道路公団(国民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。


道路公団編目次

  1. 公団橋梁談合「元副総裁が罪証隠滅」
    (出典:2005年12月17日、朝日新聞朝刊)
  2. 公団橋梁談合 元理事、工事配分認める「いい橋つくるため」
    (出典:2005年7月7日、朝日新聞朝刊)
  3. 橋梁談合 証拠隠減でも捜査 検察当局「資料隠し」実態解明
    (出典:2005年7月5日、朝日新聞朝刊)
  4. 橋梁談合 来週にも独禁法違反容疑で公団元理事ら本格聴取へ
    (出典:2005年7月1日、朝日新聞朝刊)
  5. 公団OB談合下支え 受注増狙う企業、厚遇
    (出典:2005年6月30日、朝日新聞朝刊)
  6. 橋梁談合 道賂公団OB宅捜索 本社で資料処分の情報
    (出典:2005年6月30日、朝日新聞朝刊)
  7. 社説 橋梁談合「官製」を洗い出せ
    (出典:2005年6月30日、朝日新聞朝刊)
  8. 橋梁談合 公団OBに隠匿指示 親睦団体幹部公取委調査に
    (出典:2005年6月29日、朝日新聞朝刊)
  9. 橋梁談合組織、公団元理事の調整了承 一両日中に一斉捜査
    (出典:2005年6月28日、朝日新聞朝刊)
  10. 談合企業から発注側首脳へ
    (出典:2005年6月18日、朝日新聞朝刊)
  11. 橋梁談合 道路公団が手綱
    (出典:2005年6月16日、朝日新聞朝刊)
  12. 横河ブリッジ理事 談合組織温存図る
    (出典:2005年6月16日、朝日新聞朝刊)
  13. 道路公団橋梁工事 未発表の発注情報収集 OB団体、談合用か
    (出典:2005年6月15日、朝日新聞朝刊)
  14. 橋梁談合 25社程度を起訴へ 個人は13人
    (出典:2005年6月14日、朝日新聞朝刊)
  15. 橋梁談合2組織42社 国交省、197天下り
    (出典:2005年6月9日、朝日新聞朝刊)
  16. 橋梁談合 道路公団関与捜査へ 検察、発注分を立件方針
    (出典:2005年6月9日、朝日新聞朝刊)
  17. 橋梁談合、根深い背景 官民癒着、やまぬ受注調整
    (出典:2005年6月9日、朝日新聞朝刊)
  18. 道路公団工事 OB団体、談合内容把握 調整役の元理事伝達 組織的関与か
    (出典:2005年6月8日、朝日新聞朝刊)
  19. 談合抑止の「総合評価」入札自治体6割理解せず 国交省調べ
    (出典:2005年6月8日、朝日新聞朝刊)
  20. 談合事件業界再編促す 橋梁部門を川重分社化 市場は縮小採算悪化
    (出典:2005年6月4日、朝日新聞朝刊)
  21. 道路公団 業者との共同技術、特許無届け計52人 内規違反浮き彫り
    (出典:2005年6月2日、朝日新聞朝刊)
  22. 横河ブリッジ 談合隠し、組織的に 資料、女子更衣室へ 営業データは経理
    (出典:2005年5月30日、朝日新聞朝刊)
  23. 道路公団 談合認識か 橋梁工事OB、配分を調整
    (出典:2005年5月30日、朝日新聞朝刊)
  24. 橋梁談合 都OBから発注情報 設計・技術で有利に
    (出典:2005年5月29日、朝日新聞朝刊)
  25. 橋梁談合 道路公団分も認める 数社の担当者供述
    (出典:2005年5月28日、朝日新聞朝刊)
  26. 橋梁談合 東京高検、独禁法違反容疑で11社の営業担当14人逮捕
    (出典:2005年5月27日、朝日新聞朝刊)
  27. 談合調整役に権限集中 横河ブリッジ・横山理事担当十数年 情報一手、着々地位固め
    (出典:2005年5月27日、朝日新聞朝刊)
  28. 第2東名でも橋梁談合 01〜04年度工事 2組織がほぼ独占
    (出典:2005年5月26日、朝日新聞朝刊)
  29. 橋梁談合担当者十数人きょうから取り調べ
    (出典:2005年5月26日、朝日新聞朝刊)
  30. 橋梁談合 道路公団OB関与 年1000億円、受注調整
    (出典:2005年5月25日、朝日新聞朝刊)
  31. 「談合が正業」脈々と 橋梁メーカー強制捜査
    (出典:2005年5月24日、朝日新聞朝刊)
  32. 談合側が9割受注 検察、橋梁11社を捜索
    (出典:2005年5月24日、朝日新聞朝刊)
  33. 橋梁談合 横川ブリッジ部長主導 47社捜査きょう着手
    (出典:2005年5月23日、朝日新聞朝刊)
  34. 橋梁談合こう隠せ
    (出典:2005年5月22日、朝日新聞朝刊)
  35. 橋梁談合 公取委告発へ 8社の大半受注調整を主導認める
    (出典:2005年5月21日、朝日新聞朝刊)
  36. 橋梁談合 組織以外の入札妨害 赤字で応札、後で補填
    (出典:2005年5月20日、朝日新聞朝刊)
  37. 道路公団幹部、特許「抜け駆け」主導 特定業者が販売権
    (出典:2005年5月18日、朝日新聞朝刊)
  38. 道路公団幹部、特許連盟27社と71件 35件は資材会社と
    (出典:2005年5月18日、朝日新聞朝刊)
  39. 道路公団OB、橋梁30社に天下り「談合」疑惑 企業の過半数受注調整関与か
    (出典:2005年5月17日、朝日新聞朝刊)
  40. 橋梁談合 受注調整前に検査 公取委幹事役の資料入手
    (出典:2005年5月15日、朝日新聞朝刊)
  41. 橋梁談合にルール本、天の声にも採用基準、幹事通さぬ交渉禁止 公取が重要証拠入手
    (出典:2005年5月14日、朝日新聞朝刊)
  42. 道路公団財務諸表に不信感 「債務地超過隠ぺい」内部告発
    (出典:2003年7月15日、日経新聞朝刊)
  43. 阪神高速公団不正入札 元部長に有罪判決
    (出典:2003年2月27日、日経新聞朝刊)
  44. 阪神公団入札妨害 落札者が情報入手直後に他社へ指示
    (出典:2002年11月5日、日経新聞朝刊)
  45. 阪神高速道路公団 入札情報の漏えい次長室で常態化か
    (出典:2002年11月4日、日経新聞朝刊)
  46. 阪神公団元幹部ら逮捕
    (出典:2002年11月3日、日経新聞朝刊)


[公団橋梁談合「元副総裁が罪証隠滅」]
(出典:2005年12月17日朝日新聞朝刊)

検察指摘 分割発注「天下り目的」  東京高裁で16日に始まった橋梁談合事件の初公判で、検察側は冒頭陳述で、独占禁止法違反と背任の罪に問われた旧日本道路公団の元副総裁・内田道雄被告(61)について「組織的な罪証隠減工作をした」と批判した。背任罪の起訴事実となっている工事の分割発注については「天下りのためだった」と指摘した。
 検察側は、内田元副総裁らが業界の要望に応えて工事を分割し、公団に損害を加えたとしている。冒頭陳述は、分割発注の動機について「業者に対する優位的地位を維持し、業者に自分らの厚待遇での再就職を確保するためだった」と述べて、天下りが目的だったと強調した。
 さらに検察側は、内田元副総裁が@部下に談合の証拠となる書類の隠匿や破棄を指示させたA「自分も金子理事も検察に呼ばれると思うが、談合については話さない」と言って暗に否認を指示したと述べ、「捜査を妨害するため、組織的な罪証隠減工作をした」と主張した。
 分割発注について内田元副総裁は「分割で業界全体の育成、レベルアップを果たすことができた」と述べ、背任にはあたらないとの考えを示している。元副総裁は初公判終了後、「裁判の中で、できる限り主張していきたい」と話した。
 この日の初公判で、内田元副総裁は起訴事実を全面否認して無罪を主張。メーカー側は大半が全面的に認めた。元公団理事の金子恒夫被告(58)は起訴事実を否認。業界の仕切り役を務めたとされる元公団理事で横河ブリッジ元顧間の神田創造被告(71)は認めた。

業界動揺「橋梁」から撤退も  鋼鉄製橋梁工事の談合事件は業界に大きな影響を与えた。旧日本道路公団が分割民営化した3会社はいまも、談合をしていたとして公正取引委員会から排除勧告を受けた41社を指名停止としている。談合組織の中心だった横河ブリッジの25ヵ月間が最長で、同社は07年6月末まで橋梁工事を受注できない。多くの自治体もこれらの企業の指名を停止している。 こうした状況の中、神戸製鋼所と造船会社のサノヤス・ヒシノ明昌は10〜11月、橋梁事業からの撤退を発表。三菱重工業が来年4月をめどに橋梁設計部門を切り離して子会社に統合するほか、川崎重工業や日立造船も橋梁部門の分社化を検討。三井造船は200人の人員を100人に削減する方針を打ち出した。
 公取委は、各社に契約金額の3〜6%を課徴金として納付するよう命じる方向で準備を進めている。総額は100億円を超すとみられる。また、市民団体「株主オンブズマン」(大阪市)は株主代表訴訟を準備中。公取委の対応も踏まえ、石川島播磨重工業など8社の取締役を相手に訴訟を起こす予定だ。
 旧公団系3社は発注元として、談合組織の加盟会社に過去3年間の工事の契約金額の10%を「違約金」として請求する方針。しかし、これについては、複数のメーカーが「公団側主導の官製談合で逆らえなかった」と主張し、減額を求める姿勢をみせている。
 談合間題に詳しい弁護士は、顧問先企業に指名停止や課徴金・違約金の問題、株主代表訴訟のリスクを説明し、「談合は割に合わないからやめるように」ど注意するようになった。逮捕され、諭旨免職となった営業担当者もいる。「以前は関連会社に再就職できたが、いまはそれもできない」という。

「常識」の乖離 公判で解明を  道路関係4公団民営化推進委員を務めた作家の猪瀬直樹さんの話
 事件摘発以降、旧公団の発注した橋梁やトンネルなどの事業で落札率(予定価格に対する落札額の割合)がおおむね10%下がっている。今回の摘発がいかに談合を抑止したかを物語っている。被告側は「共存共栄だ」と言いたいだろうが、競争することで企業が機会を獲得し、磨かれていく。1割ぐらい安くしても質が落ちるわけではない。
 公団の発注権限は03年度から2年間だけで1兆円以上だ。その1割だと1千億円が本来国民に還元されるはずだったものだ。その分を、天下りを養うために浪費していたのを公団は当たり前と思っていたのではないか。世間の常識と公団の常識がいかに乖離(かいり)しているのか、。公判を通じて如実に明らかにされることを期待する。それが、談合を再燃させないことにつながると考える。



[公団橋梁談合 元理事、工事配分認める「いい橋つくるため」]
(出典:2005年7月7日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事の談合事件で、横河ブリッジに天下りした後、談合を仕切っていたとされる公団元理事(70)が、工事を各社に配分していたことを認め、「いい橋をつくるためには業者任せにせず、自分が割り振った方がいいと思った」という趣旨の説明をしていることが関係者の話でわかった。元理事は公団側の関与を否定しているとされるが、東京高検は公団の現役職員が関与した「官製談合」だった可能性があるとみて、詰めの捜査を続けている。
 東京高検は元理事から任意で事情聴取するとともに、公団ルートで強制捜査に乗り出した6月29日に自宅を捜索した。同ルートでは、公団OBの親睦団体「かづら会」のメンバーが全国の公団支社から末公表の工事発注予定を集め、それをまとめた一覧表を公団本社の現役職員が確認するなどしていたとされる。しかし、元理事は、現役の公団職員の関与については全面的に否定しているという。
 関係者によると、工事配分について、元理事は「業者同士で談合すると金額だけで割り振る。自分ならば工事の特性を踏まえて、この技術を持つ会社が受注した方がいいと判断でき、公団にとってブラスになったはずだ」と話し、中心的な役割を果たしていたことを認めている。
 しかし、「公団の意を受けてやったわけではない」とも述べ、受注調整は自らの判断で続けてきたと説明。公団の現役職員とも、天下り先の横河ブリッジの仕事とも関係がなかったと話しているとされる。
 関係者によると、元理事は95年に横河ブリッジに再就職。このころ、橋梁業界では三菱重工業に下った元公団副総裁(76)が談合の仕切り役を務めていたが96年ごろに体調を崩し、元理事が後を継いだ。
 元理事はそれ以後、談合組織「K会」「A会」の加盟各社が公正取引委員会の立ち入り検査を受けた昨年10月まで、ほぼ一人で配分を続けたという。  業界側への最終確認の意昧も合め、補佐役を務めていた三菱重工業の元橋梁部次長に相談。各社の業績やどんな技術を持つかに通じていた元次長の助言で、若干の修正をすることもあったとされる。



[橋梁談合 証拠隠減でも捜査 検察当局「資料隠し」実態解明]
(出典:2005年7月5日朝日新聞朝刊)

 官公庁発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で、組織的な証拠隠しが疑われるケースが相次いでいるとして、検察当局は4日までに、業界の受注調整の実態に加え、捜査に備えた証拠隠滅の有無の解明にも重点をおいた捜査を始めた。家宅捜索した橋梁メーカーの横河ブリッジなど談合組織の加盟社や日本道路公団の関係者に対し、意図的な資料隠しなどがなかったかどうか詳しく説明を求めている。
 橋梁談合事件で東京高検は、国土交通省発注工事をめぐる独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で関係者・法人を起訴。続いて、道路公団ルートを捜査している。
 国交省ルートで法人として起訴され、公団ルートでも刑事告発された横河ブリッジでは、資料が女子更衣室や東京都内の自社ビルに隠されていたとされる。高検は同社関係者の供述をもとに数回の家宅捜索を重ね、これらの資料を押収した。
 また、6月29日に強制捜査が始まった道路公団ルートでは、公団本社で保管していた多くの技術系資料が東京都町田市の公団施設に移されていた。加えて、資料の移動が進んでいるとの事前情報もあったことから、高検は大規模な捜索を実施。企画部職員の自宅からは公団職員の天下りに関連する資料が押収されたという。高検はこうした資料の移動状況の分析や関係者の聴取で、組織的な証拠隠しがなかったか詳細に検討する構えだ。
 公団施設への資料の移動について、公団側は「組織改編に伴うものだ」と説明している。



[橋梁談合 来週にも独禁法違反容疑で公団元理事ら本格聴取へ]
(出典:2005年7月1日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合事件で、東京高検は来週にも、受注調整を主導したとされる元横河ブリッジ顧問の公団元理事(70)ら3人を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで本格聴取する見通しだ。受注調整の連絡役を務めた石川島播磨重工業の元橋梁営業部長(49)が、談合組織の総会で「JH(日本道路公団)もよろしく」と発言していたことも関係者の話で判明。高検は毎春の総会で、国土交通省発注分とともに公団分についても談合ルールを確認したとみている。
 3人は公団元理事、元橋梁営業部長のほか、工事配分について助言したとされる三菱重工業の元橋梁部次長(54)。さらに、押収した資料や関係者の任意聴取の結果を分析し、聴取対象の検討を進める。
 関係者によると、石川島播磨重工業の元橋梁営業部長は04年3月、談合組織「K会」総会で「JHも例年のようによろしく」と話した。総会には元部長を合む、加盟会社の担当者各1人ずつが出席していたが、元部長の発言に異論は出なかったという。
 また、元部長は総会の場で、公団工事の入札について、あらかじめ談合で決めた落札予定会社以外の参加会社「サクラ」を決めるルールを変更すると報告したこともあったとされる。
 これまでの調べで、国交省分では二つの談合組織が総会で幹事を選び、受注調整を一任していたことが判明。東京高検は同じ総会で、公団分でも談合を承認した疑いが強いとみて調べている。
 関係者によると、公団分については談合組織「K会」「A会」幹部が、公団元理事による受注調整を事前に了承。元理事が工事の割り振りを決めた。
 結果は石川島播磨重工業の元橋梁営業部長に伝えられ、元部長が率いるチームが、落札予定会社が決まった工事の入札で「サクう」を務める会社を選び、各社に連絡していたという。
 東京高検は30日までに、公団本社の企画部長、調査役ら企画部の現職職員数人から参考人として事情聴取を始めるとともに、一部の職員については関係先として自宅を家宅捜索した。

談合の有無「判断困難」国交省検討委が検証  国土交通省は30日、入札談合再発防止対策検討委員会(委員長・岩村敬事務次官)の第2回会合を開き、同省発注の過去5年間の入札結果を検証した結果、「談合を見抜くのは困難」との見解で一致した。ただ、落札率(予定価格に対する落札価格の割合)が低い入札は、談合組織の非加盟社が参加していたことが多く、同省は「低価格の入札に着目すれば、談合発見の端緒になり得る」としている。
 00〜O4年度の鉄橋工事の入札計1548件の落札率の平均は、談合組織加盟社だけの入札は96%、加盟社と非加盟社が混在する入札は95%、非加盟社だけは92%で、大きな差はなかった。一方、落札率が50-70%台で基準を下回った入札22件のうち20件は、談合組織非加盟社が参加していた。



[公団OB談合下支え 受注増狙う企業、厚遇]
(出典:2005年6月30日朝日新聞朝刊)

年収1800万円、週1出勤 支社回り情報収集  日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事で談合していたとされるメーカーに天下りし、業界の受注調整を陰で支えたのは公団OBたちだ。OBは高給が保証され、OB同士の親睦団体の活動として未公表の発注情報を集め、企業側は「公団工事の受注増につながる」と積極的にOBを受け入れる。公共事業を食い物にして互いの利益を図る公団と業界の癒着ぶりが鮮明になっている。(西山貴章、河原田慎一)

 公団OBの全体組織「道友会」の名簿によると、談合組織「K会」(17社)と「A会」(30社)の加盟社に天下りしたOBは昨年11月現在で32社に38人。公団退職時の役職は理事、東京第建設局長、東京第3管理局長など上級幹部が名を連ねる。
 「橋梁メーカーに天下りしたOBの年収は退職した際の役職に応じ、公団の支社長、副支社長クラスで1800万円前後が多い」。関係者はそう語った。ある企業の場合、公団との間で主に50代前半に退職する職員について天下りの調整をする。受け入れると、年収1千万円以上の待遇を与えるなど配慮し、70歳まで在職した例もある。
 高給が保証される中で、大手鉄鋼メーカーの顧問を長く務めたあるOBは「会社に行くのは週1回ほどで、具体的な仕事は何もなかった」。天下りしたOBの中には、橋梁メーカーに再就職したOB同士の親睦団体「かづら会」の活動が主で、社内業務はほとんどしていない人もいたという。
 かづら会では、各OBが全国の公団8支社などを手分けして回り、受注調整の基礎資料となる次年度の予定工事名や鋼材のトン数などの情報を末公表の段階で把握するのが仕事だ。元支社幹部は「退職時の役職で公団側の対応が変わり、元上級職のOBには支社長自ら会っていた」。公団側もOBをもてなす態勢があったという。
 あるメーカーの談合担当者は東京高検の調べに対し、OB受け入れの理由について「公団の工事がとれると思った」と供述しているという。
 公団の内部資料によると、古参メーカーで作るK会17社のうち15社が公団OBを採用。公団元理事が顧問だった横河ブリッジは00-04年の総受注額が346億円だったが、OB採用がなかった1社は17億円。後発のA会30社でも、受け入れた21社が受注額の上位を占めた。公団関係者は「工事発注の見返りにOBを採用してもらうという暗黙の了解が出来ていた」とも明かした。

再発防止へ早急に対処 近藤・公団総裁
 日本道路公団の近藤剛総裁は29日、「公団に立ち入り捜査が行われたことは大変遺憾だ。捜査に全面協力するとともに再発防止に早急に取り組み、一劾も早く国民の信頼回復を図る。告発を受けた業者には厳正に対処する」との談話を発表した。
 また公団は、再発防止策の一環として「談合等不正行為防止策検討委員会」を設置することを決めた。総裁を委員長に副総裁と全理事、外部有識者の12人ほどで構成。国土交通省が設置した検討委での議論を参考に、過去の鋼橋工事の入札結果の分析や役職員倫理規程の効果の検証、天下りの規制などを協議する。

 ■談合組織加盟企業への公団OBの天下り人数■
 (04年11月現在、「道友会」名簿から)
3人 トピー工業
2人 片山ストラテック、栗本鉄工所、駒井鉄工、滝上工業
1人 アルス製作所、石川島播磨重工業、宇野重工、宇部興産機械、川田工業、神戸製鋼所、コミヤマ工業、サクラダ、佐藤鉄工、JFEエンジニアリング、新日本製鉄、住友金属工業、住友重機械工業、東京鉄骨橋梁、東綱橋梁、巴コーポレーション、名村造船所、日本橋梁、日本車両製造、日本鉄塔工業、ハルテック、日立造船、古河機械金属、松尾橋梁、三井造船、宮地鉄工所、横河ブリッジ
計32社38人



[橋梁談合 道賂公団OB宅捜索 本社で資料処分の情報]
(出典:2005年6月30日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で、東京高検は29日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで公団本社に加え、橋梁メーカーに天下りした公団OBの元副総裁、元理事、元技師長の自宅を家宅捜索した。また、最近になって公団本社で保管していた技術系資料が移動されたり、処分されたりしたとの情報をもとに公団の関連施設も捜索した。高検は押収資料をもとに組織的な証拠隠滅がなかったか分析する。

 捜索を受けたOBのうち、横河ブリッジ顧問だった元理事は橋梁メーカーに天下りした公団OBの親睦団体「かづら会」の全般幹事を務める談合の仕切り役で、三菱重工業の元橋梁部次長の助言を得て、各社への工事配分を決めていたとされる。
 また、三菱重工業に天下りした元副総裁はかつて工事の割り振り役を務め、96年に元理事に役割を引き継いだという。元技師長は04年1月に公団を退職。今回の告発容疑となった2年間のうち、03年当時は現職だった。
 一方、関係者によると、高検が捜索した東京都町田市の公団施設では今月初めから中旬にかけて多数の段ボール箱が運びこまれたとされる。
 関係資料をめぐっては別の公団関係者も「7月1日の人事異動前の書類整理を理由に、工事の積算資料などを各部署や個人が勝手に処分している」と話す。技術系のネットワークシステムを使った通信内容などのデータも消されたという。
 日本道路公団は「公団本社の文書を外に移しているのは事実だが、組織改編に伴うものだ。現時点では資料の隠蔽は公団として把握していない」と話している。



[社説 橋梁談合「官製」を洗い出せ]
(出典:2005年6月30日朝日新聞朝刊)

 鋼鉄橋の建設をめぐる談合が、日本道路公団発注の工事でも行われていた。公正取引委員会の告発を受けて、東京地検が強制捜査に乗り出した。
 捜査の焦点は公団の役職員が談合に関与したのかどうか、かかわったとすれば官と業者がどんな仕組みで癒着していたのか、その徹底的な糾明だ。
 国土交通省が発注した工事の談合事件では、橋梁メーカー26社と各社の営業担当者ら8人が起訴された。しかし、摘発された過去3年分の工事では、官僚の談合関与はみつからなかった。
 朝日新聞社の調査報道などによると、道路公団発注工事の談合は巧妙な仕組みになっている。
 メーカーに天下つた公団OBらが「かづら会」という団体をつくり、公団職員と接触しては工事の発注予定や内容をつかむ。その情報をもとに、大手メーカーに天下った公団の元理事が工事の配分を決める。公団側も、指名競争入札の際に、決められたメーカーを必ず参加させていたというのだ。
 公団OBと現職、業者が互いに協力し、落札業者が出来レースで決まっていく。競争はなく、高値の落札になる。
 国交省(旧建設省)も道路公団も、かつては自ら受注調整を仕切っていたといわれている。「天の声」で工事会社を指名したのだ。
 しかし、93年のゼネコン汚職事件がきっかけで、あからさまな関与がしにくくなった。官製談合防止法がつくられるなど規制も強まった。古巣に顔が利く天下りOBの差配は、新手の「宮製談合」ともいえる。
 公団は近藤剛総裁をトップに外部の専門家も加えて委員会をつくり、再発防止策をまとめるという。最も重要なのは、多数の役職員が関連企業に天下りし、公団の収入にたかっている、そんな構造を徹底的に改めることである。
 鋼鉄橋梁の発注額は年間1千億円にのぼる。談合による割高分は、借金増や通行料金の高止まりの大きな原因だ。
 告発を受けた業者に対し不当利得の返還を求めるのは当然だ。
 道路4公団は、この10月に六つの民間会社に移行する。計画中の道路をすべて建設できる仕組みなど、政府の関与が強い民営化には大きな疑間が突きつけられている。きっばりと癒着を絶たなければ、もはや民営化の意昧はない。
 道路のメンテナンスなどを請け負うファミリー企業の整理も急がなければならない。天下りOBの暗躍で、これも高コストになっている可能性が高いからだ。
 巨大市場で、半世紀にわたって経団連の主要メンバーの大企業が主導していた橋梁談合は、悪質さが際だっている。
 競争なんかしなくても、もたれ合いで分け前にありつこう。そんな甘えの論理が消費者の利益を奪い、経済の発展をむしばむ。制裁金を厳しくするなどの独禁法改正に反対した産業界は、まだまだ自覚が足りない。



[橋梁談合 公団OBに隠匿指示 親睦団体幹部公取委調査に]
(出典:2005年6月29日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合疑惑で、橋梁メーカーに天下りした公団OBで作る親睦団体の幹部が、公正取引委員会の調査に対して談合事実を否認し、出張目的も明らかにしないよう各OBに指示していたことが関係者の話で分かった。出張では公団側から未公表の発注情報などを集めていたという。工事の割り振り役で横河ブリッジ顧間だった公団元理事を中心とした親睦団体が談合に関与していた事実を組織的に隠そうとしたとみられる。

 公取委は28日午後、検察当局と協議し、横河ブリッジなど3社を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で29日にも刑事告発することを決めた。東京高検は日本道路公団を含む関係個所を一斉捜査し、公団側の関与について解明を進める。
会社関係者らによると、公取委は昨年10月、橋梁メーカー各社を一斉に立ち入り検査し、各メーカーに再就職した公団OBの親睦団体「かづら会」の会則や名簿を入手した。昨年11月以降、各社のOBは公取委から事情聴取の呼び出しを受け、天下り先の各社も各OBの出張目的などを文書で提出するよう求められたという。
 こうした公取委の動きに対し、かづら会の幹部は各OBに対し、@公取委に談合の事実を否認し、一人だけ突出して供述することはしないA出張目的には答えないことなどを指示。その後、公取委の聴取が始まると、すべてのOBが公団発注の工事での談合の事実を否認し、かづら会の存在自体も認めなかったOBもいたという。  また、出張目的については、会社側が公取委に報告しようと準備していたところ、OBの依頼で見送った社が複数あったという。
 かづら会では、「地区幹事」に任命されたOBが3人一組となり、それぞれ公団の全国8支社と2建設局を分担して訪問。発注担当者から次年度の予定工事名や、鋼材のトン数を未公表の段階で聞き取る出張を重ねていた。これらの情報を公団元理事が集約し、談合組織の加盟社に工事を割り振る際の基礎資料に使っていたという。
 OBの出張目的を公取委に隠したことについて、会社関係者は「OBが組織的に未公表の発注情報を集めていた実態が明らかになることを恐れたためだ」などと指摘している。
 かづら会にはOB45人(03年7月現在)が登録。横河ブリッジ元顧間の公団元理事は同会を統括する立場で、96年ごろから公団発注分で談合組織「K会」「A会」の受注調整を取り仕切っていた。

[営業が目的の訪間禁止方針]公団、各社に通知へ  日本道路公団は28日、公団OBを含む業者による営業目的の訪問を禁止する方針を固めた。29日にも各社に文書で通知し、自粛を求める。道路公団の橋梁工事をめぐっては、橋梁メーカーに再就職した公団OBが現役職員と接触し、事前に情報を得た疑いが持たれている。新たな規制により、業者との癒着の根絶をめざすという。



[橋梁談合組織、公団元理事の調整了承 一両日中に一斉捜査]
(出典:2005年6月28日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁工事で、横河ブリッジに天下りした公団元理事が工事の割り振り役を務めることを談合組織「K会」「A会」の幹部が短年度、事前に了承していた疑いが強いことが関係者の語でわかった。検察当局はこの了承をもとに元理事が受注調整する一方で、両組織は総会で国土交通省発注分とともに公団分も談合することを承認していたとの見方を強めている。
 公正取引委員会は、横河ブリッジなど3社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで刑事告発する見通しで、検察当局は一両日中に公団を含めた関係個所に対する一斉捜査に乗り出す方針。
 公団発注工事については、横河ブリッジ顧問だった公団元理事が毎年度初めに三菱重工業の元橋梁部次長の助言を受け、東京都内の横河ブリッジ本社内などで工事配分を決定していたとされる。
 関係者によると、こうした受注調整に先立つ前年度末、「連絡役」を務めていた石川島播磨重工業の元橋梁営業部長が、談合組織「K会」(旧紅葉会、17社)と「A会」(旧東会、30社)の常任幹事会社の担当者2人に、次年度も公団元理事らが調整役を務めることについて打診。次年度も元理事による受注調整に従うことについて意思を確認し、工事の配分を決めた。4月の両組織の総会では、国交省分などを含めた工事全般について談合することを承認していたとされる。検察当局も関係者からこうした経緯について供述を得ているとみられる。



[談合企業から発注側首脳へ]
(出典:2005年6月18日朝日新聞朝刊)

[新会長、1O月就任] 道路公団民営化会社「当事者ではない」
 道路関係4公団の民営化で10月に発足する新会社のトップ人事に、橋梁談合事件が影を落としている。東日本高速道路会社の会長には新日鉄の八木重二郎・前副社長の就任が内定しているが、15日に独占禁止法違反の罪で起訴された26社には新日鉄も合まれていた。国土交通省は「八木氏本人は当事者ではない」として既定路線を通そうとしている。

 新日鉄など26社は03,04年度に国交省発注の橋梁工事で談合を繰り返したとして、東京高検から起訴された。八木氏は当時の副社長。今年4月に取締役社長付となり、東日本高遠道路の最高経営責任者である会長への就任が内定した。
 新日鉄などによると、八木氏は橋梁の営業担当ではなかったという。しかし、ナンバーツーとして法令順守を社内に徹底させる立場にあった。10月からは新会社のトツプとして、工事を発注する側に回る。談合を見過ごせば、会社の損失を招きかねない立場になる。
 自らの人事について八木氏は、朝日新聞の取材に対し、新日鉄を通じて「今はお話しできない」と回答。新日鉄は「会社として深く反省し、再発防止に全力を尽くす」としている。
 17日の閣議後会見でこの問題を問われた北側国交相は、「八木さんが談合に関与したとは聞いていない」と話し、「人柄、識見が会長にふさわしいと思っている。人事を見直すつもりはない」と断言した。
 橋梁談合と道路公団民営化会社の人事をめぐっては、西日本高速道路の会長に内定している石田孝・コベルコクレーン社長も、談合組織「A会」の加盟社である神戸製鋼所の常務や専務を02年まで務めた。
 道路公団民営化推進委員を務める作家の猪瀬直樹氏は「談合は業界ぐるみであり、国交省もその土壌をつくってきたのではないか。今のうちにうみを出しきり、新会社の会長には、就任に際して『談合は一切させない』と宣言することを求めたい」と話している。

[受注調整、外部頼み] 利害対立、業界主導は困難  橋梁工事の談合疑惑で、日本道路公団が工事会社を指名する「天の声」を出すのをやめた後、橋梁メーカー側が業者主導の受注調整を試みていたことがわかった。だが、各社の利害がぶつかり、公団OBを調整役とする方式に変えて談合を続けてきたとされる。各メーカーの担当者だけでは話し合いが難しく、外からの調整を求める業界体質を示した形だ。  東京高検は公団分についても独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の告発を受け、立件する方針。週明けにも新たに応援検事を集め、公団側の関与も合めて捜査を本格化させる構えだ。
 関係者によると、90年Cろまで、談合組織「みどり会」が公団工事について「天の声」を参考に受注企業を決めていた。91年に談合資料流出などで「みどり会」は解散したが、受注調整は水面下で続いた。
 しかし、93年にゼネコン汚職事件が発覚。「天の声」に批判が集まり、公団は「天の声」を出すのをやめたとされる。この後、国の工事では談合組織が「K会」「A会」として復活。「過去5年間の受注量を忠実に再現することが国の意向」などとして業者主導の談合を始めた。
 一方、公団の工事については三菱重工業や横河ブリッジなど大手5社が「五社会」を結成。業者間で受注調整を試みた。しかし、公団の工事は1件あたりの受注額が大きく、利害が対立するなどしたため、調整できなかったという。
 94年ごろ、三菱重工業の担当者が90年に同社に天下りした旧建設省出身の元公団副総裁=すでに同社を退職=に相談。このOBによる割り振り案には異論が出ず、95年も同様に受注調整した。
 95年9月には公団生え抜きの元理事が、業界最大手の横河ブリッジの顧問に就任。96年からこの元理事が配分役になり、三菱重工業の担当者が補佐したという。

[新たに15社指名停止に] 国交省期問延長も  国交省発注の橋梁工事談合事件で、国交省は日、独占禁止法違反の罪で起訴された橋梁メーカー26社のうち新たに15社を20日から5-10ヵ月の指名停止にすると発表した。既に指名を停止した11社のうち6社は、昨年、秋田県内での談合疑惑で同省に出した誓約書が虚偽だったとして、停止期間を1〜2ヶ月延長する。同省によると、10ヶ月の指名停止は談合事件で過去最長。指名停止期間は、新日鉄、日立造船など12社が東北、関東、北陸の3地方整備局で8ヵ月、他の8部署で5ヵ月。横河ブリッジや住友重機械工業など9社は、昨年に東北地方整備局が発注した工事で、談合をしていないと虚偽の誓約書を提出していたことから、東北、関東、北陸の3地方整備局で10ヵ月、他の8部署で6ヵ月の指名停止にする。



[橋梁談合 道路公団が手綱]
(出典:2005年6月16日朝日新聞朝刊)

かつては直接「天の声」批判恐れてOB調整へ 関与、捜査の焦点に 
 鋼鉄製橋梁工事の発注で、日本道路公団が93年ごろまで入札前に工事会社を指名する「天の声」を出し、これを受けて橋梁メーカーの談合組織が受注調整をしていたことが関係者の話で分かった。この「官製談合」型は同年のゼネコン汚職事件を機に廃止され、公団OBを調整役とする方式に移行したという。東京高検の捜査の焦点は国土交通省発注分から同公団発注分に移る。

 関係者によると、年間発注額が約1千億円の公団工事では93年以前、各橋梁メーカーの営業担当者や天下りした公団OBらが公団本社などを訪れ、工務担当理事など工事発注の担当幹部らと面会。工事の受注希望や自社の営業努力などを説明することが日常的に行われていたという。
 この中で、工務担当理事らが、各工事ごとに落札予定会社を指名する「天の声」を各社側に伝達し、その後、談合組織の「旧紅葉会」と「旧東会」は、この意向に沿って工事の受注調整をしていたという。メーカー元幹部は「工務担当理事への直接の営業活動が決め手となり、天の声をもらっていた」と証言する。
 しかし、93年、東京地検特捜部に当時の仙台市長や茨城県知事らが逮捕された一連のゼネコン汚職事件が発覚し、地方自治体の首長らが恒常的に「天の声」を出していた実態が明らかになり、批判が強まった。
この事態を受け、公団側が「天の声」を出す形での受注調整はやめて、代わりにメーカーに天下りした公団の大物OBが受注調整の仕切り役を務めることになったという。関係者は「調整内容は公団側に伝わり、事実上承認を受けた形になっている」と証言する。
 2談合組織は91年に会員企業からの談合資料流出などで解散したが、93年に「K会」「A会」として復活。公団元副総裁から三菱重工業に当時天下りしていたOB(76)が工事を割り振る役割を務め、96年に横河ブリッジ顧間の公団元理事(70)に引き継がれた。関係者によると、談合組織加盟社の数年前の資料には元理事が公団幹部と会っで工事配分を決めるとした記述もあったという。
 日本道路公団広報・サービス室は「コメントを差し控えたい」としている。

[国交省ルート26社8人起訴6人釈放]  国交省発注の橋梁工事をめぐり、公正取引委員会は15日、すでに刑事告発していた法人8社に加え、法人18社と個人8人を追加告発した。これを受け、東京高検は談合組織に加盟する47社のうち計26社と8任を独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で起訴した。
 また、5月26日に逮捕した14人のうち残る6人は処分保留で釈放した。起訴猶予とする方針。



[横河ブリッジ理事 談合組織温存図る]
(出典:2005年6月16日朝日新聞朝刊)

[捜査直前他社に運営依頼]
 国土交通省発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で15日に起訴された橋梁専業メーカー・横河ブリッジの横山隆理事(59)が5月中旬、東京高検の強制捜査が目前に迫った時期に談合組織の親しいメンバーを集め、その後の組織運営を依頼していたことが分かった。昨年10月の公正取引委員会の立ち入り検査後、大手鉄鋼メーカーの「離脱宣言」も相次ぐなかで、談合組織が今後も存続するよう手を打とうとしたとみられる。

   同高検は15日、談合組織二つの加盟社のうち計26社と8人を起訴した。
 関係者によると、大手17社で構成する談合組織「K会」の仕切り役だった横山理事は、同会加盟の10社でつくる「名門のゴルフクラブを回る会」の親しいメンバー4人を集めた。業界内で当時、刑事告発の可能性が低いと言われていた造船会社の担当者に「後は誰かと(談合組織の運営を)やって欲しい」と依頼したが、拒まれたという。
 橋梁專業メーカーの関係者は「業界の歴史は談合の歴史。談合を前提に利益構造が成り立っており、談合抜きでは考えられない」と話す。91年の恐喝事件を契機に談合組織は表向き解散したが「談合をやめるという話は全くでなかった」という。
 A会の元会員は「兼業メーカーは橋梁で赤字になっても他分野でカバーできるが、専業はそうはいかない。談合から抜けて受注がゼロになる恐怖には勝てない」と話す。
 専業メーカーの横河ブリッジで長年、談合担当を続けた横山理事の自宅から、東京高検は受注調整の相談を詳細に記録した7冊の大学ノートを押収した。関係者は「(ノートなどを)処分しなかったのは、組織をもう一度立ち上げる時に必要だったからだと思う」と話している。(村上潤治)

  今後の捜査公団に焦点
<解説>橋梁(きょうりょう)談合をめぐる国交省、日本道路公団、東京都の3ルートのうち、検察当局は公取委から告発を受けた国交省発注分の全容をほぼ解明した。問題の根幹として浮かび上がってきたのは鉄鋼橋梁業界の体質だ。
 「長年にわたって、談合を共存共栄のための必要悪と考えてきた」と検察幹部は指摘する。業界に反省を促すため、法人については、公取委が告発した独禁法違反事件で過去最多となる26社を起訴した。
 逆に個人については組織の一員としてかかわった面もあることを重視し、最終的に起訴対象を絞り込んだ。
 今後、捜査は道路公団ルートに移る。公団発注の工事では天下りした公団OBが仕切り役となり、受注調整をしていたことが判明。検察当局は公団分についても独禁法違反で立件する方針だが、談合組織が公団工事の発注予定を把握し、受注予定会社を決めた経緯などの解明が課題だ。公団幹部ら発注者側の関与があったかどうかが最大の焦点になる。(三橋麻子)

かづら会の存在 幹部ら「知らぬ」
公団総裁の聴取に
 日本道路公団の近藤剛総裁は15日、定例の記者会見で、橋梁メーカーに再就職した公団OBの団体「かづら会」について幹部の役職員から聴取したことを明らかにした。異口同音に「そのような会合は聞いたことがない」「(談合の)事実はない」と答えたという。同会の存在を認める発言はなく、現役幹部による組織的な談合を否定した。

 ■起訴された26社と8人■
●担当者が起訴された8社
横河ブリッジ(東京都)=横山隆・橋梁営業本部担当理事(59)▽JFEエンジニアリング(同)=西英隆・橋梁営業部長(54)▽東京鉄骨橋梁(同)=戸田捷三・顧問(61)▽石川島播磨重工業(同)=清宮正美・橋梁営業部長(49)▽宮地鉄工所(同)=中山忠啓・橋梁営業部長(55)▽川田工業(富山県)=清水賢一・橋梁事業部元部長(58)▽高田機工(大阪市)=林信行・東京本社東部営業本部長(56)▽栗本鉄工所(同)=竹田良司・鉄構事業部営業本部長(55)
●その他の18社
松尾橋梁(大阪市)▽三菱重工業(東京都)▽川崎重工業(神戸市)▽日本橋梁(大阪市)▽三井造船(東京都)▽サクうダ(千葉市)▽住友重機械工業(東京都)▽日立造船(大阪市)▽滝上工業(東京都)▽新日本製鉄(同)▽日本鉄塔工業(同)▽駒井鉄工(大阪市)▽片山ストうテック(同)▽トピー工業(東京都)▽日本車両製造(名古屋市)▽ハルテック(大阪市)▽川鉄橋梁鉄構(東京都)▽佐藤鉄工(富山県)



[道路公団橋梁工事 未発表の発注情報収集 OB団体、談合用か]
(出典:2005年6月15日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁工事をめぐり、橋梁メーカーに天下りした公団OBの親睦団体が、全国の公団支社ごとに担当者を決め、発注情報を未公表の段階で集めるよう指示していたことが関係者の話で分かった。この情報は団体内で集約された後、各OBが受注希望の工事名を、談合の仕切り役とされる横河ブリッジ顧問の公団元理事(70)に郵送で伝えていたという。  東京高検は、公正取引委員会の追加告発を受け、国土交通省発注分で26社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で起訴する方針を固めるとともに、公団発注分について詳しい経緯の解明を進めている。
 関係者によると、橋梁メーカーに再就職した同公団OB同土の団体「かづら会」は3月末の総会で、北海道から九州までの公団8支社など10ブロックに分けて、各ブロックごとに地区幹事のOBを選任。地区幹事のOBは今後数年間で予想される発注情報を収集するよう指示を受け、これらの情報を同会の代表幹事に集約することを確認していたという。
 また、この総会では、直後の4月に各支社や建設局、工事事務所単位で公表される見通しの来年度の予定工事一覧表が、出席者に配布されていたという。この一覧表は、同会の予想工事も含まれたものだが、内容の一部はOB側が非公式ルートで事前に取得したものとみられる。
 その後、各OBは4月以降、天下り先が受注を希望する工事名を記した手紙を封筒に入れ、代表幹事に郵送。代表幹事は中身を見ないまま、横河ブリッジ顧問の公団元理事に届けていたという。
 かづら会にはOB45人(03年7月現在)が登録。公団元理事は全般幹事という役職で、会を統括していたという。
 OBによる未公表情報の収集について、公団関係者は「OBの存在意義は、いち早く工事の発注情報を仕入れることだ」と指摘している。



[橋梁談合 25社程度を起訴へ 個人は13人]
(出典:2005年6月14日朝日新聞朝刊)

 国交省が発注する鋼鉄製橋梁工事の入札をめぐる談合事件で、東京高検は、二つの談合組織に加盟していた47社のうち計25社程度について、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で法人処罰を求める方向で最終調整に入った。逮捕されている11社の営業担当者ら計14人の勾留期限にあたる15日にも公正取引委員会から追加告発を受け、起訴する見通し。個人については14人のうち13人の告発を受け、起訴する方針とみられる。
 この事件で公取委は5月23日に03,04年度に受注調整を一任されていた2組織の幹事役計8社を刑事告発。東京高検はこの8社に3社を加えた11社の関係者を逮捕した。
 捜査の結果、幹事役8社以外にも、受注額が大きく、談合で大きな刹益を得たり、談合に深く関与したりした加盟社があったことが判明。こうした会社は幹事役と同様の刑事責任があるとみて、古参メーカー17社でつくる「K会」のメンバー会社を中心に、立件対象の法人を増やす方向で検討していた。東京高検と公取委は計25-28社について法人処罰を求める方向で、追加告発の準備を進めているとされる。



[橋梁談合2組織42社 国交省、197天下り]
(出典:2005年6月9日朝日新聞朝刊)

 国土交通省発注の橋梁工事をめぐる談合事件で、談合組織「K会」と「A会」に加盟する橋梁メーカー47社のうち42社に、国交省(旧建設省を合む)の退職者が197人天下りしていることが8日、わかった。日本道路公団の退職者も、36社に43人が再就職していた。

 民主党の中川治衆院議員の資料請求を受け、国交省と道路公団が1-7日に各社に問い合わせた結果を、8日の衆院国土交通委員会で明らかにした。国交省から天下りした197人のうち、独占禁止法違反容疑で逮捕者が出た11社への再就職は69人。うち6人が役員を務めている。他の31社では15人が役員になっている。日本道路公団の退職者は43人中7人が取締役に就任している。

港湾関係工事も落札率98%超す 談合の疑い、共産指摘
 国土交通省が97-01年度に発注した港湾関係工事の入札をめぐり、7割以上の工事で、予定価格に対する落札額の割合(落札率)が98%を超える極めて高い率になっていたことが分かった。8日の衆院経済産業委員会に吉井英勝議員(共産)が資料を提出し、「港湾工事でも談合入札が行われた可能性が濃厚だ」と指摘した。
 提出資料によると、国交省の全国8地方整備局が97-01年度に発注した港湾関係工事は計4254件で、受注額は総額約1兆630億円。落札率98%以上だった工事が3193件(75.1%)あり、そのうち395件(9.3%)は落札率100%だった。



[橋梁談合 道路公団関与捜査へ 検察、発注分を立件方針]
(出典:2005年6月9日朝日新聞朝刊)

 官公庁が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合事件で、検察当局は、公正取引委員会が刑事告発した国土交通省発注分に加え、新たに日本道路公団発注分も独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立件する方針を固めた。国交省発注分について11社の営業担当者ら計14人を逮捕した東京高検は公団発注分についても捜査を進めており、公団元理事など各メーカーに天下りしたOBらの事情聴取も続けている。

 日本道路公団の橋梁工事は年間発注額が約1千億円。逮捕された複数の営業担当者は公団発注分についても談合を認めているとされ、今後、公団側の関与についても本格的に捜査を進める。
 関係者によると、公団元理事の横河ブリッジ顧問(70)が毎年度当初、東京都内の同社本社内などで三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)=独禁法違反容疑で逮捕=の助言を受け、各社への工事配分を決定していたとされる。東京高検は横河ブリッジの家宅捜索で、公団発注工事について談合組織の加盟各社への配分を記した割り付け表を押収している。
 また、関係者は公団元理事らによる受注調整について「内容は公団側に伝わり、事実上承認を受けた形になっている」と証言。談合組織加盟社の数年前の資料には元理事が公団幹部と会って工事配分を決める、とした内容の記述があるといい、談合組織の受注調整を公団側が認識していた可能性が出てきている。



[橋梁談合、根深い背景 官民癒着、やまぬ受注調整]
(出典:2005年6月9日朝日新聞朝刊)

 過去最大規模の摘発となった鋼鉄製橋梁(鋼橋)工事の入札談合事件で、各社は約50年前から談合組織を作って受注調整を続けてきたことが明らかになった。発注者の国側が落札会社を指名する「天の声」を出して積極的に関与した時期があった疑いも出ている。日本道路公団発注工事でも公団OBによる調整や談合組織加盟社への天下りが浮上。法規制が強まる中で根強く談合が生き続ける背景に「宮民癒着」の実態があることが浮き彫りになってきた。(村上潤治、河原田慎一、市田隆)

 規制すり抜ける動きも 鋼橋工事は近年、プレストレスト・コンクリート(PC)を使った橋梁の普及に押されていた。そのPC橋工事でも、メーカー23社が、国と福島県分で談合していたとして昨年10月、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除勧告した(審判中)。03年9月には橋脚と橋げたをつなぐ耐震用ゴム製品の販売価格でヤミカルテルが結ばれていたとしてメーカー13社が排除勧告を受けた。「橋」に絡む事業で受注調整は「日常」となっている。

 「天の意向」なお 鉄橋工事の受注調整は、遅くとも談合組織「K会」の前身・旧紅葉会が結成された60年ごろから続く。当時、旧建設庁発注工事では、「同省職員が発する『天の声』に沿って受注調整していた」と複数のメーカー元幹部が証言する。
 しかし、93年のゼネコン汚職事件以降、「官製談合」型の受注調整は、同省側が批判を恐れて解消したとされる。
 旧紅葉会は91年に会員企業から談合資料が流出するなどしたのを機にいったんは解散したが、93年にK会として復活。この際、過去の受注実績をもとに工事を割り振る調整ルールを導入した。
 談合組織の会社関係者は「『天の声』が出ていた当時のシェア維持が役人の意向と考えたから」と理由を説明する。また、K会作成の「談合ルールブツク」にも、知事など地方自治体の首長や大臣クラスの国会議員の意向に配慮する記述があった。「官製談合」型の受注調整は依然として色濃く続いでいる。
 国交省地方課は「職員の談合関与は聞いたことがない」としているが、官主導の枠組みで始まった受注調整という性格が強い分、業者側にはそれを違法としてやめようという意識は希薄だ。
 今回、摘発された47社のうち20社は日本経団運の会員企業でもある。逮捕者が出た三菱重工業、石川島播磨重工業などの重鎮企業は、過去にも下水道ポンプの談合問題で排除勧告(係争中)を受けた。「綱紀粛正」との弁は有名無実で、「談合は必要悪」というのが本音とみられる。

 OBが緩衝材に  00年に北海道庁が主導した大規模な官製談合が公取委に摘発されたことを機に、03年1月に官製談合防止法が施行。談合関与の発注者側に改善報告を義務づけるなど対応策がとられた。新潟市発注工事では04年、予定価格を業者に漏らした元市幹部らが偽計入札妨害罪で逮捕・起訴された。
 しかし、官製談合の規制強化の流れの中で、それをすり抜けようとする動きが出始めている。
 日本道路公団発注の鋼橋工事では、公団元理事の大物OBが受注調整に深く関与していた疑いが判明した。OBという「緩衝材」を使って官製談合批判をかわして談合を続けようとする構図とも見て取れる。

 天下り禁止や罰則強化が必要(武藤博己・法政大学教授)
 橋梁工事のように公共事業にほぼ100%依存てきた業界は、景気後退で公共事業予算が縮小される前に、各企業は、技術革新で本当の競争をするか、縮小・撤退するかなど今後の方向性を考えておく必要があった。
 しかし、そうした淘汰の選択がないまま、水ぶくれのような状況になっていた。その中で、入札が金額で決まる限り、談合を止めるのは難しい。
 談合をしにくくするには、金額だけでなく、環境に配慮した工法を取り入れているかなど様々な評価を点数化する「総合評価型入札」を導入することが必要だ。だが、発注者がその後、受注者にまわる天下りの構造は、その評価基準でさえ骨抜きにしかねない。天下りの禁止など根本的な対策が必要だ。
 来年1月には、課徴金算定率の引き上げなど改正独占禁止法が施行されるが、不当利益の回収程度の意味しかなく、社会的制裁としては不十分といえる。欧米では企業が生き残ることが難しいほどの高い罰金が科せられる。談合に対して寛容な日本では、罰則規定の甘さなどから再び談合を招く恐れもある。
   ◇
 50年生まれ。国際基督教大大学院修了。行政学、地方自治などが専門で、主な薯書に「入札改革談合社会を変える」(岩波新書)などがある。

 「一度になくすの難しい」(経団連の奥田会長)  日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)は今月3日、談合事件に関する朝日新聞記者の取材に答えた。
ー今回の橋梁談合事件では、日本経団連で副会長を務める三菱重工業の担当者も対象になった。
 日本経団連として、不祥事をなくそうという通達は出すかもわからないが、起きるたびに内部で対処していく。それしかない。
ー談合の企業体質を変えていくためにどのような議論が必要か。
 談合だって何十年も前からやっている。独禁法が出来る前からやっているんだから、なかなか一度になくすことができるかといえば難しいだろう。
ー独禁法の改正で課徴金が引き上げられるが。
 経団連が反対したといわれているが、法案は経団連と公取委が同調して作ったものだ。ただ、罰則を重くさえすればなくなるという問題ではないと思う。(刑事罰との兼ね合いも)今後2年間かけて見直すということだ。

「法令順守」取り組み 46社調査
 鋼橋工事の談合組織「K会」「A会」の加盟会社のうち、破産会社を除く46社を対象に、朝日新聞社は企業コンブライアンス(法令順守)の取り組みについてアンケートを実施した。@社内で実施している対策A昨年10月の立ち入り検査以降の新たな取り組みを質問」8日までに42社が回答した。
<アンケートの主な結果> ●回答企業(42社)
▽主な回答
【住友金属工業】
04年4月に独占禁止法順守に関する情報交換ガイドラインを制定し、同法違反を疑われるような競業者との情報交換行為そのものを禁止
【三菱重工業】93年3月に「独占禁止法ベカラズ10カ条」などを作成し、全社に配布。今年4月以降、課長以上の全員から「コンブライアンス誓約書」を取る
【川崎重工業】外部の弁護士を窓口とする「コンブライアンス報告・相談制度」を定めて運用
【三井造船】03年1月に社長がコンプライアンス宣言。独禁法順守を含むガイドブックを従業員に提供
【名村造船所】企業の透明性、法令順守は、基本的かつ最低限の社会的責務だとする経営方針をトップより常々、管理者に指導
▽公取委の調査中などを理由に「回答しない」とした企業(17社)
栗本鉄工所、宇部興産機械、宇野重工、大島造船所、片山ストラテック、辻産業、佐世保重工業、東海鋼材工業、日本鉄塔工業、東綱橋梁、日本車両製造、古河機械金属(現・古河産機システムズ)、東京鉄骨橋梁、楢崎製作所、松尾橋梁、宮地鉄工所、横河ブリッジ
●8日までに一切回答なし(4社)

 各社のコンプライアンス策をみると、回答したほぼ全社が行動基準や独占禁止法マニュアルを作って幹部社員らに配布。全社を巡回して講習会を開催したり、相談窓口の「社内ホットライン」を設置したりしている社もあった。住友金属工業は、独禁法違反を疑われる競業他社との情報交換を禁止していた。
 立ち入り検査後の対応では、三菱重工業は課長以上から、法令や国際ルールの順守を約束するコンプライアンス誓約書を取得していたが、7社は「特にない」とした。また、談合を主導したとされる川田工業など4社からは回答が寄せられていない。

 企業は自ら事実解明を  今回の鋼橋談合事件では、立ち入り後も受注調整を続けていたことも判明している。
 桐蔭横浜大コンプライアンス研究センターの郷原信郎教授(経済刑法)は、談合問題のコンプライアンスの一般論として「重要なことは法令違反の疑いが表面化したのを機に、違反の原因を究明し、是正措置をとることだ」と話す。
 例えば、落札の受注経過や積算根拠を詳細に調べれば談合の有無がある程度分かるはずだと指摘。「制度や業界全体の構造的問題がある場合は、担当者個人の処罰だけでは解決しない。各企業が自主的に事実の解明に取り組み、根本的な原因を明らかにすることが重要だ」と話している。



[道路公団工事 OB団体、談合内容把握][調整役の元理事伝達、組織的関与か]
(出典:2005年6月8日朝日新聞朝刊)

 日本道断公団が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合疑惑で、同公団元理事で業界最大手の横河ブリッジに天下りした同社顧問(70)による各社への工事割り振りは、メーカー各社に天下りした公団OBの親睦団体にも伝達されていたことが関係者の話で分かった。各OBはこのルートで調整結果を知っており、OB団体が談合に関与していた疑いが強まった。元理事は96年に同公団元副総裁から三菱重工業に天下りしたOBから調整役を引き継いでいたという。

 検察当局は、この元理事など複数の公団OBを参考人として事情聴取するなど、公団OBが深く関与した談合の実態解明を進めている。
 関係者によると、各橋梁メーカーに再就職した同公団OB同士の団体「かづら会」は03年に会合を開催。各OBが、天下り先企業などが受注を希望する同公団の工事名を同会の代表幹事に伝え、元理事が情報を集約することを確認したという。 そのうえで元理事は、東京都港区の横河ブリッジ本社などで三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)=独占禁止法違反容疑で逮捕=から助言を受け、談合組織加盟社への工事配分を決定。石川島播磨重工業橋梁営業部長の清宮正美容疑者(49)=同容疑で逮捕=を通じ、各社の談合担当者に連絡していた。
 また、ほぼ同時に、元理事は「かづら会」ルートでも工事配分の結果を伝え、各OBに知らせるようにしていたという。加盟社関係者の一人は「組織を通じて決定を知らされる前に『この工事はいけそうだ』と我が社のOBさんが教えてくれた」と証言している。
 元理事は96年ごろ、公団発注工事に関する受注調整の役割を、公団元副総裁から三菱重工業に天下りしたOBから引き継いだという。
 元理事は94年に公団を退職し、95年に横河ブリッジの顧問に就任。副社長などを歴任した後、02年から再び同社の顧問を務めている。
 元理事は朝日新聞の取材に対し、OBが関与した受注調整について、「そういうことはあるわけがない。こちらからお話しすることは何もない」と話した。三菱重工業の顧問を退任している元副総裁も、受注調整について「そんなことは知らない」としている。



[道路公団工事 OB団体、談合内容把握 調整役の元理事伝達 組織的関与か]
(出典:2005年6月8日朝日新聞朝刊)

 日本道断公団が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合疑惑で、同公団元理事で業界最大手の横河ブリッジに天下りした同社顧問(70)による各社への工事割り振りは、メーカー各社に天下りした公団OBの親睦団体にも伝達されていたことが関係者の話で分かった。各OBはこのルートで調整結果を知っており、OB団体が談合に関与していた疑いが強まった。元理事は96年に同公団元副総裁から三菱重工業に天下りしたOBから調整役を引き継いでいたという。

 検察当局は、この元理事など複数の公団OBを参考人として事情聴取するなど、公団OBが深く関与した談合の実態解明を進めている。
 関係者によると、各橋梁メーカーに再就職した同公団OB同士の団体「かづら会」は03年に会合を開催。各OBが、天下り先企業などが受注を希望する同公団の工事名を同会の代表幹事に伝え、元理事が情報を集約することを確認したという。 そのうえで元理事は、東京都港区の横河ブリッジ本社などで三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)=独占禁止法違反容疑で逮捕=から助言を受け、談合組織加盟社への工事配分を決定。石川島播磨重工業橋梁営業部長の清宮正美容疑者(49)=同容疑で逮捕=を通じ、各社の談合担当者に連絡していた。
 また、ほぼ同時に、元理事は「かづら会」ルートでも工事配分の結果を伝え、各OBに知らせるようにしていたという。加盟社関係者の一人は「組織を通じて決定を知らされる前に『この工事はいけそうだ』と我が社のOBさんが教えてくれた」と証言している。
 元理事は96年ごろ、公団発注工事に関する受注調整の役割を、公団元副総裁から三菱重工業に天下りしたOBから引き継いだという。
 元理事は94年に公団を退職し、95年に横河ブリッジの顧問に就任。副社長などを歴任した後、02年から再び同社の顧問を務めている。
 元理事は朝日新聞の取材に対し、OBが関与した受注調整について、「そういうことはあるわけがない。こちらからお話しすることは何もない」と話した。三菱重工業の顧問を退任している元副総裁も、受注調整について「そんなことは知らない」としている。



[談合抑止の「総合評価」入札自治体6割理解せず 国交省調べ]
(出典:2005年6月8日朝日新聞朝刊)

 公共工事の入札での談合を防ぐために、業者の技術力などを加昧して審査する「総合評価方式」制度を理解していない自治体が全国の約6割にのぼることが、国土交通省の調べでわかった。橋梁工事を巡る談合事件で入札制度のあり方があらためて問われており、国交省は「対策を考えたい」としている。
 国交省のシンクタンク、国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)が4-5月に、47都道府県と2399市町村の入札担当部局にアンケートし、回答率は85.2%(5月19日現在)。
 総合評価方式は、新技術の開発や環境への配慮といった要素も考慮して受注者を決めるため、価格だけの入札に比べて事前のすり合わせが難しく、談合の防止に役立つとされる。だが、回答のあった自治体のうち導入しているのは、北海道、埼玉、愛知、兵庫、佐賀など15道県と、神奈川県藤沢市、長崎県五島市など8市町にとどまつた。
 回答では総合評価方式を「知っていた」は38%。これに対し、「聞いたことはあるが、内容は知らない」が48%、「聞いたこともない」が15%だった。今後の導入については「末定」が58%で、「予定なし」が40%。「導入済み」と「導入予定」をあわせても2%(41自治体)だった。
 導入する動きのない自治体に理由を尋ねた(複数回答)ところ、最も多かったのは「中小規模の工事が主で、技術提案の余地が少ない」で62%。「技術提案を求めるような高度な工事が少ない」(46%)と続いた。
 国交省技術調査課は「中小の工事でも技術的な工夫を考慮すればいい。先駆的な事例を紹介し、制度を知ってもらうよう努力したい」と話している。(本山秀樹)

<キーワード> 総合評価方式 旧建設省が99年から直轄の公共工事で試行し、00年9月から一定額以上の入札で原則化した。国交省は現在、2億円以上の公募型指名競争入札と、7億3千万円以上の一般競争入札を適用対象としており、04年度は8地方整備局の工事の24%(金額べ-ス)がこの方式で行われた。国以外の公共工事にも広げることを目的の一つとして、今年4月、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(公共工事品確法)が施行された。



[談合事件業界再編促す 橋梁部門を川重分社化 市場は縮小採算悪化]
(出典:2005年6月4日朝日新聞朝刊)

 川崎重工業が橋梁事業を分社化する方針を固めたことをきっかけに、生き残りをかけた業界再編が加速しそうだ。各社とも橋梁事業の採算は悪化しており、今後も国内の市場拡大は望めないと見られている。これまでほとんど再編がなかった業界に、談合事件が地殻変動を促した格好だ。

 各社の橋梁事業は、公共投資抑制の影響で軒並み業績が低迷している。今回、営業担当者が逮捕された11社の05年3月期連結決算を見ると、橋梁を合む事業部門は三菱重工業で87億円の営業赤字、石川島播磨重工業で31億円の営業赤字に転落。橋梁中心のメーカーの横河ブリッジ、高田機工、松尾橋梁は会社全体で当期赤字となった。
 日本橋梁建設協会によると、国内の橋梁用に生産した鋼材量は99年度を境に減少に歯止めがかかっていない。98-99年に明石海峡大橋(建設費5千億円)や来島海峡大橋(同2800億円)が完成し、「今後国内では大規模な橋梁は考えにくい。建設費が数十億円程度の案件がせいぜい」というのが業界関係者の一致した見方だ。
こうしたなかで談合事件が表面化。国土交通省や東京都などがこの11社を指名停止にするなど、業績に与える影響は深刻となった。石川島播磨の幹部は「指名停止で全社の受注額が年400億-500億円減るとの見方もある。そうなれば、06年3月期は当期赤字に転落だ」とみる。同社は05年3月期、3期ぶりに黒字転換したばかりだ。
 このため、各社とも事業再編の検討に拍車をかけている。住友重機械工業は橋梁の補修・架設を手がける完全子会社を10月に解散することを決めた。三菱重工の佃和夫社長は04年12月に「今後は事業体制の改革やスリム化を推進する」と表明し、担当の鉄構建設事業本部に具体策の検討を指示。それまで各社は海外進出やコスト削減で立て直しを図ってきたが、残された手は少ない。



[道路公団 業者との共同技術、特許無届け計52人 内規違反浮き彫り]
(出典:2005年6月2日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団の技術系幹部(55)が、東京都内の資材販売会社などと共同発明した特許技術の大半が公団に無届けだった問題で、幹部のほかにも51人が同様に特許技術を届け出ていなかったことが公団の調査で分かった。無届け期間は幹部が平均2年7ヵ月、ほかの職員も平均8ヵ月に及んでいた。公団は内規で届け出を義務づけており、特許技術に伴う公団のルールが徹底されていない実態が改めて浮き彫りになった。(松川敦志、砂押博雄)

 無届けは、技術仕様の決定や工事の発注などに関係する技術系職員が多かった。業者との癒着が疑われかねないとして、公団は、改善に向けた新たなルール策定を進めている。
 公団が昨年6-8月ごろ、特許技術の届け出を職員に促したところ、同年9月以降に相次いで届け出があった。幹部を含めて52人、出願件数は計93件(複数人で出願しているケースも含む)に及び、幹部の59件が最も多かった。次に多い職員で23件、3番目は15件。
 調査は、この幹部が、プレストレスト・コンクリート(PC)架橋工事で使う「透明シース(保護管)」を公団内で採用決定する前に資材販売会社と共同発明していた問題が発覚したのを受けて行われた。
 公団職員が業者と共同発明した場合、業者が特許庁に出願する一方、職員も公団に届け出て権利を譲渡。その後、公団が出願して共同出願人となり、同庁の審査で認められれば公団に特許権が発生する。このため、公団は速やかな届け出を義務づけている。
 幹部は同社との35件など27社と計71件の共同発明をしたが、半数近くが技術仕様の決定権を持つ本社構造技術課長時代で59件が無届けだった。
 公団は、この幹部の処分を検討しているが、ほかの職員については「ルールの周知、徹底に不十分な点もあった」として内規違反は間わない方針という。
 道路関係4公団民営化推進委員の大宅映子さん(評論家)は「無届けは業者側との癒着を疑われても仕方がなく、公金を扱う意識に乏しい体質の表れだ。特許の取り扱いに関して透明性の高いシステムを作らなければいけない」と話す。

 公団、2100万円損害 幹部無届け特許実施料
 日本道路公団の技術系幹部(55)が資材販売会社(東京都港区)と共同発明した特許技術の大半が無届けだった間題で、このうちの2件で実際は計約14億円の売り上げが発生していたことが公団の内部調査で分かった。本来は売上に伴う特許実施料(ロイヤルティー)として公団に約2100万円が入るが、無届けだったため公団は実質的に同額の損害を受けたことになる。
 この幹部が同社と共同発明した特許技術は35件。公団はこれまで、このうち実際に実施料が発生していたのは、幹部が届け出て公団に特許権があった「透明シース」の約600万円など2件だけとしていた。
 しかし、改めて調べたところ、プレストレスト・コンクリート(PC)の架橋工事で使用し、同社が出願して幹部が発明者に名を連ねたケーブルの接続に関連する2件の特許技術について、同社がこれを使った建設資材を販売し、00-04年に計14億1千万円の売り上げがあったことが判明した。この2件を幹部が届け出ていれば、売り上げに伴って計2100万円余の実施料が公団に入っていたという。



[横河ブリッジ 談合隠し、組織的に][資料、女子更衣室へ 営業データは経理]
(出典:2005年5月30日朝日新聞朝刊)

 資料を女子更衣室に隠したり、パソコンのデータを営業部門から経理部のパソコンに移したり。宮公庁発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で、談合組織「K会」の常任幹事だった横河ブリッジでは、数年前から公正取引委員会の立ち入り検査を想定した組織的な証拠隠しが繰り返されていたことが関係者の証言で分かった。休日出勤して自社ビルの一室に資料を運ぷこともあったという。

 この4月には、公取委の刑事告発と検察当局の家宅捜索があった場合に備え、同社橋梁営業本部担当理事の横山隆容疑者(59)=独占禁止法違反容疑で逮捕=が隠蔽を指示したとされる。東京高検は23日からの家宅捜索で、これらの隠されていた資料も押収したとみられる。
 証言によると、横河ブリッジの社内では数年前から、公取委の抜き打ちの立ち入り検査があるのではないかという話が何度も流れた。このため、こうした予想のたびに、談合に関係する資料を担当部署から外に持ち出し、隠していたという。
 関連の資料を隠蔽する方法は@女子更衣室に持ち込むA営業のデータを経理部のパソコンに移植するB東京都内の自社所有ビルに持ち出すの3通りあったとされる。
 関係者によると、女子更衣室は東京都港区の本社ビル内。隠蔽の指示を受けるなどした営業担当者らが必要に応じて女性職員に頼み、資料を更衣室に持ち込んで保管してもらっていた。
 また、横河ブリッジは営業データとして、各工事の名称▽橋梁の重量▽予定価格▽入札参加者名▽チヤンピオンと呼ばれる落札者名▽入札価格といった基本事項を集約。こうしたデータを営業部門から経理部のパソコンに移し、隠したという。
 横河ブリヅジの営業実務は横山容疑者と、橋梁営業本部次長の川上克已容疑者(42)=同容疑で逮捕=の2人が仕切っていたとされる。国土交通省の各地の事務所にいる「技副」と呼ばれる技術系職員から工事の予定価格を聞き出すことが基本職務だった。
 さらに、同社は官公庁のOBを積極的に採用し、国交省や日本道路公団、東京都庁などの有力発注者に対してはそのOBなどを担当に充てていたたという。



[道路公団 談合認識か 橋梁工事OB、配分を調整]
(出典:2005年5月30日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合疑惑で、メーカー最大手の横河ブリッジに天下りした公団OBが、公団工事について三菱重工業幹部と相談する席で、各社への工事の割り振りの原案書類を示していたことが分かった。会社関係者は「この受注調整の内容は公団側に伝わっていた」と証言。談合組織加盟社の数年前の資料にはこの公団OBと公団幹部との調整を示す記述があったという。談合組織の受注調整を公団側が認識していた可能性が出てきた。

 「事実上の承認」関係者  橋梁談合事件を調べている東京高検は、複数のメーカー営業担当者から公団発注工事の談合を認める供述を得ており、東京地検特捜部が捜査人員を拡大し、公団分の実態解明を進めている。
 関係者によると、年間発注額が約1千億円の同公団の工事で、各年度当初の時期に、横河ブリッジに天下りした公団OBが、東京都港区にある同社本社内などで三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)=独占禁止法違反容疑で逮捕=と加盟各社への工事配分を2人で相談していた。横河ブリッジの他の役員らも入室しなかったという。
 この場で公団0Bは、その年度の工事発注予定表をもとに個別工事ごとの落札予定会社や、入札に参加するだけの協力会社など、各社への割り振りを記した書類を示し、田中次長の意見などを聞いていたという。
 会社関係者は「こうした調整内容は公団OBから公団側に伝わり、事実上承認を受けた形になっている」と話す。また、ある加盟会社の数年前の資料には、横河ブリッジの公団OBが公団幹部と会って工事配分を決める、とした内容が記されていたという。
 同公団OBと田中次長の相談後、各工事の落札予定などの割り振りは、石川島播磨重工業橋梁営業部長の清宮正美容疑者(49)=独禁法違反容疑で逮捕=を通じて、二つの談合組織の「K会」(旧紅葉会、17社)と「A会」(旧東会、30社)の加盟各社に連絡されていたという。
 一方、各年度の当初には、各橋梁メーカーに再就職した同公団0B同士の親睦団体「かづら会」の代表幹事に、各社のOBが受注を希望する工事名などを伝えていた。かづら会には45人(03年7月現在)が登録され、横河ブリッジの公団OBは立場が上の「全般幹事」という役職だった。
 同公団幹部は「OBは毎日のように出入りし、天下り先企業の売り込みや工事の情報集めなどをしている」と話している。
 同公団が04年度までの5年間に発注した橋梁工事は400件以上。
 同公団発注の橋梁工事をめぐる談合疑惑について、近藤剛・同公団総裁は刑事告発前の今月18日の記者会見で、「公団として公取委の調査に全面的に協力している。だが、その内容は、捜査にかかわることなのでお話しすることはできない」と話している。



[橋梁談合 都OBから発注情報 設計・技術で有利に]
(出典:2005年5月29日朝日新聞朝刊)

 鋼鉄製橋梁工事で談合していたメーカーの一部が、東京都発注工事をめぐり、天下りした都職員0Bが都側から入手した発注情報をもとに受注調整を有利に進めていたことが会社関係者の話で分かった。情報を橋設計のコンサルタント会社側に提供して「裏設計」を担当することで落札予定会社に指名されていたという。談合組織47社のうち30社(昨年9月現在)に都OBが天下りしている。0Bが受注調整で重要な役割を果たす実態の一端が浮かび上がった。

 都OB30社に天下り  鋼橋工事をめぐっては、刑事告発対象の国土交通省発注工事のほか、日本道路公団や、東京都など地方自治体でも入札談合が行われていた疑惑が出ている。公正取引委員会は昨年10月、都発注工事で設計担当だったコンサルタント会社二十数社も立ち入り検査している。
 関係者によると、東京都の工事の発注額は過去5年間で計約820億円。工事の発注部署などから再就職した都OBに、都の現役職員らから都の発注予定に関する情報をいち早く入手してもらうことが多かったメーカーもあるという。
 この情報を、都から橋の設計を随意契約などで請け負うコンサルタント会社側に持参。複数社の見積もり合わせのうえでその会社が都からの受注に成功すれば、メーカー側がコンサルタント会社にかわり、無償で設計図の作製をする「裏設計」を担当したり、自社が得意とする工法などの技術を提案したりしていたという。
 元談合担当のメーカー幹部は「談合の際、裏設計は工事受注の決め手になった」と話す。「K会(旧紅葉会、17社)」「A会(旧東会、30社)」の二つの談合組織では、加盟各社が、入札前に裏設計のことを各組織の常任幹事に伝えると、優先的に落札予定会社に指名されるルールになっていた。希望工事で裏設計を担当できれば、この優先権が確保されることになるという。
 また、メーカー側は、コンサルタント会社と交渉する際に、自社の都OBを同席させることもあったという。元A会会員は「都OBがいると、コンサルタント会社の対応が違い、影響力があった」と話している。
 関係者によると、談合2組織の47社のうち、独占禁止法違反で告発された幹事社の横河ブリッジや石川島播磨重工業など少なくとも30社に計30人の都0Bが天下りしていた。A会常任幹事の川田工業には、橋梁建設などを所管する都第3建設事務所長などを歴任し、河川部長で退職したOBが再就職。03年度のK会副幹事の宮地鉄工所に天下りした都0Bは退職時、都第2建設事務所長だった。

 東京都財務局契約第1課の話  橋梁メーカーなどと業務協力している設計業者は指名から除いている。裏設計は秘密保持を定めた契約違反だ。



[橋梁談合 道路公団分も認める 数社の担当者供述]
(出典:2005年5月28日朝日新聞朝刊)

 国土交通省発注の鋼鉄製橋梁(鋼橋)工事をめぐる談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕された複数の橋梁メーカーの営業担当者が東京高検の調べに対し、日本道路公団発注の工事でも談合していたと認める供述をしていることがわかった。高検は今後、日本道路公団発注分についても立件すべきかどうか検討を進めるとみられる。
 東京高検は談合の全体像解明を目指しており、27日までに談合組織で常任幹事を務めた川田工業と横河ブリッジ2社の社長からも事情聴取した。関係者によると、公団発注の工事については、三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)が横河ブリッジに天下りした公団OBと各社への割り振りを相談。落札予定会社が決まると石川島播磨重工業橋梁営業部長の清宮正美容疑者(49)を通じて、二つの談合組織の会員会社に連絡していたとされる。
 東京高検もこうした経緯を把握し、公正取引委員会が23日に国交省発注工事について刑事告発した後、任意の事情聴取で、公団分についても担当者らに詳しい説明を求めたとみられる。その結果、複数の担当者が公団発注の工事でも談合をしていたことを認める供述を始めたという。

指名停止処分農水省も発表  農林水産省は27日、公正取引委員会から刑事告発された8社を、同日から最長5ヵ月間の指名停止処分にすると発表した。東北、関東、北陸農政局など9部署の発注工事が5ヵ月間で、東海、近畿、中国四国農政局など7部署の発注工事が3ヵ月間。



[橋梁談合 東京高検、独禁法違反容疑で11社の営業担当14人逮捕]
(出典:2005年5月27日朝日新聞朝刊)

 宮公庁発注の鋼鉄製橋梁(鋼橋)工事をめぐる談合事件で、東京高検は26日 、談合組織の幹事会社だった横河ブリッジなど11社の営業担当者計14人を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕した。年間市場規模が3500億円 に上る橋梁業界の入札談合事件は、日本を代表する有名企業を含む橋梁メーカーの営業部門の幹部らが刑事責任を問われる事態に発展した。

   逮捕された担当者らはこれまでの調べに、談合の事実や自らの関与につい ておおむね容疑を認めているという。
 逮捕されたのは、横河ブリッジ橋梁営業本部担当理事・横山隆容疑者(59) ら、二つの談合組織で常任幹事、副幹事を務める8社の計10人と、主要な会員 会社で幹事だった川崎重工業の2人、三菱重工業と松尾橋梁の各人。横山理事 は組織で主導的役割を果たしたとされる。
 調べでは、14人は共謀して国土交通省の東北、関東、北陸の3地方整備局が 03,04年度に競争入札で発注した鋼橋建設工事で談合。談合組織の幹事会社が 従来の受注実績を基に落札予定会杜を決め、その会杜が受注できる価格で入 札を行うルールで、競争を実質的に制限した疑い。
 公正取引委員会は23日に常任幹事、副幹事の8社を刑事告発。東京高検が2組織計47杜の一斉捜索に着手し、26日まで4日連続で捜索している。
 逮捕した14人について東京高検は、談合の「仕切り役」として果たした役 割が大きいことに加え、一部で自分のスケジュール帳を破棄するなど証拠隠滅の形跡がみられたとしている。
 今後、東京高検は、幹事以外の会員会社の担当者らからも任意で事情を聴き、組織の実態解明や各社の経営陣の認識の有無などについて慎重に捜査を進める。
 入札談合に加わっていた47社は「K会(旧・紅葉会)」と「A会(旧・東会)」 の2組織を構成。常任幹事1社と副幹事2社を決めて鋼橋工事の受注調整を一任していた。幹事会社の担当者らが過去5年間の受注実績をもとに受注予定会社 を決め、入札価格を事前に調整していたとされる。



[談合調整役に権限集中 横河ブリッジ・横山理事担当十数年 情報一手、着々地位固め]
(出典:2005年5月27日朝日新聞朝刊)

 10年以上談合担当を続けた幹部、実権争いに敗れても隠然たる力を持ち続ける幹部…。鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で逮捕された、横河ブリッジ、三菱重工業など業界有力メーカーの調整役とされた幹部らは、長年の談合ルールのもとで強固な地位を築き、影響力を日本道路公団など様々な工事にまで及ぼしていた。(村上潤治、河原田慎一)

 独占禁止法違反容疑で逮捕された横河ブリッジ理事の横山隆容疑者(59)。橋梁専業メーカーとして業界トップクうスの受注高を持つ同社の威光を背景に、古参メーカー17社で作る談合組織「K会」の仕切り役を務めてきたという。
 横山理事は、K会前身の旧紅葉会時代から同社の談合担当を続けてきた。91年の同会名簿には「橋梁営業第二部長」とする会社の肩書で名前を連ねていた。
 「強引ともいえる手法だった」と元同会員のメーカー幹部。横山理事は01年、それまで実権を握っていた三菱重工業を外して常任幹事に就き、独自の会運営を進めた。常任幹事への情報集中などを定めた「談合ルールブック」を作り、地位を確かなものにした。常任幹事職から3年間で退くとしていたが、04年春に続投を宣言。周囲は「実権のあるポストに固執したようだ」と言う。
 昨年10月に公正取引委員会が立ち入り検査に乗り出し、ルールブツクを入手し、権力基盤となった書類が一転、談合の証拠となった。横山理事は公取委に「自分が書いた」と認めたという。

 三菱重工田中次長 公団OBの相談役  一方、三菱重工業橋梁部次長の田中隆容疑者(54)は、同公団発注工事について、横河ブリッジに天下りした同公団OBと各社への割り振りを相談する立場だった。同公団の発注額は年間約-千億円で、田中次長は大きな影響力を持った。
 三菱重工業は旧紅葉会当時から談合を主導。重鎮企業として政官界に顔が利き、「政治家に『橋梁をよろしく』と言えるのは三菱だけ」と関係者は話す。
 91年に旧紅葉会の加盟社が、談合資料の流出により暴力団幹部らから恐喝された事件では、当時の三菱重工業幹部が、暴力団側との交渉の中心的役割を務めたという。この幹部は昨年度のK会副幹事で、業界で実力企業の宮地鉄工所に再就職。K会の運営に裏から関与していたとされる。
 三菱重工業は01年に横河ブリッジに仕切り役の座を奪われたが、「いまだに隠然たる力を持っていた」(メーカーの元談合担当幹部)という。
 各社の談合担当は、懇親会やゴルフなどで観交を深めた。専業メーカーは対外的に信頼のある「工ース級」社員を投入した。横山理事のように談合担当が長い社員もいたが、一方で大手鉄鋼メーカーの担当者は2,3年で異動し、「普通のサラリーマンが談合していた」(鉄鋼メーカー関係者)状態だった。
企業が陳謝  社員が逮捕された三菱重工業の西岡喬会長は26日、「誠に遺憾。企業倫理を厳しく守らせてきたが、今回の結果となった。管理職には企業倫理順守の署名までさせたのだが、努力が足りなかった」と陳謝した。副会長を務める日本経団連の記者会見で語った。
   ◇
 横河ブリッジはホームページに「検察当局の捜査に誠実に対応し、再発防止や法令順守の徹底に取り組みたい」とする談話を掲載した。

5〜8ヵ月間8社指名停止 国交省
 国土交通省の東北、関東、北陸地方整備局は26日、刑事告発された横河ブリッジなど8社を27日から8ヵ月の指名停止にすると発表した。談合に対する指名停止では過去最長。残る5地方整備局や北海道開発局など8部署も5ヵ月の指名停止を決めた。

告発社含め逮捕者拡大 全体像解明へ
<解説> 橋梁工事に絡む入札談合は@刑事告発の対象となった国土交通省発注工事A日本道路公団発注工事B東京都など地方自治体の発注工事の3ルートで広く行われた疑惑が出ている。
 公正取引委員会と検察当局の調べで、国交省発注分の場合は「過去5年間の受注実績に基づく割り振り」という明確なルールに基づいていたことが明らかになってきた。
 一方、同公団分については、横河ブリツジに天下りした公団OBと三菱重工業の営業担当次長が工事の配分を相談していた疑いが浮上している。
 東京高検は国交省の工事をめぐる容疑で告発された8社だけでなく11社に対象を拡大して営業担当者らを逮捕した。
 各社の役割分担など国交省分についての解明とともに、各社の経営陣にはかつて談合組織のメンバーに名を運ねた幹部もいることから、会社上層部の関与の有無を調べることに主眼が置かれる。
 今回の逮捕者の拡大は、同公団分を合めた橋梁業界の談合全体の構図を明らかにすることを視野においた捜査とみられる。検察幹部の一人は「数十年にわたる歴史的な経緯もできる限り解明したい」との考えを示している。(三橋麻子)



[第2東名でも橋梁談合 01〜04年度工事 2組織がほぼ独占]
(出典:2005年5月26日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団が建設する第2東名高速道路(総事業費約5兆6千億円)の工事で、01-04年度に発注された鋼鉄製の橋の工事について、二つの談合組織に加盟する橋梁メーカー29社がほぼ独占的に落札していたことが分かった。29件中27件を占め、落札額は計約768億円。落札率(予定価格に対する落札額の割合)の平均は97・4%で、受注調整により価格がつり上げられた疑いが強いという。検察当局と公正取引委員会は、告発対象の国土交通省発注工事とともに、公団分の解明も進めている。(村上潤治、河原田慎一)

 道路公団OB、関与
 第2東名は、同公団の民営化論議で採算性が乏しいとして事業凍結の意見も出る中で継続している巨大プロジェクト。会社関係者によると、橋梁メーカーに天下りした公団0Bも関与した受注調整の中で、近年、最大級の調整対象にしていたという。
 朝日新聞社が同公団に情報公開請求し、開示された入札調書によると、第2東名の鉄橋上部工事では、公団静岡建設局と同中部支社が04年度までの4年間で計29件の工事を発注した。うち27件を「K会(旧紅葉会)」「A会(旧東会)」の2組織に加盟する47社のうち29社が、単独か2-3社の共同企業体(JV)で落札。落札額は計約767億8千万円で、29件の総落札額の99.8%を占め、27件の落札率は99.18〜93.75%と高かった。 同公団によると、第2東名の工事は、すでに総事業費の44%にあたる約2兆5千億円を投入。今後も鋼橋工事の発注を予定している。
 会社関係者によると、K会とA会は、発注規模が年間1千億円の同公団の工事について受注調整をし、第2東名の工事も含まれていた。工事の割り振りは、業界最大手の横河ブリッジに天下りした公団OBと三菱重工業の営業担当部長の話し合いを経て会員各社に伝えられていたという。
 第2東名の鋼橋工事は、工区あたりの落札額が20億円超の大型工事が多い。最高額の「富士高架橋」工事(前兆2.5キロ、静岡県富士宮市-富士市)では、04年8月の入札で、K会の三菱重工業、日本橋梁、A会の川鉄橋梁鉄構の3社JVが、割り振り通り65億8千万円で落札していたという。
 第2東名の建設計画をめぐつては、道路関係4公団民営化推進委員会で、巨額の建設費に見合う採算性が乏しいとして、凍結すべきだとの意見が出た。日本道路公団は03年2月、6車線から4車線に減らすなど事業費を1億円削減する方針を打ち出している。

<キーワード>第2東名高速道路 東名道の混雑解消と、大規模災害時の交通綱の確保などが目的。整備計画路線は神奈川県海老名市〜愛知県東海市(総延長285キロ)で、総事業費は5兆6千億円。東名道の山側を並行するルートのため、橋やトンネルが全区間の3分の2を締める。

五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)の話  第2東名は、山あり川ありで難工事が余儀なくされており、莫大な費用がかかるのが特徴。橋とトンネルが多く、実際に現地を見るとすごい量の橋脚が並び、まるで橋脚の博覧会のようだ。
 橋梁メーカーが見事に工事を分割し、以前から談合の疑惑がささやかれていた。民間同土でいくら調整しても、官の情報がなければ、これだけきれいに工事を割り振れないはずだ。第2東名は公共事業の総本山、道路公団は発注機関として官公庁のチャンピオンといわれている。公団から民間への天下りの実態が明らかになったが、問題は官と政と財がどういう関係になっていたか、検察庁は民間企業による談合だけでなく、背景にある癒着の構造こそ解明して欲しい。



[橋梁談合担当者十数人きょうから取り調べ]
(出典:2005年5月26日朝日新聞朝刊)

 官公庁が発注する鋼鉄製橋梁工事の入札をめぐる談合事件で、検察当局は25日、公正取引委員会が刑事告発した談合組織の幹事会社や会員会社の談合担当者十数人について刑事責任を追及する方針を固めた。一斉捜索の際に一部の企業で証拠隠滅の形跡が見つかるなどしたという。26日から本格的な取り調べに乗り出す方針だ。

 公取委が法人8社を告発し、東京高検が担当者個人についての捜査方針を検討していた。
 調べによると、一斉捜索は23日から始まったが、本来はあるべき資料がなくなっていたり、説明できる担当役員がすべて不在だったりした。また、任意の事情聴取に対し、各社の担当者の一部が容疑を否認しているという。
 このため、東京高検は過去最大級の規模となる今回の橋梁談合事件の全容を解明するには、さらに徹底した捜査が必要だと判断したとみられる。
 刑事責任追及の対象となるのはいずれも談合の直接の担当者。刑事告発の容疑となった03,04年度の受注調整で、実質的に組織の意思決定を図るなど主導的役割を果たしたといい、すでにこれらの担当者らの自宅を捜索し、談合への関与の度合いなどを調べていた。



[橋梁談合 道路公団OB関与 年1000億円、受注調整]
(出典:2005年5月25日朝日新聞朝刊)

 官公庁発注の鋼鉄製の橋梁工事に絡み、日本道公団が発注する年問約1千億円の工事について、業界最大手の横河ブリッジに天下りした公団OBと三菱重工業の営業担当部長が各社への工事配分を相談していたことが関係者の話で分かった。公団分は三菱重工業が談合組織の代表を務め、この結果が各社に連絡される仕組みだったという。
 検察当局と公正取引委員会は、刑事告発対象となった国土交通省発注分とは別に、OBが関与したとされる公団分の談合の実態解明を進めており、この三菱重工業の営業担当部長からも事情を聴いている。
 関係者によると、横河ブリッジの公団OBは毎年、三菱重工業の担当部長と会合を持ち、公団発注分について各社の受注配分計画を話し合っていたという。
 この担当部長は、連絡役だった石川島播磨重工業の営業担当部長に会合の結果を伝え、その後、「K会(旧・紅葉会)」「A会(旧・東会)」の二つの談合組織に加盟する各社に、落札予定の工事名などが知らされていたという。
 K会メンバーの三菱重工業は長年、同会の受注調整を仕切る立場だったが、01年に横河ブリッジの営業担当部長が同会の実権を握ったことにより、国交省発注工事に関する調整役からは外れた。しかし、同公団発注分については引き続き調整役を務めたとみられている。
 談合2組織の計47社のうち、少なくとも計30社に計36人(04年11月現在)の公団OBが天下りし、各OBが、鋼橋メーカーに再就職したOB同士の親睦団体「かづら会」の代表幹事に、天下り先会社の受注希望などを伝えていたことが判明している。こうした受注希望と、横河ブリッジの公団OBと三菱重工業との会合との関連について、今後調べが進むものとみられる。
 横河ブリッジに天下りした公団OBは、朝日新聞に対して「何も話すことはない」としている。三菱重工業は「捜査中なのでコメントできない」(広報IR部)としている。

執行役員を解任 川田工業  官公庁発注の橋梁工事をめぐり、公正取引委員会に独占禁止法違反の疑いで刑事告発された川田工業は24日、橋梁事業部東京営業部長の執行役員を23日付で解任し、総務部付としたと発表した。同社は「刑事告発に対する措置」と説明している。



[「談合が正業」脈々と 橋梁メーカー強制捜査]
(出典:2005年5月24日朝日新聞朝刊)

 [担当者、昇進して「卒業」身分を保証、秘密保つ] 橋梁(鋼橋)工事談合事件で、談合担当を務めた2人のメーカー幹部が、朝日新聞の取材に、40年以上続く談合組織の実態を証言した。93年のゼネコン汚職事件を機に、政宮界側から落札会社を指名する「天の声」が出にくくなったため受注調整が活発になったことや、発注者から天下り要請があることを明かした。近年は発注量が減る中、生き残りのため「高値」確保の談合を続けたという。(村上潤治、河原田慎一)

 2人によると、二つの談合組織のうち、古参17社で作る「K会」の前身・旧紅葉会が発足したのは60年ごろ。約10年後、ゼネコン業界が国会議員の政治力を使って受注するという情報を得て、「我女も政治活動をしないといけない」という声が上がった。
 同会では、メンバーで旧経団連の重鎮企業だった三菱重工業を「業界代表」にして政界への影響力を強め、同社はその後、同会の受注調整の仕切り役となった。
 そのころから、政官側からの業者指名が受注調整に影響を与えていたが、状況を変えたのが93、年に茨城県知事らが逮捕されたゼネコン汚職事件。「この事件後、国の工事では、役所から『天の声』が出なくなった。」と2人は口をそろえる。
   旧紅葉会と、後発30社の「A会」の前身・旧東会は、91年に談合情報の流出による会員会社への恐喝事件をきっかけに解散した。しかし、「役所の調整がなく、水面下の連絡だけでは対応しきれない」こともあり、2組織は再発足。受注調整が本格化したという。
 しかし、天の声が出にくくなっても、発注者側の天下り要請は続いたという。発注規模が年間約1千億円の日本道路公団について、「天下りが途切れないよう、次々と元職員を各社に送り込んでくる」と語った。
    ■
 橋梁専業メーカーで談合役となる営業担当部長は「中枢ポスト」。その後、順調に出世し、社長に就任するメンバーもいた。横河ブリッジの現社長も、91年当時の旧紅葉会名簿に名前がある。
 「談合が正業」と評価されるという。組織内では、談合担当の部長から役員に昇進することを「卒業」と称し、以降は直接調整にタッチしない。こうして談合担当の身分保証と秘密保持を図り、談合組織を守ってきたという。
    ■
 日本橋梁建設協会などによると、鋼橋はバブル経済当時、本四架橋など大型工事が次々と発注された。市場規模は1兆円に迫り、各社は工場新設ラッシュを迎えた。しかし近年は、公共事業の落ち込みが激しく、「今は大きくても数十億円規模の案件しかない」(業界関係者)と工事の小粒化を憂える声が渦巻く。
 A会元会員は「業界の生き残りのため、談合しかなかった」。予定価格ぎりぎりの高値で調整し、利益確保を図ったという。

メーカー側謝罪  刑事告発された橋梁メーカー各社は23日、決算発表などの場で「厳粛に受け止めている」(川田工業)など相次いで謝罪の言葉を口にした。
 石川島播磨重工業は「世間をお騒がせして心中より申し訳ない」とのコメントを発表。JFEエンジニアリングなどほぼ各社が謝罪コメントを出した。
 一方で大手橋梁メーカーの幹部は「談合なんて戦後何十年もやっている。土光(敏夫・元石川島播磨社長)さんの時代から。何で今ごろ騒ぐんだ」と本音を漏らす。

不当利得、国民にツケ<解説>  石川島播磨重工業、JFEエンジニアリング…。今回の談合事件では、戦後経済を支えてきた鉄鋼・重機の有名メーカーが名を連ねた。
 二つの談合組織は入札の平均落札率が9割を超えた。落札価格をつりあげてきた疑いが強い。競争を避け、高値落札をして利益を分け合い、共存を図る。とりわけ、橋梁工事は官公庁の発注に頼っており、長年にわたる談合で得た不当な利得、つまり、競争していれば実現していた適正な価格との差額は納税者が負担してきたことになる。
 99年に刑事告発された水道管ヤミカルテル事件では、総売上高約1500億円のメーカー3社に対し、公取委は、売上高の6%を談合による不当利得と判断して課徴金約110億円を支払うよう命令した(審判申)。橋梁業界はそれを大幅に上回る約3500億円(03年度)の市場規模で、不当利得も数倍に達しかねない。
 さらに、橋梁業界は談合組織をいったん解散しながら、ひそかに再開。情報もれの防止を図ってきたことも明らかになり、コンブライアンス(法令順守)重視の企業社会の風潮とは全く逆行した姿勢をとってきた。
 国土交通省は、01年施行の入札契約適正化法、03年施行の官製談合防止法など対策を年々強化し、94年に定めた談合対応マニュアルは03年の拡充で職員による自発的通報制度も盛り込んだ。
 その流れの中で、刑事告発に踏み切った理由について、公取委は「社会の模範となるべき日本の代表企業が法律を無視して談合を続ければ、中小企業にも影響が大きい」(幹部)と説明する。
 モラルを腐敗させ、国民に無駄遣いを強要する談合。改めて企業側の反省が求められる。(村上潤治)



[談合側が9割受注 検察、橋梁11社を捜索]
(出典:2005年5月24日朝日新聞朝刊)

 国土交通省発注の橋梁(鋼橋)工事をめぐり、二つの談合組織のメンバー会社が、公正取引委員会の刑事告発対象となった03,04年度の工事全体の約9割(金額べース)を受注していたことが公取委と検察当局の調べでわかった。受注工事の落札率(予定価格に対する受注額の割合)は03年度で平均95・03%で、談合で価格がつりあげられたとみられる。告発を受けた検察当局は23日午後、横河ブリッジなど組織の主要11社と営業担当者の自宅計二十数カ所を家宅捜索し、担当者らから任意で事情聴取した。担当者の大半は容疑を認めている模様だ。
 公取委は2談合組織の計47社に談合をやめるよう排除勧告する方針。
 告発されたのはほかに川田工業▽JFEエンジニアリング▽東京鉄骨橋梁▽高田機工▽栗本鉄工所▽石川島播磨重工業▽宮地鉄工所の計8社。いずれも03,04年度に「K会(旧・紅葉会、17社)」「A会(旧・東会、30社)」の二つの談合組織で幹事会社を務め、国交省の東北、関東、北陸の3地方整備局が両年度に発注した工事で不当に受注調整した疑い。
 公取委などによると、03年度に3地方整傭局が発注した橋梁工事の総額は327億円だったが、うち299億円分を談合組織のメンバー会社が落札。04年度は計343億円の工事のうち306億5千万円をメンバー会社が受注した。落札率も高く、公取委は談合を裏付ける事実とみている。
 鋼橋の年間市場規模は03年度が3500億円。公取委によると、刑事告発された入札談合事件の対象業界の市場規模としては過去最大。
 東京高検はこの日、告発された8社に加え、三菱重工業と川崎重工業、松尾橋梁を捜索した。捜査の進展状況をみて、談合に関与したとされる担当者の逮捕の必要性についても検討する方針だ。



[橋梁談合 横川ブリッジ部長主導 47社捜査きょう着手]
(出典:2005年5月23日朝日新聞朝刊)

 官公庁発注の橋梁(鋼橋)工事をめぐり、メーカー最大手の「横河ブリッジ」(東京都港区)の営業担当部長が、「談合ルールブック」を作成して談合組織の権限を掌握し、受注希望など各社の情報を集中する態勢を作り上げるなど主導的役割をしていたことが分かった。組織内を締め付けて談合を徹底させる悪質な行為で、公正取引委員会は23日、談合2組織の幹事8社を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検事総長に告発。検察当局は同日から一斉捜査に乗り出す。
 橋梁工事のような基幹的な公共事業の談合が刑事事件に発展するのは初めて。公取委の刑事告発は03年の東京都発注の水道メーター談合事件以来で、年間3500億円に上る市場規模の談合事件は過去最大級だ。
 古参メーカー17社で作る「K会(旧・紅葉会)」と後発30社の「A会(旧・東会)」の2談合組織が03,04年度に国土交通省の東北、関東、北陸の3地方整備局が発注した工事で談合をしていた疑い。検察当局はのべ600人超で加盟47社と関係先を捜索するほか、この部長ら幹事8社の担当者を中心に取り調べる方針。
 会社関係者によると各組織は常任幹事1社、副幹事2社から構成01年にK会の常任幹事に就任した横河ブリッジの営業担当部長は、受注調整の規則などをまとめた「談合ルールブック」を自ら作成。各社の受注希望をはじめ、発注する官公庁の意向、コンサルタント会社からの設計協力の要請など、工事にかかわるすべての情報を各社から常任幹事に集中させるシステムを整えた。
 受注希望などで会員会社同士で争いが生じた場合には調停役を務め、各社の若手社員向けには談合の手法に関する勉強会も開催し、組織の締め付けも図ったという。
 談合にかかわっていたメーカー幹部は「常任幹事はすべての工事を割り振り、情報を独占するなど、強大な権限を持って横河ブリッジは、橋梁専業メ丁カーの最大手としてトップクラスの受注高を持つが、91年11月に旧紅葉会が解散した後、93年秋に再びK会が設立されてから受注調整に全く権限を持たなかった。K会では、三菱重工業など3社が受注調整を差配する態勢だったが、不満を募らせた横河ブリッジの部長01年3月ごろの総会で、常任幹事と副幹事を選挙で選ぶ方式を提案。多数派工作により三菱重工業を副幹事から外し、自ら常任幹事に就任した。
 K会とA会は年に数回、工事の割り振りに関し最終調整を行うなど協力。2組織間での利益配分に格差はなかったが、古参メーカー中心のK会が指導的立場にあったとされる。



[橋梁談合こう隠せ]
(出典:2005年5月22日朝日新聞朝刊)

幹事社呼びかけ
 タクシー内は黙れ
 電語は雑談交ぜよ
 落札後お礼言うな

 宮公庁発注の橋梁(鋼橋)工事で受注調整を繰り返していた二つの談合組織が、公正取引委員会の摘発を警戒し、談合情報の漏洩を防ぐ様々な対策を講じていたことが分かった。タクシー内での会話や資料のファクス送信、入札後に会社間で交わすお礼の言葉はすべて厳禁にしたり、公取委の検査が入った他業界に事情を聴いて研究したり…。幹事社は「摘発のうわさレベルでも警戒しろ」と、各社に再三、呼びかけていたという。

 ●公取委対策
「公取委対策が最大の懸案事項だった」。談合組織の調整役を務めた元メーカー幹部は話す。
 「タクシーや喫茶店の中では談合の話はするな」「談合の資料は一切残さず、破棄しろ」。毎年3月に開かれる2組織の各総会などで、幹事社が情報漏洩を防ぐために具体的な指示をしていたという。
 入札時の行動についての注意はさらに細かくなり、@入札直前の電話での調整は、周囲に疑われないよう世問話を交ぜるA入札後、落札会社が他の会社に「ありがとうございました」と言うのは禁止。この落札会社のあいさつについては「談合のお礼を言っているようだ」との指摘が会員会社からあり、採用された禁止事項だという。
 ●前例を研究
 また、今年4月に公取委から独占禁止法違反で排除勧告を受けた情報表示板の談合問題で、ファクスで流した工事の積算資料が摘発の原因になったとの情報が入った際は、幹事社が即座に会員各社に対し、会社間でのファクス送信を禁じるよう指導していた。
 幹事社は、他業界に対する公取委の摘発事例を研究。ある幹事社の幹部は、立ち入り検査を受けた業界の談合に加わった知人を訪ね、「公取委にばれた理由はなぜか」「資料の管理はどうしていたか」などと聞き取りをしていたという。
 ●気が緩んだ
 談合2組織は、古参メーカー17社で構成する「K会(旧・紅葉会)」と後発30社からなる「A会(旧・東会)」。うちK会では、会の決定事項を第三者に漏らしたことが明らかになった場合は会への登録を抹消するとした規則を設けていた。また、各社ごとに情報漏洩を防ぐための禁止行為をまとめた「べからず集」を作って営業担当者に教育することを指示したこともあったという。
 こうした対策は、流出した談合関係資料をもとに会員会社が暴力団関係者から恐喝された事件をきっかけに、91年に前身組織の旧紅葉会が解散に追い込まれたことに対する反省から生まれたという。
 しかし、元調整役の一人は「近年は、気の緩みからか、組織メンバーの連絡表などの資料を残し、公取委の検査で命取りになった」と話している。していたという。



[橋梁談合 公取委告発へ 8社の大半受注調整を主導認める]
(出典:2005年5月21日朝日新聞朝刊)

 宮公庁発注の橋梁(鋼橋)工事の入札をめぐり、二つの談合組織で03,04年度に幹事会社を務めた石川島播磨重工業など橋梁メーカー8社の大半が談合行為を認める方針であることが関係者の話で分かった。公正取引委員会は20日、検察当局と告発間題協議会を開き、この8社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで週明けの23日に検事総長に告発することを確認した。
 検察当局は談合組織を構成する47社に対し一斉捜査に乗り出す方針だ。
 市場規模が年間約3500億円に上る鋼橋工事をめぐる過去最大級の談合事件に発展する。
 関係者によると、2組織は大手鉄鋼メーカーなど17社による「K会(旧・紅葉会)」と、後発メーカー30社で構成する「A会(旧・東会)」。公取委は03,04年度に両組織で常任幹事、副幹事を務めた横河ブリッジ▽宮地鉄工所▽石川島播磨重工業▽JFEエンジニアリング▽東京鉄骨橋梁▽川田工業▽高田機工▽栗本鉄工所を告発する。対象工事は国土交通省の東北、関東、北陸の3地方整備局が両年度に発注した工事になるとみられる。
 複数の会社関係者によると、各社の営業担当部長は昨年10月5日の公取委の立ち入り検査以降、公取委から任意で事情聴取を受けた。ほとんどが「談合など知らない」「違反行為はしていない」と談合を全面否定していたが、刑事告発が避けられない見通しとなり、一転して捜査に全面協力する方針に転換したという。
 公取委と検察当局は20日の協議会で、告発対象を幹事社20社のうち、実質的に受注調整を主導した常任幹事、副幹事だった8社に絞り込むことにした。
 当面、告発は法人のみとし、担当者については捜査の進展をみて協議する。



[橋梁談合 組織以外の入札妨害 赤字で応札、後で補填]
(出典:2005年5月20日朝日新聞朝刊)

 宮公庁が発注する鋼鉄製橋梁工事の談合疑惑で、47社で作る談合組織が、受注調整に応じない福島県の橋梁メーカーを排除するため、このメーカーが参加した入札では大幅に価格を下げて応札し、その後、落札会社の赤字分を補填するために別工事を優先的に受注させることを申し合わせていたことが分かった。国や東京都の発注工事では予定価格の6-7割まで下げていた。公正取引委員会は、この妨害工作が談合の悪質さを示していると重視している。

 公取委、悪質さ重視
   公取委と検察当局は20日に告発問題協議会を開き、週明けにも47社に対し独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で一斉捜査に乗り出す方針。
 会社関係者によると、この福島県の橋梁メーカーは、業界で唯一、談合組織の調整に参加せず、各地の工事入札で組織のメンバー会社と競合。古参メーカー17社の「K会(旧・紅葉会)」と、後発30社の「A会(旧・東会)」の組織は、調整で決めた予定価格の9割以上で応札すると、福島県のメーカーに低価格で落札されることから対応に苦慮していたという。
 2組織は、福島県のメーカーが参加する入札では、落札予定会社が赤字覚悟の低価格で応札し、このメーカーの受注を徹底して妨害する対抗策をとり、落札会社の赤字分は新たに別の工事を優先的に受注させて穴埋めすることも決めたという。
 刑事告発対象とみられる国土交通省関東地方整備局が発注する04年度の工事では、ほとんどが9割超の落札率(予定価格に対する受注額の割合)だった。しかし、今年2月にあつた茨城県内の圏央道高架橋工事の入札(予定価格約3億5692万円)だけは、福島県のメーカーが参加したため、妨害工作によりA会会員の企業が2億5050万円(落札率70.18%)で落札していた。
 東京都が建設を進める新交通システム「日暮里・舎人線」の工事(総事業費約1270億円)でも、昨年までの7年間で行われた54件の入札のうち、福島県のメーカーが参加した5件は談合組織の会社が低価格で落札。全体平均で93%の落札率が5件に限っては67%に引き下げられた。
 最低制限価格が設けられた入札では、談合組織の全社が最低とみられる価格で応札し、くじ引きになった場合に福島県のメーカーが落札する確率を下げていた。04年6月に福島県が発注した工事では、福島県のメーカーと談合組織5社が予定価格の8割で応札。くじ引きの結果、談合組織側企業が受注した。
 A会の元メーカー幹部は「談合に応Oない企業が実績を伸ばすと業界が混乱するため、徹底して妨害した」と話している。
 福島県のメーカーは「一切コメントできない」としている。



[道路公団幹部、特許「抜け駆け」主導 特定業者が販売権]
(出典:2005年5月18日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団の技術系幹部(55)が、公団で検討段階だった架橋工事関連の技術について、東京都港区の資材販売会社に開発を要請し、その後、公団内で採用を決定していたことが関係者の話で分かった。同社は採用決定前に特許出願し、他社の参入を困難にする一方、採用後は公団発注工事での納入実績を大幅に伸ばしていた。公団はこうした不透明な経緯などについて内部調査を進めている。

 工法検討中に開発要請
 幹部は、技術仕様の決定権を持つ公団本社の構造技術課長や技術部長を経て昨年12月、公団の研究所に異動。この特許では、幹部が発明者に名を連ねていた。
 問題の技術は「透明シース(保護管)」と呼ばれ、プレストレスト.コンクリート(PC)を用いた架橋工事で使われている。
 公団は98-00年度にかけ、関連の財団法人に委託して、透明シースなどPC架橋工事に関連する技術仕様について順次検討する有識者らの会議を開催。幹部は当時、構造技術課長で、会議の委員を務めた。
 会議では99年春ごろから透明シースの検討が始まったが、資材販売会社の複数の元幹部によれば、同じ時期にこの公団幹部から透明シースの開発要請があった。同社は製造技術を持たないためメーカー2社に持ちかけて開発を始め、00年4月に特許出願したという。
 透明シースが会議での議論を経て公団の標準仕様に採用が決まったのは01年2月。併せて公団は各支社に「透明シースを使用する」などとする通達を構造技術課長だったこの幹部名で出した。
 同社は採用決定の約10ヵ月前に特許出願して他社の参入を困難にする一方、01年6月には独占販売権も得ていた。透明シースの採用を合めた施工マニュアルが財団法人から一般に公表されたのは01年10月だつた。
 この結果、公団発注工事に絡んで、架橋メーカー各社による同社の透明シースの採用実績が急伸。00年度は2700万円だったが、01、02年度とも約1億8千万円と約7倍に増え、関連部品の販売も合めると、同社の売上高は99年の約25億円から02年は108億円になった。
 幹部は、この特許出願については公団に届け出ており、公団には02-04年度に同社から実施料(ロイヤルティー)約600万円が入り、幹部は公団から補償金名目で計約35万円を受け取った。

 <キーワード>プレストレスト・コンクリート(PC)
強い力で引張った鋼材(ケーブル)を内部や外側に張り、圧縮力を加えて強度を増したコンクリート。ひび割れに強く、主に大型の橋や建造物で用いられ、鋼鉄製よりも維持費を含めたコストが安く、公団や国などの工事で導入が広がっている。透明シースは、外側に設置したケーブルをさびから防ぐための保護管を内部の様子が分かるよう透明にしたもの。

 橋梁談合週明け捜査
検察と公取委幹事8社告発へ調整  官公庁発注の鋼鉄製橋梁(鋼橋)工事の入札で談合を繰り返したとして、公正取引委員会と検察当局は、談合組織の幹事会社8社を中心に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑での刑事告発に向けて最終段階に入った。検察当局は週明けにも談合組織を構成する47社に対して一斉捜査に乗り出す方針だ。対象には大手鉄鋼メーカーも含まれ、過去最大級の談合事件に発展する見通しとなった。  告発対象は03,04年度に国土交通省の東北、関東、北陸の3地方整備局が発注した工事になるとみられる。検察当局は全国からの応援も含めて検事役40人態勢で作る専従班を18日に発足させる。  公取委と検察当局は@市場規模が約3500億円に上る鋼橋工事で、業界大手も関与する大規模な談合で、あることA90年代初めに一度は組織を解散しながら数年後に名を変えて談合を再開していたことなどから悪質な行為として刑事責任を問う必要があると判断した。
 検察当局と公取委は今後、「告発問題協議会」を開き、告発対象企業や担当者を最終的に決定。その後、公取委から告発を受けた検事総長が東京高検に捜査を指示し、全容解明に乗り出す。  関係者によると、鋼橋工事の談合組織には、大手鉄鋼メーカーなど17社で組織する「K会(旧・紅葉会)」と、後発メーカー30社で構成する「A会(旧・東会)」の2組織があり、それぞれ毎年4月ごろに総会を開いて幹事会社を決定。公共工事の受注調整を幹事に一任していた。
 04年度のK会の常任幹事は橋梁専業メーカー最大手の横河ブリッジ、副幹事は宮地鉄工所と石川島播磨重工業。03年度は常任幹事が横河ブリッジ、副幹事がJFEエンジニアリングと東京鉄骨橋梁だった。A会は04,03年度とも常任幹事が川田工業、副幹事が高田機工、栗本鉄工所だった。役なしの幹事もあり、幹事会社はA会が計12社、K会が計8社という。



[道路公団幹部、特許連盟27社と71件 35件は資材会社と]
(出典:2005年5月18日朝日新聞朝刊)

 日本道路公団の技術系幹部(55)が公団で採用決定前の技術開発を資材販売会社(東京都港区)に要請した間題で、この幹部は同社も含め公団の受注業者など27社が出願した計71件の特許技術の発明者に名を連ねていたことが公団の内部調査で分かった。約半数がこの資材販売会社が出願した技術だった。また、71件の大半が公団に無届けだったことから、公団は、届け出を義務付けた内部規約に違反したとして幹部の処分を検討している。

 59件、公団に無届け
 幹部が発明者に名を連ねていたのはいずれも、コンクリートの内外に鋼材を張り、圧力をかけて強度を増すプレストレスト・コンクリート(PC)を用いた架橋工事の関連技術など。
 公団職が職務を通じて発明をしたり、業者と共同で発明したりした場合、業者が特許庁に出願する一方、職員も公団に届け出て権利を譲渡し、公団が後から出願して共同出願人となる。同庁の審査で認められれば、公団に特許権が発生し、公団に入った実施料(ロイヤルティー)の一部が職員に補償金として支払われる。このため、公団は内規ですみやかな届け出を義務づけている。
 ところが、公団の調べでは、幹部は、公団本社の構造技術課長時代に34件▽関西支社の建設第2部長時代に24件▽公団本社の技術部長時代に13件(いずれも出願日当時)の計71件の特許技術で27社と共同発明し、うち59件が公団に無届けだったことが判明したという。特に、資材販売会社の場合は、35件の共同発明のうち届け出があったのは透明シース(保護管)など一部で、30件が無届けだったという。公団によると、一般職員も業者と共同発明をするケースがあるが、幹部の場合は、次に多い職員でも27件で突出しているという。
 幹部は公団内で届け出を求められたことなどから、昨年11月と12月の2回に分けて無届け分をまとめて届けた。無届け期間は、最長のもので約5年半にのぼるという。
 公団によれば、71件のうち、実際に特許の実施料が発生したのは、幹部が届け出て公団に特許権があった透明シースなど2件の特許技術だけだったという。
 公団の調査に対し、幹部は「(業者との共同発明の)届け出が遅かった事実は認めなければならない」と話しているという。

 技術の要職歴任「架橋でトップ」
 日本道路公団の技術系幹部(55)は、技術畑の要職を歴任し、周囲からは「架橋部門の技術者としては公団内でトップ」(元上司)と評される。
 40代後半で公団本社構造技術課長になり、3年余り務めた後、関西支社の建設部長を挟み、03年6月から翌04年12月まで本社技術部長。業者との共同発明は管理職だったこの三つの在籍時に集中して出願されている。
 公団監察室の調査に対し、幹部は、業者との共同発明が多い点について「知識が豊富でさまざまなアイデアを出しただけ」と話し、大半が無届けだったことについても「特許が認められるかどうか様子を見ていた」などと弁明したという。 一方、ある公団幹部は「多数の特許を通じて業界にその威光を示そうとしたのでは」とみる。
 一方、資材販売会社は79年10月設立。架橋工事で用いられる米国で開発された特殊工法に関連した資材の販売を専門に行う。業界内では後発だが、00年以降業績の伸びが目立つ。同社の特殊工法のシェアは国交省発注工事では1割ほどだが、公団発注分では03年度までの3年間、5-6割前後でトップを占める。



[道路公団OB、橋梁30社に天下り「談合」疑惑 企業の過半数受注調整関与か]
(出典:2005年5月17日朝日新聞朝刊)

 官公庁が発注する鋼鉄製の橋梁工事の入札で談合していたとされる鉄鋼メーカーなど47社のうち、少なくとも30社に日本道路公団の0Bが天下りしていたことが分かった。会社関係によると、これらの0Bで作る親睦団体の幹事役は、各OBから天下り先企業の受注希望を取りまとめていたという。公正取引委員会も、OB側が受注調整に関与していた疑いもあるとみて、談合の背景事情について調べを進めているとみられる。 47社では、古参の大手鉄鋼メーカーなど17社の「K会(旧・紅葉会)」と、後発30社の「A会(旧・東会)」の2組織に分かれ、受注を調整。同公団発注分は、K会の石川島播磨重工業の営業幹部が、最終的に2組織をまとめた工事の割り振りを各社に連絡するシステムだったとされる。
 同公団によると、OBの再就職が確認できたのは、47社のうち計30社、36人(04年11月現在)。
 K会で談合の仕切り役とされる幹事社では、04年の石川島播磨重工業、宮地鉄工所、横河ブリッジに各1人、03年のJFEエンジニアリングと東京鉄骨橋梁に各1人。A会の幹事社では、04年の川田工業に1人、栗本鉄工所に2人が天下りしている。
 会社関係者らによると、各社の公団OBの大半は、鋼橋メーカーに再就職したOB同士の親睦団体「かづら会」に参加。毎年春ごろ、各社の営業幹部が、受け入れたOBに公団分の受注希望工事名を連絡。OBはその内容や、自ら判断して受注しようと思った工事名を同会の幹事役に伝えていたという。
 OBには、公団時代に橋梁工事の発注権限があった部署にいた職員が含まれていた。各社の0Bの受け入れは70年代ごろに本格化し、それ以来、ほぼ途切れることなく続いているという。
 また、同会の大半のメンバーの会費や懇親会費は天下り先企業が負担したという。
 A会のある元会員は「業者が公団内に立ち入るのは難しいが、OBなら自由にでき、公団の情報を取るために天下りを受け入れる」。K会元幹部も「各社が競ってOBを採用しており、受け入れがうまくいかない社は、公団からの受注が厳しくなったこともあった」と話す。
 橋梁(鋼橋)工事は、国土交通省の各地方整備局の発注分など年間の市場規模が約3500億円に上り、そのうち道路公団分は約1千億円。
 朝日新聞の取材に、石川島播磨重工業は「(公団OBは)技術的アドバイスをしてもらうのが目的で、基本的には営業活動に携わっていない」(広報室)としている。



[橋梁談合 受注調整前に検査 公取委幹事役の資料入手]
(出典:2005年5月15日朝日新聞朝刊)

 官公庁が発注する鋼鉄製の橋梁工事の談合疑惑で、公正取引委員会が、談合組織の幹事役が予定していた受注調整会議の直前に各社へ立ち入り検査に入り、工事割り振りに必要な過去の受注データや組織メンバーの連絡表などの資料を入手していたことが、会社関係者の話で分かった。幹事役は公取委の検査を警戒し、談合会議に使う資料を自宅などに保管していたが、会議当日のため職場に持ってきていたところを公取委に見つかったという。
 幹事役の一部は、これらをもとに調べを進める公取委に対し、談合行為を大筋で認めたという。公取委は、メーカー約50社が作る二つの談合組織が、国土交通省などの発注工事の入札で受注調整を繰り返していたと判断している。
 会社関係者によると、公取委が立ち入り検査に乗り出した昨年10月5日、談合2組織のうち、約30社の後発企業で構成される「A会(旧・東会)」で受注調整の会議が開かれる予定だったとされる。A会幹事役の川田工業、高田機工の幹部らは、普段は自宅などでの保管を申し合わせていた会議資料を職場に持ってきていた。各社の本社などで同日午前10時ころから抜き打ちで始まった検査では、資料一式を詰めた幹部のかばんなどが見つかったという。
 A会では、過去5年間の受注実績を基準に、各社のシェアを動かさずに工事を割り振る「ベンチマーク方式」と呼ばれる調整方法をとっていたが、この立ち入り検査で公取委に提出した資料には、この方式の基礎となる国交省各地方整傭局の受注データが入っていた。また、各社の部・課長の氏名や携帯電話番号の一覧表もあり、組織構成が一目で分かるようになっていたという。
 A会の幹事は、会独自で開く調整会議の結果をもとに、もう一つの談合組織で、古参の大手鉄鋼メーカーなどを中心とする17社で構成される「K会(旧・紅葉会)」の幹事3社と年に数回、最終調整を行い、各工事の落札会社や入札参加会社を決定していたという。
 川田工業など幹事社は、朝日新聞の取材に対し、「公取委の調査中で答えられない」とコメントしている。



[橋梁談合にルール本、天の声にも採用基準、幹事通さぬ交渉禁止 公取が重要証拠入手]
(出典:2005年5月14日朝日新聞朝刊)

 官公庁が発注する鋼鉄製の橋梁工事の談合疑惑で、大手鉄鋼メーカーなどで作る談合組織が受注調整の規則などをまとめた「談合ルールブック」を作成していたことが関係者の話で分かった。政官界側が落札業者を指名する「天の声」の採用基準や東北地方の談合例まで明記され、各社の調整役の「新人研修」に使っており、悪質な談合行為を裏付ける重要証拠とみられる。検察当局は公正取引委員会の告発を受け、今月中にも独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で本格捜査に乗り出す方針だ。

 検察月内にも本格捜査
 公取委は昨年10月の立ち入り検査の際に入手。関係者の供述などから、メーカー約50社で作る2組織が国土交通省などの発注工事の入札で談合を繰り返していた疑いが強まったと判断している。
 橋梁(鋼橋)工事は年間の市場規模が約3500億円にのぼる。れらの工事の談合組織には、古参の大手鉄鋼メーカーなどを申心とする「K会(旧・紅葉会)」と、後発企業中心の「A会(旧・東会)」があり、いずれも旧組織解散後、93年に再び設立された。
 会社関係者によると、ルールブックはK会の主要企業の幹部が保管しており、公取委に提出した。K会は宮地鉄工所や石川島播磨重工業など17社で構成し、常任幹事役の横河ブリッジの担当部長が数年前、91年に解散した紅葉会の基本方針を整理し、ルールブックを作ったという。
 ルールブックはA4判で十数ページ。幹事会社が中心となった受注調整システムを維持するため、「工事の入札前に会員各社が幹事に受注希望を表明する」「幹事を通さない会員同士での話し合いを禁じる」などの基本ルールが記されていた。談合に加わらない福島県の企業が参加した入札では、低価格で応札するなどの対抗策も定めていたという。
 本社と建設現場が近接する工事や、以前に施工した橋の改修工事などは優先的に落札できる特別な条件も設定。この中には「発注者から委託されたコンサルタント会社にかわって設計を担当した場合」も含まれ、受注企業による「裏設計」の常態化も示しているという。
「天の声」については、業界主導の受注調整を混乱させるため基本的に排除する方針を掲げているが、有力な国会議員に限っては受け入れるとしている。
 東北地方などの自治体が発注した工事で受注調整をした実例も記載。受注企業に関する自治体幹部などの意向が伝えられたために幹事による調整が難航したケースも盛り込まれているという。
 ルールブックは、各社の談合調整役が交代した際の「研修」などにも利用されていた。  こうしたルールの適用範囲は、国土交通省、東日本の自治体、水資源開発公団(現・水資源機構)や住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)の発注工事で、日本道路公団の分は別ルールで調整していたとみられる。
 朝日新聞の取材に対し、横河ブリッジは「公取委の調査中でコメントできない」としている。



[道路公団財務諸表に不信感 「債務地超過隠ぺい」内部告発]
(出典:2003年7月15日日本経済新聞朝刊)

 日本道路公団が6月に公表した財務諸表(2002年度末)の信頼性が揺らいでいる。政府の道路関係四公団民営化推進委員会などから、資産の評価方法を疑う声が出ており、現役の公団幹部が「債務超過を隠している」と告発したためだ。民営化の枠組みづくりの期限まで半年を切るなか、公団への不信感は強まるばかりだ。
 14日の衆院決算行政監視委員会。幹部告発の真偽を問う民主党の木下厚氏に対し、藤井治芳総裁は「(債務超過を示す財務諸表)作成の事実はない」と繰り返し答弁した。「藤井総裁の守旧的な考えが影響し、公団の民営化が進んでいない」との質問には「誰よりも改革派だ」と真っ向から反論、激しいやり取りになった。

原価か時価か
 公団の資産額(2000年度末)は28兆7千億円に過ぎず、負債額のほうが6100億円大きく、債務超過に陥っている−−。民営化推進派とされる片桐幸雄四国支社長が告発した非公式財務諸表の内容だ。
 公団が公表した財務諸表とは評価時点が2年異なるが、公表ベースでは資産額は34兆3千億円で告発ベースよりも5兆円以上多い。この結果、5兆7千億円もの資本金・剰余金を確保しているとしており、二つの隔たりは大きい。
 もともと資産評価方法を疑う声は強かった。公式資料が明確な根拠を示さないまま資産を時価評価したのに対し、告発ベースの資料は取得原価(簿価)から資産額を算定している。「本当なら、今回明らかになった財務諸表の方が実態を正確に表している可能性がある」(会計専門家)との見方さえ出ている。(商法施行規則に準拠して財務諸表を作れば、資産評価は時価と簿価を比較して低い方をとるから、通常の企業であれば債務超過になっている可能性が確かに高い。)
 2005年度の民営化後も高速道路を建設し続けたい公団にとって、債務超過は何としても避けたいところ。通行料収入はすべて借金返済に充てざるを得ず、新規の路線建設に回す資金がなくなってしまう。
 実は民営化推進委員会も債務超過問題に触れることに慎重だ。公団とは異なり、建設抑制を求める立場だが、民営化に伴う国民負担を最小限にしたいとの思惑がある。債務超過ならば、過去の負債穴埋めへ、多額の国費投入が必要になる可能性が大きいからだ。
 昨年十月には、5兆円の債務超過(2001年度末)を示す公団の内部資料が明らかになった。この時、一部の民営化推進委員から財務実態究明を求める意見が出たにもかかわらず、推進委は十分な審議を見送った。
 公団は客観性を担保するための財務諸表の会計監査を見送る方針だ。「財務実態がうやむやになりかねない」との声が市場関係者やエコノミストの間で広がっている。

更迭論に勢い
 改革の遅れに、情報開示問題も加わって、昨年秋からくすぶる藤井総裁の更迭論が再び勢いを増している。最近は国土交通省内でさえ「総裁辞任も視野に入れて公団改革を急ぐべきだ」との声が出てきた。ある国交省幹部は「自民党総裁選など秋の政治日程を考え、小泉純一郎首相は更迭のタイミングをみているのでは」と推測する。
 債務超過の有無が民営化の枠組みづくりとともに、政治の大きな焦点になりつつある。
(日本道路公団は中央官庁からの天下り先の雄であるばかりでなく、その公団からまたファミリー企業へ天下りがあり、さらに、道路メンテナンス会社・建設会社などの私企業へも天下り、天下った人間と公団が入札談合を繰り返し、甘い汁を吸い合っている。その天下り先企業数は700社を超えるという。このようなことを繰り返しているから債務超過になるのだ。それでいて、高速道路はサービスが悪い。競争を排除するシステムを温存させる必要はない。早く民営化し、84社あるというファミリー企業も処分した方が良い。)



[阪神高速公団不正入札 元部長に有罪判決]
(出典:2003年2月27日日本経済新聞朝刊)

 阪神高速道路公団を巡る不正入札事件で、競売入札妨害罪に問われた元公団京都建設部長、加藤幹夫被告(56)の判決公判が27日、大阪地裁であった。岩田光生裁判官は「不正行為で同公団に多大な損害を与えたが、従前から引き継いだ不公正な入札で自ら発案したわけではない」として懲役10月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 判決によると、加藤被告は2000年12月に実施された阪神高速守口線遮音壁工事の指名競争入札で、国誉建設(大阪府)に落札させようと計画。同社以外は落札意欲のない業者を指名した上、同社会長の山本正雄被告(62)=同罪で分離公判中=におおよその設計金額を教えて、国誉建設に落札させた。
 1999年12月に実施された別の遮音壁工事の指名競争入札で、山本被告におおよその設計金額を教えたとして競売入札妨害罪に問われた元公団大阪管理部次長、前川順道被告(59)と山本被告の判決公判は同日午後、同地裁で開かれる予定。



[阪神公団入札妨害 落札者が情報入手直後に他社へ指示]
(出典:2002年11月5日日本経済新聞朝刊)

 阪神高速道路公団(大阪市中央区)発注工事をめぐる競売入札妨害事件で、工事を落札した京大建設オーナー、山本正雄容疑者(62)=競売入札妨害容疑で逮捕=が入札情報を入手後、他の指名業者に電話を入れ、入札価格を指示していたことが4日、大阪府警捜査二課の調べでわかった。
 これまでの調べで、山本容疑者は逮捕容疑の遮音壁工事の入札日(1999年12月27日)の2,3日前、元公団大阪管理部次長、前川順道容疑者(59)=同容疑で逮捕=を訪問。おおまかな設計価格などの入札情報を聞き出したことが分かっている。山本容疑者はこの直後、部下を使って入札に参加する他の指名業者に電話を入れ、金額を指示していたことが新たに分かった。
 問題の入札では京大建設が1億7100万円で落札。ほかの業者の入札額はほとんどが1億7500万円以上だった。
 大阪府警捜査二課は4日、前川、山本の両容疑者ら4人を大阪地検に送検した。



[阪神高速道路公団 入札情報の漏えい次長室で常態化か]
(出典:2002年11月4日日本経済新聞朝刊)

 阪神高速道路公団(大阪市中央区)発注工事をめぐる競売入札妨害事件で、当時、大阪管理部次長だった前川順道容疑者(59)=逮捕=が入札の2,3日前、訪問を受けた「京大建設」オーナーで国誉建設会長の山本正雄容疑者(62)=同=に設計金額を漏らしていたことが3日、大阪府警捜査二課の調べで分かった。
 同課などは、問題の遮音壁工事をめぐり、歴代の管理部次長が、落札させる意向の業者に入札情報を次長室で事前に漏らすことが常態化していたとみており、阪神高速道路公団本社や大阪管理部次長室など3日の家宅捜索で押収した資料の分析を急ぐ。
 調べによると、山本容疑者は1999年12月の指名競争入札の2,3日前、前川容疑者の在籍していた大阪管理部次長室を訪問。前川容疑者から口頭で、おおよその設計金額を教えてもらったという。
 入札には十社が参加したが、受注意欲を持っていたのは国誉建設グループの京大建設だけで、残りは受注実績がなかったり、施行能力のない業者だったという。このため、山本容疑者は自分たちが入札の"本命"になっていると察知し、前川容疑者の元を訪れたという。
 捜査二課は、指名競争入札の参加者リストを業者側が見れば、公団側で落札予定の一社が「あうんの呼吸」で分かるシステムがあったとみている。



[阪神公団元幹部ら逮捕]
(出典:2002年11月3日日本経済新聞朝刊)

競売入札妨害容疑 設計金額漏らす
 阪神高速道路公団(大阪市中央区)の発注する公共工事入札をめぐり、入札情報を漏らすなど業者に便宜を図ったとして、大阪府警捜査二課などは二日、公団の元大阪管理部次長、前川順道容疑者(59)=大阪市港区夕凪二=と、工事を落札した京大建設(大阪府堺市)の実質的オーナーで、国誉建設(同)会長、山本正雄容疑者(62)=同市土師町二=ら4人を競売入札妨害の疑いで逮捕した。
 ほかに逮捕されたのは、公団大阪管理部次長、近藤康男(55)=神戸市北区藤原台中町六=と、京大建設の営業部長、谷本明(56)=大阪府岸和田市藤井町三=の両容疑者。捜査二課などは同日、国誉建設本社など三ヶ所を家宅捜索した。
 前川、近藤両容疑者は逮捕容疑となった入札で、京大建設以外の指名業者の多くに同種事業の実績がなく、落札意欲のない業者を選定。京大建設が予定価格の97.8%に当る1億7100万円で落札した。
 調べによると、前川、近藤両容疑者は1999年12月27日に実施された公団発注の阪神高速東大阪線の遮音壁工事の指名競争入札で、予定価格の基礎となるおおよその設計金額を、山本容疑者に漏えい。京大建設に落札させ、公正な入札を妨害した疑い。
 山本容疑者は黙秘しているが、他の3容疑者は容疑を認めているという。

天下り先企業舞台に不祥事
 前川容疑者は神戸建設局長などを経て、今年5月に退職、公団発注の工事の落札実績もある土木建設会社に天下りした。国誉建設の社長も公団OBが務めている。
 京大建設は2000年度からの3年間で、12件、約14億8千万円の公団発注工事を受注。同社を含む国誉建設グループ4社の受注高は44件、約56億円に上る。
 天下りと事件の関連について、阪神高速道路公団の藤田真理事は二日夜の会見で「職員の能力を再就職先で生かすことが問題とは思わない」と天下り批判をかわした。


Initially posted August 16, 2003.Updated May 24, 2006