とはしょせんこんなもんだ」という業界の「モンダの人々」と荒業で対抗しなくてはならない。福島の場合も、「モンダの人たち」に絡め取られてしまったのだろう。

 業界に金も票もほしいのを見透かされれば、すぐズブズブにされてしまう。クリーンでいるためには、かかわらないだけでなく、もっと強い責任感を持ち、手を汚さないという態度を示さなくてはならない。

誰のための行政なのか
 元島根県知事の恒松制治地方自治経営学会長の話

 私は大学教授から立侯補し、75年から3期を務めた。私の場合、特に配慮したわけではないのだが、口利きや見返りを求められることは全くなかった。

 要は首長の姿勢だ。入札制度などを改めても、それをかいくぐる道を考える人間は必ず出てくる。今回の福島県も、裏金問題の岐阜県も、長年の憤習などにからめとられ、行政が誰のためにあるのか分かっていないのだろう。小さな自治体ほど、行政に対する住民の感度は意外と高い。首長がやる気にさえなれば、改革することはできる。

プレッシャー、私にも
 須賀龍郎・元鹿児島県知事の話

 地方自治体は単独事業をどんどん削っており、業者は小さなパイを奪い合っているのが現状だ。そのとき首長に必要なのは、はっきりと口利きなどを断る姿勢だ。それ以外、こうした事件は防ぎようがない。佐藤栄佐久前知事のことも存じ上げているが、驚きだ。

 50年以上にわたって県庁に勤めた私にも、プレッシャーがなかったとは言わない。建設業界とのつきあいは多いし、選挙のときには、いろいろな団体の支援をいただいた。しかし一度明確に断って以来、そうした話は来なくなった。選挙を怖がっていたら、ダメでしょうね。

[福島談合 知事選裏金3000万円 談合罪で弟を起訴 前知事関与解明へ]
(出典:2006年10月16日朝日新聞朝刊)

 佐藤栄佐久・前福島県知事が5選を果たした前回知事選の際、実弟で「郡山三東スーツ」社長の佐藤祐二容疑者(63)が、票の取りまとめのため県議らに配った裏資金は総額で約3千万円に達していたことが、関係者の話でわかった。原資はいずれもゼネコンなど県工事の受注業者から届けられた現金だったという。談合の仕切り役だった佐藤社長が受注謝礼として受け取った資金が、前知事の選挙を支えていた構図が裏づけられた形だ。

 東京地検特捜部は15日、県発注の下水道整備工事で受注調整していたとして、佐藤社長らを競売入札妨害(談合)の罪で起訴した。特捜部は今後も、県工事をめぐりゼネコンと佐藤社長側が行った不明朗な土地取引のほか、公職選挙法違反(買収)の疑いがある知事選の裏資金の問題を継続して調べ、前知事の関与の有無を解明する方針とみられる。

 関係者によると、佐藤社長は、知事選では表立った動きを見せないことで知られていた。5選を決めた04年9月5日の知事選では、佐藤社長が、選対支部幹部を務める県議らに自ら票の取りまとめを依頼し、現金数百万円ずつ計約3千万円を配布していたという。

 5選時の買収に使った裏資金の集金役は、佐藤社長とともに談合の仕切り役を務めた設備会社社長、辻政雄被告(60)=競売入札妨害の罪で起訴=だったとされる。ゼネコンなど県工事の受注業者十数社から現金で数千万円を集め、佐藤社長に渡していたという。

 この中には、談合事件の舞台となった下水道工事を受注した準大手ゼネコン「東急建設」(東京都渋谷区)側から04年8月ごろに、辻社長経由で佐藤社長に2回に分けて渡った計800万円も含まれていたとみられる。

 佐藤社長は特捜部の調べに対し、票の取りまとめの目的で裏資金を配ったことを認めているという。この知事選で、前知事陣営が提出した選挙運動収支報告書には、支出損として計1966万円しか記載されていない。

 一方、特捜部は、準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京都千代田区)などの共同企業体が00年8月の入札で、約206億円で落札した「木戸ダム」(福島県楢葉町)建設工事をめぐり、下請けの中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)と佐藤社長側が行った土地取引などについても調べを続けている。 特捜部が15日に競売入札妨害の罪で起訴したのは、佐藤社長のほか、東急建設東北支店元副支店長の門脇進容疑者(63)。同容疑で逮捕した元県土木部長(65)は、処分保留で釈放した。

[前知事弟、調整認める 福島談合受領のカネは「謝礼」]
(出典:2006年10月13日朝日新聞朝刊)

 福島県が発注した下水整備工事の談合事件で、佐藤栄佐久・同県前知事の実弟で「郡山三東スーツ」社長の佐藤祐二容疑者(63)が東京地検特捜部の調べに対し、受注調整したことを認めていることが、関係者の話でわかった。受注調整の謝礼としてゼネコン側から現金計1千万円を受け取ったことも認めたという。特捜部は、佐藤社長を勾留期限の15日に競売入札妨害(談合)の罪で起訴する見通しだ。

 佐藤社長は、設備会社社長の辻政雄被告(59)=同罪で起訴=らと共謀し、04年8月に入札が行われた県発注の下水道整備工事で、準大手ゼネコン「東急建設」(東京都渋谷区)と地元大手「佐藤工業」(福島市)の共同企業体が落札できるよう受注調整した疑いが持たれている。

 関係者によると、佐藤社長はこれまでの調べに対し、東急建設が落札予定会社になったことを辻社長から聞いたことは認めたものの、受注調整したことは否認していた。しかし、その供述を変え、辻社長からの報告を了承するなど、自ら受注調整したことを認める姿勢に転じたという。

 また、東急建設側から受け取った現金について、特捜部が受注の謝礼ではないかと追及したところ、「そうなんですかね」などとあいまいな態度だったが、現在では、謝礼の趣旨を認めたという。

 佐藤社長は04年8月、東急建設側から提供された現金300万円を、前知事の選挙事務所で辻社長から受領。05年8月にも、同建設東北支店元副支店長の門脇進容疑者(63)から、現金200万円を受け取っていた。さらに、04年の知事選の際に同建設側から500万円を渡されたことも新たに認めたという。

[福島知事選 裏金で買収の疑い 公選法違反も視野]
(出典:206年10月09日朝日新聞朝刊)

 福島県が発注した下水道工事の談合事件で、東京地検特捜部は、競売入札妨害容疑で逮捕した、佐藤栄佐久・同県前知事の実弟で「郡山三東スーツ」社長の佐藤祐二容疑者(63)の調べを進めているが、焦点の前知事の関与についてはいまだ不透明だ。この中で、特捜部は知事選で多額の裏選挙資金が使われたことを突き止めたため、公職選挙法違反などの疑いがあるこうした資金の流れに着目した捜査展開を検討している模様だ。

 佐藤前知事は04年9月の知事選で、対立候補を大差で破り5選を果たした。この選挙で収支報告書に記載されていない数千万円の裏資金が動いていたことは、談合の仕切り役だった佐藤社長や設備会社社長の辻政雄被告(59)がゼネコンから受け取っていたとされる受注謝礼金の流れを特捜部が追う中で浮上した。

 この選挙で資金管理をしていた前知事の私設秘書や佐藤社長らが、数千万円の裏資金を選対支部幹部の県議らに配っていたことを、特捜部に対し相次いで認めた。県議らも、票の取りまとめの報酬だったことを説明しているといい、公選法違反の買収などにあたる可能性が高まった。

 この裏選挙資金ルートの立件も視野に入ってきたが、前知事の関与の有無の解明をめざす検察当局では、県工事をめぐりゼネコンと佐藤社長側が行った不明朗な土地取引などを疑惑の中心として引き続き調べている。

 間題の工事は、準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体が00年8月の入札で、約206億円で落札した「木戸ダム」の建設工事。これまでの調べでは、前田建設工業が入札前の99年、この工事の下請け会社となる中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)に要請し、三東スーツの所有地を約3億5千万円で購入させた。前田建設工業と子会社は落札後の01年、三東スーツに計4億円を融資。さらに、水谷建設は02年に別の土地も約8億7千万円で買い、03年に代金を1億円増額していた。この融資と1億円増額は受注謝礼の趣旨だったことを、会社関係者が供述しているという。

知事選裏資金 前知事弟、県議らに配布役 福島談合 辻被告が集金
(出典:2006年10月07日朝日新聞朝刊)

 佐藤栄佐久・福島県前知事の選挙で多額の裏資金が動いていたとされる問題で、集金と配布の役割が分担されていたことが、関係者の話でわかった。設備会社社長で談合の仕切り役だったとされる辻政雄被告(59)がゼネコンなどから数千万円の現金を集める役、前知事の実弟で「郡山三東スーツ」社長の佐藤祐二容疑者(63)は資金を辻杜長から受け取って県議らに配布する役だった。これらの選挙資金には、受注調整の謝礼の趣旨もあるとみられ、東京地検特捜部は実態解明を進めている。

 関係者によると、04年9月の知事選の際、辻社長はゼネコンなど十数社からそれぞれ100万円から数百万円の献金を募り、計数千万円を佐藤社長に渡していたという。

 佐藤社長は知事選の直前に、この現金を県内に6カ所ある選対支部の幹部を務めていた県議らに数百万円ずつ配ったという。
 佐藤社長は特捜部の調べに対し、こうした経緯を認めているという。
 佐藤社長と辻社長は、福島県発注の公共工事で受注調整を取り仕切っていたとされ、04年8月に県が実施した流域下水道整備工事の入札で受注調整していたとして競売入札妨害(談合)容疑で逮捕された。こうした資金の拠出は、ゼネコンなど工事の受注業者が中心になっていたという。
 受注調整では、佐藤社長は、前知事の実弟として辻社長より強い癸言力を持っていた。この裏献金集めでも、辻社長は、佐藤社長の指示に従って集金役を務めていたとみられている。
 こうした役割分担は、過去の知事選でも同様に行われていた疑いがあるという。
 特捜部はこれまでに、前知事の資金を一手に管理していた私設秘書や、複数の後援会幹部などから任意で事情聴取しており、資金集めや使い道に不正がないかなどを引き続き調べている。

業者から数干万円 すべて裏金処理か

 佐藤栄佐久・福島県前知事側の選挙戦用に、建設業者側から実弟の佐藤祐二容疑者を通じて渡ったとされる数千万円の資金が、公職選挙法で記載を義務づけられた収支報告書に一切記載されていないことが分かった。すべての資金が「裏金」として帳簿外で処理された疑いがあるという。  公選法は、公共工事の落札業者の寄付を禁じており、候補者側には選挙運動に関するすべての収支を記載した選挙運動収支報告書の提出を義務づけている。違法な寄付や、報告書に虚偽記載をした場合、3年以下の禁固か50万円以下の罰金が科される。

 前知事の陣営が提出した報告書には、計2668万円の寄付が記載されている。前知事の政治団体「社会政治工学研究会」が計1500万円を寄付したほか、県内の企業経営者や自民党などからの寄付があるが、ゼネコンや地元建設会社の関係者、佐藤社長の寄付は記載されていない。

 同研究会の04年の報告書にも、ゼネコンや地元建設会社の関係者から佐藤社長を通じて渡ったとされる百万円単位の大口献金は一切記載がない。

 設備会社社長辻被告は、工事を共同企業体で落札した準大手ゼネコン「東急建設」から約1千万円、佐藤社長は辻社長から300万円の現金を受け取ったとされる。

Initially posted July 2, 2007. Updated March 12, 2010.