計算例(黄色部分:再生材割合改善前、その右2列:改善後) | |||||||
費 目 | 仕入 金額 |
基準税額 (24%) |
VMUR (%) |
仕入 税額 |
VMUR (%) |
仕入 税額 | |
原材料費 | 材料A: | 10,000 | 2,400 | 80.0 | 1,920 | 40.0 | 960 |
材料B: | 80,000 | 19,200 | 90.0 | 17,280 | 20.0 | 3,840 | |
材料C: | 30,000 | 7,200 | 85.0 | 6,120 | 50.0 | 3,600 | |
計 | 120,000 | 28,800 | 25,320 | 8,400 | |||
労 務 費 | 20,000 | 4,800 | 0.0 | 0 | 0.0 | 0 | |
経費 | 電力費 | 10,000 | 2,400 | 100.0 | 2,400 | 90.0 | 2,160 |
燃料費 | 8,000 | 1,920 | 100.0 | 1,920 | 80.0 | 1,536 | |
輸送費 | 5,000 | 1,200 | 70.0 | 840 | 60.0 | 720 | |
通信費 | 1,000 | 240 | 10.0 | 24 | 10.0 | 24 | |
消耗品費 | 2,000 | 480 | 70.0 | 336 | 40.0 | 192 | |
租税公課 | 1,000 | - | - | - | - | - | |
保険料 | 2,000 | - | - | - | - | - | |
減価償却費 | 30,000 | 7,200 | 80.0 | 5,760 | 60.0 | 4,320 | |
その他 | 1,000 | 240 | 100.0 | 240 | 70.0 | 168 | |
計 | 60,000 | 13,680 | 11,520 | 9,120 | |||
売上原価 | 200,000 | 47,280 | 77.9 | 36,840 | 37.1 | 17,520 | |
売上高 | 300,000 | 72,000 | 77.9 | 56,088 | 37.1 | 26,712 | |
納付環境消費税額 | 72,000 | 19,248 | 9,192 | ||||
当社の初用材割合は78%から37%に改善したため、適用税率は18.72%(24%×78%)から8.9%(24%×37.1%)となり、納付税額は19,248から9,192へと減少した。当社が税抜価格1個300円の製品のみを販売しているとすれば、税込で改善前356円の価格は改善後326円に引下げられる。300円に対するこの差30円は大きい。 |
後述するように(X.既存税制との調整)、環境消費税の導入と同時に法人税、法人都道府県民税法人税割、法人市区町村民税法人税割、法人事業税を廃止し、個人所得税に一体化することを提案する。これは税収の中立性を図りつつ、環境消費税をなるべく高い税率において導入するためである。
平成8年度当初予算によれば、景気後退下にあって法人税収13兆5480億円に対し、消費税収は地方譲与分をあわせて7兆4350億円である。他方、平成8年度のデータがないので平成5年度実績についてみると、法人道府県民税法人税割6830億円、法人市町村民税法人税割2兆540億円及び事業税の4兆5680億円であり、合計7兆5610億円であった。環境消費税は再生材割合に応じて税率が割引かれるから、仮に我国のリサイクル率を現在40%、売上原価中の人件費率を10%、環境消費税率を16%、地方環境消費税を8%とし、関係するパラメータが直線的に変化すると単純化して考えると、国税及び地方税分の税収額につき次の算式を得る。
(7.5兆÷3%)×16%×0.6×0.75=18兆円
(7.5兆÷3%)×8%×0.6×0.75=9兆円
売上原価中の人件比率を考慮するのは売上原価中の給与・賃金の初用材割合の算定基礎算入が減収要因として作用するからである。この影響要因が1-0.1=0.9でなく0.75である理由については補論を参照されたい。
導入時の環境消費税には少なくともこの程度の税率を与件とし、初用材に対する再生材の競争力を確保する必要があると思われる。1996年現在、OECD加盟23ケ国における付加価値税の標準税率は最も高いものでデンマーク及びスウェーデンの25%、平均で17.2%であり、9ケ国で20%以上の税率が課されている(1998年1月現在では、OECD加盟26ケ国における付加価値税の標準税率は最も高いものでデンマーク、ハンガリー及びスウェーデンの25%、平均で17.9%、12ケ国で20%以上の税率が課されており、全体として上昇傾向にある)。法人税等の廃止及び所得税への一体化と併せた環境消費税率24%は高いものであるとは考えられない。法人税等の廃止とあわせ、環境消費税率を競争力に有意な影響を与えうる水準において導入することは、リサイクル社会の構築に向けて極めて重要な戦略と言える。その後、環境消費税の定着化により我国総体としての再生材割合はかなり急カーブを描いて向上していくと予想されるから、税収の中立性を一方で考慮しつつ、これに遅れることなく環境消費税率を上昇させていく必要がある。
また、環境消費税収の見積においては、我国総体のリサイクル率や売上原価中の人件比率等のファクターが大きな誤差要因となる。したがって、環境消費税収の見積額を実績が上回る場合には、速やかに所得税の特別減税等の措置を実施して、税収中立を維持しなければならない。