155とティーポ2/3
ティーポ2/3プロジェクトの渦中で生まれた155は、兄弟車とくに最初からの4兄弟ティーポ・テムプラ・デドラとは多くの共通部分を持っています。例えば、フロアパネルや、Aピラーの傾き、フロントウィンドウなどは共通です。また内装に至ってもシートのフレームやエアコンのスイッチ内部、吹き出し口の位置なども共通です。

さて、155は中身はティーポと同じといいますが、実は大きく異なるところがあり、それはアルファ・ロメオがアルファ・ロメオであり続けるために用意された変更点であったといえます。アルファの美点のひとつが脚にあったとするとそこは、当時の情勢では諦めざるを得ない状況でリア・フルトレを受け入れてしまってます。しかしもうひとつの美点「エンジン」に関しては、フィアットの寛大な計らい(というより戦略?)としてアルファ資産の有効活用がなされました。
これは今後アルファらしさの象徴として育てていく必要ありと判断されたであろうV6エンジンでした。1979年登場と、決して新しくはありませんが、4発ユニットよりははるかに新しくしかも登場以来高い評価を得てきたエンジンを捨て去ることは損とフィアットが判断したのでしょう。155には「V6エンジン搭載」を前提として、他のティーポ・テムプラ・デドラのフロントコア・サポート部をせり出させているのです。このため、他車よりフロントオーバーハングが伸びています。この変更点は155は他車とは違うんだという意地のように感じます。

これをベースにしたスタイリングは、既にIDEAでデドラやティーポを手掛けた、そしてかつてSZやジュニアザガートに携わったエルコル・スパダ氏でした。155をみると前者としてのスパダ氏つまりティーポ2/3計画の中でよりアグレッシブなモデルに仕上げようという面は垣間見られますが、後者つまり過去のモチーフを流用するような面は見られないと思います。過去のモチーフという意味では直前の75は継承しているようですが、それ以前は見ていないようです。私はそのあたりに前にのみ向かった潔さとして好感を持っているのですが、人によっては「アルファらしくない」を助長する点になっていると感じるのかも知れません。いずれにしてもティーポ2/3計画当初まったく予定がなかった155ティーポ2/3計画車入りは、アルファにとってもティーポ2/3計画にとっても寝耳に水であったことでしょう。

ティーポ・テムプラ・デドラ・155を上手く作り分けたということになっていますが、実際はやはり内側が同じであることは外に滲み出てしまうようで、本国イタリアにおいては、155はティーポ・テムプラの中に埋没してしまったと認識されているようです。

156登場時の記事に散見されますが決して155は成功作ではなかったようです。156は当初「ジュリエッタ」として情報がリーク(意図的?)されていましたが、登場は156となりました。これについて156は155の後継車を強く意識させるネーミングで、販売上好ましくないというイタリアの営業サイドからの反論もあったようで、それを読んだときにはそんなに155って悪いの?と悲しくなりました。

ところが、極東の日本においてはティーポもテムプラもデドラも殆ど存在しません。(全て正規輸入されていた実績はあるはずですが。テンプラはその際、天婦羅にならぬようテムプラと和名を頂戴したはずです。)そしてDTMをはじめとするモータースポーツの印象。これらから155は他車に埋没することなく独自の輝きを保っているのでしょう。日本の155はある意味本国にいるより幸せなクルマたちかもしれません。