[環境消費税の低所得者への還付]
所得税の課税最低限以下の低所得者には所得税の確定申告、簡易な記帳義務及び環境消費税の還付申告を条件にその支払った環境消費税を還付する。また、この還付が課税最低限を一定範囲で超える所得者にも漸減的に適用されるような、いわば「消失還付」の仕組みも設ける必要がある。
一般に消費に対する税は低所得者の負担が相対的に大きく逆進性の弊害をもつと言われ、環境消費税もその例外ではない。しかし、逆進性問題のためにリサイクル社会の構築が阻害されてはならない。
現行の消費税法では課税事業者についてのみその仕入消費税の還付が認められているが、環境消費税の逆進性を緩和するために、一定の条件を満たす低所得者に環境消費税の還付を認めることが合目的的である。
生活必需品に対する低税率ないしゼロ税率、奢侈品に対する高税率という複数税率を設定するという考え方は様々な問題を孕んでいる。
- 第一に、例えば食料品を非課税とした場合、制度上非課税品にかかる仕入税額控除は認められないから、食料品メーカーは食料品の原価要素のうち課税仕入品目(例、機械・電力)についての税額控除ができない。このため、この原価となる仕入税額を回収するため売値を引上げざるを得なくなる。この事情はその前後の取引段階にある事業者についても同じである。よって、非課税措置は不透明な物価上昇によって相殺されることになり、逆進性の緩和効果を減殺する。他方、もしゼロ税率とすれば仕入税額の還付を認めることになるが、この場合は還付財源の穴埋めのため税率引上げを検討せざるを得なくなる。いずれにしても、スローガンとしては聞こえがよいが、実は副作用が大きく効果に大きな疑問が残る措置と言わざるをえない。
- 第二に、実務に耐える生活必需品の定義が難しい。食料品、医療、社会福祉、教育関係の支出を非課税ないし低率課税することが多いが各品目・サービスについて課税・非課税の線引き及び税率適用判断が微妙となるケースは常につきまとう。
- 第三に、複数税率は環境消費税制の維持コストを課税庁、納税者の双方にとって高めることになる。特に生活必需品とその他の物品・サービスを並行して扱う事業者及びその前段階における事業者にとりこの問題は深刻となるだろう。
- 第四に、低所得者をターゲットに複数税率を設けることのメリットを高所得者にも及ぼすことになり、制度の趣旨を曖昧にする。
生活必需品非課税ないし軽課の問題は付加価値税制のアキレス腱であり、各国とも悩みに悩んでいると言われる。上述の低所得者層への環境消費税の還付という方法を採用し、パンドラの箱を開けて悩みを共有する途は避けなければならない。
Initially posted January 20, 1998.