155に搭載されたエンジン(2)
(2)はアルミ合金ブロック8Vツインスパークエンジンです。

1.8L TWIN SPARK (155搭載:1992-1996)
エンジン形式:67102
排気量:1773cc(84.0mm×80.0mm)
出力:126HP(EEC)/6000rpm
トルク:16.8kgfm(EEC)/5000rpm
最高速度:200Km/h

アルファ4気筒エンジンの最終フェーズとなったツインスパークヘッドをもったエンジンはそもそも164搭載用として2Lモデルから開発が始まったようです。

御存じの通り、バルブ角度は46度と旧来の80(88?)度から大幅に狭められながら2バルブは踏襲、それに伴ったものと思われますが(燃焼室が扁平になったから?)バルブが向き合う両端に2つの同じ大きさのプラグが対称に配置されています。この8バルブツインスパークは、圧縮行程から膨張行程にうつるときに2本同時に点火するもので、火炎を短時間に満遍なく燃焼室に回すための2プラグです。
国産車では、SOHCターボの日産CA18ET(?…シルビア・ガゼ-ルに搭載されていたエンジンです)、トヨタのDOHCターボ3T-GTなどがあったはずです。いずれも圧縮比の低いターボエンジンで恐らく燃焼室がNAに比べ大きくなってしまうため2本のプラグが必要だったものと思われます(想像ですが…)因みにトヨタのNA板3T-Gは通常の1本プラグだったと思います。
そう考えるとアルファのツインスパークもやはり燃焼室の形状によって必要になったものなのでしょう。言いかえると狭角にしながらも2バルブに拘った結果ということもできると思います。
この2バルブ・ツインプラグに、吸気カムシャフトには位相切替機構が奢られました。これはフェイズ・バリエータと呼ばれるもので油圧を動力源とするギア駆動式の位相切替装置だそうです。吸気バルブを開くタイミングを上死点前33度−下死点後41度と上死点前3度−下死点後71度に変更できました。
このヘッドは当初84.0mm×88.5mmという2000GTV以来の伝統のボアストロークをもったシリンダーブロックと組み合わされ164に先行し先ず75に搭載されました。そしてこのスペックのまま164に搭載されました。

155登場時から搭載された1.8Lツインスパークエンジンはこのアルファ製2.0Lツインスパークと同様の構成要素をもった1.8Lエンジンで、位相切替装置も備えます。旧来のアルファの1.8Lエンジンは2.0Lと同じストロークをもちボアが縮小された(歴史的には逆ですね。2.0が1.8(1750)のボアアップ版ですね)ものでしたが、新1.8Lは2.0Lと共通のボアをもちストロークが80.0mmに短縮されたショートストロークエンジンになっています。

1995年の155マイナーチェンジと時を同じくし、スーパーファイアー系16Vツインスパークと交代した2.0Lと異なりこのアルファ製1.8Lツインスパークエンジンはマイナーチェンジ後のボディにもしばらくの間搭載された後、1996年のスーパーファイアー系1.8L登場により引退しています。

また、この1.8Lエンジンは155専用エンジンになると思います。

●2.0L TWIN SPARK (155搭載:1992-1995)
エンジン形式:67202
排気量:1995cc(84.0mm×90.0mm)
最大出力:141HP(EEC)/6000rpm
最大トルク:19.0kgfm(EEC)/5000rpm
最高速度:205km/h

2.0Lツインスパークは、1992年155に搭載されるにあたり、伝統のボア・ストロークはストロークが1.5mm伸ばされ84.0mm×90.0mmとなりました。これは奇しくも旧フィアット系(スーパーファイア以前)2Lの値に一致しますが、合わせたものなのか偶然なのかは不明です。そしてこの155用ツインスパークエンジンににはフルカウンターウェイトを持ったクランク軸が採用されました(その後調べたところ75TSもフルカウンターでした)。

断面のイラストやカタログに掲載されていたエンジン単体の写真などを見ると、アルファ製の75TSや旧スパイダーの最終仕様のブロックと155の2Lブロックは似ているようにも見えます。外観ではエキマニの下、ヘッドとの境目のすぐ下あたりを通るを通るリブ付きの管状のでっぱり(幼稚な表現ですみません)などは3エンジンに共通して見られます。断面では75TSと155TSではライナーの形も似ているようです。しかしこのライナーの入り方はイラストによると若干違うことも確かです。またピストンの形状も異なるようです。

75の2Lツインスパークと、155の2Lツインスパークは排気量も異なる別物で、75までのアルファ純製時代のものをそのまま利用していたということは決してないようです。

ごくたまに「初期のエンジンは75から受け継いだ」というようなフレーズが見られる155と75の間には4発DOHCエンジンの流用はひとつもありません。やはり75と155の間には大きな変換点があるようです。

この84.0×90.0ツインスパークエンジン搭載車種について、164の2Lツインスパークは155登場時に75排気量版から155排気量版に変わりました。そしてこの164の2Lは、スーパーファイア変わることなく1998年166登場による164終焉のときまで搭載され続けらました。

1.7L TWIN SPARK (155搭載:1993-1996)
エンジン形式:67105
排気量:1749cc(83.4mm×80.0mm)
最大出力:116HP(EEC)/5800rpm
最大トルク:最大115.5kgfm(EEC)/3500rpm
最高速度:193km/h

1993年に追加された廉価版エンジンです。排気量は1.8Lと共通のストロークに対しボアをやや狭め83.4mm×80.0mmとし1749ccとなっています。排気量の縮小のほか位相切替装置も省略されています。しかし、このエンジンはアルファの4気筒DOHCエンジンの歴史において大きな意味をもつことになってしまったと思います。
単に155に後から追加された廉価版エンジンでしたが、結果的には最後に追加されたアルファ4気筒DOHCエンジンとなりました。

このエンジンも155専用です。常識的に考えると145・146にも搭載されてもよさそうなものですが、スーパーファイア前には145・146には先鋭化した1.7LDOHC(QOHC?)も含むスッド系伝統の水平対向エンジンが搭載されていたので、ノルド系直4エンジンの共通使用がなかったのは御存じの通りです。エンジンの共通化が図られたのは、スーパーファイアに換装後ですね。

この1.7Lツインスパークも1.8L同様、155マイナーチェンジ後もしばらく生き残りましたが1996年スーパーファイア系の1.6L16Vツインスパークの登場を以って使命を終えました。

これら145・146と共通使用しなかった155専用エンジンの存在により、155が最後のノルド系アルファであったということもできると思いますが、いかがでしょうか。