法人・個人所得課税の一本化とその方法

 法人税をゼロとするとき、単に法人を所得税納税義務から解放すると、法人が個人のタックス・ヘイブンになるから、法人に利益が留保されるばかりで、何時まで経っても個人の課税所得となってこないという事態が生じる。個人所得税に手を加えずに法人税だけを単純に廃止すると、課税避難のための法人成りが一層蔓延することは目に見えている。これは各年度の税収の著しい落ちこみをもたらすばかりでなく、納税者間の課税の公平を損なう弊害を激化する。法人税を廃止するためには、これへの対抗手段を同時に導入しなければならないのである。

[手がかりとなる二つの方法]

 この問題を考える上で参考となる方法の第一は、米国のS Corporation方式である。これによると、S Corporation自体は法人税を納めない代わりに、その出資者が法人収入・費用の持ち分を他の所得と合わせて個人の所得として申告納付する。配当所得に対する課税はない。法人所得の持ち分として個人所得に取り込んだ金額は株式の取得価額をその分増加させ、配当はその分取得価額を減少させる。株式のキャピタル・ゲインに対する二重課税を回避するための方式である (Internal Revenue Code, Subchapter S ---Tax Treatment of S Corporation and Their Shareholders参照)。

 第二に参考となるのは、タックス・ヘイブン(租税避難地:税負担が低い国)に本店又は主たる事務所をおく法人の所得を株主の所得とみなして課税する、我国のタックス・ヘイブン対策税制(租税特別措置法第四節の二及び第七節の四)である。これによると、次のすべてに該当する場合、株主である居住者に対して対策税が課される。

  1. 居住者が外国関係会社(日本の居住者及び内国法人の持株合計が発行済株式総数に占める割合が50%超である外国法人)の株式をもっている。
  2. その外国関係会社の本店又は主たる事務所がタックス・ヘイブンにある。
  3. その外国関係会社の留保所得金額を調整して求める「適用対象留保金額」がある。
  4. 居住者の持株割合が5%以上である。

 このとき、この株主である居住者には「課税対象留保金額」(外国関係会社の「適用対象留保金額」を調整して算出される金額に持株割合を掛けて得られる金額)相当の雑所得があったものとして所得税が課税される。このようなスタイルの対策税制は一種の留保金課税と呼ぶことができ、低税率の法人に所得を留保し課税の繰延を図ることへの対抗機能をもつものである。

 これは米国によって始められ、米国の内国歳入法典Subpart Fに規定されているところから、Subpart F型課税と呼ばれている。米国のほか、独・加・日・仏・英等の諸国が採用するようになっており、いずれも、持株割合に基づく外国会社への支配力及びその所在地国での軽課税等を条件とし、外国関係会社の所得の一部を居住者の所得とみなして課税する方式をとっている。

 さて、米国のS Corporation方式を取ると、法人所得が個人所得に取り込まれた後、個人に所得税の増加分を支払う資金がないという状態が起きうる。特に同族会社の同族株主の場合には、毎期数億円という所得税を納めることも稀ではない。この資金を補充するためには法人が配当しなければならないが、支払われた配当で所得税がもれなく納付されるという保証はない。したがって、この方式は徴税効率が低く、徴税コストが高い。

[導入すべき方法]−
 法人における源泉控除と個人における税額控除を組合せた方式

 この問題を解決するためには、タックス・ヘイブン対策税制の対象を内国法人全般に拡大したうえで持株割合に関わらない形に一般化したSubpart F型課税方式を導入し、他方、法人には法人所得からの源泉控除義務を課す方法が考えられる。個人所得税の最高税率での源泉控除を所得税の前払(Advance Income Tax)と性格付け、法人が株主に代わって株主総員の所得税をまとめて納付するとともに、株主に対し、各株主に帰属する法人課税所得と源泉控除税額の当該株主持分を通知することにする。既に法人は毎期株主に対して配当金支払通知書を送付しているわけだから、これと合わせてこの通知書を送付することになるだろう。給与所得の源泉徴収票のように、その写しを税務署にも送付する。これらの事務を既存の株式事務取扱機関に委託することも可能だろう。

 この、法人における源泉控除と個人における税額控除制度によれば、個人所得に上乗せすべき法人所得持分に対しては既に最高税率で課税済みであるため、高額所得者であっても、申告により、所得税の還付を受けることこそあれ、追加納付は発生しない。したがって、個人の申告漏れの誘因がなくなり、負担の垂直的公平の達成が進むことになるだろう。

 上に述べた法人税の所得税への一本化の方式は、筆者が独自に到達したものであるが、歴史的には1966年のカナダの税制に関する王室委員会報告(委員長Kenneth L. Cartarの名を冠して「カーター報告」と呼ばれる)で勧告された方式と驚くほど共通点をもつ。
 「(カーター報告で勧告された方式)の場合には留保所得の存在を前提にして、源泉課税としての法人税が存在します。その具体的な方式は、@配当、留保にかかわりなく株主に法人所得を割り当てること、A法人税で源泉徴収を行うこと、B法人税率を個人所得税最高税率と同率にすることです。このようなシステムをとると、法人所得はすべて法人段階で源泉課税されることになり、しかも所得税の最高税率と法人税率が一致しているために、個人段階では最高税率適用所得者を除きすべて還付の対象となり、いわゆるキャッシュ・フロー問題がまったく生じないのです。」(宮島洋著「租税論の展開と日本の税制」21頁、日本評論社1986年発行)

 法人税を廃止し国内に法人というタックス・ヘイブンの存在を許容するとき、その株主に対しSubpart F型課税を行うことは当然の措置であるが、同時に国内にある法人に対して源泉控除義務を課すことも、この制度を最小限の徴税コストで実現するための不可欠な要件と考えられる。

[ひとこま知識・・・個人所得税と法人所得税の統合](上掲宮島洋著18-20頁より)

 (1)分離論者の主張
  1. 統合論は同族会社のような企業にしか適合せず、所有と経営の分離が進んだ大規模な公開株式会社には適合しない。
  2. 分離・統合説の対立は租税神学的論争であり、統合の是非はより具体的問題の特質で評価されるべきである。
  3. 法人税が転嫁されるとすれば、株主には課税されないことになる。したがって統合の必要性はない。
  4. 株式保有者は高所得層に集中しているので、二重課税の調整は結果として累進性を弱めることになる。
  5. 現実には統合といっても配当のみについての統合、いわゆる配当救済になってしまい、留保所得をも含めた全体統合が実施された試しはない。
  6. 配当救済の場合、法人税の法定税率を用いて統合することは結果としておかしなことになる。なぜならば法人所得税で非課税、あるいは優遇的扱いとされている所得は法人税をフルに課されないのであるから、調整ないし完全な調整をする必要はない。もし法定税率で調整すると、それは過大な調整となり、とくに高所得層に大きな恩恵を及ぼす。
  7. 全体統合にせよ、部分統合(配当救済)にせよ、行政コストがきわめて大である。
  8. 税収を確保するという観点では、分離論のほうが望ましい。統合を行えば当然統合分だけ法人所得に関する税収が失われることになる。
  9. 分離方式では外国株主への課税がきわめて容易であり、もし、すべての国がこの方式をとれば国際課税調整の必要がなく、国際資本移動に対して単純かつ中立的な課税ができる。
  10. 統合の場合、法人所得ではなくその逆の損失をどのようにして株主に割り振るかで大きな問題が生ずる。
 (2)統合論者の主張
  1. 元来、法人は株主の集合体であって独立の担税力は有していない。したがって、税負担が重い、軽いというような観点から公平という基準で税負担を論ずる場合には、個人にしか適用できない。
  2. 包括的所得税の立場に立てば、すでに述べたように法人企業から発生する所得はすべて個人の株主に帰属するものと考えるべきである。このような考え方に立てば、完全な統合が必要であり、法人税での優遇所得を考慮すれば実効税率で調整すべきであろう。また、法人税が短期的には転嫁しないという前提は現実的と考えられる。
  3. 分離論者の主張は、累進性を弱めるという主張であるが、実際には法人税が源泉で課税されるために、低所得層の株主ほど過大な負担をこうむることになり、調整の結果むしろ累進性は強まることになる。
  4. 法人税率が個人所得税率の最高税率より低い場合には、留保所得の方が低税率となるため、留保を促進して所得税を回避するという高所得株主の行動を一般化することになる。しかも、留保を反映するキャピタル・ゲインが優遇されている場合には、留保に対するインセンティブがより強く働くことになる。したがって配当性向が低下する結果、資本が市場を経由せずに投資されることになり、投資の非効率を招くことになる。
  5. 統合を行わないと配当が二重課税される一方、支払利子は控除されるために、貸し倒れのリスクがない限り、配当の二重課税は借り入れを促進し株式金融を阻害する。その結果、自己資本比率の低下やベンチャー・キャピタルの供給阻害が生ずることになる。
  6. 法人税が転嫁しない場合には、非法人部門に比較して法人部門に過大な負担がかかり、その結果、長期的には法人部門から非法人部門に資本が流出するという形で、非法人部門にも法人税が転嫁されることになる。

[法人における源泉控除税額の課税標準]−
 キャッシュ・フローをベースとした課税所得算定方式

 法人所得税を個人所得税に完全統合すると、法人が納付する源泉控除税額は株主持分所得にかかる前払税金となり、法人所得税は独立した租税としては存在しなくなる。このとき、法人での源泉控除税額の算定が既存の法人税と較べ相変わらず複雑なままでは、完全統合のメリットが多分に減殺される。源泉控除税額の算定にかかる規定はできる限り簡素でなければならない。

 このような要請を満たす源泉控除税額の課税標準算定方式はありうる。その鍵は課税所得計算の出発点を損益計算書からキャッシュ・フロー計算書に変更することにある。キャッシュ・フロー計算書の構成は、

となっており、各区分の間にはT+U+V+W+Y=Zの恒等式が成り立つ。
 私案は、源泉控除税額の課税所得算定のために、T営業活動によるキャッシュ・フロー(これは支払利息・受取利息を含む)及びU投資活動によるキャッシュ・フローの合計額を出発点とし、これに最低限の税法上の調整項目を加減して得られる方式とするものである。同時に、この方式自体が租税負担の抜本的負担減であるから、租税特別措置をすべて廃止する。

 現行の損益計算書は発生主義に基づいて作成される。発生主義のもとでは、当期の損益を算定するために、当期に属する収益から当期に属する費用を差し引く。この「当期に属する」費用や収益を確定するために、前払費用・未払費用・前受収益・未収収益・引当金・棚卸資産・固定資産・繰延資産・減価償却費などをその企業の会計方針にしたがって計算しなおす。これらの企業の会計方針は企業によってあちこち異なる。ところが、企業がそれぞれ独自に設定した会計方針にしたがって算定された当期利益を税法がそのまま課税所得として認めたのでは課税の公平をたもてない。そこで、税法はこれらをいったん無視し、各企業が共通に適用すべき「当期に属する」費用や収益の算定ルールを独自に規定する。法人税の計算プロセスは、違いの生ずる項目ごとに、企業が計算した所得を税法が定める計算方法に引き直してその違いを明らかにし、増やしたり減らしたりするプロセスであるといってよい。企業会計と税法のどちらも発生主義を標榜して対立や和解を繰り返すことになる。このため、法人税法はどんどん複雑になり際限なく膨らんでいく。その主たる原因は発生主義の採用と課税所得計算の出発点を損益計算書においていることにある。

 それでは、課税所得計算の出発点を上に示したようなキャッシュ・フロー計算書においたらどうなるか。税法の規定が驚くほど簡素になる。なぜなら、T+Uを 直接計算しても、T+U=Z−Y−W−Vより間接的に計算しても、そこに会計的判断の入り込む余地が殆どないから、企業間での算定方式の差による金額的差異が生じない、したがって、税法が課税の公平の要請のもとに登場する余地も限られてしまうのである。キャッシュ・フロー計算書が財務諸表の一部として重視されるようになってきた大きな理由は、それが、そのまま別個の情報による調整なしに企業間比較を行うための情報として役立つことが認識されてきたからである。この性質を課税目的のために利用しない手はない。

[税法上の調整項目]

 上に述べたように、T営業活動によるキャッシュ・フロー及びU投資活動によるキャッシュ・フローの合計額を源泉控除税額の課税所得算定の出発点とすると、土地や有価証券の取得、貸付などによる支出が課税所得を減少させ、逆に、土地や有価証券の売却、貸付金の回収による収入などが課税所得を増加させることになる。個人所得税と法人所得税の完全統合のもとでこれらを放置すると、個人たる株主は法人に土地や有価証券の取得、貸付をおこなわせることによって、持分所得を減少させ、所得税を回避する事が可能となる。したがって、土地や有価証券の取得、貸付による支出やこれらの売却や回収による収入による課税所得の操作を排除しなければならない。これは、次の方法で可能となる。すなわち、土地や有価証券の取得、貸付などによる支出をした事業年度では、これらの支出額を加算して翌期以後に繰越し、これらを売却または回収した事業年度でこれらに対応する過年度での加算額を減算すればよい。実務的には現行法人税別表4と別表5のような申告書様式を想定でき、別表4相当の様式で加算減算を行い、別表5相当の様式で加算項目の繰越を行うイメージを描ける。これらが調整項目の第一グループを成す。
 次に、源泉控除税額自体や利子所得に対する源泉税額・外国税額などの支出が課税所得に影響を与えるのは不合理である。これらは調整項目の第2グループを構成する。
 また、罰金や延滞税、不納付加算税、過少申告加算税などのペナルティが課税所得を減少させる事もこれらのペナルティの趣旨を没却する。これらは調整項目の第3グループを形成する。
 最後に、使途不明金など事業との関連の不明な支出が課税所得を減少させることを認めることは妥当でない。これらは調整項目の第4グループを形成するだろう。

 他方、有形・無形の減価償却資産の取得や売却については調整しない。既存の租税特別措置法においても、特別償却や投資税額控除により、これらはかなりキャッシュフロー化されており、諸外国でもその傾向は強い。これらが税制を舞台とする利益誘導型政治の温床となってきたも見逃せない。陳腐化した耐用年数省令に企業経営が縛られることもなくなる(現行の「減価償却資産の耐用年数に関する省令」が全面改正されたのは1964年のことである。1998年度の改正によりパソコンの耐用年数を6年から4年に短縮したのが目立つものの、歳入が減るという理由で1964年後は小出しの改正しか行われていない)。したがって、調整しないことによって、取得時全額償却と同じ結果をもたらすことにする。この点では全面的な投資促進税制の採用と呼ぶことができる。

[法人税制の変容]−課税ベース拡大過程における費用の現金主義化

 「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という方向が法人税改正の基調であった。平成10年4月1日施行の改正法人税法では、引当金(貸倒引当金・返品調整引当金・退職給与引当金・賞与引当金・特別修繕引当金・製品保証引当金)の縮減(前3者)ないし廃止(後3者)が行われた。これは費用サイドに限った法人税のキャッシュ・フロー化と呼べる。平成14年3月14日には貸倒損失の計上時期の判定を争点とする興銀税務訴訟の東京高裁判決が出た(第1審の東京地裁判決は平成13年3月2日)。そこでは、民法上は貸倒れが「確定」していても税法上は貸倒れが「確定」していないという、いとも奇妙な「確定」論理により、貸倒損失の課税庁による否認が支持された。これは控訴人である課税庁の法人税運用のキャッシュ・フロー化と呼べるが、司法がこれを支持した例である。発生主義は、現金主義が時の「確定」に恣意性を排除しながら委ねることができるものを、いずれかの事業年度に強引に振り分けようとする。これは、現金主義の世界から見れば、行政費用の浪費=税金の無駄使いであるばかりでなく、経営に対する撹乱要因=脅威でさえある。費用サイドばかりでなく収益サイドもキャッシュ・フロー化し、入金した事業年度で収益を認識することにすれば、これは殆ど私案に近いものとなってくる。

[中小企業の資金繰改善効果と納税の容易化]

 銀行融資を容易に受けられない中小企業では、売上が伸び利益が増えてくると、直ちに悩ましい問題に襲われる。売上が増えても資金化が遅れるのである。例えば、支払期限が末締め3ヵ月後期限3ヶ月の手形払いなどという取引がある。これは大企業を相手とする取引によく見られる(例外は松下電器産業グループの会社。松下幸之助さんがご自分が受けた苦労を他人に味合わせまいと決めたためか、15日締め末日払いと末締め15日払いで月に2度も払ってきてくれる)。8月に納品したものについては、運がよければ11月末に手形を受け取り、翌年2月に現金になるという途方もない悠長な話になる。月末間近に注文を受け納品すると、当月末の検収に間に合わず、来月回しとなって、さらに現金化が1ヶ月先に伸びるというケースも珍しくない。現金化するまでの6−7ヶ月間、どうやって給料を払い、賃料を払い、仕入代金を払い、事業を続けていけばいいのか。売上が増えても資金化が遅れる一方、支払が先行する状況が続き、つなぎの融資が受けられないと、最悪の場合、黒字倒産という事態に追い込まれる。損益計算書は黒字だが、キャッシュ・フロー計算書は営業活動によるキャッシュ・フローが赤字でこの資金不足を財務活動によるキャッシュ・フロー(借入)が補えないことが招くケースである。

 期末までに黒字倒産を免れても安心するのはまだ早い。期末後2ヶ月すると法人税・法人事業税・法人県民税・法人市民税などが待っている。発生主義の損益計算書は売上げが伸びているから利益も大きく、法人税等の額も大きくなっている。他方、期末までに売上げた金額は現金になっていない。銀行は貸してくれない。どうやってこれらの税金を払えばいいのか。税金を前の年より余分に払うというのに誉められるどころか、延滞税を取られることになる。最後の手段として延納の手続きができると思いきや法人税法には延納の制度がない。あるのは「確定申告書の提出期限の延長」(法人税法第75条)という申告書の提出期限と一体となった延納であり、「災害その他やむを得ない理由により決算が確定しないため、当該確定申告書をその提出期限までに提出することができないと認められる場合」に限られる制度である。したがって、75条による延納は税務署長が認めない。そうなると督促状がきて税金を納めるまでの期間、損金に算入できる利子税でなく損金に算入できない延滞税がかかることになる。延滞税がまた馬鹿高い。いまどき、年率4%を超える。何かがおかしい。事業の芽が膨らみかけると、この資金繰りの苦しみを味わい、一歩間違うと倒産ということになるのだ。これが出始めたくいを打つ日本の悲しい現状なのです。

 法人の納める源泉控除税額を私案の算定方式に改めると、この両方の問題が解決の方向に向かう。納入先企業は仕入先への支払を早めると源泉控除の課税所得を少なくできるから、支払を早める。資金的余裕があると間に合いさえすれば当月分まで支払ってしまうようになるだろう。これは中小企業の資金繰りを根本的に改善する。中小企業の支援策として、経済産業省、中小企業庁、厚生労働省、都道府県レベル・市町村レベルの自治体がいろいろ公務員の仕事を増やしてやっているが、それらすべてを上回る効果がここに望める。なにしろ、こうして入金されたお金は借り物ではないから返す必要がない。

 しかも、源泉控除税額を納めるのは、売上が現金化した後でいいのだ。税金を払うために借金する必要はないし、借金ができない会社にとってはもっといい。上手く行きはじめた事業がすくすくと伸びる仕組みが求められているのであって、上手く行かない事業はずっと前から所得税など納めていないのである。こういう税金については納税意識も高まるだろう。日本で事業活動を行いたいという外国企業も増えるに違いない。


Initially posted January 15, 1998.Updated August 16, September 4 & 5, 2002.