野外生物調査辞典

00.6.6 加筆

生物業界用語ともいう...??


 あみ(網)
動物を捕獲する道具。振りまわし方にコツがある。
 
 あめ(雨)
頭から靴の中までぐしょ濡れの調査はやりたくない。 ざーざー降っていれば中止にできるが、止みそうで止まない時は判断に苦しむ。雨女はだれだ?!
 
 あるこーる(C2H5 OH)
  1. 標本用 75%前後が適切。消毒用にも使用可。
  2. 飲用  フィールドワークの友(必需品?)であるが、飲み過ぎると翌日の調査にひびくのでほどほどに。
  3. 酔い止め  船に乗ってすぐ適量を摂取し、睡眠をとること。
 
 いやなもの(イヤなモノ)
生物屋であってもヒル、ダニ、蚊、ハチ、ブユの襲撃には閉口する。
ゴキブリはわしづかみできても、毛虫、芋虫が生理的にダメ!な人もいる。
 
 うおのめ(魚の目)
魚をよく見つけることのできる人の目。ひたすら水面を追う。
   cf.カエル目、鳥目、シダ目、アブ目 etc.
 
 うの(UNO)
カードゲームの一種。キャンプの夕食後、翌朝の食事当番を賭けて エキサイト!真剣にやりすぎると友情にヒビが入る。
 
 うらめしい(恨めしい)
雨、炎天、台風、火山噴火など自分の力が及ばない自然現象に対して抱く感情。
 
 おてあげ(お手上げ)
雨、炎天、台風、火山噴火など自分の力が及ばない自然現象に対してなすすべのないこと。
 
 おんせん(温泉)
調査の後の極楽〜♪
 

 かえるぶくろ(蛙袋)
布製の袋。窒息せず、乾燥せず。
 
 かざんばい(火山灰)
桜島や諏訪之瀬島の調査はこれに泣かされる。風の強い日や噴火のあった日なんざ、頭から服から食器からテントから、そこかしこがじゃりじゃりのざらざら状態に。コンタクトレンズも使えない。
降灰直後の藪こぎ登山は苦行としか思えない。灰の上に残る鳥や動物の足跡で、アニマルトラッキングができることが唯一の利点か?
 
 かみなり(雷)
屋根の下で見物するのは最高だが、野外では遭いたくないもの。特に干潟や草原、溶岩地などのオープンスペースでは冷や汗だらだら。
 
 がんたっかー(ガンタッカー)
毎木調査でナンバーテープを木に綴じ付ける巨大ホッチキス。誤って自分の手を縫い付けないように。
 
 きいちご(木苺)
野外生活における珍味、デザート。おいしくて花もきれいだが、薮こぎでは敵になる。
 
 きじうち(雉撃ち)
トイレがない時はこれに限る?女性の場合は「花摘み」とか。cf.ばばがみ
 
 くささらい(草さらい)
「ふっふっふ。さあ、おいで〜」と言って草をぶちっと引き抜き、黒いゴミ袋に採集していく人のこと。 cf.動物さらい
 
 こうもりぶくろ(蝙蝠袋)
オレンジ色のメッシュのミカン袋のこと。F越先生は10年以上、同じ網を愛用。
 
 ごじゅうく(五重苦)
私の調査区の森林にはカ、ブユ、アシナガバチ、毛虫、ヒルがいて、全部被害にあった。
 
 こなちーず(粉チーズ)
アリを誘き寄せるエサ。砂糖より強力。
 
 こわいもの(怖いモノ)
閉所恐怖症の洞窟のコウモリ調査、火山の噴火口付近の調査、津波、雷、つつがむし病、寄生虫、生きたハブ、ダツ…。野外は危険に満ちている!!
 

 しだ(羊歯)
葉っぱの美しさを理解できるのが“通”ってもの。南へ行くほど種類が増え、大型化する。名前を知っているだけで尊敬されることも。
 
 したい(死体)
何がなぜ死んだかを推理し、大きさ、色、形などをじっくり観察するまたとないチャンス。
嬉しさ余って、腐りかけたものまで採集する人も。
 
 しま(島)
最高点に立つと征服欲を満たされるが、時化で船がでないと監禁された気分になるところ。
 
 しまこじき(島乞食)
野外生活では人の情けが身にしみる。特に食べ物と風呂と車。 金では買えないものの価値がしみじみと感じられる。
 
 じゅこうぼう(樹高棒)
木の高さを測るメジャー。別名「如意棒」。商品名は「逆目盛検測棹」。
最大15mまで伸びるが、よくしなるので使い方にコツがいる。グラスファイバー製で値が張るので折ったりしないように。
 
 しんぶんし(新聞紙)
植物標本をはさむ、焚き火の種火、防寒、暇つぶし、枕など多目的に使用。
 
 せいぶつしりとり (生物しりとり)
生物の標準和名でするしりとり。「ら」ラッパムシ、ラリーカミキリ…うーん、うーん。
 
 そうがんきょう(双眼鏡)
鳥や動物を見るだけでなく、植生の判別、植物種の同定など、野外では様々な場面で活躍するが、決して人家に向けてはいけない。逆からのぞくとかなり歪むが拡大鏡にもなる。
口径が大きいと明るいが重たくなるし、倍率が高いと視野が狭くなるので、7〜9倍×20〜30mmぐらいがお手ごろ。
 

 たかえだきりばさみ(高枝切りバサミ)
高いところにある葉っぱを採集するための道具。熱帯林では一番低い枝が10mとか20mの高さにあるので、普通の高枝切りバサミ(3〜4m)を旗竿用のポールに繋いだり改造して10m以上の「超・高枝切りバサミ」として使う。
 
 ちず(地図)
調査の必需品。命綱。ここからいかに情報を読み取れるかが勝負の分かれ目。
 
 でーた(データ)
よいデータがとれるかとれないかで、論文の出来が決まるといっても過言でない。
どこで、どんなデータをどうとるか、机上の計画が通用しなくて現場で頭を抱えることもしばしば。 データがとれなくては帰れないし、調査で一番悩み苦しむところ。
 
 てんき(天気)
毎日の関心事で、一喜一憂。これによって行動パターンが左右される。
 
 てんと(テント)
放浪野外生活の拠点。フライシートと銀マットも欠かせない。ペグで固定するのを端折ると、強風時に ごろごろ転がるわ、ポールは折れるわ、ろくなことにならない。
 
 どうなが(胴長)
水辺調査のスグレもの。深さがあると水圧で締って気持ちいいんだな〜。
 
 とりや(鳥屋)
鳥類を専門に研究をしている人、あるいは鳥の調査・研究を趣味や生業とする人。金を払っても鳥は売ってくれない。
cf.植物屋、虫屋、魚屋、哺乳類屋、分類屋、生態屋…
 

 ないたー(ナイター)
夜間の昆虫採集。ライトトラップともいう。シーツに蛍光灯をぶらさげ、飛んでくる虫を採集する。 夏は大量の虫が飛来し、虫だらけになる。
 
 ないふ(ナイフ)
野菜をきざむ、実を分解する、薮を切り開く、魚をさばく、テープを切る、ヤギを殺す、 貝をほじくる、など多様な使い道がある代物。
 
 ななつどうぐ(七つ道具)
フィールドノート、双眼鏡(ルーペ)、管ビン、コンパス、メジャー、アーミーナイフ、ピンセット。 調査対象によって多少異なる。
 
 なまもの(生もの)
宅急便で動物標本や採集物を送る時、中身は何?と聞かれて。生きたアリや死体とは答えにくい。シギの落鳥を送るのに「鳥肉」と書いて送ったこともある。
せっかく送っても、開けたら腐乱してると悲しいので、なるべくクール宅急便で送りませう。
 

 ばかぼーくん(バカボーくん)
測量棒にかいてあった(!)。商標登録されてるんだろうか??
 
 ひょうりゅうぶつ(漂流物)
浜乞食の生活の糧。南西諸島ではハングル語、中国語の表示された製品が多い。ヤシの実、マングローブの種子、モダマ、クジラの骨などお宝も時々あるが、無人島のオイルボールは幻滅。流木の焚火はよく燃える。
 
 ふぃーるどわーく(フィールドワーク)
体力、気力が要求され、汚い、危険、きつくて、美容に悪い、屋外の作業。
それでもやっぱり野外での調査は楽しい!「調査でデータはとるから、論文は誰か書いてほしい…」という研究者も。
 
 ふくめん(覆面)
1)薮蚊対策
2)火山灰対策
 人里におりたら覆面を解かないと誤解をまねくかも。
 
 ぶどうがり(ブドウ狩り)
冬眠中のコウモリを洞窟の天井からひっぱがすこと。齢、性別など調査した後、腕に標識をつけて放す。
 
 ふね(船)
島々に行くのに必要な交通手段。しばしば台風、時化に泣かされ、吐かされる。
 
 ふん(糞)
動物が残すフィールドサインの一つ。生態、個体密度などの重要な指標。
 
 ふんぶんせき(糞分析)
フンコロジー、スカトロジーともいう。含まれる種子、体毛などの状態から、誰が、何を食べ、いつ頃したのかを推理する。
 
 へびぶくろ(蛇袋)
洗濯物ネットのこと。ずっと入れておくとヘビ臭くなる。
 
 へるめっと(ヘルメット)
×バ用にあらず。火口付近、洞窟内、アダン林の調査などで役に立つが、ずり落ちると前が見えなくてうっとうしい。
 
 ほったいらず(堀田いらず)
堀田満教授監修の「世界有用植物辞典」(平凡社)のこと。帰ってから標本の同定などに活用される。
これがあれば、食用、薬用といった植物の使い道もバッチリ。大きすぎて携帯に不向きなのが玉にキズ。
 

 まいぼくちょうさ(毎木植生)
植生調査の一方法。方形区を作り、中に生えている1本1本の木について種名、胸高直径、樹高など を調べる。林に愛着がわくが、調査後の林床は歩き回ってずたぼろに。
 
 まよねーず(マヨネーズ)
中型哺乳類のトラッピングに使う餌。脂肪分・塩分が豊富なので、植食・肉食を問わず使える。
 
 みつだずかん(光田図鑑)
保育社検索入門「しだの図鑑」のこと。栽培方法の記載や、主観の混じった解説が何ともいえない。
検索しやすく使い勝手はよいのだが、南西諸島では記載種が少なくてあまり使えない。
 
 みみたぶ(耳たぶ)
キクラゲのこと。ラーメンに入れるとおいしい。安心して食べられる数少ないキノコ。
 
 むじんとう(無人島)
水の大切さが痛感できる場所。
 
 めし(飯)
調査後の一番の楽しみ。夕方になると、頭の中が夕飯の妄想でいっぱいになる人は少なくない。飯をケチると調査隊の反乱が起きる。
 
 もうきんるい(猛禽類)
化学系の人に「モウキンルイってどういう菌類?」ときかれたが、ワシ・タカ・フクロウなどの大型〜中型肉食鳥類をさす。
 
 もうこはん(蒙古斑)
おしりにできた青あざ。渓流や急斜面でよくこしらえる。
 例:「いや〜ん、今日は転んで滑ってお尻が蒙古斑だわー」
 

 やぎ(山羊)
トカラ列島で調査中、人気がないのに「視線」を感じる先にしばしば佇んでいる生物。食用にするらしい。私の指導教官に似ているので、出会うと嬉しいような、悲しいような…。
 
 やぶこぎ(藪こぎ)
薮を「げし!げし!」あるいは「がし!がし!」とかきわけながら、道なき道を前進すること。
カラスザンショウなどのトゲトゲ植物やリュウキュウチクが高密度に繁茂していて進退極まることもあるが、フィールドワークの醍醐味のひとつでもある。
 
 ゆめ(夢)
調査に熱中(苦悩?)するあまり、夢の中でもしばしば調査シーンが出てくる。キャンプ中、寝言で一生懸命カウントしていた先生もいるらしい。寝てる時ぐらいは、調査から解放されたいよー。
 
 らじお(ラジオ)
俗世との接点。テント生活の友。トカラ列島では日本語はNHKのAM1局しか入らず、異国語の放送ばかりが入る。