[はじめに]

 食料をはじめとする農林水産物なしに私たちは生命を維持することができない。しかし、普段、私たちは農林水産業を意識することなく生活している。私たちの生命の基盤をなし生活を包んでいる点で、農林水産業は水や土や空気に次ぐ存在のようである。しかし、農林水産業も市場経済の一部であり、市場経済から断絶した位置に自らを置いておくことはできない。生産性の向上に限界があるため、国際的に、農林水産業は市場経済のなかで次第に片隅に追いやられ、経済的比重を減らしつつある。

 しかし、持続型農林水産業から私たちはよき収穫とよき自然環境という二つの効用を得るという認識が広がってきた。この面から農林水産業に対する補助金のあり方を考え直そうという動きが世界の潮流となりつつある。そのなかで農業の環境指標に関する研究が進められている。農林水産業における経済的手段の活用は私たちに自然の恵みや真の豊かさをもたらす近道のひとつかもしれない。


Initially posted February 21, 1999.