官僚(国民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

議員の犯罪と官僚の犯罪とはその性質が酷似しているように思う。いずれも国民全般の利益よりは自己に利益をもたらしてくれる個別の者への利益供与であり、地位を利用した公の私物化である。以下は、行き当たりばったりの記事の羅列であり、その取捨選択の基準もなく、重要なものを網羅してもいないが、近年の忘れがたい官僚の犯罪の一部を備忘録としてとどめるものである。 なお、文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。

[阪神公団元幹部ら逮捕]

競売入札妨害容疑 設計金額漏らす
 阪神高速道路公団(大阪市中央区)の発注する公共工事入札をめぐり、入札情報を漏らすなど業者に便宜を図ったとして、大阪府警捜査二課などは二日、公団の元大阪管理部次長、前川順道容疑者(59)=大阪市港区夕凪二=と、工事を落札した京大建設(大阪府堺市)の実質的オーナーで、国誉建設(同)会長、山本正雄容疑者(62)=同市土師町二=ら4人を競売入札妨害の疑いで逮捕した。
 ほかに逮捕されたのは、公団大阪管理部次長、近藤康男(55)=神戸市北区藤原台中町六=と、京大建設の営業部長、谷本明(56)=大阪府岸和田市藤井町三=の両容疑者。捜査二課などは同日、国誉建設本社など三ヶ所を家宅捜索した。
 前川、近藤両容疑者は逮捕容疑となった入札で、京大建設以外の指名業者の多くに同種事業の実績がなく、落札意欲のない業者を選定。京大建設が予定価格の97.8%に当る1億7100万円で落札した。
 調べによると、前川、近藤両容疑者は1999年12月27日に実施された公団発注の阪神高速東大阪線の遮音壁工事の指名競争入札で、予定価格の基礎となるおおよその設計金額を、山本容疑者に漏えい。京大建設に落札させ、公正な入札を妨害した疑い。
 山本容疑者は黙秘しているが、他の3容疑者は容疑を認めているという。

天下り先企業舞台に不祥事
 前川容疑者は神戸建設局長などを経て、今年5月に退職、公団発注の工事の落札実績もある土木建設会社に天下りした。国誉建設の社長も公団OBが務めている。
 京大建設は2000年度からの3年間で、12件、約14億8千万円の公団発注工事を受注。同社を含む国誉建設グループ4社の受注高は44件、約56億円に上る。
 天下りと事件の関連について、阪神高速道路公団の藤田真理事は二日夜の会見で「職員の能力を再就職先で生かすことが問題とは思わない」と天下り批判をかわした。(出典、日本経済新聞2002年11月3日朝刊)

[阪神高速道路公団 入札情報の漏えい次長室で常態化か]

 阪神高速道路公団(大阪市中央区)発注工事をめぐる競売入札妨害事件で、当時、大阪管理部次長だった前川順道容疑者(59)=逮捕=が入札の2,3日前、訪問を受けた「京大建設」オーナーで国誉建設会長の山本正雄容疑者(62)=同=に設計金額を漏らしていたことが3日、大阪府警捜査二課の調べで分かった。
 同課などは、問題の遮音壁工事をめぐり、歴代の管理部次長が、落札させる意向の業者に入札情報を次長室で事前に漏らすことが常態化していたとみており、阪神高速道路公団本社や大阪管理部次長室など3日の家宅捜索で押収した資料の分析を急ぐ。
 調べによると、山本容疑者は1999年12月の指名競争入札の2,3日前、前川容疑者の在籍していた大阪管理部次長室を訪問。前川容疑者から口頭で、おおよその設計金額を教えてもらったという。
 入札には十社が参加したが、受注意欲を持っていたのは国誉建設グループの京大建設だけで、残りは受注実績がなかったり、施行能力のない業者だったという。このため、山本容疑者は自分たちが入札の"本命"になっていると察知し、前川容疑者の元を訪れたという。
 捜査二課は、指名競争入札の参加者リストを業者側が見れば、公団側で落札予定の一社が「あうんの呼吸」で分かるシステムがあったとみている。(出典、日本経済新聞2002年11月4日朝刊)

[阪神公団入札妨害 落札者が情報入手直後に他社へ指示]

 阪神高速道路公団(大阪市中央区)発注工事をめぐる競売入札妨害事件で、工事を落札した京大建設オーナー、山本正雄容疑者(62)=競売入札妨害容疑で逮捕=が入札情報を入手後、他の指名業者に電話を入れ、入札価格を指示していたことが4日、大阪府警捜査二課の調べでわかった。
 これまでの調べで、山本容疑者は逮捕容疑の遮音壁工事の入札日(1999年12月27日)の2,3日前、元公団大阪管理部次長、前川順道容疑者(59)=同容疑で逮捕=を訪問。おおまかな設計価格などの入札情報を聞き出したことが分かっている。山本容疑者はこの直後、部下を使って入札に参加する他の指名業者に電話を入れ、金額を指示していたことが新たに分かった。
 問題の入札では京大建設が1億7100万円で落札。ほかの業者の入札額はほとんどが1億7500万円以上だった。
 大阪府警捜査二課は4日、前川、山本の両容疑者ら4人を大阪地検に送検した。(出典、日本経済新聞2002年11月5日朝刊)

[阪神高速公団不正入札 元部長に有罪判決]

 阪神高速道路公団を巡る不正入札事件で、競売入札妨害罪に問われた元公団京都建設部長、加藤幹夫被告(56)の判決公判が27日、大阪地裁であった。岩田光生裁判官は「不正行為で同公団に多大な損害を与えたが、従前から引き継いだ不公正な入札で自ら発案したわけではない」として懲役10月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 判決によると、加藤被告は2000年12月に実施された阪神高速守口線遮音壁工事の指名競争入札で、国誉建設(大阪府)に落札させようと計画。同社以外は落札意欲のない業者を指名した上、同社会長の山本正雄被告(62)=同罪で分離公判中=におおよその設計金額を教えて、国誉建設に落札させた。
 1999年12月に実施された別の遮音壁工事の指名競争入札で、山本被告におおよその設計金額を教えたとして競売入札妨害罪に問われた元公団大阪管理部次長、前川順道被告(59)と山本被告の判決公判は同日午後、同地裁で開かれる予定。(出典、日本経済新聞2003年2月27日朝刊)

[道路公団財務諸表に不信感 「債務地超過隠ぺい」内部告発]

 日本道路公団が6月に公表した財務諸表(2002年度末)の信頼性が揺らいでいる。政府の道路関係四公団民営化推進委員会などから、資産の評価方法を疑う声が出ており、現役の公団幹部が「債務超過を隠している」と告発したためだ。民営化の枠組みづくりの期限まで半年を切るなか、公団への不信感は強まるばかりだ。
 14日の衆院決算行政監視委員会。幹部告発の真偽を問う民主党の木下厚氏に対し、藤井治芳総裁は「(債務超過を示す財務諸表)作成の事実はない」と繰り返し答弁した。「藤井総裁の守旧的な考えが影響し、公団の民営化が進んでいない」との質問には「誰よりも改革派だ」と真っ向から反論、激しいやり取りになった。

原価か時価か
 公団の資産額(2000年度末)は28兆7千億円に過ぎず、負債額のほうが6100億円大きく、債務超過に陥っている−−。民営化推進派とされる片桐幸雄四国支社長が告発した非公式財務諸表の内容だ。
 公団が公表した財務諸表とは評価時点が2年異なるが、公表ベースでは資産額は34兆3千億円で告発ベースよりも5兆円以上多い。この結果、5兆7千億円もの資本金・剰余金を確保しているとしており、二つの隔たりは大きい。
 もともと資産評価方法を疑う声は強かった。公式資料が明確な根拠を示さないまま資産を時価評価したのに対し、告発ベースの資料は取得原価(簿価)から資産額を算定している。「本当なら、今回明らかになった財務諸表の方が実態を正確に表している可能性がある」(会計専門家)との見方さえ出ている。(商法施行規則に準拠して財務諸表を作れば、資産評価は時価と簿価を比較して低い方をとるから、通常の企業であれば債務超過になっている可能性が確かに高い。)
 2005年度の民営化後も高速道路を建設し続けたい公団にとって、債務超過は何としても避けたいところ。通行料収入はすべて借金返済に充てざるを得ず、新規の路線建設に回す資金がなくなってしまう。
 実は民営化推進委員会も債務超過問題に触れることに慎重だ。公団とは異なり、建設抑制を求める立場だが、民営化に伴う国民負担を最小限にしたいとの思惑がある。債務超過ならば、過去の負債穴埋めへ、多額の国費投入が必要になる可能性が大きいからだ。
 昨年十月には、5兆円の債務超過(2001年度末)を示す公団の内部資料が明らかになった。この時、一部の民営化推進委員から財務実態究明を求める意見が出たにもかかわらず、推進委は十分な審議を見送った。
 公団は客観性を担保するための財務諸表の会計監査を見送る方針だ。「財務実態がうやむやになりかねない」との声が市場関係者やエコノミストの間で広がっている。

更迭論に勢い
 改革の遅れに、情報開示問題も加わって、昨年秋からくすぶる藤井総裁の更迭論が再び勢いを増している。最近は国土交通省内でさえ「総裁辞任も視野に入れて公団改革を急ぐべきだ」との声が出てきた。ある国交省幹部は「自民党総裁選など秋の政治日程を考え、小泉純一郎首相は更迭のタイミングをみているのでは」と推測する。
 債務超過の有無が民営化の枠組みづくりとともに、政治の大きな焦点になりつつある。(出典、日本経済新聞2003年7月15日朝刊)
(日本道路公団は中央官庁からの天下り先の雄であるばかりでなく、その公団からまたファミリー企業へ天下りがあり、さらに、道路メンテナンス会社・建設会社などの私企業へも天下り、天下った人間と公団が入札談合を繰り返し、甘い汁を吸い合っている。その天下り先企業数は700社を超えるという。このようなことを繰り返しているから債務超過になるのだ。それでいて、高速道路はサービスが悪い。競争を排除するシステムを温存させる必要はない。早く民営化し、84社あるというファミリー企業も処分した方が良い。)
Initially posted August 16, 2003.Updated October 20, 2004