[直接参照品目の国内細分] 実行関税率表をみると、再生材をひとつの品目として掲記しているものには次の枠内のものがある(番号はHS)。
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これらの他にタンタル・マグネシウム・コバルト・チタン・ベリリウム・ゲルマニウムなどの卑金属についてもくずの区分掲記がある。
この表示区分はひとつの方向を示している。すなわち、直接参照品目とされるもののうち、再生材を原料として製造される品目について国内細分を設ける方向である。
例えば、製品として包装紙をとってみよう。包装紙は製品であるから、まず、その部品である紙材、インク等について再生材割合を求めることになる。我々が標準RMUR表に記載しようとしているのは包装紙そのものではなく、その素材としての紙である。さて、この紙材には古紙が混入されているとしよう。この古紙混入率はいかなる割合もとることができるだろうか。おそらく否であろう。なぜなら、工業製品は一定の製法により一定の品質を保つように製造されることによって、原価管理や価格設定さらにマーケティングが可能となり、商品として市場に現れることができるからである。言いかえれば、再生材を原料とする製品も商品となるためには規格化の洗礼を受けざるを得ない。したがって、具体的な製品としては再生材の利用率は連続的ないかなる値もとりうるのではなく、離散的ないくつかの限られた値に集約され、それぞれが商品識別名によって区別されるようになるだろう。業界の製品規格化の動きもこれに拍車をかける筈である。したがって、この紙材は標準RMUR表に独立の品目として掲記することが可能となる。
以上のような考え方で、選定された直接参照品目のうち再生材を利用してつくられる製品について、新たに国内細分を設けることが標準RMUR表を作成するための第二のステップとなる。この作業が第四法の適用について差別課税の原則を働かせるための基礎となる。
[直接参照品目に掲記する再生材割合] さて、第二ステップまで完了したならば、いよいよ直接参照品目に掲記する再生材割合の算定に進むことができる。これは、国内事業者の算定方法に準じて行われる。すなわち、製品としての直接参照品目をその原価要素に分解し、その各要素につき基準税額及び仕入金額と基準税率×(1−再生材割合)の積として得られるみなし仕入税額を計算し、これらを集計して当該製品についての再生材割合を算定する。この場合、例えば、鉄鋼業、非鉄金属工業、石油化学工業のように生産規模が特に原価に異なる影響を与えるものについては、我国での標準的な生産規模をモデルとして設定し、再生材割合の算定をすることになるだろう。
以上の三つのステップを経て標準再生材割合表が作成されることになると考えられる。その過程での学識経験者の広汎な協力が重要であることは論をまたない。こうして得られた標準再生材割合表は私たちの宝である。この宝はもちろん磨き続けなければならない。
(参考文献) 筑紫勝麿編(1995),「図説 日本の関税」財経詳報社