[環境立国をめざす環境税と税制改革案]

[環境消費税を提案します] 日常納める税金が、大量生産・大量消費・大量廃棄型経済から持続型経済への移行を不断に促すような税制を私たちは必要としています。それは、同時に、環境負荷の小さい生活をする人にとっての税負担が負荷の大きい人よりも少なくなるような税制でなければなりません。そのような税制として、商品やサービスの付加価値を、投入した初用材(Virgin Material)と再生材(Recycled Material)に対応する部分に区分し、前者のみに課税する環境消費税を提案します。

[環境消費税の効果は?] 環境消費税制のもとでは、より多く初用材を用いた製品の価格は相対的に高くなります。企業は(税込)価格競争力を保つため、生産過程への投入材を、可能な限り初用材から再生材へ転換していくでしょう。さらに、再生利用技術の開発及び採用に社の命運をかけて取り組むことになります。資源再利用が不断に進み、再生材市場が需要サイド主導で拡大していきますから、あつめた古紙が需要不振で行き場がなくなることもありません。消費者は、購入価格と回収価格の両方に目を向けて行動するようになりますから、リサイクル困難な素材は、回収価格が付かずマーケットから駆逐されていくでしょう。

[逆進性の緩和は還付で] 環境消費税のような付加価値税には逆進性(税負担が高所得者より低所得者に相対的に重くなること)の問題が伴いますが、これは一定の低所得者を対象として、環境消費税の還付申告を所得税の申告と併せて行うことを条件に、環境消費税を還付するしくみを設けることで解決できます。環境消費税の非課税品目や軽減税率を設けることは、耐難い実務コストを納税者に強いるため望ましくありません。また、所得税率の引下げや課税最低限の引上げは、その効果が高所得者層により大きく働くし、既に課税最低限以下にある低所得者層には何のメリットも及ばないので、目的に合いません。

[法人税や所得税はどうするの?] 環境消費税を仮に基準税率24%(国税分16%、地方税分8%)で導入すると、国税収入18兆円、地方税収9兆円が見込まれます。この税源を、まず現行消費税の廃止12兆円に充てた上で、法人税・事業税・法人住民税及び個人所得税・個人住民税の抜本的な改革に充てることができます。環境消費税を国税とし、これらの所得課税をすべて地方財源とすることも考えられます。環境消費税は、将来世代に借金を積み重ねずに、我国の法人税・所得税を国際水準よりも引き下げる手段を提供し、持続型経済に向けた広大なフロンティアと雇用機会を切り拓いてくれるでしょう。


[FAQ1:人々の意識や心構えが変わらないと環境問題は解決しないのでは?] 確かに「意識」や「心構え」は大切だと思います。特に、私たちが環境によって生かされているのだという「意識」は環境への関わり方を根本的に変えてくれるものですし、「意識」の現れ方は人によって多様なものがあります。これらの意識を人間の言葉で多くの人と共有することは大きな力になっていくと思います。しかし、私達の経済社会システムは人間の「意識」や「心構え」を聞いて理解することができません。市場は、何がどれだけ売れいくら儲かった損したというメッセージを受取ってはじめて人間の望むモノを理解できるのです。環境消費税制は税額の安いモノを選んで買ったとき、「意識」や「心構え」を市場が理解できる言葉に変えてメッセージとして伝える方法です。私達の経済社会システムの仕組み自体に環境負荷を強める作用があり、私たちが既に環境問題を悪化させる土俵に立っていることを考えると、この伝達ルートは欠くことができません。制度も心構えもどちらか一方で万事解決というわけにはいきませんが、制度の貧困が目立つ現状では、これらを同列に論じるのではなく、具体的政策を現実のものにしていく必要をより強く感じます。

[FAQ2:強制的に徴収する税金では「払ったら終い」で形骸化するのでは?] そういう人もいるかもしれません。しかし、大多数の人は値段を比べて買うモノを選択します。314円で買えるモノをあえて357円出して(次節末尾の例参照)買い続ける人はまれでしょう。お買い物は一生続きます。環境問題に傍観者ではいられても、環境消費税については傍観者ではいられません。また、生産者は消費者からのメッセージを受けとり素材・生産方法・物流方法を工夫し続け、消費者の選択肢も拡がります。それでもより高い税金を払い続ける人がいても、それはその人の選択ですから、強制や規制や罰金とは異なります。

[FAQ3:消費税の税率を上げるだけではいけないの?] 現行の消費税は消費するものの中身にかかわらず同じ税率でかかります。リサイクル品でもリユース品でも初用材から作られたモノでもすべて5%という定率です。これでは環境負荷を減らすために減った消費と、ただ支出を節約して減った消費と区別がつかず、消費者のメッセージは伝わりません。環境消費税は消費税という名を一部継承していますが、モノの由来・中身によって同じ価格のモノでも税額に差の出る環境税です。次節と「環境消費税のしくみ」の章を御一読頂き、現行消費税との区別をご理解下さい。Bon Voyage !

Initially posted January 26, 1998.
Revised November 5, 1998. Added FAQs February 5, 2003.