くまの家 オフロードバイクのページ ガレージ ヤマハ DT200WR(3XP)

速く、楽しい、感動のあるバイクをコンセプトに、DTシリーズ22年間の集大成がリアルエンデューロマシンDT200WR

 1968年のDT-1登場以来、常に日本のオフロードをリードするヤマハ。YPVSやモノクロスサスの採用、水冷化に200ccなど先進技術を導入。DTシリーズは、1990年でシリーズ登場通算22年を迎え、エンデューロ性能を強化。モトクロッサーYZとエンデューロレーサーWRが融合し一体化したのがDT200WRだ。

 モトクロッサーYZのテクノロジーを全身にフィードバックした元祖スーパートレールがDT200WR。1991年のYZ、WR200Rとほぼ同じ構成なことが、そのポテンシャルを物語る。

 メインの構成にYZのパーツを使うセミダブルクレードルフレームは、YZのアルミデルタボックススイングアームが組み合わせられ、高い剛性を確保。フロントには圧側減衰力18段調整式の41mm径、ストローク300mmの倒立フォークを採用し、リアの圧側20段、伸側25段調整式、ストローク310mmのビギーバックサスとともに高い走破性を誇る。前後ブレーキはフロント245mm+2ポットキャリパー、リア220mmのディスク。

 新設計のエンジンはDT200Rをベースにリミットまで排気量を拡大。補助排気付き複合メッキシリンダー、ローボーイタイプエキゾーストチャンバー、大型リードバルブ、デジタル進角に新型燃焼室、TM30キャブなどを装備し、まずパワーバンドを拡大。さらに3倍速YPVS、最適掃気形状ケース、大型エアクリーナー、小型フライホイール、発電容量アップでレスポンスを向上し、1軸バランサーを採用することで振動も低減。デュアルラジエターももちろんYZと共用だ。このように、「速く、楽しい、感動のあるバイク」を狙いに開発されたDT200WRは、まさにリアルエンデューロマシンなのだ。

エンデューロ性能強化で総合性能もアップ

 DT200Rの1988年から2年半ぶりとなる1991年、エンデューロ性能を追求し、フルモデルチェンジを受け登場したのがDT200WR。オフロード性能を極限まで追求したモトクロッサーYZをベースに開発が進められ、まさにストリート・リーガルYZと言えるモデルで、DT200Rに比べ精悍さがぐっと増している。エンデューロの本場アメリカ市場向けに発売されたWR200Rとほぼ同じ構成となっており、このDT200WRの登場は、国内のオフロードシーンに大きな影響を与えた。

ヤマハ DT200WR 実際にまたがってみると、シート高895mmは身長のあるライダーでも結構高く感じられ、固めのシートフォームはYZにまたがっているような感覚に近い。

 DT200Rでは、キーをONにするとエンジンの辺りから「ピーパー」とYPVSの作動音が聞こえたが、DT200WRでは何の反応もない。これが、リアルエンデューロマシンのために軽量化され、バッテリーレスとなった証拠だ。

 キックはストロークが短く軽い。クラッチも軽い。そして、エンジンは簡単にかかってしまう。そのとき、3倍速になったYPVSがセルフクリーニングのために作動しているはずなのだが、作動音は聞き取れないほど静かである。

 エンジンがかかれば、電装系が作動する。バッテリーレスといえども、ヘッドライトは実用レベルで何ら不満もないほど明るい。ホーンの音もDT200Rと同レベルだ。

 バランサーが採用されたDT200WRのエンジンは、高回転域でも振動はなく、パワーの出方もスムーズで、とても静かな排気音だな、と思ってるうちに吹け切ってしまうほど。従来のDT200Rのエンジンも、2ストにしてはフラットな特性だが、それに磨きがかかったようにDT200WRのエンジンはフラットといえる。パワーバンドから外れても、スルスルっと違和感なくスピードがのってくる。

 これほど良いエンジンを受け止める車体もYZとの共通部品を随所に設定し、エンデューロレースで勝ちにいくライダーにも安心して攻められる構成になっている。

 DT200WRはモトクロッサーと全く変わらない速さでコースを走り回り、何のためらいもなくジャンプを飛べる。トレールバイクにありがちなガシャン、バタバタといった音は聞かれず、妙に静かなモトクロッサーがエンジンをうならせて、息を飲むようなジャンプをする、といった感じだ。

オンロード・オフロード両方楽しめる味付け

 それほどのテクニックを持ったライダーでなくても、DT200WRの魅力は十分引き出せる。

 YZと変わらないように見える前後サスは、フロント300mm、リア310mmのストロークを確保。データ上はYZと変わらない。しかし、味付けは、このバイクにとってはリエゾン区間でしかない公道でも問題なく速く、楽しく走れるセッティングになっている。この点は、モトクロスコース内だけしか楽しくないモトクロッサーを超えている。DT200WRは、オフロードでの楽しさを追求しているうちに、オンロードでの楽しさえも手に入れたのだ。

 サスストロークが究極に達したDT200WRのコースでの走りはというと、サスに任せて縦横無尽に走れ、ミスしてもバイクがカバーしてくれる。もともとハンドリングの良さには定評があったDTシリーズの延長線上にあるのだから、当然と言えば当然。「行けるか?」といった攻撃的な走りも可能である。

 ブレーキも使いやすい。特に、リアのタッチがモトクロスブーツを通しても使いやすく、ロック寸前の美味しいところも使えるのは強力な武器。それに、もっと鋭いタッチが好きなら、RC-SUGOのエンデューロキットにあるステンメッシュブレーキホースに交換してしまえばよい。

 素晴らしい出来のDT200WRだが、不満がないわけではない。特に、ノーマルタイヤでは車重が気になる。サスに頼ってギャップに突っ込むと、ギャップに合わせてスロットルを開けてもグリップせず、ステアリングヘッドまわりが重く感じ、ハンドルが取られて、思うようにペースが上げられない。

 とはいえ、この不満はあくまでもエンデューロを想定しての不満であって、エンデューロ仕様にしてしまえば解消されるだろう。

1991年当時にラインナップされていた2ストローク・オフロードバイク

ホンダ CRM250R、CRM80、CRM50

ヤマハ DT125R、DT50

カワサキ KDX200SR、KMX200、KDX125SR、KMX125

スズキ TS200R、TS125R、ハスラー50(TS50)