Narcissus(スイセン)
Narcissus L. スイセン属 ヒガンバナ科
ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアに分布するが、特にスペイン、ポルトガルに多い。全草毒草でリコリン(lycorine)を含む。
属名の由来については2説ある。
1・この植物の持っている麻酔性からギリシア語のナルカオ(narkao)・・・麻痺する・しびれる・硬くなる、にもとづくギリシア古名(あるいはギリシア語からのラテン名)からするもの
2・神がこの花に変えたというギリシア神話の美青年の名前であるナルキッソス(Narkissos)からするもの
神話の中のナルキッソスは、テスピアイ(Thespiai)の美少年で、ボイオーディアのケーピーソス(Kephisos)河神と、ニンフのレイリオペー(Leiriope)の子である。
T.ブルフィンチ(大久保訳)は次のように物語っている。
「エコーは美しいニュムペーで、ナルキッソスを好いたが、ナルキッソスは冷酷な仕打ちをした。他の多くのニュムペーに対してもこのような冷酷な仕打ちがなされた。その中の1人の処女の願いにより、復讐の女神は、ナルキッソスにいつか相手が好きになり、しかもその愛に報いられないような思いをさせることにした。
ナルキッソスは水を飲もうとして泉に映る自分の姿に小石、食べることも寝ることも忘れて泉にしがみつき、恋の炎に胸を燃やし、やがて衰えて死んだ。彼の亡霊はステュクスの河(冥界を7巻きして流れる河)を渡るときも、水に映る自分の姿を見ようとして、舟べりから身を乗り出した。ニュムペーたちは彼のために嘆き悲しんだ。一同は火葬にしようとしたが彼の死体は見当たらず、そのかわりに一輪の花が見つかった。
それは今日でもナルキッソスの名をつけて彼の思い出を残している。