[表示及び請求]

[再生材割合の表示義務] 再生材割合は商品に表示しなければならない。

 消費者は基準税率での高い環境消費税を支払って商品を買うか、低率で課税される再生材割合の大きい商品を購入するかの選択ができるが、環境消費税はこのような経済合理性のパラメータを提供するだけではない。購買選択に際し、消費者は再生材割合を目安として環境負荷をより小さくする行動をとることができるから、再生材割合は単純明快な環境合理性のパラメータも同時に提供することになる。製品の環境インパクトを常に消費者に表示するものとも言えよう。

 1991年、生活提案部門で日経21世紀地球賞を授賞された中野加都子氏の[リサイクル度評価表示制度の提案ー新たな資源リサイクルの方向]に沿った表示は商品のライフ・サイクル上使用のリサイクルに有用な情報を提供するものであるとすれば、再生材割合はその商品の構成素材が使用に既にどの程度リサイクルされたものであるかを表示するといえよう。

[環境消費税の転嫁義務及び請求方式] 売上高と適用税率の積として計算される環境消費税は売上の相手方に請求しなければならない。再生材割合は商品に表示することになるから、環境消費税の請求はいわゆる外税方式のみが認められる。

[表示又は請求がなかった場合の手続] 再生材割合の表示及び環境消費税の請求は義務であるが、以下のいずれかに該当する場合は、買い手は以下の各区分に掲げる税額を計算し、専用の納付書に記入して、当月分をまとめて翌月に(仕入先にでなく)税務署に仕入先に代わって納付する。

  1. 表示はあるが、請求がない場合

    表示されている初用材割合に基準税率を乗じて得た税率を用いて算出した税額

  2. 表示がなく、請求がある場合

    請求された環境消費税額

  3. 表示も請求もない場合

    基準税率にもとづき計算した環境消費税額

 上のいずれの場合にも、買い手は上の規定に基づいて直接税務署に納付した税額を仕入税額として控除できる。他方、売り手はその納付すべき環境消費税を申告し自己の負担で納付しなければならない。売り手が納付し、かつ買い手が直接税務署に納付する上記税額は重複することになるが、これは過怠税とされる。

 上の手続きは取引の連鎖のなかで再生材割合が適時に途切れることなく事業者のもとで計算され、転々伝達されていくことを確保するための仕組みである。他方、税務署は税収を確保しつつ、機動的に調査・指導すべき対象を認識することができる。

 実際の取引においては、上に示したような売り手の不備は買い手に余計な事務を強いることになるため、買い手から売り手にクレームが寄せられ、直接納付の前に不備が治癒されることが多いであろう。この牽制作用も上の仕組みに期待されるところである。

[表示の信憑性] 再生材割合はある頻度で税務調査を受けるから、徴税システムの維持コストはあるもののその客観性維持のための追加コストは零である。証券取引所への上場会社や商法特例法上の大会社は会計監査人の監査を受けるから、その過程で(やはり追加コスト零で)再生材割合も毎年検証されることになる。再生材割合の表示は信頼性及びその維持コストの面ですぐれたエコマークやエコラベリングであると言える。

[その他] 再生材割合の算定期間、集計単位等の問題については補論で検討している。


Initially posted January 20, 1998.