防衛省(庁時代を含む)編目次

  1. 試験装置 防衛庁、使えても廃棄 04〜05年度OBら指摘「11億円分に」
    (出典:2006年10月21日、朝日新聞朝刊)
  2. 防衛施設庁事件初公判 談合、年発注額の半分 元幹部罪状認める
    (出典:2006年5月30日、朝日新聞朝刊)
  3. 施設庁談合 裏仕事やりたくなかった 天下りのためやめられず 元審議官、職安通い
    (出典:2006年5月28日、朝日新聞朝刊)
  4. 防衛施設庁発注工事 一般競争入札落札率が低下
    (出典:2006年4月7日、朝日新聞朝刊)
  5. 私の視点「施設庁談合 予算の仕組み変え防止を」一橋大教授(組織論)西口敏宏
    (出典:2006年3月29日、朝日新聞朝刊)
  6. 防衛施設庁談合ゼネコン側略式起訴へ 東京地検庁舎工事も対象
    (出典:2006年3月14日、朝日新聞朝刊)
  7. 防衛庁OB 2箇所同時天下り 4人、給与水準維持
    (出典:2006年3月07日、朝日新聞朝刊)
  8. 施設庁談合建築工事でも聴取 都内の病院新設で
    (出典:2006年3月03日、朝日新聞朝刊)
  9. 「乾電池談合で損害」企業訴えたが実は防衛庁から情報
    (出典:2006年3月02日、朝日新聞朝刊)
  10. 防衛揮設庁談合「OBの生活のため」前審議官引き継ぎ認める
    (出典:2006年2月28日、朝日新聞朝刊)
  11. 「官製談合 暴かれた技官支配(中)」 建設部 人事・天下りで独立国家
    (出典:2006年2月23日、朝日新聞朝刊)
  12. 施設庁談合 岩国・佐世保で入札妨害容疑 元審議官ら3人再逮捕
    (出典:2006年2月22日、朝日新聞朝刊)
  13. 「官製談合 暴かれた技官支配(上)」 調整「地元のドンに」岩国 業界内の争い機に決断
    (出典:2006年2月22日、朝日新聞朝刊)
  14. 天下りの悪弊を断て
    (出典:2006年2月21日、朝日新聞朝刊)
  15. 談合捜査 ゼネコン恐々
    (出典:2006年2月21日、朝日新聞朝刊)
  16. 施設局課長が価格漏らす 岩国談合ゼネコン側供述
    (出典:2006年2月17日、朝日新聞朝刊)
  17. 技術協会、業務丸投げ 調査研究3年56件中55件
    (出典:2006年2月06日、朝日新聞朝刊)
  18. 施設庁OB 鹿島に年間工事配分表 窓口役、各社に伝達
    (出典:2006年2月04日、朝日新聞朝刊)
  19. 岩国 官製談合認める 施設庁OBが供述
    (出典:2006年2月03日、朝日新聞朝刊)
  20. 防衛施設庁幹部16人「技術協会」経由天下り 2年前後待ち民間に
    (出典:2006年2月01日、朝日新聞朝刊)
  21. 高官天下り先に高額工事 防衛施設庁談合調整時に「配慮」
    (出典:2006年2月01日、朝日新聞朝刊)
  22. 防衛施設庁審議官ら逮捕「官製談合」の疑い 空調工事不正受注を調整
    (出典:2006年1月31日、朝日新聞朝刊)
  23. 天下り実績で配分 談合施設庁幹部、仕切る
    (出典:2006年1月31日、朝日新聞朝刊)
  24. 施設庁談合 東京地検、空調工事巡り元郵政相秘書を聴取
    (出典:2006年1月14日、朝日新聞朝刊)
  25. 談合結果施設庁も了承 電機設備工事設計段階で
    (出典:2005年12月31日、朝日新聞朝刊)
  26. 電気談合「施設庁に価格聞いた」
    (出典:2005年12月28日、朝日新聞朝刊)
  27. 電気談合「査定率を漏らした」防衛施設庁担当者が供述
    (出典:2005年12月27日、朝日新聞朝刊)
  28. 電気設備談合事件 東京地検、任意で施設庁職員を聴取
    (出典:2005年11月25日、朝日新聞朝刊)
  29. 防衛施設局工事、予定価格で12件落札 電気設備5年間で平均落札率も98.9%
    (出典:2005年11月24日、朝日新聞朝刊)
  30. 東京防衛施設局発注平均落札率5年で99.2%
    (出典:2005年11月19日、朝日新聞朝刊)
  31. 電機設備談合 防衛施設庁工事でも・成田空港工事疑惑メーカー担当者認める
    (出典:朝日新聞朝刊2005年11月18日)
  32. 元調本副本部長に実刑 防衛庁背任・汚職で東京地裁判決
    (出典:日本経済新聞朝刊2003年5月8日)
  33. 防衛庁流失データ 6月下旬に一部渡す?
    (出典:日本経済新聞朝刊2002年11月5日)


[試験装置 防衛庁、使えても廃棄 04〜05年度OBら指摘「11億円分に」]
(出典:2006年10月21日、朝日新聞朝刊)>

 戦闘機やミサイルの研究開発を手がける防衛庁技術研究本部(技本)の第3研究所(現・航空装備研究所)がこの3年間に、再利用や転用が可能だったとみられる約11億円(調達額)分の試験装置などを廃棄していたことが、技本OBらの証言で分かった。調達から3年足らずで廃棄処分が決まった約3億円の装置もある。「一定期間保存した後、機械的に捨ててきた」との証言もあり、巨費を投じる装備品開発の現場で、ずさんに処理している疑いが出てきた。(宮山大樹、砂押博雄)

 技本をめぐっては、F2支援戦闘機の開発装備品などを長期間にわたってメーカー側に無償で保管させている間題が明らかになっている。  国の調達品は、使用目的を終えた場合や老朽化などでこれ以上の使用が困難な時に、省庁の担当者が「不用決定」手続き後に売却か廃棄処分をする。使用可能なものを廃棄する行為は、調達品の取り扱いなどを定めた物品管理法に抵触する可能性がある。

 同庁が朝日新聞記者の情報公開請求に基づいて開示した文書によると、第3研究所(3研)は03〜04年度に、戦闘機やミサイルなどの研究開発のために59〜03年にかけて調達した試験装置など283点、調達額で計約145億円分の廃棄を決め、04〜05年度にかけて処分したという。  廃棄した理由について3研幹部は「10年以上使った」「専用装置のため、転用できない」「必要なくなった」などとしている。

 ところが、3研OBら複数の関係者は、このうち地対空誘導弾の「インターフェース装置」(01年、調達額約2億8000万円)▽「ウエーブレット変換実験装置」(98年、同約2500万円)▽「燃焼風洞用燃料供給ユニット」(03年、同約600万円)など計47点、調達額で計約11億円分については、「汎用性は高く、劣化もあり得ない」などとして、再利用や転用が可能なものだったと指摘している。
 特に3研側が「機密漏洩」を理由に早期に廃棄したインターフェース装置については、「この装置だけ、機密を理由にしているのは不自然」と証言する。

 別のOBらは「保管場所が手狭になると、試作品や試験装置などは機械的に捨ててきた」「時間や人手、手間がかかることから、再利用が可能なものとそうでないものを選別したりはしてこなかった」などとしている。

転用などで有効に利用 防衛庁技本会計課の話

 試験装置などは所期の目的を終えた後も、転用できるものは転用するなど有効利用している。

業者「ありがたい客」「10年使用」が免罪符

   「10年前後使った」「10年以上使ったから」。装置類の廃棄理由について、3研の複数の幹部は「10年」という言葉を何度も強調した。  3研が03〜04年度に廃棄処分を決めた283点の試験装置などを記したリストを見ると、経過年数が13年までのものが159点と6割近く。うち8〜13年のものが約半数を占める。
 試験装置は、市販品より精度の高いものが多く、数千万円、数億円のものが多く、数十億円するものも珍しくない。「会計検査院の目もあり、高額な調達品を短期で処分はできない。かといって有効利用するのではなく、『10年』を免罪符にして捨てているだけ」とあるOBは打ち明ける。
 その一方で、昭和34年調達の「直流発電器」、同38年の「レーダー付加装置」など半世紀近くたったものも残つている。  この点について、あるOBは「たまたま捨てるのを忘れ、そのままほこりをかぶっていた装置があるはず」と話す。研究所内では、装置類の処分を促す文書が回覧されることがあったという。「担当者が異動や退職後、忘れ去られた装置も多い。置き場所はどんどん手狭になり、実験室内にまであふれていた」
 大手メーカー関係者は言う。「メーカーでは、試験装置は転用を前提に設計し、壊れるまで徹底して再利用する。その点、技本は試験のたびに新たな装置を買ってくれる。実にありがたい顧客です」

[防衛施設庁事件初公判 談合、年発注額の半分 元幹部罪状認める]
(出典:2006年5月30日、朝日新聞朝刊)>

防衛施設庁による官製談合事件で、不正な受注調整をしたとして競売入札妨害(談合)の罪に問われた、同庁元技術審議官で公益法人「防衛施設技術協会」前理事長の生沢守被告(57)ら施設庁元幹部3人に対する初公判が29日、東京地裁で開かれた。3人は罪状認否で、「間違いありません」などと起訴事実を全面的に認めた。検察側は、官製談合と判明した工事金額が、03,04年両年度だけで約1448億円に上ることを明らかにした。

 初公判が開かれたのは、ほかに、同庁元技術審議官の河野孝義被告(57)と同庁元総務部施設調査官の松田隆繁被告(53)。
 冒頭陳述で検察側は、施設庁側の割り振りが裏付けられた工事金額について、03年度が建築、土木の2部門で計約567億円、04年度が通信などを加えた4部門で計約881億円になり、年間の総発注額の半分程度に上ったと指摘した。検察側が明らかにした供述調書などによると、3人は「施設庁OBの再就職のための談合で、税金を無駄遣いしたことは申し訳ない」「業者の技術力による自由競争を妨げていた」などと反省の思いを述べているという。
 起訴状によると、3被告は、山口県の岩国基地関連の土木工事など10件の入札で、大手ゼネコン幹部らと共謀して受注を調整したとされる。

 OB円満天下りのため告発文書、握りつぶし
 「官製談合防止法」での摘発逃れや、談合告発文書の握りつぶしー。生沢元審議官ら3人の施設庁元幹部が、官製談合の存続のためにその手法を悪質、巧妙化させていた実態が、検察側の冒頭陳述などで明らかになった。
 検察側は冒頭陳述で、官製談合の目的について、「技官や事務官、自衛官らの天下り先を確保するためだった」と指摘。「工事を割り振った業者に、自由競争の入札に比べて割高の金額で受注させ、施設庁OBを受け入れる見返りとしての利益を与えていた」と述べた。
 冒頭陳述によると、生沢元審議官ら3人は、03年1月に官製談合防止法が施行された後、同法への対応をひそかに協議したという。同法では、談合に関与した職員が損害賠償請求の対象になる。当時、佐世保米軍基地関連工事の割り振りをしていた時期だったため、早急な検討が必要だった。
 だが、「OBにつらい思いをさせず、円満に早期の勧奨退職をしてもらうため、防止法の制定後も(官製談合の実施を)変えようとは思わなかった」(生沢元審議官の供述調書)との結論に達した。3人は「従来の各OBへの連絡ではうわさが広がる」と考え、特定のOBとゼネコン役員各1人を各業者への連絡役にする巧妙な伝達方法に切り替えたという。
 さらに、04年8月末ごろ、すでに受注予定業者が割り振られていた自衛隊中央病院の空調設備工事の入札をめぐり、施設庁に匿名の投書が寄せられた。文書には、受注予定業者名に加え、連絡役OBの存在まで記され、公正取引委員会に通知したと書かれていた。
 だが、ここでも生沢元審議官ら3人は極秘で協議したうえ、投書を無視することに決めた。同年9月ごろ、大手空調設備会社に天下り、業界の連絡役を務めていたOBを施設庁に呼び出し、受注予定業者を割り振り直すことで批判をかわした。投書は職員らの手で破棄されていたという。



[施設庁談合 裏仕事やりたくなかった 天下りのためやめられず 元審議官、職安通い]
(出典:2006年5月28日、朝日新聞朝刊)>

防衛施設庁発注工事の官製談合事件で起訴された元同庁技術審議官の河野孝義被告(57)が、29日に東京地裁で開かれる初公判を前に朝日新聞の取材に応じ、「組織で必要な仕事と引き継ぎを受けた。できればやりたくなかった」と、不正な受注調整の内幕や複雑な心境を初めて明らかにした。4月に懲戒免職になった後、ハローワークで職探しをする日々を過ごす。後悔の思いは断ち切れないが、施設庁の後輩職員に向けて「正々堂々とした仕事をやり遂げてほしい」と語った。
 施設庁発注の岩国基地(山口県)の工事や空調設備工事などで談合したとして、競売入札妨害の罪に問われている河野元審議官や、元技術審議官・生沢守被告(57)、元総務部施設調査官・松田隆繁被告(53)の施設庁元幹部3人は、初公判で起訴事実を認める方針だ。
 取材に応じた河野元審議官は、疲れた表情で伏し目がちに語り出した。
 「長年の流れの中で決心し、白分でやったことです」
 入札談合を施設庁が調整していたことを初めて知ったのは、03年に建設部長に就任した時だ。前任の生沢元審議官から「表の仕事ではないが、組織で大事な仕事なんだ」と言われたという。
 「具体的なところは部下がやり、それなりの段階で情報が上がってくる」。入札ごとに受注させる共同企業体を決め、配分表を作成するのが建設部の仕事だった。裏仕事に憤れないことに配慮して、生沢元審議官が度々アドバイスしてくれたという。部下から「こんな仕事は嫌だ」と言われ、河野元審議官自身も「できれば早く断ち切りたいという気持ち。生沢さんもそうだった」と振り返る。
 不正な受注調整や工事価格の漏洩が続いた事情は、やはり業界への「天下り」だった。
 「私どもがそうすれば、(再就職の)あっせんの話がスムーズにいく。会杜側も見返りを期待してね。(施設庁OBを)受け入れたら仕事につながりやすいという期待感がある」。「業界との接点」として施設庁の人事部門も、建設部による受注調整を承知していると思っていたという。
 東京地検特捜部の調べによると、施設庁での官製談合は約30年前から続けられていたとされる。河野元審議官は、いつからあったかさえ知らなかったと語る。
 「あの場所に座ったのがね…」。建設部長という[談合仕切り役」のポストに就いたことへの後悔を口にした。
 特捜部の事件摘発は、米軍再編に関する日米協議の時期とも重なった。「米軍関係が非常に難しい時期でもあり、不信感を抱かせた。ただし、ここで一気に切れたことは良かったと思う」。後輩職員に向けては、「変な仕事に携わらずに。プライドをなくさないで」と、反省を込めて語った。  4月26日付で懲戒免職処分を受けた。再就職先はまだ決まっていない。退職金がない生活の中で、自宅マンションの購入費として長期のローンが残っている。



[防衛施設庁発注工事 一般競争入札落札率が低下]
(出典:2006年4月7日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注工事をめぐる官製談合事件で、東京地検特捜部が摘発した入札案件に参加するなどしていた約180社を施設庁が3月初めから指名停止にした結果、同月中の一般競争入札の平均落札率が74・6%だったことが分かった。96・6%だった04年度の平均落札率と比べ、22ポイント下がったことになる。施設庁は「常連の業者のほとんどが指名停止で新規参入が増えた結果、業者間の競争意識が高まった結果だ」と分析している。
 この間、606件の入札が実施され、入札が成立したのが484件。随意契約などを含む全体の平均落札率は86・5%で、05年度第3四半期までの94・6%と比べ、約8ポイント下がった。最も落札率が低かったのは、米軍横須賀基地の設備工事で36・9%だった。



[私の視点 一橋大教授(組織論)西口敏宏]
(出典:2006年3月29日、朝日新聞朝刊)>

◆施設庁談合 予算の仕組み変え防止を
 防衛施設序が発注した公共工事をめぐる官製談合事件で、施設庁の元技術審議官らが競売入札妨害(談合)の罪で訴追された。この事件は、その構造的要因もさることながら、いったい国は誰のものかをあらためて考えさせる。
 防衛庁では98年にも、当時の調達実施本部(調本)をめぐる背任事件が発覚した。私は事件後に政府が設置した「防衛調達制度調査検討会」の委員を務めたが、当時の調本は、内局や防衛施設庁、幕僚監部など庁内他機関との交流がほとんどなく、隔絶された特殊な世界を築き上げていた。
 各部門で互いにチェックすることができない発注者は、バイヤーとしての体をなしていない。部門横断的な議論がなければ、特定の部門の発注価格は「ブラックボックス」化し、組織全体としてのコスト管理はできなくなってしまう。
 民間メーカーの揚合、商品の設計・開発段階から、発注側の各部門と部品メーカーが協議を重ね、互いのコストを知った上で仕事を進めていく。検討委員会ではこうした事例を研究した上で、研究開発や製造、調達などの部門を横断したプロジェクトチーム制の導入を提言し、実際の調達改善策にも反映された。
 ところが、今度は防衛施設庁の事件だ。施設庁では、かつての調本と同じように、独自採用の技官を中心に閉鎖的な世界を作っていたとされる。「天下り先の確保」が事件の背景になったという点でも似ている。調本の事件や再発防止策から何も学んでおらず、事件後に調本が契約と原価計算部門に分離されたように、解体もやむを得ないだろう。
 ただ、こうした事件が起こるたびに出る「天下り廃絶」との声には注意が必要だ。すべての公務員を60歳まで世話するには、膨大な財源を確保しなければならず現実的ではないし、問題の本質ではないからだ。
 仮に公務員が民間に天下っても、発注者である役所が業者にコスト管理や品質向上を考えさせる動機づけをし、国にベストバリューをもたらす業者を間違いなく選ぶ仕組みを作ればことは足りる。これが、国民の税金を生かすことになる。 一方、今回の事件の舞台が、設備や土木工事だったという点では、調本事件よりも、国土交通省や旧日本道路公団などの談合事件との共通性が高い。
 繰り返される談合事件を防ぐには、単年度会計で財政を運営し、使い切った予算の実績に応じて次年度の予算が決まるというシステムそのものを改善する必要がある。
 例えば、英国政府では97年から、単年度ではなく3年サイクルの柔軟な予算運営のもとで防衛装備品を調達しているし、我が国でも、三重県などが余った予算を翌年度に繰り越す試みを始めている。
 政府としても、長期にわたる工事や設備、装備などの調達については複数年の予算編成を可能にした上で、各年度ごとに実績を公開し、コストダウンを図った業者には一定のインセンティブを与えるなど、新たな予算運営の仕組みを考えるべきだ。発注側が抜本的に意識を変えなければ真の改革は進まず、今後も一部の役人が同じ過ちを繰り返すことになるだろう。
 民主主義国の主役は国民だ。役人は公僕にすぎない。国民は主権者たる立場を自覚し、今度こそ過ちを見過ごさず、政府に改善を実現させねばならない。



[防衛施設庁談合ゼネコン側略式起訴へ 東京地検庁舎工事も対象]
(出典:2006年3月14日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注工事の官製談合事件で東京地検特捜部は、同庁の元技術審議官ら3人の逮捕容疑となった岩国基地や米海軍佐世保基地の土木工事に加え、市ケ谷庁舎の新築工事も立件対象に含めたうえで、談合に関係したゼネコンの営業担当者らを略式起訴する方針を固めた。土木工事だけでなく建築工事でも官製談合が続けられたとして、元施設庁幹部3人を勾留期限の14日に起訴するとともにゼネコン側の刑事処分も行う見通しだ。
 ゼネコン側について特捜部は、大手4社を合め、談合の疑いがある各工事で落札の中心となった計8社の営業担当者1人ずつを略式起訴することを中心に、刑事処分の範囲を検討しているとみられる。
 特捜部は、04年に入札が行われた米軍基地の土木工事で談合したとして、当時の技術審議官で公益法人「防衛施設技術協会」前理事長の生沢守容疑者(57)ら3人を競売入札妨害(談合)の疑いで2月21日に再逮捕、施設庁建設部を中心に長年続けられたとされる官製談合システムの解明を進めた。その結果、建築工事でも官製談合が行われたとの疑いを強め、関係者を聴取。発注額が大きかった市ケ谷庁舎新築工事について立件対象に加えることを決めたとされる。
 特捜部は、04年前後にゼネコンが受注した主な土木・建築工事では「配分表」が作られるなど、すべて受注企業があらかじめき待っていたとみている。複数の技術審議官OBが施設庁とゼネコン業界の間で仕切り役を務めたことも判明しており、特捜部はOBの関与も調べている。



[防衛庁OB 2箇所同時天下り 4人、給与水準維持]
(出典:2006年3月7日、朝日新聞朝刊)>


 防衛庁のキャリア職員OB4人が、同庁や防衛施設庁とつながりのある公益団体と、民間企業の両方に天下り、双方から給与を得ていることがわかった。天下り先はいずれも防衛庁の秘書課が紹介しており、民間企業4社中3社は施設庁の工事を受注している。公益団体には常勤で勤務する一方、民間企業では非常勤の立場で(表)執務机や名刺がないケースもあった。公益団体の給与が現役時代より少ないため、工事発注などで関係のある企業に非常勤の形で勤め、収入の目減り分を補填していた形だ。

 東京地検特捜部が摘発した談合事件では、施設庁がOBの天下り受け入れ実績に応じて工事を配分していたことが判明している。防衛庁元幹部からも「天下り先を二つ紹介する必要があるのか。複数の法人に籍を置けば片方で勤務実態がなくなることが多い。企業は働かないOBに給与を支給することになり、必ず見返りへの期待が生じる」との批判が出ている。 この4人は96年7月〜05年8月に施設庁次長や防衛庁契約本部長など幹部職で退職した元キャリア職員。現在は防衛庁または施設庁が所管する公益法人や職員生協で常勤として勤務し、民間企業では非常勤で顧問などを務めている。先に民間企業に天下り、後から公益団体に入ったケースでは企業での勤務を非常勤に切り替え、給与を減額して総額を調整するなどしていたという。
 4人のうち複数の元職員は「公益団体の給与は公務員退職時の7割前後。目減り分の中で退職時の1〜2割を民間企業で賄ってもらっている」と説明している。
 自衛隊法には両庁職員が退職後2年以内に、両庁発注業務を受注した民間企業に天下ることを禁じる規定がある。OO年8月に対象が広げられ、役員だけでなく顧間や一般社員にも就けなくなった。しかし、4人のうち2人はそれ以前に施設庁発注の土木・建築工事などを受注する建設会社などに天下った。また、別の1人が05年10月に非常勤顧問となった建設資材会社は両庁発注業務を受注していないといい、この元職員は「米軍再編など防衛問題に興昧がある会社で、施設庁の組織や部隊編成について助言した」と話している。
 関係者によると、勧奨を受けて58歳前後で退職する際、防衛庁秘書課が公益団体や民間企業を紹介。退職予定者が給与などを交渉し、契約する。建設会社の天下り先は施設庁建設部の建設企画課が確保。防衛庁厚生課は保険会社に頼むなど、民間企業に日常的に接する部署で業種ごとに天下り枠を用意するという。
 防衛庁秘書課は複数の天下り先を紹介していたことを認めたうえで、「紹介した企業は公益団体と業務上の関係がなく、公益団体の仕事に支障は出ない」と説明。給与面についても「非常勤なので、企業側に大きな負担をかけるわけではなく、問題はないと判断した」としている。



[施設庁談合建築工事でも聴取 都内の病院新設で]
(出典:2006年3月3日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁の官製談合事件で、東京地検特捜部は2日までに、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)の新設建築工事など、施設庁が発注した建築工事についても大手ゼネコン関係者などの事情聴取を始めた。特捜部は施設庁がゼネコンなどに発注した米軍基地の土木工事をめぐる談合の疑いで元技術審議官ら3人を再逮捕しているが、さらに白衛隊中央病院を含む大型建築工事についても捜査を進め、施設庁発注工事をめぐる官製談合の全容解明を目指すとみられる。
 関係者によると、聴取を受けたのは自衛隊中央病院の工事の入札に参加した大手ゼネコンの営業担当者ら。
 施設庁の官製談合事件で特捜部は、04年に入札が行われた岩国基地や米海軍佐世保基地の土木工事で談合したとして、当時の施設庁技術審議官で施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」理事長の生沢守容疑者(57)ら3人を再逮捕し、同庁建設部を中心に長年続けられたとされる談合システムについて調べている。
 特捜部は04年ごろに施設庁が発注した主な土木・建築工事はすべて官製談合で受注企業が決まっていたとの疑いを強めており、土木工事に続き、建築工事についてもゼネコン関係者らを聴取しているとみられる。
 自衛隊中央病院と市ケ谷庁舎の新築はプロジェクト自体の規模が大きく、各種工事が高額発注となっていたとされる。



[「乾電池談合で損害」企業訴えたが実は防衛庁から情報]
(出典:2006年3月2日、朝日新聞朝刊)>

 96年から99年にかけて陸上自衛隊が発注した通信機用乾電池の入札の前に、陸自の入札担当者らがメーカー側に複数回にわたって予定価格を類推できる内部資料を渡していたことが分かった。この入札をめぐり、公正取引委員会は00年、談合があったとしてメーカー側に排除勧告。それを受け防衛庁はメーカー側に不当利得の返還を求める訴訟を起こしていた。
 談合で契約額をつり上げられ損害を受けたとしていた防衛庁が、実は不正な入札の過程に関与していた形だ。防衛庁が1日、発表した。防衛庁は「資料を渡したのは不適切だった」として、内部調査を終え次第、関係者を処分する方針だ。 防衛庁によると、排除勧告を受けたメーカーのうち、「FDK](東京都港区)など3社に総額7億円の不当利得を返還するよう求め、東京地裁で係争中の訴訟の過程で明らかになった。
 昨年7月、メーカー側が陸自の担当者からもらったとされる調達予定リストを地裁に提出。資料には、調達予定の電池の品名や数、単価などが書かれており、実際の予定価格が類推できる内容だったという。これを受けて防衛庁が内部調査を実施。96年4月〜99年3月、陸自補給統制本部(現)の複数の入札担当者が複数回にわたり、「FDK」の担当者に入札前にリストを渡したことを認めたという。
 防衛施設庁の官製談合事件が東京地検特捜部に摘発されたばかり。不当利得返還訴訟で、メーカー側は「防衛庁も談合に深く関与していた」と主張しているが、防衛庁は「求めに応じて内部資料を渡しただけで、談合を主導したわけではない」と否定している。



[防衛揮設庁談合「OBの生活のため」前審議官引き継ぎ認める]
(出典:2006年2月28日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁がゼネコンなどに発注した米軍基地工事をめぐる官製談合事件で、再逮捕された施設庁前技術審議官の河野孝義容疑者(57)が東京地検特捜部の調べに対し、「談合は長年の引き継ぎで、退職したOBの生活も考えるとやめられなかった」と供述していることが関係者の話でわかった。前審議官は部下が作成した工事の「配分表」を了承し、決裁印を押していたという。施設庁による官製談合は天下り先の確保と直結していたと指摘され、特捜部が実態解明を進めている。
   調べによると、施設庁では、同庁ナンバー3で技術系トップの技術審議官が中心となり、OBを雇い入れた企業にその見返りとして工事を配分していた。施設庁時代の役職が高く、高額の給与を負担する必要がある幹部を受け入れた企業には高額工事を発注するなど、OBの待遇にまで連動した談合システムが引き継がれていた。
 関係者によると、河野前技術審議官はこうした事実を認め、「自分の代ではやめられなかったが違法という認識はあり、後任には引き継ぎたくなかった」と話している。  河野前技術審議官は再逮捕の容疑にかかわる米軍基地工事の発注当時、技術系職員の中で技術審議官に次ぐポストの建設部長を務めていた。前技術審議官は、受注させる予定の企業名などを建設部の部下が一覧にまとめた配分表の内容をチェックし、決裁していたことも認めているという。
 防衛庁によると、施設庁の建設系キャリア技官の平均退職年齢は55歳。防衛庁と防衛施設序の事務系職員の58歳に比べて約3年早いが、防衛庁は「制度ではなく、あくまでも憤例」としている。河野前技術審議官はこの点について「早期退職するOBの生活のために天下り先を確保する必要があった」などと動機を説明しているという。
 河野前技術審議官は空調設備工事3件をめぐる刑法の談合罪で起訴された後、岩国基地(山口県岩国市)や米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)の土木工事計5件に関する談合の疑いで再逮捕された。これらの工事が発注された04年1月〜05年3月当時、技術審議官を務めていたのは、河野前技術審議官とともに起訴・再逮捕された施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」理事長の生沢守容疑者(57)だった。
 自衛隊法は退職後2年間、施設序の工事を受注した企業への天下りを禁じているが、技術審議官OBらは防衛施設技術協会に2年前後在籍してから天下っていた。また、天下り規制にかからない民間企業に在籍した後、これらの企業と関係が深いゼネコンや海洋土木会社に転籍したケースも明らかになっている。



[官製談合 暴かれた技官支配(中)]
[建設部 人事・天下りで独立国家]
(出典:2006年2月23日、朝日新聞朝刊)>

 思いつめたような声だつた。
「土木工事で、(業者に工事を割り当てる)『配分表』をつくっていたことを、検事に、認めました」
 1月半ば、防衛施設庁にかかってきた1本の電話に、庁内は凍り付いた。
相手は、半年前まで同庁の技術審議官だった生沢守容疑者(57)。東京地検特捜部に任意の事情聴取を受け、「官製談合」を自白したと伝える内容だった。
 土木・建築工事は大丈夫なのか---。
 特捜部が、昨秋着手した成田空港談合事件に絡んで、同庁発注の設備工事が捜査対象に浮上してから、庁内の心配事になっていた。建設部の職員は「大丈夫です」と言った。他部出身の幹部たちは信じるほかなかった。
 施設庁の中でも、米軍などの施設建設を受け持つ建設部は、前身が「建設本部」という独立した行政組織だった。こうした生い立ちもあって、他部門との人事交流はほとんどなく、「独立国家」と言われた。
 配分表の存在を知るのは、建設部幹部とOBら一部に限られていた。

■    ■

 技術審議官は、施設庁ナンバー3で建設部出身の技官の最高位だ。上り詰めた生沢元審議官が退職後、理事長として転身した財団法人「防衛施設技術協会」が発足したのは90年だった。
 当時、バブル経済のまっただ中で、建設部の職員は待遇のよかった民間企業に次々と転職。人材流出と仕事量の増加に悩んだ建設部は、OBによる公益法人を作って工事の監理業務を外注することにしたと、発足の経緯を知る関係者はいう。 だが、それは「表の理由」だった。施設部などには70年代から退職者の受け皿としての公益法人があった。「うちも持ちたい、というのが長年の悲願だった」と、協会発足当時の役員の一人は明かした。
 それから16年。
 協会の理事長には、歴代の技術審議官を迎え入れてきた。当初、10人ほどだった協会職員の数は100人にまで膨らんだ。その約7割は建設部OBが占める。
 その間、施設庁と契約関係がある民間企業への天下りは、退職後2年間、防衛庁長官の承認がなければできなくなった。その規制の網をかいくぐるための待機場所として、協会の存在はいよいよ好都合になった。
 発足以来、協会に理事長など常勤理事として天下ったOB23人のうち、16人がすでに建設会社などに再び天下った。
 退職→協会→民間企業。現職幹部、OB、建設業界を結ぶ閉ざされた世界が出来上がった。

■    ■

 04年に入札があった岩国基地の滑走路沖合移設工事などをめぐる談合容疑で生沢元審議官らが再逮捕された21日。特捜部は、海洋土木会社に天下っていた審議官経験者の自宅も家宅捜索した。
 この審議官経験者は、業界を取り仕切っていたゼネコン幹部と現職幹部の間に立って、談合のしきり役として主導的にかかわったとされる。
 岩国基地の沖合移設計画が決まった92年ごろ、現職だった審議官経験者は、知人に漏らした。
「(建設部は)岩国であと15年は食っていける」
 巨額工事によって、閉ざされた世界がしばらく温存できると予測していたという。



[施設庁談合 岩国・佐世保で入札妨害容疑 元審議官ら3人再逮捕]
(出典:2006年2月22日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注工事の官製談合事件で、東京地検特捜部は21日、04年に入札が行われた岩国基地(山口県岩国市)や米海軍佐世保基地(長崎県佐保市)の工事で談合したとして、当時の施設庁技術審議官で施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」理事長、生沢守容疑者(57)ら3人を競売入札妨害(談合)の疑いで再逮捕した。天下りの受け入れ実績に応じて工事を配分したとされる。施設庁OBが退職後も収入を得るために行われた不正な受注調整は米軍基地の巨額工事を舞台にした大型談合事件に発展した。
 米軍基地の工事費用は日米地位協定に基づく、いわゆる「思いやり予算」の提供施設整備費から支出。米軍再編協議が続く中で官製談合による資金の無駄遣いが明るみに出た形で、今後の協議への影響も懸念される。
 再逮捕されたのは生沢理事長のほか前技術審議官の河野孝義容疑者(57)と前総務部施設調査官の松田隆繁容疑者(53)。
 調べでは、生沢理事長らはゼネコンに天下った施設序OBやゼネコンの営業担当者らと共謀し、04年1月〜3月に入札があった岩国基地の滑走路移設工事や佐世保基地の岸壁整備工事など計5件(落札価格計約151億円)であらかじめ決めた共同企業体(JV)に工事を受注させるため、ほかのJVが高値で入札するよう談合した疑い。
 特捜部は空調工事談合に続き、発注額が大きい土木・建築工事の不正にメスを入れた。多くの官公庁から工事を受注しているゼネコンが関与した官製談合を捜査し、幅広い「官業癒着」の構図を断ち切りたい考えだ。
 特捜部の調べなどによると、施設庁では約30年前から、民間業者に天下りを受け入れさせる見返りとして工事が配分されていた。技術審議官が中心となり、そのOBが天下って仕切り役を務める官製談合システムは、岩国基地の工事が着工した10年ほど前に完成した。
 技術審議官らが工事の配分表を作成し、有力OBを介してゼネコンに伝達。発注者となる各地の防衛施設局の職員がゼネコンの担当者に予定価格を漏洩していた。



[官製談合 暴かれた技官支配(上)]
[調整「地元のドンに」岩国 業界内の争い機に決断]
(出典:2006年2月22日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁の官製談合は、米軍再編にからむ巨大公共工事に舞台が広がった。天下りの見返りに先々の工事を配分する。その細部まで官が決めるシステムは、「聖域」とされる建設部畑の幹部技官の間で作り上げられ、脈々と引き継がれてきた。
   04年1月14日。
 広島防衛施設局の一室で、予定価格で40億円を超える大型工事の入札が行われた。岩国飛行場滑走路移設の地盤改良工事。
 落札したのは、鹿島、西武建設、株木建設の共同企業体(JV)。落札率(予定価格に占める落札額)は97・48%。
 この入札で談合を主導した容疑で、東京地検特捜部は21日、防衛施設庁元技術審議官の生沢守容疑者(57)ら3人を再逮捕した。
 入札の1年ほど前。業界仕切り役のゼネコン幹部に、施設庁のメッツセンジャー役だった技術審議官OBから、03年度に全国の防衛施設局で入札が行われる工事の「配分表」が示された。
 配分表には、すべての工事名と発注時期、おおよその金額、そして落札する業者名が書かれていた。JVの組み合わせも細かく決められていた。
 現役だった生沢元審議官ら、施設庁の中で米軍や自衛隊施設の建設工事発注を担当する幹部技官が作成したとされる。だが、OBが示した配分表の岩国の地盤改良工事の欄には、JVで落札した西武建設ではなく、別の建設会社の名前があった。この建設会社は地盤改良の特別な技術を持ち、下請けを合わせると、この年度の受注額が実質的に100億円を超えていた。
 若干の不公平感。業界側が審議官OBに伝えると、しばらくしてこの一点だけ、配分表が書き直された。あとはすべて施設庁が決めた一覧表通りに受注業者は決まった。

■   ■

 総額2400億円。岩国基地の滑走路を約1キロ沖合に移す一連の工事は「施設庁史上、最大規模のプロジェクト」(防衛庁幹部)とされる。
 92年、国が滑走路移設を決めると、巨額利権をめぐって業界内の主導権争いが起きた。  中国地方では長年、あるゼネコン幹部が「中国のドン」として談合の調整役を担ってきた。
 そこへ、関西で「大阪のドン」として仕切ってきたゼネコン幹部が乗り込んできた。 「地元が混乱すると大変なことになる」。施設庁の幹部技官らは危機感を募らせた。地元業者と反目すれば、この地域の工事は一切進まなくなる。「中国のドンに調整してもらう」。幹部技官らはそう裁断した。
 技術審議官、建設部長、建設企画課長ら施設庁建設部畑の幹部技官が采配を振るい、退職していた審議官OBを使って談合を主導する。そのシステムが構築される始まりだった。後任にも連綿と引き継がれていった。

■    ■

 岩国飛行場の関連工事発注を控えた04年。官が決めた配分で、工事を受注することが決まっていたゼネコンの営業担当社員は、広島防衛施設局で担当課長から金額を示された。  その額のまま札を入れ、このゼネコンを中心にしたJVは1回目の入札で落札した。落札率は限りなく100%に近かった。通常は、営業担当社員に施設庁から天下ってきたOBが付き添う。
 施設庁がここまでするのは、ゼネコンのためではなく、OBたちのありがたみを業者に焼き付けるのが狙いだった。

◇   ◇

 東京地検特捜部が21日防衛施設庁の前技術審議官らを競売入札妨害(談合)の疑いで再逮捕した事件で逮捕容疑になった工事と落札した共同企業体は次の通り。
【岩国分】岩国飛行場滑走路移設中央地区地盤改良工事(落札価格39億9千万円)鹿島・西武建設・株木建設▽同北地区埋め立て工事(同20億6850万円)東亜建設工業・本間組・岩国土建協同組合▽同地区地盤改良工事(同47億2500万円)鉄建・大豊建設・太平工業
【佐世保分】佐世保米軍岸壁整備工事2件(同計43億5750万円)五洋建設・東洋建設・西海建設・りんかい日産建設・大本組

[北原長官が会見「心からおわび」] 生沢元技術審議官ら3人が再逮捕されたのを受け、北原巌男防衛施設庁長官は21日タ、記者会見し、「信頼を裏切り、国民に心からおわびを申し上げる」と陳謝した。自身の責任については「全力で事案の解明に努めて参りたい」と辞任の意思がないことを強調した。
 事件の背景として指摘されている、施設庁OBの天下りを媒介とした「官」と「民」との癒着については「捜査中なので、その結果を待ちたい」と言及を避けた。



[天下りの悪弊を断て]
(出典:2006年2月21日、朝日新聞社説)>

[施設庁談合] 官僚が関連企業に再就職する「天下り」は、官業癒着の温床と批判されてきた。競争入札を無意味にする「談合」はそもそも違法だ。
 この二つの悪弊が結びつくと、天下りの見返りに工事を配分する「官製談合」が生まれる。官僚と企業が税金を山分けする仕組みだ。一種の贈収賄ともいえる。そんなあきれたことが防衛施設庁で堂々と続いていた。
 東京地検は元技術審議官らを空調設備の発注に絡む競売入札妨害の罪で起訴した。さらに岩国基地などの大規模な土木・建設工事でも官製談合をしていた疑いがあると見て、捜査を続けている。
 この間に防衛施設庁を舞台にした官製談合の露骨な手口が浮かび上がった。
 天下りしたOBに各企業が支払っている給与の額に比例して、施設庁は工事を配分するのだ。競争は見せかけで、予定価格を漏らすので、落札額は予定価格すれすれの高値となった。それだけ税金が無駄に使われていたことになる。
 国家公務員法や自衛隊法では、密接に関係する営利企業への天下りは原則2年間禁じられている。だが、施設庁幹部らは退官後、いったん同庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」に入り、2年ほど後に建設会社などへ天下る方法を取っていた。同協会には施設庁から多くの業務が委託され、協会はそれを民間会社にほぼ丸投げしていた。
 こうした腐敗の構造は、防衛施設庁だけの話ではないだろう。
 東京地検の一連の捜査の入り口となったのは、旧「新東京国際空港公団」の電機設備をめぐる談合だった。これも公団幹部による重電メーカーとの官製談合だ。初公判で、公団の元幹部らは起訴事実を認め、検察側は冒頭陳述の中で談合の実態を生々しく描き出した。
 「重電メーカー側は、公団からの工事受注が増すことを期待して、天下りを受け入れた。公団側の担当者は、天下りの受け入れに相応の見返りを与える必要があると考えた。受注件数が少ないと、すでに天下っていた公団OBに肩身の狭い思いをさせることも懸念した」
 なんとさもしい姿だろう。こうした現状を、どう変えていけばよいのか。
 談合については、改正独占禁止法で課徴金が引き上げられた。企業が自ら談合を申し出れば、課徴金を減免する制度もできた。当初から実効性が疑問視されていた官製談合防止法について、与党は罰則規定を設けることを検討している。
 そうした制度改革をもっと進める必要がある。同時に、今回のように捜査当局が談合を摘発することが何よりも効果的である。
 天下りについては、民主党が規制強化を提案している。関係企業への再就職の禁止期間を2年から5年に延ばし、公益法人などへの天下りも5年間禁止するといった内容だ。十分検討に値する。
>  天下りと談合という二つの悪弊をそろそろ終わりにする。その潮時である。



[談合捜査 ゼネコン恐々]
(出典:2006年2月21日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁の官製談合事件で東京地検特捜部は20日、空調設備工事の競売入札妨害(談合)の罪で元技術審議官ら3人を起訴し、捜査の焦点は岩国基地(山口県岩国市)の滑走路沖合移設など米軍基地の巨額工事を舞台にした「官業癒着」の解明に移る。施設庁からゼネコンが受注した土木・建築工事は、施設庁OBの天下り受け入れの見返りとして配分が決まっていたとされ、特捜部は近く元技術審議官らを再逮捕する方針。息をひそめて捜査の行方を見守るゼネコン各社は、事件を機に談合と決別できるのか--。

[次の舞台は米軍基地 施設庁事件]
[調べ室の廊下 担当者次々] この2週間、東京地検の調べ室の廊下は、談合の世界では名の知れた各地の「業務担当者」であふれかえった。「あいさつするわけにもいかず、ただ目線を送るだけだった」と担当者の一人は言う。
 昨年暮れ、スーパーゼネコンと呼ばれる鹿島、大成建設、大林組、清水建設が「談合との決別」を申し合わせた。制裁を強化する改正独占禁止法が施行された1月4日を機に談合担当者の配置換えに相次いで着手。各地の担当者を東京に召還したり役職者から誓約書をとったり。疑心暗鬼だった準大手にも追随する動きが出ていた。
 「決別」は1月4日以降についての申し合わせで、過去の談合については「不法行為を認めるわけにはいかない」として「なかった」ことを前提にした。しかし、特捜部の捜査で過去の清算を迫られる事態になった。
[価格調整 「もはやできぬ」] 昨年中に談合で受注企業を決めてしまった工事についても、申し合わせでは「別途協議」とされていたが、「もはや怖くて価格まで調整はできない」(担当者)と成り行きで入札になだれ込むケースが相次ぐ。
 談合摘発に対し業界の動きも急で、全国建設業協会は17日の理事会で法令順守の徹底を決めた。
 だが、業界として過去の談合を認めるかどうか踏ん切りがつかない。官製談合と裏表の関係にある天下りは防衛施設庁だけの間題ではなく、霞が関全体、さらに地方自治体にも波及するからだ。
 ゼネコン首脳は「過去を清算する、これが最後の機会。業界に自浄能力がないのなら、検察に背中を押してもらうのも仕方がない」と話す。
 再逮捕容疑の対象となる岩国基地の滑走路移設は、米軍機の騒音対策などとして総事業費2400億円を投じる施設庁史上、最大規模のプロジェクトだ。日米地位協定に基づく、いわゆる「思いやり予算」の提供施設整備費から支出される。
 提供施設整備費は79年度から支出され、総額は約2兆円。今年度は689億円でピーク時の65%程度だが、「不況にあえぐゼネコン各社にとっては魅力的な市場」と防衛庁幹部は指摘する。
 こうした巨額の米軍施設工事を受注したゼネコン各社に1月末以降、特捜部が家宅捜索に入った。あるゼネコン社長は捜索を出先で聞かされ、戻ると検事が役員室にいた。「ご協力願います」。丁寧な物言いがかえって恐怖感をあおったという。
 検察幹部は「業種を問わずに徹底的に調べ、談合を根絶させるようなものにしたい」と語る。
 今のところ、特捜部の狙いは官製談合と天下りの官民癒着の構造にメスをいれることにある。だが、官製談合以外に検察が踏み出すことはないのか、公取委が動くことはないか。ゼネコン各社は息を潜めている。
[3人を起訴] 20日起訴されたのは、元技術審議官で「防衛施設技術協会」理事長の生沢守容疑者(57)▽前技術審議官の河野孝義容疑者(57)▽前総務部施設調査官松田隆繁容疑者(53)。3人は容疑事実を認めているという。
 また、空調設備工事を受注した共同企業体の筆頭企業だった大気社と新菱冷熱工業、三機工業の営業担当者、大気社に天下っていた施設庁OB(63)が略式起訴され、いずれも罰金50万円の略式命令を受けた。



[施設局課長が価格漏らす 岩国談合ゼネコン側供述]
(出典:2006年2月17日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁が04年度に発注した岩国基地(山口県岩国市)の滑走路沖合移設工事をめぐり、ゼネコン各社の社員ら東京地検特捜部の調べに対し、広島防衛施設局の担当課長から予定価格を聞き出していたと供述していることが関係者の話でわかつた。施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」の前理事長(59)が、仕切り役だつた元技術審議官(72)とともに談合に主導的にかかわっていたことも新たに判明した。特捜部は施設庁とゼネコンの関係者を集中的に聴取し、官製談合システムの解明を進めているとみられる。
   仕切り役として工事配分の結果を伝えていたとされるのは、中堅ゼネコン幹部だった施設庁の元技術審議官。80年代から90年代にかけて建設部長や技術審議官を務めたOBで、04年当時は施設庁側の立場で官製談合に深くかかわったという。しかし、元技術審議官が伝えたのはあらかじめ決められた受注企業名だけで、価格についての情報は含まれなかった。このため、工事の割り振りを受けたゼネコン各社の社員らは、岩国基地を管轄し、発注者となる広島防衛施設局の担当課長と交渉。予定通り落札するために必要な予定価格を聞き出したという。
 関係者によると、施設庁ナンバー3で技術系トップの技術審議官と、そのOBを中心にした官製談合システムは岩国基地の滑走路移設工事が着工した10年ほど前に完成し、歴代の審議官が引き継いできた。防衛施設技術協会の前理事長も01〜02年に技術審議官を務め、当時、官側で工事配分を決める役割を担っていたという。
 前理事長は施設庁を退職した後も、施設庁と業界側の間に立って岩国基地の工事などをめぐる官製談合に主導的にかかわっていたという。前理事長は昨年9月に協会をやめた後、海洋土木会社に天下っており、この春には仕切り役の元技術審議官が引退し、その役割を引き継ぐ予定だったとされる。前理事長は朝日新聞記者の取材に対し、「話すことは何もない」などとしている。
 特捜部は、空調設備工事をめぐる刑法の談合容疑で前技術審議官の河野孝義容疑者(57)ら3人を逮捕し、土木・建築工事でも官製談合が行われていたとみて調べている。岩国基地の滑走路沖合移設工事は、総事業費が約2400億円に上る施設庁発足以来の大規模プロジェクト。



[技術協会、業務丸投げ 調査研究3年56件中55件]
(出典:2006年2月6日、朝日新聞朝刊)>

[施設庁天下り「トンネル組織」] 東京地検特捜部が摘発した防衛施設庁の官製談合事件で、天下りのためのトンネル組織になっていたとされる施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」(東京都)が、施設庁から受注した調査研究業務を下請けに事実上丸投げしていたことがわかった。協会は業務委託料の一部を受け取り、過去3年度の56件の調査では、随意契約で55件を民間会社に依頼していた。下請け関係者は「協会がかかわる必要は特にない」と指摘しており、施設庁の予算を落とすためだけに協会を関与させる構図が浮かんでいる。

[下請け「民間でできる」] 調査研究業務は、施設庁の出先機関である各地の防衛施設局が協会に発注する。協会の説明によると、発注される調査には、海上基地造成のための埋め立て技術▽飛行場建設のための滑走路のコンクリート強度の研究などがある。
 02年度から04年度までの3年間に施設庁から受注した調査56件(業務委託費・総額5億4千万円)のうち、協会独自に完成させたのは1件だけだった。
 施設庁からの委託費の一部を協会が取り、残りの金額で下請け会社と契約する。協会の取り分は今年度分の例でみると、「那覇基地施設現況調査」(那覇防衛施設局発注)が50%▽「呉その他施設現況調査」(広島防衛施設局発注)が約35%など。現場に出る必要の多い調査ほど下請けの取り分が多くなる仕組みだが、施設庁からの委託料のうち、多くて8割、少なくとも3割は協会側が受け取っている。
 調査結果は、下請けが現場で調べるなどした情報を協会が集約。協会で書類を作成し、提出するという。
 こうした調査は施設庁から、協会だけしかできないという意昧の「特命随意契約」で発注される。発注側の各防衛施設局は「競争相手がおらず、入札にはなじまない」と説明している。
 しかし、調査を受注している大手コンサルタント会社の関係者は「協会がしているのは、基地などの現揚で調査に協力してもらう自衛隊との調整役だけ。実際の調査は下請けがやっている。やろうと思えば、民間だけでもできる」と指摘する。
 ほとんどの調査を下請けに出していることについて、協会関係者は「調査内容には地質やコンピューターシステムなどの専門分野が多く、協会だけでは調べられない。下請けが調べ、協会が監修している」と説明している。
 協会の収支報告書などによると、04年度までの3年間の事業収入約41億円のうち、調査研究業務や建設工事の現場監督など施設庁から請け負う事業による収入が約36億円と9割近くを占める。協会に天下ったOBの仕事は大半が施設庁の予算で賄ったことになる。
 特捜部は協会理事長で元施設庁技術審議官の生沢守容疑者(57)ら3人を刑法の談合容疑で逮捕。協会をめぐっては、施設庁ナンバー3の技術審議官ら幹部職員16人が2年前後の短期間協会に在籍し、天下りの制限期間が過ぎた後、直接には再就職できない建設会社などに天下ったことが判明している。

キーワード[防衛施設技術協会] 防衛施設庁所管の公益法人。90年7月、「防衛施設の建設技術の調査研究」などを目的に設立された。約100人の職員のほとんどが施設庁建設部の出身。歴代の理事長は施設庁を技術審議官で退職したOBが務めている。施設庁から請け負う事業のほかは、施設庁発注工事の設計図や協会が発行する図書の販売で収入を得ている。



[施設庁OB 鹿島に年間工事配分表 窓口役、各社に伝達]
(出典:2006年2月4日、朝日新聞朝刊)>

 東京地検特捜部が摘発した防衛施設庁の官製談合事件で、施設庁側の立場で談合に主導的にかかわった技術審議官が土木工事の談合の窓口となっていた鹿島の役員に対し、工事を受注させる企業をあらかじめ割り振った年間の「配分表」を渡していたことが関係者の話でわかった。さらに、各工事の予定価格が事前に漏れていた疑いがあることも新たに判明した。特捜部は、岩国基地(山口県岩国市)の滑走路沖合移設工事など04年度発注の高額工事について集中的に捜査を進めているとみられる。

[価格漏洩の疑いも] 関係者によると、この元技術審議官は04年度発注分を含む複数年度の土木工事について、約1年分ずつの工事一覧と受注させる共同企業体(JV)、各JVの企業の組み合わせを書いた配分表を鹿島の役員に渡した。書面で伝えられた工事配分などの談合情報は鹿島から各杜に電話などで伝えられた。この鹿島役員は特捜部の事情聴取に対し、こうした事実を認めているという。
 配分表を渡したとされるのは、80年代から90年代にかけて施設庁の建設部長や技術審議官を務めた有力OB。中堅ゼネコンの幹部だったこのOBも特捜部に対し、官製談合を取り仕切っていたことを認める供述をしているとされる。
 特捜部は、空調設備工事で官製談合をしていたとして元技術審議官の生沢守容疑者(57)や前技術審議官の河野孝義容疑者(57)ら3人を逮捕し、04年度には現役の技術審議官だった生沢容疑者らが土木・建築工事についても談合していたとみて調べている。
 3人が逮捕された空調設備工事をめぐる刑法の談合容疑はメーカーの営業担当者と共謀して受注企業を決めたとされるもので、価格漏洩の疑いは含まれていない。しかし、関係者によると、土木・建築工事をめぐるゼネコンの家宅捜索の容疑には予定価格を漏らした疑いも含まれているという。
 官製談合の疑いが持たれている04年度発注の岩国基地の地盤改良・埋め立て工事などはいずれも落札率(予定価格に対する落札額の割合)が97%前後に達した。同年度発注の主要な工事はすべて官製談合の疑いが強く、米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)の岸壁整備工事は99.28%、横瀬貯油所(同県西海市)の護岸整備工事は97.76%だった。



[岩国 官製談合認める 施設庁OBが供述]
(出典:2006年2月3日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁が04年度に発注した岩国基地(山口県岩国市)の滑走路沖合移設工事をめぐり、中堅ゼネコンの幹部だった施設庁の元技術審議官が東京地検特捜部の調べに対し、官製談合を認める供述をしていることが関係者の話でわかった。この元技術審議官は施設庁側の立場でゼネコンと接触し移設工事に関連する土木工事について各杜への工事配分などを細かく指示していたとされる。特捜部は施設庁発注工事の官製談合の全容解明を目指しており、岩国基地の工事を含む04年度発注の主要工事について受発注の実態を詳しく調べている。
 基地周辺の安全や騒音対策のため滑走路を約1キロ沖合に移転する同工事の事業費は約2400億円で、施設庁が抱える最大のプロジェクトとなっている。巨額の国家事業をめぐり、OBを含む官主導で不正な受注調整が行われたことが明らかになった。特捜部は2日、新たにハザマ、前田建設工業、国土総合建設、本間組を家宅捜索した。  関係者によると、ゼネコンに工事配分などを指示したとされるのは、80年代から90年代にかけて施設庁の建設部長や技術審議官を歴任した有力OB。中堅ゼネコンの幹部だったこのOBは特捜部の事情聴取に対し、官製談合を取り仕切っていたことを認める供述をしているという。
 関係者の話では、このOBは、04年度に発注された滑走路移設に関連する複数の土木工事について、あらかじめ受注させる業者を割り振った工事配分を業界側に示し、それに従わせていた。また、受注する共同企業体(JV)のメンバーの組み方や、各JVの中での工事の分担割合まで細かく指示していたとされる。
 複数のゼネコン関係者もこうした談合の経緯を認めているという。
 04年度発注の移設関連工事は、岩国飛行場滑走路移設中央地区地盤改良工事(契約金額35億1750万円)▽同中央地区埋め立て工事(同27億3千万円)▽同北地区地盤改良工事(同20億5800万円)など。落札したJVはそれぞれ、鹿島・西武建設・株木建設▽大林組・徳倉建設・岩国土建▽鉄建・大豊建設・太平工業だった。
 関係者によると、施設庁では長期間にわたり、ナンバー3で技術系トップの技術審議官を中心に建設部ぐるみで、土木・建築工事を含む各種工事の官製談合が続けられてきたとされるが、岩国基地をめぐる談合では有力OBが主導的にかかわっていた。かつての談合では施設庁とゼネコンが直接協議していたが、03年1月の官製談合防止法施行をきっかけに、OBが施設庁側の立場でゼネコンと折衝する役割を担うようになったという。
 ゼネコン側に工事配分を指示したとされる有力OBは、技術審議官経験者で防衛施設技術協会に在籍していた別のOBを通じ、当時の建設部長で刑法の談合容疑で逮捕された前技術審議官の河野孝義容疑者(57)らと談合情報をやりとりしたとされる。
 防衛施設庁発注工事で特捜部は(自衛隊中央病院など3件の空調設備工事で官製談合をしていたとして、河野前技術審議官ら3人を逮捕。空調工事だけでなく(土木・建築工事でも談合があったとみて捜査を進めている。

[首相、天下り是正に言及] 小泉首相は2日の参院予算委員会で、防衛施設庁の官製談合事件にからみ、「公務員が関連する民間企業に就職する場合に一定の制約がある。この制約年数がいいのかどうかを含め、天下りの悪弊をなくす談合防止の改善策は総合的に検討する課題だと真剣に受け止めている」と語った。事件への同庁OBの関与を踏まえ、公務員の天下り規制を見直す考えを示したものだ。公明党の山口那津男氏の質問に答えた。
 首相はまた、天下りの原因となる公務員の早期退職の慣行についても、「今後、定年まで働けるような態勢にもっていくにはどうしたらいいか」と語り、是正していく考えを示した。



[防衛施設庁幹部16人「技術協会」経由天下り 2年前後待ち民間に]
(出典:2006年2月1日、朝日新聞朝刊)>

 東京地検特捜部が摘発した防衛施設庁の官製談合事件で、逮捕された元技術審議官が理事長を務める施設庁所管の公益法人「防衛施設技術協会」(東京都)に、技術審議官ら幹部職員16人が2年前後の短期間在籍し、さらに建設会社などに天下っていたことがわかった。協会は事業収入の9割近くを施設庁から得ている。技術審議官らは自衛隊法で退職後2年間、施設庁の工事を受注するなどした営利企業への天下りを禁じられているが、幹部職員らはこの期間を経過した後で、同規定に該当する民間企業に再就職していた。

[規制の抜け道] 自衛隊法は、98年に発覚した防衛庁調達実施本部(当時)を舞台にした背任事件を受けて改正され、役員になる場合以外も天下りが制限されるなど規制が強化された。しかし、同協会は施設庁OBが天下りの制限期間が過ぎるまで、施設庁から直接には再就職できない会社への転職を待つ「トンネル組織」の役割を果たしており、法改正を骨抜きにした形だ。
 今回、特捜部が摘発した空調設傭工事の官製談合事件で逮捕された生沢守容疑者(57)は施設庁の元技術審議官で協会の理事長。業界側の仕切り役とされるOBも、協会経由で大手空調設備メーカーの役員に就いている。
 協会は90年7月、別の施設庁所管の公益法人などが約1億円を出資し設立。理事長は施設庁の技術審議官から、3人の常務理事は防衛施設局長クラスから天下るのが慣例だという。職員約100人のほとんどが施設庁建設部の出身で、設立時以来、常勤の理事として天下った施設庁幹部は23人。すでに協会を退職した19人の8割強にあたる16人は、2年前後の勤務を経て主にゼネコンに再び天下っている=表。
 協会OBらの話によると、協会への天下りは施設庁の建設部幹部らが決め、在職中に知らされる。その際、協会からの天下り先は決まっておらず、協会転出後は、協会から再々就職先をあっせんされるのを待つという。
 元理事長の男性は「天下り制限を逃れるために2年を過ごしているという指摘は、結果的にそうなっているということだ。再々就職先は理事長ら幹部が探し、就職時からのひも付きではない」とする。現職時の8割給料で約2年働き、200万円ほどの退職金を受け取って中堅ゼネコンに転職した。「施設庁にはやはり顔を出す。それが仕事のうちだから」と言う。
 協会常務理事からゼネコンに転じた元防衛施設局長は「再就職の受け皿になっているのは認める。でも、仕事をしないわけじゃない」と話した。
 協会が施設庁から請け負う業務は@各施設局が発注する建設工事の現場監督A防衛施設の建設技術などの調査研究の二つ。04年度は現場監督は全国の44件を約10億円で、調査研究が同21件を約2億円で請け負い、年間14億円前後の事業収入の9割近くを施設庁から随意契約でとった委託業務で得た。協会に天下ったOBたちの仕事は、大半が施設庁の予算で賄ったことになる。



[高官天下り先に高額工事 防衛施設庁談合調整時に「配慮」]
(出典:2006年2月1日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注の空調設備工事をめぐる官製談合事件で、役職の高い幹部の天下りを受け入れたメーカーが発注額の大きな工事を受注するルールのあったことが関係者の話でわかった。東京地検特捜部は、施設庁技術審議官の河野孝義容疑者(57)ら逮捕された3人がこうしたルールによって、各メーカーの天下り受け入れ実績に応じて工事を割り振っていたとみて調べている。
 関係者によると、河野審議官らは施設庁OBの天下り実績を基準に工事配分を決めたが、単純な人数比ではなかった。施設庁時代の役職が高く、高額の給与を負担する必要がある幹部の天下りを受け入れたメーカーは受注調整の際にその点を考慮され、発注額の大きい工事を割り振られた。このため、メーカー側が受け入れる施設庁職員の役職の高さと、受注する工事の規模には相関関係があったという。
 工事配分の結果は、施設庁幹部から発注者となる各防衛施設局の担当者に伝えられ、受注が決まった業者と担当者が実際の工事発注に向けた話し合いをしていたとされる。こうした空調設備工事の官製談合のルールは長期間にわたり、引き継がれていたとみられる。  特捜部は、04年11月から05年3月に発注された3件の空調設備工事で談合したとして、河野審議官のほか、前任で当時の技術審議官だった財団法人「防衛施設技術協会」理事長の生沢守容疑者(57)ら3人を刑法の談合容疑で逮捕。歴代の技術審議官が官製談合を続けていたとみて調べている。
 防衛施設庁発注工事をめぐっては空調設備工事と同様に、建設・土木工事でも官製談合の疑いが強まっている。特捜部は31日の家宅捜索で、施設庁などとともに大手ゼネコンの鹿島、大成建設、大林組も捜索した。

[再発防止策協議 防衛庁が検討会] 官製談合事件を受けて、防衛庁は31日、木村太郎副長官をトップとして再発防止策を話し合う検討会を発足させた。3ヵ月程度をめどに、施設庁の解体も視野に入れながら組織のあり方や人事、入札の見直しの3点を柱に対策をまとめる。会議の冒頭、木村副長官は工事発注などを通じて現職職員とOBとが緊密になりやすい関係などが事件の背景にある、との見解を示した。施設庁も同日、北原巌男施設庁長官を委員長とした調査委員会を発足させた。



[防衛施設庁審議官ら逮捕「官製談合」の疑い 空調工事不正受注を調整 ]
(出典:2006年1月31日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注の空調設備工事をめぐり、東京地検特捜部は30日、同庁ナンバー3で技術系トップの技術審議官・河野孝義容疑者(57)ら3人を刑法の談合容疑で逮捕し、空調設備メーカーなど関係先を家宅捜索した。河野審議官らは施設庁OBの天下り実績を基準に自ら工事配分を決めていたとされ、特捜部は悪質な官製談合と判断した。メーカー側は在宅で捜査する。特捜部による官製談合事件の捜査は中央官庁の上層部が刑事責任を問われる事態に発展した。

 公共工事の入札談合に官側が関与するのを防ぐため、03年1月に官製談合防止法が施行されたが、橋梁談合などで「官」側の関与は後を絶たず、厳罰化が検討されている。こうした動きに拍車がかかりそうだ。
 ほかに逮捕されたのは河野審議官の前任の技術審議官で財団法人「防衛施設技術協会」理事長の生沢守容疑者(57)と施設庁総務部施設調査官の松田隆繁容疑者(52)。特捜部は31日にも施設庁などを家宅捜索する見通し。
 調べでは、河野審議官ら3人は04年11月から05年3月にかけて入札のあった市ケ谷庁舎など3件の新設空調工事(落札価格10億5千万〜12億6千万円)で空調設備メーカーの担当者と談合、入札前に受注会社を決めた疑い。3件は空調工事としては発注が巨額だった。
 特捜部によると、各工事は大気社(東京都)、新菱冷熱工業(同)、三機工業(同)がそれぞれ筆頭会社になった共同企業体(JV)が落札。当時、生沢理事長は技術審議官、河野審議官は施設庁建設部長、松田調査官は同部建設企画課長だった。建設部長、建設企画課長は技術審議官に次ぐポスト。
 3人は決まった工事配分をJVの筆頭会社に伝えたが、予定価格などは漏らしていなかったとみられる。特捜部は別のルートで予定価格が漏洩していた疑いもあるとみて詳しく調べている。
 施設庁の建設部は出先の各防衛施設局長による工事発注を総括する部署。3人はOBの天下りを管理する役割も担っていたとされ、特捜部は天下りを基準とする談合が長年続いたとみている。
 関係者によると、今回の事件では、98年4月に施設庁を退職し、現在は大手空調設備メーカーに再就職したOBがメーカー側の受注希望をとりまとめていたとされる。特捜部はOBを含む関係者から事情を聴き、河野審議官らが談合を主導したと判断したとみられる。
 施設庁発注工事をめぐっては、東京防衛施設局が04年以降に競売入札で発注した電機設備工事についても課長級職員らが予定価格などを漏らした疑いが強いことが判明、特捜部が捜査している。
 官公庁発注工事をめぐる談合事件で、特捜部は昨年11月、旧「新東京国際空港公団」の官製談合を摘発し、同12月に元工務部次長ら2人を競売入札妨害の罪で起訴した。

額賀防衛庁長官「慙愧に堪えぬ」 額賀防衛庁長官は31日午前1時15分すぎから防衛庁で記者会見し、「国民の信頼を裏切ることになり誠に慙愧に堪えない事態だ。東京地検の捜査には全面的に協力し、一日でも早く事実の解明が進むことを望んでいる」と陳謝した。
 小泉首相は31日未明、首相官邸で記者団に「遺憾なことだ。捜査に協力して、しっかりした対応をしてほしい。額賀長官に任せている」と述べた。



[天下り実績で配分 談合施設庁幹部、仕切る]
(出典:2006年1月31日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁の発注工事をめぐり同庁幹部とOBが30日、東京地検特捜部に逮捕された。天下りの受け入れ実績を基準に、発注先を決めていたとみられる。自衛隊の装備品や燃料の入札では、数々の談合事件や不正な受注調整が繰り返されてきたが、業者の間では「受注できるかどうかはOBの有無で決まっていた」とささやかれていた。
    施設庁OBによると、同庁建設部は建築と土木、設備の3グループに分かれ、前技術審議官の生沢守容疑者(57)は「建築」、現審議官の河野孝義容疑者(57)は「土木」の代表格だった。
 総務部施設調査官の松田隆繁容疑者(52)を含む3人は逮捕容疑となった時期には、技術系のトップから三つのポストを占め、天下りなどの決定権を握っていたという。
 防衛庁をめぐっては99年に発覚した航空機のジェット燃料などの談合事件をはじめ、艦船の修理の入札調整(99年)▽陸上自衛隊発注の通信機用乾電池の入札(00年)▽航空機や自動車用タイヤ入札(04年)と談合や不自然な入札の実態がたびたび明るみに出た。
 その過程で「官」が談合を助長したことは指摘されても、その関与がじかに問われたことはなく、防衛庁側は「被害者」という立場だった。
 しかし、入札に参加している業者の間でささやかれてきた見方は違う。
 施設庁の工事を下請けしたことがある電気工事会社の役員は「OBの有無によって受注できるかどうかが決まっていた」と明言する。雇用したOBの中には「午前だけ出勤し、再就職先の業界ごとに仲間で集まり、碁をうったりしていた」例さえあったという。
 同じ声は、同庁建設部のOBの間にもある。その一人によると、各メーカーに天下ったOBらは、天下り先の営業担当者らと同庁を訪問。幹部らに顔つなぎをするなど「営業活動」をするのが仕事の一部だという。
 営業は「今度一緒に飯を食おう」で始まる。同庁のある職員にも、メーカーに天下った施設庁OBからそう声がかかった。食事が終わった後、別れ際に「これからもよろしくな」と言われた。
「『入札など必要な情報を頼むぞ』ってことだと思う。自分はそんな話には乗らないが、たびたびごちそうになれば断れなくなる。庁内の一部には、そういう脇の甘い体質が残っている」。この職員はそう語る。

[不正の構図、自浄できず]
<解説>防衛施設庁を舞台にした官製談合の根底には、98年の旧調達実施本部(調本)の背任事件と同じ防衛庁職員の天下り問題が根深く絡んでいる。  調本事件の構図は、調本幹部が職員の天下り先確保の見返りとして、メーカー側の装備品不正請求に対し返還額を「目こぼし」したものだった。
 今回の官製談合も、施設庁幹部が天下り先確保のために、企業側の受け入れ実績(人数)をもとに受注業者を決めた疑いが持たれている。
 事件後、防衛庁は調本を解体し、離職後2年以内の再就職についてより厳しい条件を加えた。しかし、いったん公益団体などに籍を置いてから関連企業に天下る抜け道もあり、実態はそう大きく変わっていない。施設庁内では、ゼネコンやメーカーに天下ったOBが営業担当者を伴って歩き回る風景が日常的に見られる。今回、共謀した空調メーカーにも同庁ナンバー2の次長が顧問として次々と天下ってきた。
 「OBの影響力が不正や利権につながる」との危倶(きぐ)は、以前から庁内で指摘されていた。ただ、気づきながらも、自浄できずにきた。今度こそ、防衛庁は天下り問題と決別する覚悟で、抜本的な出直しを目指すべきではないか。(編集委員・谷田邦一)



[施設庁談合 東京地検、空調工事巡り元郵政相秘書を聴取]
(出典:2006年1月14日、朝日新聞朝刊)>

 防衛設庁発注の工事をめぐり、電機設傭に加えて空調設備工事でも不正な受注調整が行われ、これらの空調設備工事の入札に関与した可能性があるとして、東京地検特捜部はコンサルタント会社を経営している元衆院議員秘書(54)から事情聴取した。さらに、複数の空調設備メーカーの担当者が特捜部の調べに対し、メーカーに天下りした施設庁OBに情報収集を依頼して受注調整していたと認めていることも判明。特捜部は、施設庁側がOBに情報を流す形で発注側も関与した「官製談合」だった疑いが強いとみて解明を進めている。
   関係者によると、この元秘書は以前、郵政相を務めた元衆院議員の事務所に勤務していた。現在は東京都港区でコンサルタント会社を経営。昨年11月に競売入札妨害容疑で特捜部が重電メーカーを一斉に家宅捜索した際、この会社も関係先として家宅捜索を受けている。
 一方、メーカーの担当者らが情報収集を依頼していたとされる防衛施設庁OBは98年4月に同庁を退職。財団法人勤務を経て、大手空調設備メーカーの役員になっているという。
 空調設備工事で不正な受注調整があったと指摘されているのは、新菱冷熱工業(東京都新宿区)、大成設備(同)、第一工業(同千代田区)の共同企業体(JV)が04年11月25日に落札した陸上自衛隊三宿駐屯地の病院新設空調工事など。同工事は新菱冷熱のJVが2回目の競争入札で落札し、その落札価格は10億5千万円だった。
 防衛施設庁発注工事をめぐっては、東京防衛施設局が04年以降に競売入札で発注した電機設傭工事のうち4件について、課長級職員らが予定価格や、予定価格を算出するための「査定率」を漏らした疑いが強いことが判明。特捜部が競売入札妨害容疑での立件を目指している。設計段階でどのメーカーが工事をとるかを決め、施設庁の担当者も不正な受注調整の結果を了承していたとされている。



[談合結果施設庁も了承 電機設備工事設計段階で]
(出典:2005年12月31日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁発注の電機設備工事で、どの電機メーカーが工事をとるかを決める不正な受注調整が設計段階で行われ、その結果が施設庁にも伝えられていたことが関係者の話でわかった。施設庁の担当者はこの段階で調整結果を了承していたという。同庁発注の電機設備工事の入札については非公開の数値が業界側に漏れるなど「官製談合」だった疑いが持たれており、東京地検特捜部は1月中にも競売入札妨害容疑での立件に向け、本格捜査に乗り出す見通しだ。

[来月にも本格捜査 東京地検]  防衛施設庁の説明では、電機設備工事では施設庁がまず、設計会社に設計図を発注。その後、設計会社がつくった設計図をもとに、受注を希望する電機メーカー各社による入札が実施される仕組みになっている。
 関係者によると、電機メーカー各社はふだんから設計会社に対して営業活動をしており、設計図の発注があると、自社製品を使った設計図の案を持ち込むなど盛んに売り込みを図った。電機設備は特殊な工事のため、技術力を持つメーカー側が設計図の作製に全面的に協力する形がとられており、設計会社とコンビを組むことができたメーカーが最終的に工事を受注するというルールができていた。設計会社への営業や協力の度合いを競うこうした方法は「汗かきルール」と呼ばれていたという。
 どのメーカーが受注するかは本来、入札で公正に決められなければならないが、業者側は「設計」「工事」の2段階になっている発注方式を悪用して設計段階での不正な受注調整を続け、入札は形骸化していた。
 こうしてできた設計図は入札前に各社に示されたが、受注予定メーカーの製品を使うことを前提に書かれているなど、業界関係者が見ればどのメーカーが受注することになっているのかわかる内容だった。施設庁には、設計会社が設計図を提出する際に受注調整の結果が伝わり、施設庁側も了承していたとされる。
 受注予定会社の担当者は入札で確実に落札するため他社の担当者に電話で連絡。「(今回の工事は)うちの図面だ。見積価格は○億円で入れる」などと伝え、実際に予定通り受注していたという。
 防衛施設庁を担当していた大手電機メーカーOBは「設計会社には各社の営業担当が出入りし、部分的にこちらが図面を引くこともあった。できあがった設計図をメーカーの営業担当が見れば、どの社の製品が使われているかなどが分かったと説明。「入札前に各社に電話して『これはうちで頑張る』と伝えることもあった」と話している。
 防衛施設庁発注の電機設備工事をめぐっては、特捜部の事情聴取に対して、施設庁の担当者が、予定価格を決める過程で使う非公開の「査定率」をメーカー側に漏らしたと認めている。また、複数のメーカーの担当者は「施設庁の担当者から予定価格を教えてもらった」と供述しており、最終的に決まった予定価格を施設庁側が漏らし、受注調整を手助けした疑いが持たれている。



[電気談合「施設庁に価格聞いた」]
(出典:2005年12月28日、朝日新聞朝刊)>

 防衛施設庁が発注した電機設備工事をめぐり、入札に参加した複数の電機メーカーの営業担当者が東京地検特捜部の事情聴取に対し、「施設庁の担当者から予定価格を教えてもらった」と供述していることが関係者の話で分かった。電機設備は特殊な工事のため、予定価格は複雑な過程を経て決められる仕組み。最終的に決まった予定価格が発注側から漏れ、業界側の受注調整を容易にしていた疑いが強まった。
 関係者によると、受注調整があったとされる受変電設備工事を発注する場合、施設庁はまず、メーカー各社に見積価格を提出させる。この後、値下げを求めて価格交渉をし、最も安価になった価格から施設庁としての積算価格を導く。さらに、この積算価格をもとに予定価格を決める仕組みになっている。
 04年度からは、見積価格の値下げを求める部分に「査定率」方式も導入された。価格交渉とは別に、各メーカーが当初提出した見積価格に、工事ごとに決める各メーカー一律の査定率(1以下、非公開)をかけた価格も含め、最も安価な数字を採用する。
 関係者によると、複数の電機メーカーの担当者が特捜部に対し、受注調整の結果、自社が受注することになった工事について施設庁側から予定価格を聞いたと供述している。また、あるメーカーの担当者は特定の工事の査定率について、施設庁側から7割台前半の数字を聞いたと話しているとされる。予定価格を聞いたメーカー側の担当者は他社に連絡し、予定価格以上で入札するよう指示していたという。



[電気談合「査定率を漏らした」防衛施設庁担当者が供述]
(出典:2005年12月27日、朝日新聞朝刊)>

  官公庁発注の電機設備工事で受注調整があったとされる事件で、防衛施設庁の担当者が東京地検特捜部の事情聴取に対し、「査定率」と呼ばれる非公開の数値をメーカー側に漏らしたと認めていることが関係者の話でわかった。特捜部は発注側が関与した「官製談合」だった疑いがあるとみて捜査している。
 受注調整があったとされる受変電設備工事は全国の各防衛施設局長に発注権限がある。査定率は同局長が予定価格を決める際に使う「積算価格」をつくる過程で用いられる数値。積算価格の作成は各施設局の設備課が担当し、査定率は同課の担当者しか知らない仕組みだが、それがメーカー側に漏れ、予定価格が事前にわかるなど受注調整に役立てられた疑いがもたれている。
 関係者によると、各メーカーはまず見積価格を施設庁に提出。この後、施設庁側は値下げを求めるが、ここで@メーカー側との交渉の結果による値下げ後の価格A工事ごとに決める各メーカー一律の査定率(1以下)をかけた価格の二つを比較し、安価な方をそのメーカーの最終的な見積価格とする。 各メーカーの中で最も安価な見積価格から施設庁としての積算価格が決まり、各防衛施設局長はそれをもとに予定価格を決める仕組みになっている。施設庁はこの方式を04年度以降に導入した。



[電気設備談合事件 東京地検、任意で施設庁職員を聴取]
(出典:2005年11月25日、朝日新聞朝刊)>

 旧「新東京国際空港公団」など官公庁が発注した電機設備工事で談合があったとされる事件で、東京地検特捜部は24日までに、防衛施設庁の担当職員から任意で事情聴取した。特捜部は同庁から関連資料の任意提出を受け、実態解明を進めている。
 特捜部の調べに対し、一部の電機メーカーの担当者がすでに、防衛施設庁発注の電機設備工事で受注調整をしていたことを認めているとされる。また、関係者によると、こうした工事の受注には政治家の元秘書が経営する会社など複数のコンサルティング会社が関与していたとされ、特捜部はコンサルティング会社や電機メーカーの防衛施設庁担当の営業担当者宅を家宅捜索し、この元秘書からも事情を聴いている。
 特捜部は旧「新東京国際空港公団」が03年11月7日に実施した「南部貨物上屋ビルの第2期受変電設備工事」の指名競争入札で受注調整があった疑いがあるとして今月17、18日、競売入札妨害容疑で東芝、三菱電機、富土電機システムズ、明電舎、日新電機の電機メーカー5社と、同公団を民営化した成田国際空港会社(NAA)を捜索。関係者の供述などから、同公団、防衛施設庁のほか、国立大学の電機設備工事でも受注調整が行われた疑いが浮上している。



[防衛施設局工事、予定価格で12件落札 電気設備5年間で平均落札率も98.9%]
(出典:2005年11月24日、朝日新聞朝刊)>

 旧「新東京国際空港公団」発注の工事で受注調整した疑いが持たれている入札に参加した電機メーカー6社が、04年度までの5年 間で全国に八つある防衛施設局が発注した電機設備工事を計52件受注し、このうち12件は予定価格と同額で落札していたことがわ かった。52件(総額91億7023万円)の落札率(予定価格に対する落札額の割合)の平均も98.9%にのぼっていた。防衛施設庁発注の工 事をめぐって、全国的に異常な高落札率が続いている実態が浮き彫りになった。
 電機メーカーの担当者の一部は東京地検特捜部の調べに対し、旧公団発注工事だけでなく、施設庁発注の工事でも受注調整があったと認めているとされる。
 防衛施設庁が受注実績を調べたのは、三菱電機、富士電機システムズ、日新電機、明電舎、東芝、日立製作所。5年間で24件を 落札した富土電機システムズが最も多かった。予定価格と同額で落札されていた12件の企業別の内訳は、富土電機システムズが4 件、三菱電機と東芝が3件、明電舎が2件となっている。
 電機設傭工事について、各防衛施設局は入札参加予定業者に見積額の積算を要請。提示された金額のうち最低金額をもとに査定 したうえで、予定価格を算出している。



[東京防衛施設局発注平均落札率5年で99.2%]
(出典:2005年11月19日、朝日新聞朝刊)>

 東京防衛施設局が04年度までの5年間で発注した電機設備工事の入札をめぐり、旧「新東京国際空港公団」発注工事で受注調整 した疑いが持たれている入札に参加した大手電機メーカーの平均落札率(予定価格に対する落札額の割合)が99・2%にのぼることが わかった。防衛施設庁が18日公表した。特に03年度に落札された2件については、いずれも予定価格と同額(落札率100%)だった。
 受注実績を調べたのは、日立製作所、東芝、三菱電機、明電舎、富士電機システムズ、日新電機の6社。三菱電機と日新電機を のぞく4社で、00から04年度の東京防衛施設局発注の変電設備工事を計17件(総額40億3331万円)落札しており、この平均落札率を 調べた。
 電機設備工事について、各防衛施設局は入札参加予定業者にまず見積額の積算を要請。各社から提示された金額のうち最低価格 を基準にして査定し、予定価格を算出している。工事をめぐっては、技術的な理由から受注メーカーが限られているという。



[電機設備談合 防衛施設庁工事でも・成田空港工事疑惑メーカー担当者認める]
(出典:2005年11月18日、朝日新聞朝刊)>

 旧新東京国際空港公団の発注工事をめぐる談合事件で、電機メーカーの担当者が東京地検特捜部の調べに対し、防衛施設庁発注の工事でも受注調整があったと認めていることが関係者の話でわかった。また、東京防衛施設局が04年度に発注した受変電設備工事のなかに落札率(予定価格に対する落札額の割合)が99.95%に上る工事があったことも判明。特捜部は旧公団発注工事に加え、防衛施設庁発注工事についても実態解明を目指しているとみられる。
 特捜部はこれまで旧公団発注工事について、どの会社が受注するかを事前に割り振った「配分表」とみられる文書をもとに旧公団側とメーカー側の担当者を聴取。複数のメーカーの担当者と旧公団側の双方が入札時に受注調整があったことを認めたとされる。関係者によると、特捜部は防衛施設庁発注工事についてもメーカー側の同庁担当者から事情を聴いており、一部の担当者は調べに対し、同庁発注工事でも受注調整があったと供述しているという。
 特捜部は17日、東芝(東京都港区)、三菱電機(同千代田区)、富士電機システムズ(同品川区)の電機メーカー3社の各本社を捜索。防衛施設庁発注工事をめぐっても、メーカー側の同庁に対する営業担当者の自宅や、政治家の元秘書が関係する建設会社などを関係先として捜索した。特捜部は防衛施設庁発注の受変電設備工事などについても、入札時の不正や仲介者の有無などについて解明を進めるとみられる。
 また、防衛施設庁が公開している資料によると、同庁の04年度の入札では落札率が99.95%に達したものもあった。この例は東京防衛施設局が発注した横田基地の受変電設備工事で6社が応札したが、8億1938万8500円の予定価格に対し、8億1900万円で富士電機システムズが落札したという。
 旧公団をめぐって競売入札妨害の疑いが持たれているのも受変電設備工事の発注で、こうした分野は技術的な理由で受注メーカーが限られているという。落札率は100%に近いほど企業の利益が大きく、高い落札率は一般に受注調整が行われたことを裏付けると考えられている。

[成田空港会社も捜索へ] 成田国際空港会社(NAA)が民営化(04年)前の旧「新東京国際空港公団」時代に発注した電機設備工事の入札で受注調整が行われていたとされる事件で、東京地検特捜部は電機メーカーの家宅捜索に続き、18日にも競売入札妨害の疑いで成田国際空港会社の本社の捜索を行う。調べによると、新東京国際空港公団については03年11月7日に実施した「南部貨物上屋ビルの第2期受変電設備工事」の指名競争入札で受注調整かあったとみられている。東芝、三菱電機、富士電機システムズの3社のほか日立製作所(束京都千代田区)、明電舎(同中央区)、日新電機(京都市右京区)の計6社が入札に参加し、日新電機が1億9600万円で落札した。



[元調本副本部長に実刑 防衛庁背任・汚職で東京地裁判決]
(出典:2003年5月8日、日経新聞朝刊)>

 防衛装備品の納入代金の水増し請求を巡る背任・汚職事件で、背任や加重収賄などの罪に問われた防衛庁の旧調達実施本部(調本)の元副本部長、上野憲一被告(63)の判決が8日、東京地裁であった。木口信之裁判長は上野被告に懲役4年、追徴金約838万円(求刑懲役6年、追徴金約838万円)の実刑を言い渡した。上野被告側は控訴する方針。
 木口裁判長は上野被告を「各犯行で最も主導的な役割を果たした」と認定したうえで「およそ許容できない会計処理で国に損害を与えるなどし、防衛行政に対する国民の信用を大きく失墜させた」と指摘した。
 上野被告は公判で、NEC系企業の水増し請求分の返還額を不正に減額した背任罪について「国に損害を与えた認識はない」と主張していたが、木口裁判長は「企業に不正な利益を与える一方、国に損害をもたらすことは十分分かっていながらあえて不正処理をした」を断じた。
 謝礼として顧問料名目で受け取ったわいろについては「不正行為で便宜を図ったことにつけ込んで、多額のわいろを受け取った」と指摘し「再就職先からの正当な労働の報酬」とする弁護側の無罪主張を退けた。
 ただし、企業側がわいろを要求されたと考えて支払った3百万円については「上野被告が実際に事前に要求したと認めるには疑う余地がある」と述べた。
 判決によると、上野被告は1994、95年に水増し請求が発覚したNEC関連二社からの返還額計35億円を不正に圧縮し、国に損害を与えた。また、減額の見返りとして、94年9月にNEC側から3百万円、退職後の天下り先の顧問料名目と合わせて計約830万円のわいろを受け取った。
 一連の事件では14人が起訴され、起訴事実を認めた元防衛施設庁長官(63)や、元NEC専務(67)ら13人の有罪が確定、公判が続いたのは上野被告だけとなっていた。

 ▼防衛庁背任・汚職事件 1994-95年に防衛庁の旧調達実施本部(調本)への装備品納入をめぐる水増し請求が発覚、責任問題になるのを恐れた当時の調本幹部らが、業者が国庫に返納する額を不正に減額したとされる事件。上野被告の汚職にも発展した。98年の東京地検特捜部による強制捜査の直前、防衛庁で組織的な関係書類などの証拠隠しがあったことが発覚し、当時の額賀福志郎長官が引責辞任した。調本は2001年1月、省庁再編を機に廃止された。

[天下りのあり方問う] 元防衛官僚の汚職などを断罪した8日の東京地裁判決は、天下り先から受け取る顧問料などについて、在職中の職務権限行使への「対価性」を明確に認め、わいろと認定した。厳しい批判にもかかわらず、相変わらず続く官僚の天下りのあり方にくぎを刺した判決ともいえる。
 上野被告は1995年に勧奨退職の打診を受け、防衛庁外郭の財団法人の専務理事への就任が予定されていた。しかし、減収が見込まれる上、4年後にはその地位も失われることから、NEC系企業に顧問料名目でわいろを要求、専務理事退職後は同社の専務に就任する考えだったとされる。
 判決によると、NEC側は返還する水増し請求分の減額などに絡んでの謝礼要求と認識し、上野被告の要求を承諾。在職中の職務権限を民間への天下り先に悪用したばかりか、水増し分の負担を国民に押し付けることで自らの退職後の収入を確保したといえ、この日の判決も「国に大きな損害を与えながら、企業に便宜を図ったことにつけ込んだ犯行はまことに悪質」と断罪した。
 当時、防衛庁職員は離職後2年間、直前5年間に従事していた業務と密接に関連する営利企業の役員などへの就任を、自衛隊法などで禁じられていた。職務に対する国民の信頼を損なわないための規定だったが、信頼を裏切る抜け道(役員という地位に就かないまま顧問料を得たこと)はあった。
 長引く不況で民間企業退職者の再就職が困難を極めているのとは対照的。それだけに、判決は官僚の天下りに在職中の職務権限が介在する余地は厳しく排除する必要性を指摘したといえる。 (購買決定(官僚)←→受注(天下り企業・その他企業)というもたれあいの構造がここにもある。発注価格が高すぎたことを隠すために、返還させるべき金額を減額する工作をしたこと事態大胆不敵な行為であるが、その行為を天下り先へのわいろ請求のネタにしたことはそれに劣らず悪質である。それにしても、数億−数十億円の損失を国民に負わせておいて、見返りに得た金額が836万円とは、自分自身の将来を安売りしたことはさておき、国民の利益を叩き売りするにも程がある。)



[防衛庁流失データ 6月下旬に一部渡す?]
(出典:2002年11月5日、日本経済新聞朝刊)

 防衛庁が富士通に発注した自衛隊のシステム開発のデータが流失した事件で、同社の関連会社に派遣された元システムエンジニア(SE)の岸川隆久容疑者(32)=恐喝未遂容疑で逮捕=がデータを持ち出し、富士通側に接触した小松正明容疑者(57)=同=に今年6月下旬、データの一部を渡していた疑いがあることが5日、関係者の話などで分かった。
 神奈川県警中原署捜査本部はデータの流失経路などを調べている。関係者などによると、岸川容疑者は、富士通が防衛庁から受注した「陸自データ通信システム」の開発のためにSEとして同社の関連会社に派遣され、昨年7月ごろから今年1月中旬ごろまで富士通川崎工場や自衛隊の駐屯地などで週2回程度のペースでシステム開発に携わった。
 その後、岸川容疑者は6月20日ごろ、知人の会社役員の紹介で小松容疑者と会い、「この情報は第3国に売れるのでは」などと話したという。岸川容疑者は作業中に個人用パソコンにコピーし、CD-ROMに保存されていた防衛庁のデータを17枚印刷して小松容疑者に手渡した。
 ・・・(不起訴処分になった氏名が含まれるため省略)・・・。小松容疑者らはデータのコピーを富士通の社員に提示し、「第3国に渡ったら大変なことになる。富士通で処理した方がいいんじゃないか」と話したという。
★2003年(平成15年)4月17日、横浜地裁(小林康男裁判官)は自衛隊の通信システムデータ流出をめぐり、開発元の富士通への恐喝未遂罪などに問われた元陸上自衛官のシステムコンサルタントの岸川隆久被告(33歳)には懲役2年8ヶ月(求刑・懲役4年)の判決を言い渡した。共犯とされた会社役員の小松正明被告(58歳)と同じく道岡苦楽被告(51歳)はいずれも懲役2年(求刑・懲役3年)。判決によると、岸川被告は、勤務先の富士通川崎工場で通信システムデータを入手。3人は共謀し昨年6月から7月にかけ、富士通側に「持ち出した富士通社員が北朝鮮に売ろうとしているのを抑えている」と持ち掛け、現金を脅し取ろうとした。(出典:http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/hanketu-apr-2003.htm)
★2004年(平成16年)1月28日、東京高裁は防衛庁の情報データ通信システムの重要資料が流出した事件で恐喝未遂などの罪に問われた元自衛官岸川隆久被告(34歳)に対し、懲役2年8ヶ月とした1審・横浜地裁判決を破棄し、改めて懲役2年2ヶ月の実刑判決を言い渡した。また、恐喝未遂の共犯に問われた会社役員小松正明被告(59歳)についても、懲役2年の1審判決を破棄し、懲役1年6ヶ月の実刑とした。(出典:http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/hanketu-jan-2004.htm)
(この17枚のCD-ROMに保存されていたデータの流出が我国の防衛システムに影響を及ぼす範囲については触れられていない。イラク戦争をみても分かるとおり、今や、情報戦が軍事行動の成否を左右する。もし、それが根幹から防衛システムの変更を迫る重要度をもつものならば、その開発コストもさることながら、開発完了まで無防備状態の危険に国民をさらすことになる。これは防衛庁が富士通の責任として済まされる問題ではない。防衛庁の防衛意識を問う事件ではないだろうか。)


Initially posted August 16, 2003.Updated May 30, 2006