[問題の性質]

 輸入品に関する適用税率及びその基礎となる再生材割合をどう算定すればよいかを考えるのがここでの課題である。実務上の問題として、まず、次の点があげられる。

 第一に、純国内産の製品に関してはその製品の部品や原材料に再生材割合の表示があり実際納付環境消費税があるから、当該事業者における再生材割合は単なる集計によって算出することができる。これに対し、輸入品は集計すべき実際納付環境消費税も再生材割合も得られない全く別の租税環境にあるから、単なる集計によっては再生材割合の算定ができない。

 第二に、環境消費税の導入時には、国内事業者すべてが輸入事業者のように前段階からの再生材割合が得られない状況からスタートすることになるから、環境消費税導入時の措置とも関連する大きな課題である。

 第三に、国産とはいえ何らかの輸入品が姿かたちを変えその一部となっている場合が一般的であり、純国内産の製品はむしろ例外的であろう。この状況は一過性でなく永続的である。

 これらの理由により、輸入品にかかる再生材割合の問題は輸入品だけに関わる特殊な問題ではなく、我国に流通するほとんどすべての商品に関係する一般的な問題であることが分かる。また、次のような理論的な問題の指摘もある。

 再生材割合は前の段階が次の段階での算定の前提となっていることから、ある段階で算定の誤りがあればそれ以後の段階へ転々波及していくという性質をもっている。また、ある段階で再生材割合の伝達が途切れると、「環境消費税のしくみ」の「表示及び請求」の節で述べたように、購入事業者は再生材割合ゼロとして計算しなくてはならない場合があるから、この場合もまた切断点以降の事業者に誤謬が波及していくことになる。これらをまとめて再生材割合の誤謬拡散効果と呼ぶことにしよう。これは消費者に対して環境消費税制が送り出すシグナルの信頼性を低めるものではないかという疑問につながる。

 これらの問題の根本的解決は、後述するモデル環境消費税法をOECD等の機関が策定し、これに則った環境消費税法を次第に各国が採用・施行するようになり、施行国間で環境消費税に関する租税条約を締結していくなかで互いに相手国の再生材割合を承認していくことに委ねられるだろう。

 しかし、我国のすべての貿易相手国との間でそのような再生材割合の相互承認の関係が生まれるまでどれだけの時間がかかるか分からない。輸入品については基準年度の再生材割合が存在しないから税率縮減の適用がないこととすると、再生材を実際には多用している輸入品を不利に扱うこととなる。メタボリズム(循環代謝型)社会において原産地は非本質的なことでありこれにもとづく差別は不当であるから、何らかの方法で再生材割合を算定する仕組みが必要となる。環境消費税条約が結ばれるまで待つことはできない。

平成7年取引表
金額
(10億円)
比率
502,161 51.20%
431,855 44.03%
46,809 4.77%
980,824 100.00%
937,101 95.54%
43,723 4.46%
980,824 100.00%

平成2年取引表
区分 金額
(10億円)
比率
国内最終需要計 444,108 48.38%
内生部門計 426,055 46.41%
輸出 47,882 5.22%
合計A 918,045 100.01%
国内生産額 872,212 95.01%
輸入 45,833 4.99%
合計B 918,045 100.00%

 しかし、問題を過大視しないために、ここで我国経済に占める輸入額の大きさをみておくことが有益であろう。最近の産業連関表である平成2年取引表及び平成7年取引表によれば、輸入(サービスを含む)の相対的な大きさは右表のとおりである。輸入は国内最終需要、内生部門及び輸出にまたがってその投入要素になっている。したがって、合計Aまでの4行と、それより下、合計Bまでの3行を直角に交差させてみると、輸入の国内最終需要、内生部門(主としてここが誤謬拡散効果の舞台である)及び輸出への浸透度合が分かる。これにより、輸入品についての再生材割合に関し、その算定の誤りが国内産品についての再生材割合の算定を無意味とするほど大きな比重をもったものではないこと、しかし、それが無視できるほど小さい値でもないことが同時に分かる。余談だが、我国経済に占める輸出入の割合がこの5年間で減少していたとは意外な感じを受ける。


Initially posted October 4, 1999.
Updated February 15, 2000.