[経済的手段]

 経済的手段としては一般に排出賦課金、製品賦課金、デポジット制度及び排出権売買があげられる。このほか補助金も経済的手段のひとつに数えられるが、このセクション末尾に示す問題点が指摘されており、同列には扱われない。

[排出賦課金(Emission(Effluent) charges)] 賦課対象とする汚染物質とその単位排出量当り賦課率を定め、排出量に応じて賦課金を徴収する制度である。汚染源が定位置にあり、汚染者ごとの限界防除費用が大小様々である場合に有効とされる。排出量の決定(計量・記録・報告・検証)手続き、賦課金に対して汚染者が選択できる対処方法の多寡、行政側の整合性ある賦課金制度の企画能力及び技術革新の可能性等はこの制度の実効性に影響を与えるとされる。

[製品賦課金(Product charges)] 賦課対象とする製品とその単位産出量当り賦課率を定め、産出量に応じて賦課金を徴収する制度である。価格弾力性が大きくて、代替品の選択肢が多く、大量にかつ様々な形態で消費又は使用される製品に関して有効とされる。製品の環境負荷の度合に応じて賦課金に軽重の差を設けることにより製品価格の差別化をもたらし、汚染度の高い製品からクリーンな製品へと消費の転換を促すことも期待できる。しかし、例えば製品が有毒であってその使用を激減する必要がある場合には製品賦課金ではなく使用禁止のような直接規制措置が適当だと考えられている。

[デポジット制度(Deposit-refund systems)] 例えば飲料容器のように、販売時に価格に上乗せした預り金を回収時に払い戻すことによって、再利用や使用後の安全な処分を促進するための仕組みである。対象となる物品は容易に識別して取扱えるものである必要があり、利用者や消費者の協力が重要となる。

[排出権売買(Marketable(Tradable) permits)] 設定した汚染物排出量を排出者間に配分した後、排出量削減を達成した者にその生み出した余剰排出権の売却を認める制度である。排出賦課金が排出価格を設定した上で汚染者に排出量の決定をゆだねるのに対し、排出権売買は排出量を設定した上で市場メカニズムに排出権の価格決定をゆだねる点が異なる。排出者ごとの処理コストに幅がある場合に有効であり、汚染物排出量を制御する上でともにコスト対効果に優れていると言われている。

[補助金(Subsidies)の問題点] @上掲の4つの経済的手段が歳入をもたらすのとは対照的に、補助金は歳出を必要とする。APPP(Poluter-Pays Principle;汚染者負担原則)に反する。B補助金供与の客観的基準の設定が難しく、また、事前の審査や事後のモニタリング等の行政コストも無視できない。C補助金は既得権益化しやすく、同時に衰退産業の市場からの退出を遅らせ、産業組織の効率化を阻む要因となる。D隠れた貿易障壁として機能することがある。といった指摘があり、補助金の活用には各国とも慎重になってきている。


Initially updated:January 18, 1998.