[消費税廃止の理由] 環境消費税は初用材消費に対して選択的に課税する点が現行消費税と根本的に異なるが、消費に対して課税する点においては消費税と重複する。「所得・消費・資産等の間でバランスのとれた税体系を構築する」ことをもって現行消費税を維持することも根拠薄弱であろう。消費税を併せて課税するくらいなら、環境消費税の基本税率を同等の税収をあげる程度に引き上げれば済むことである。環境消費税と消費税を併存させる考えはとりえない。
[消費税廃止の影響額] 1997年の消費税収入は国税分9兆3050億円、1998年では国税分予算額が10兆2040億円、1999年での国税分当初予算額が10兆3760億円となっている。したがって、統計には現われていないが、地方消費税は各年それぞれその25%の、2兆3262億円、2兆5510億円、2兆5940億円となる筈である。前バージョンのHPで消費税率3%時代に5%時代の税収見積を12兆3910億円、そのうち国税分9兆9128億円、地方税分2兆4782億円と見積もったが、ほぼあっていた事になる。国地方合わせて約13兆円弱、これが消費税廃止による減収額となるだろう。
[EU、ネット取引に課税] 2000年2月10日の日経朝刊より以下に引用。
「欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は九日、インターネット取引を課税対象とする方針を固めた。音楽や書籍などをネット経由でパソコンに取り込んで購入する消費者に付加価値税の負担を求め、販売企業が消費者から代金と共に受け取った税を消費者のいる国に納める仕組み。ネット取引を利用した課税逃れを防ぐのが狙い。産業界は『電子商取引の発展の妨げになる』と批判している。ネット取引普及のため米政府は課税しない方針で、欧米間の新たな摩擦になる可能性もある。
欧州委が導入を検討しているのは、ネット取引で商品を直接、消費者が購入できる音楽などの『バーチャルグッズ』(仮想商品)への課税。ネット経由で注文しても消費者に配達する必要のある実物商品と異なり、仮想商品は税務当局が取引を把握しにくいため税を逃れている例が多いとされている。
通常の付加価値税の徴収と同様、メーカーや流通業者などが付加価値税を含めた小売価格を設定し、販売額に応じて各国の税務当局に納税する仕組みとする。国境を超える取引の場合、EUに加盟する十五カ国は国によって付加価値税率が異なるうえ、各国の税務当局にそれぞれ納税する必要があるため、業者の事務負担は重い。欧州委は『できるだけ単純化する』(付加価値税担当幹部)としており、小規模業者は納税対象から外す考えだ。
月内にも徴税方法の詳細などを詰める方針。その後、蔵相理事会などで正式に決める。欧州委は域内の消費者がネットを通して商品を購入する場合、どこの国のメーカーや接続業者であっても、EU各国の税務当局が付加価値税を徴収できるとみている。ただ、域内に営業拠点を持たない日本や米国などの業者が徴税を拒否した場合はどうするかなどをさらに検討する。
欧州委は七日、国境を超えたネット取引で百億ユーロ単位の脱税が発生しているとの報告書をまとめた。国境のないネット取引への課税は難しいといわれているが、域内だけでも課税に踏み切るべきだと判断した。」
しかし、欧州委のこの方針に対しては、産業界が強い懸念を示し、また、米国も反発しているという。以下に上記2000年2月10日の日経朝刊からの引用を続けよう。
「欧州連合(EU)の欧州委員会がインターネット取引に付加価値税をかける方針を固めたことに産業界は強い懸念を示している。中でもネット取引に力を入れる米産業界は『欧州は他の経済パートナーと孤立した税制を独自に構築すべきではない』(在ベルギー米商工会議所EU委員会)と批判、欧米間の新たな摩擦の火種になると警告している。
経済協力開発機構(OECD)は九八年、ネット取引だけで購入でき、配達が不要な『バーチャルグッズ』(仮想商品)を『モノ』ではなく『サービス』と位置付けた。同時に『モノ』の売買は消費者のいる国の税務当局が付加価値税をどの国のメーカーや販売業者からでも徴収できる枠組みを採択した。しかし、『サービス』を購入する場合の徴税方法は国際ルールが確立していない。
米国などは仮想商品への課税を凍結している。一カ国だけで課税しようとしても、他国での取引に切り替えることが容易で、自国から取引が逃げ出してしまいかねないことも背景にある。
欧州委は域外の知人を通して仮想商品を購入するなど納税回避の動きがある程度増えることを覚悟している。ただ、極端なケースは『流れ』を追跡するとしているほか、課税逃れを防ぎ、税収を増やす効果の方が大きいと判断している。欧州に拠点がないメーカーや販売業者が付加価値税の徴収に応じるかどうかが唯一の課題とみている。
EU十五カ国が課税を実施すれば、欧州でネット取引そのものが減る可能性もあり、同市場への影響は避けられない。仮想商品の課税方法を巡る国際的なルール作りが急務と言える。」
[大蔵省、ネット配信の音楽・画像に課税] 2000年2月22日の日経朝刊より引用。
「大蔵省は、インターネット配信を通じて海外業者から音楽や画像などのソフトを購入する取引について、消費税を徴収する方向で検討に入った。モノの輸入なら税関で消費税課税が可能だが、ネットで受け渡しするソフトは取引の補足が難しく、事実上非課税になっているためだ。大蔵省はまず企業間など規模の大きい取引で徴税を検討、海外業者に取引の報告を求める仕組みなどを研究する。日米欧が暫定的にゼロとしている関税についても免除の恒久化を求める米国と一線を画し、中長期的に関税化の道を探る。ただ、有望な情報関連市場の成長を阻害しかねない面もあり、今後論議を呼ぶのは必至だ。
消費税は原則、消費地の消費者に納税を求める仕組み。海外取引で問題なのはゲームやソフトウエア、音楽などを消費者がネット配信で受け取る場合。貨物輸入と異なり、事実上課税できないでいる。大蔵省は取引の本人確認など、課税の問題点を認めた上で『適切に徴税する仕組みが必要だ』(主税局)と判断した。
現在はネットによるソフトの取引は個人の購入など小規模だ。しかし、通信環境が整うと市場規模が急拡大するのは必至。コンパクトディスク(CD)の国内市場規模は七千億円、ゲームも七千億円といわれる。将来これらがネット配信に切り替わり、海外から直接購入する例が増えると、大蔵省は消費税を徴税できなくなると懸念している。
同省は規模が大きく、税務への協力も得やすい企業間の取引に照準を合わせている。取引報告などの面で海外の販売業者の協力も得て一定規模以上の日本の購入者に申告を促す案などが浮上している。政府間の協力が不可欠で、多国間の合意が必要と言う判断だ。今後、政府税制調査会(首相の諮問機関)にもネット課税の適正化に関して検討を求める方針だ。
関税は世界貿易機関(WTO)の場で、暫定的に課税しないことを確認済み。米国は自国の情報産業に配慮し、非関税の恒久化を主張している。一方、関税収入を重要な財源とみる途上国が反発。日本も慎重な考えを示す方針だ。
今回の大蔵省の意向について、日本総合研究所の湯元健治主任研究員は『米国がとらないのに日本が課税すると、情報産業の分野で大きく水をあけられる』と指摘。民間には税制が市場の成長を制約することを懸念する声が出ている。
経済協力開発機構(OECD)は一九九八年十月、ネット取引への課税に関して公平、中立、簡素などの原則を確認した報告書をまとめた。
欧州が課税に前向きなのに対し、米国は非課税に傾きつつある。七月の主要国首脳会議(沖縄サミット)などのテーマになりそうだ。」