はじめに

 環境消費税を税収中立の前提の下で導入しようとする場合には、既存税制との調整が必要となる。特に、経済主体の行動に影響を与えうる水準での環境消費税の導入を考え、しかも、グッズへの課税からバッズへの課税に移行し持続可能な経済社会への道筋を用意しようとするときには、基幹税である法人税、所得税の根本的な見直しを避けることができない。低迷する日本経済に活力を取り戻し、高齢化社会への円滑な移行を準備することも視座にすえながら税制改革の手法を考えてみたい。その基本的方向は以下のとおりである

  1. 消費税を廃止し、環境消費税として新生する。
  2. 法人所得課税を廃止し、個人所得税に一本化する。同時に、法人個人を通じた租税回避の途を封じるため、法人に対して、法人所得に個人所得税の最高税率を掛けて算出される税額の源泉控除義務を課すとともに、個人に対しては、株式所有割合に応じた法人所得持分の所得加算、法人における源泉控除税額持分の所得税額控除制度を設ける。
    これに伴い、配当所得課税、配当控除制度を廃止する。
  3. 所得税の最高税率を50%から35%に引下げる。
  4. 法人住民税の法人税割、法人事業税及び個人事業税は廃止する。
  5. 個人市町村民税の最高税率を12%から8%に引下げる。

 なお、本章で記す税収見積りは、各税目の増減税影響額の相対的な大きさに着目しながら、税制改革に関して我々がどれだけの自由度を持っているのかを測ろうとしたものであるから、絶対的な正確性は意図していない。数値を億円単位まで記述しているのは検算の便宜のためであって、億円単位までの有効数字を意図していないことも勿論である。


Initially posted January 15, 1998.