地方官僚(自治体住民からの行政の受任者)の犯罪備忘録


  1. 進まぬ入札改革 地元優先際立つ市町村 今年首長逮捕は12人
    (出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)
  2. 知事権力-----逮捕ドミノ 5
    (出典:2006年12月14日朝日新聞朝刊)
  3. 知事権力 下
    (出典:2006年11月18日朝日新聞朝刊)
  4. 知事権力 中
    (出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)
  5. 知事権力 上
    (出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)

進まぬ入札改革 地元優先際立つ市町村 今年首長逮捕は12人
(出典:2006年12月29日朝日新聞朝刊)

 国土交通省などが28日に発表した公共工事の入札・契約制度の調査では、談合が起きにくいとされる一般競争入札を導入していない市区町村が過半数を占めるなど、自治体で制度に大きな差のある状況が浮き彫りになった。福島、和歌山、宮崎の3県では官製談合事件で知事が相次いで逮捕され、都道府県の入札制度に注目が集まっているが、今年、入札絡みで逮捕された市町村長は12人に上っている。

 茨城県かすみがうら市発注の公共工事をめぐる汚職事件の前市長の初公判が25日、水戸地裁で開かれた。前市長は受注する業者を自ら選んで地元の建設団体幹部らに伝え、業者間で価格調整させていたとされる。

 事件を機に、市は9月から500万円以上の工事は原則、条件付き一般競争入札に変えたが、それまでは一般競争入札は実施せず、指名競争入札だけだった。

「都道府県よりも『縄張り意識』や『身内(地元)優先』が強く働くのが市町村だ。地元業者を優先するあまり、不祥事が起きない限り改善しない」。入札制度に詳しい法政大学の武藤博已教授は話す。03年に全国初の官製談合防止法が適用された北海道岩見沢市発注の工事を巡る談合事件でも、市は「市には談合による損害はなかった」などと結論づけて損害賠償請求せず、「身内に甘い」体質を露呈した。

 全国市民オンブズマン連絡会議で談合問題幹事を務める大川隆司弁護士は、小さな自治体ほど競争原理が働かず、一般競争入札の導入がいっそう進まなくなるとみる。隣接市町村と乗り入れる形で入札参加業者の対象地域を広げ、導入しやすくする改善策もあるが、実施した自治体は聞いたことがないという。

 相次ぐ不祥事を受け、全国知事会は今月、談合防止の指針をまとめた。この中で市町村にも制度改善を求めることも盛り込んだ。大川弁護士も「議会が抵抗勢力になるが、入札制度の問題に関心が集まっている今が改善のチヤンス」と話す。

指名競争入札 福島県、廃止へ

 県発注工事を巡る談合事件を受けた入札制度改革で、福島県は28日、指名競争入札を廃止し、すべての公共工事で条件付き一般競争入札を実施することを決めた。一般競争入札の全面導入は、47都道府県では長野県に次いで2番目となる。

 県によると、来年4月から、3千万円以上の県発注工事で一般競争入札を導入し、同10月からは全工事で実施する。入札参加業者は一定以上の経営力や技術力が求められるが、どの入札でも50社程度が参加するようにして競争性を確保する。ただ、地元業者を優遇する「地域要件」は、業者を育成する観点を踏まえ、競争性が図られる範囲で残す。随意契約も災害対策など緊急の場合に限って認めるという。

 また、今回の事件で公共工事の見積価格などが漏れていたとされる、県の外郭団体「県建設技術センター」について、県土木部幹部OBが同センターの役員に就くことを禁じ、県からセンターへの積算業務委託や役職員派遣も原則取りやめる。

 センターは、技術専門職のいない県内市町村の職員を研修するなどの役割も担ってきたが、県では、市町村の理解も得ながら、同センターに解散を検討するよう求めていくという。

知事権力-----逮捕ドミノ 5
(出典:2006年12月14日朝日新聞朝刊)

議会となれ合い 県議買収は「口止め料」・議案否決わずか

 「要するに、県議たちの口止め料なんだよ。だまり賃」
 圧勝した知事選で、福島県前知事の佐藤栄佐久被告(67)陣営はなぜ、保守系県議たちの買収に走ったのか。そのわけを、後援会元幹部は苦笑まじりに明かした。

 佐藤前知事は88年に初当選、2選目以降の4回の選挙は、相手に5倍以上の差をつけた。直近04年9月の5選時に買収工作があったとして、実弟や県議らが、福島地検に在宅起訴された。
 立件はされていないものの、ほかにも受け取った県議がいるはずだ。地元ではその種の疑惑がなおくすぶる。

 県議買収は、票固めだけではなかった。「議会対策の意昧もあった」と後援会元幹部は言う。「実際、議会で彼らは知事に文句が言えなかった」
 佐藤県政5期18年、福島県議会は、知事議案を通し続けた。例外は、公費不正支出問題の影響で96年度の決算を承認しなかった時くらいだ。
 福島県議会に限らない。全国都道府県議会議長会によると、05年に47都道府県議会に出された議案や決算は、計1万1142件。このうち否決はわずか10件だった。


 東京大学の大森彌・名誉教授(地方自治論)は、本来「車の両輪」のはずの都道府県議と知事がうまく回転していないと感じている。「多くの議会が知事の追認機関となってしまった。知事はおごり、議員は楽な稼業になっている」
 大森名誉教授は、議会が知事への「仲間意識」を捨て、議事機関としての本来の姿に戻るべきだと主張する。
 しかし、知事と議員の仲間意識は薄まる気配がない。

 兵庫県では「意見交換会」を開いて、井戸敏三知事(61)ら県首脳が与党県議らと食事を取りながら話し合いをしている。
 例えば昨年12月1日の会合では知事側6人、議員側10人が出席し、費用は約8万7千円。翌2日は、知事側7人と議員側7人で計11万2千円だった。
 井戸知事と副知事は毎回参加し、県議側は当選回数ごとに分かれ1回ずつ出席していたという。
 市民オンブズマン兵庫は11月下旬、これらの独自調査をもとに、知事に対し公費154万円について県議らに請求するよう求めて提訴した。
 自民党のベテラン県議は「知事側も議員も腹を割って話せるから有意義だ」と主張する。だが、オンブズマン側は「与党議員だけを対象にした会食は、なれ合いにつながる」と指摘する。
 井戸知事が就任した01年8月以降、県議会で知事提案の議案が否決されたことは1件もない。

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 相次ぐ知事の逮捕。余波は、他県の選挙にも広がる。宮崎県と同じ1月4日告示の山梨県知事選。前回に続き自民系勢力が分裂し争っている。
 「地場産業は公共事業」とまで言われた土地柄。選挙になると建設業者らが大々的に運動してきた。しかし今回は違う。会合に、建設業者の姿はまばらだ。
 「談合や何だと建設業者のイメージが悪くなっている。選挙を手伝いたいとの申し出も断っている」と陣営幹部は話す。
 業界側からも「土建屋が選挙を仕切る時代ではない」との声が漏れるが、本音なのか。

 ある陣営幹部は自信たっぷりに否定した。「接戦とされる戦いでは建設業界の動きが今も重要。どの候補なら公共事業を回せるか。最後はその一点で票が大きく動く」
 (河野修一、永田工、菅野俊秀、佐藤徳仁、三橋麻子、立松真文、永井啓吾)=おわり

知事権力 下
(出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)
歳暮・最前席・・・鈍る(続く文字、切抜き紛失により不明)

 74年、滋賀県知事に初当選した武村正義さん(72)が知事公舎に引っ越すと、驚くほどのお歳暮が届いた。知事選で対立候補を支えた建設業界からの品々も多い。知事の座の持つ力を初めて実感した。

 「でも、平気で受け取る知事とという評判が広まれば、次第に贈り物は高額になり、次はゴルフに誘われ、どんどん取り込まれる」。生ものもあったが、わび状を添えて送り返したという。

 「知事をやると独特の特権感覚が生じる」と宮城県知事だった浅野史郎さん(58)は話す。どこへ行くにも秘書が荷物を運んでくれる。飛行機に乗れば、最前列の窓側の席があてがわれた。

 来客に有名人も多くなる。知事になってしばら・・・以下、Web Masterのどじにより切抜きを紛失。残念無念!

知事権力 中
(出典:2006年11月17日朝日新聞朝刊)

内密に渡るカネ

 「皆さんは福島や和歌山を想定するんでしょうけれど、それをやっちゃいかんというのが安藤県以です」
 安藤忠恕・宮崎県知事(65)は16日、記者団の前で力を込めた。この日、県政を揺るがす捜査が動き出したからだ。
 焦点は、安藤知事が知事公舎内に2ヵ月近く置いたままにしておいたとされる現金5千万円。手掲げ袋に入れられ、封がしてあったという。知事選が絡んで、表に出しにくい金だったらしい。

 知事の「裏金」が相次いで発覚している。和歌山県庁では、木村良樹知事(54)に贈られたとみられる現金数百万円の束が、秘書課のロッカーから見つかった。

 発端は今年7月、大阪市内にある建設大手ハザマの独身社員寮で見つかった1枚のメモだった。知事と親しいゴルフ場経営会社元代表にハザマ側が5900万円を提供したと記されていた。現金数千万円もあった。調べに対し、ハザマ側は「裏金の一部は和歌山県知事に渡るだろうと思っていた」と説明した。

 知事の裏金は、93年のゼネコン汚職捜査でも暴かれている茨城県知事(故人)の公判では、検察側が、ゼネコン幹部が足しげく知事を訪ね、毎回のように大金を渡す場面を再現してみせた。

 1千万円を茶封筒に入れて「些少ですが、お土産です」と渡す。500万円にメロン2個を添えて「あいさつの品です」。風呂敷に3千万円を包んで「うちの社をよろしく」と頭を下げる。知事は「お話は承りました」などと礼を述べ、公舎に帰ると段ボール箱に隠したという。

 ゼネコン汚職以後、知事本人に札束を直接手渡すような事件は姿を消した。だが、あるゼネコン関係者は「(授受が)なくなったわけではない。ただ露骨でなくなっただけ」と言い切る。

 東日本のある県では、県工事を受注したゼネコンが、隣県の工事で知事と関係の深い業者を下請けに入れた。これは自社が受注できたことの見返りだったという。

 使途は何か。福島県の佐藤栄佐久・前知事の場合、受注業者らから贈られた裏金は実弟が知事選費用に回していたという。収賄罪に問われた円藤寿穂・元徳島県知事(63)は4年前、「選挙、冠婚葬祭、懇親会などに金が必要だった。知事としての体面を保つには欠かせない出費だった」と法廷で述べた。
知事権力 上
(出典:2006年11月16日朝日新聞朝刊)

巨額の予算群がる業者

 「知事には権力がある。公共工事を差配できる。国会の陣笠議員が束になってもかなわない」。かつて円藤寿穂・元徳島県知事(63)の汚職事件で、贈賄側とされた会社の幹部は、知事への接近工作に明け暮れた理由をそう断言する。

 知事にはどれほどの権力があるのか。

 自治官僚、市長、滋賀県知事、衆院議員、官房長官、蔵相を経験した武村正義さん(72)は「官房長官や蔵相などと比較しても、知事の方がはるかに組織の中で単純明快な権力があった」と話す。

 予算を編成し、執行する。県庁内の人事を決め、組織を動かす。民間会社も許認可権限で事実上支配できる。「ある意味で、議院内閣制にしばられる首相よりも、知事の権力の方が大きい」

 ただ知事側の弱みは選挙だ。選挙で負けるわけにはいかない。カネも人手もかかる。

 和歌山では木村良樹知事の選挙事務所のひとつは、県発注工事を受注した企業の所有地に置かれた。街頭演説では、その社員のほか下請け、孫請けまで動員された。

 福島の佐藤栄佐久前知事の陣営は、5選を決めた選挙で総額2億円を動かしたことが捜査の過程で明らかになった。大半は、県工事の受注業者らが実弟のもとに運んだ資金だった。うち約3千万円が票の取りまとめに費やされたという。

 「選挙が終わると、応援したという人々が次々に現れ、見返りを求められた」。退職した他県知事の側近は、そう明かす。 「選挙のときに応援バスをしたてた。バス代を出してほしい」「ポスターを張るのにたくさん人を使った」「立て替えた金がある」。つけこまれてはならないと考え、当選祝いを返すと、不義理をなじられたという。

 建設業者が求める見返りは、県発注の工事である。06年度予算をみると、公共事業に規模は、和歌山県が「投資的経費」約1150億円の大半。福鳥県では約1433億円。巨額を動かす権限は知事にある。

 談合担当が長かったゼネコン顧問は語った。「知事本人がいくらクリーンを心がけても、群がる者の動きまでは止められない」

◇ 知事の逮捕が続く。その権力と陥りやすい落とし穴を探る。
Initially posted July 3, 2007.