現状と課題

更新日:2008年1月14日

進学をめぐる現状と課題

各地の抱える問題は、地域や国籍によって様々ですが、全国的に共通している課題と取組みをあげてみました。

外国人の高校進学率の現状

1)進学率は約50%

中学と高校における外国籍生徒の数から「学校生存率」を割り出すと約50%という数字が見えてきます。この数字には、在日コリアンなどのオールドカマーも含まれていること、不就学や外国人学校の数字が含まれていないことを加味すると、ニューカマーの高校進学率は50%を割ると推計されます。

2)外国人むけの情報の不足

「中学校では進路指導をしている」という学校でも、日本語がわからない保護者のところまで、十分に情報が届いていないことはしばしばあります。
また、日本の義務教育制度や、高校入試のしくみ、母国との違い(例えば、出欠席が大きく評価される、など)といった、基本的な情報から説明する必要があります。

日本語と学力の壁

3)日常言語と学習言語

「日本語はペラペラだから問題ない」ように見える子どもでも、学習ができているかどうかは別問題です。日常会話は1〜2年で修得することができるため、一見適応しているように見えていても、読み書きに必要な「学習言語」の修得には時間も努力も必要であり、学習面では困難を抱えていることが多いのです。これは教師だけでなく、親や本人も誤解しているケースもあり、注意が必要です。

4)“外国籍”だけでない問題

「片親が日本人だから大丈夫」…ではありません。子どもは日本国籍であっても、国際結婚の増加で外国をルーツとする子どもは急増しています。生育環境や家庭での言語使用状況によっては、日本語の習得が十分でないこともあります。
また外国人の親についても、子どもの進学について理解を深めることは重要です。

入学・編入における制度の壁

5)外国人特別枠

高校入試における「外国人特別枠」は、少しずつ増えてはいるものの、どの都道府県にもあるわけではありません。
せっかく「特別枠」があっても、受け入れ校の数や募集人数が少ない、外国人集住地区から遠い、レベルが高すぎる、「来日3年以内」などの受検資格が厳しいなど、外国人にとっては使いづらく、ニーズの受け皿になっていない現状は大きな問題です。

6)義務教育期間の違い

日本では小中学校の義務教育年数は9年ですが、国によって初等+中等教育が8年の場合は、外国の中学校を卒業していても、高校の受検資格がない自治体もあります。
満15歳以下なら、日本の中学校を卒業すれば自動的に受検定資格が得られますが、年齢オーバーだと夜間中学に通うか、年1回しかない中卒認定試験を受けなくてはなりません。

7)外国人学校からの編入・入学

外国の高校から日本の高校に編入することは可能ですが、日本国内のブラジル人学校等は公的な学校と認められていないため、高校への編入が認められません。
また、多くの県ではブラジル人学校等の中学を卒業しても、日本の高校を受検することは認められていません。

8)統廃合で消える定時制高校

学力的・経済的な問題から、全国的に定時制高校に通う外国人高校生がたくさんいます。しかし、少子化の影響で定時制高校は統廃合で減らされる傾向にあり、子どもたちの貴重な学習の場が、ますます削られようとしています。

入学後の障害

9)少ない学習サポート

外国人のための日本語指導、取り出し指導などの支援がある小中学校に比べると、高校では日本語や学習の支援はとても少なくなり、高校の「指導員制度」がある自治体は神奈川、長野、愛知、大阪などごく一部にすぎません。
学習だけでなく経済的な理由から、せっかく学習意欲があっても中退するケースも少なくありません。しかし、正確な中退率などの数字は調べられていません。

10)在留資格の問題

たとえオーバーステイで在留資格がなくても、子どもの「学ぶ権利」は保障されなくてはなりません。しかし、在学中にいきなり身柄を拘束され、入管に収容されたり、最悪の場合、強制送還の危機に陥るケースもあります。

11)編入の場合

「外国人特別枠」のある高校から、別の特別枠のある学校への転校・編入は年度途中だと難しいケースもあります。都道府県をまたぐ転校は、制度が違うためにさらに困難になります。親の転勤を機に、せっかく入った高校を退学してしまったケースもありました。

もくじ

関連リンク

各地の教育支援団体

研究室・国際交流協会

各種翻訳資料

国・自治体の取組