学名の表記について

 国際植物命名規約(栽培植物のみの場合は国際栽培植物命名規約)に基づいた学名表記の方法をお勉強しましょう!これは全世界共通ルールです。知っていて損はない!あなたの世界を広げるためにお役に立てればこれ幸い!!

学名表記の基本 その1【野生植物(原種)の場合】

Helianthus annuus L.
属名            種小名      命名者名 

 これはヒマワリの学名です。ラテン語の文法に従い上記のように表現します。
Helianthus、ヒマワリが分類されるヘリアンサス属の属名(ぞくめい)に対する学名(がくめい)です。必ず大文字から書き始めます属名は原則としてラテン語ですが、ラテン語化した外来語やギリシャ語なども多く見られます。(人名や神話などに登場する神の名前など)

 次にannuusですが、これは一般的に種小名(しゅしょうめい)と呼ばれ、属名との組合せで種(しゅ)をあらわす学名となります。種小名は原則としてその種の特徴をよく表現する形容詞ですが、名詞の所有格、または人名や地域名に基づく固有名詞が用いられます。

 最後のL.は、この学名を発表した研究者(命名者)の名前で、学名の正確さを期する意味で命名者の名前を最後につけることになっています。
例にあげたL.はスウェーデンの植物学者で2命名法(属名+種小名の組み合わせで生物の種の名前をあらわす方法)を最初に提唱した、カール・フォン・リンネ(Carl von Linne,1708−1778)の名前を簡略化したものです。簡易形には最後にピリオド(.)をつける必要があります。

 パソコンなどで表記する場合(印刷されたものなど)、属名と種小名はイタリック体、それ以外はローマン体であらわします。


Habenaria radiataThunb.K.Spreng.
属名           種小名      原命名者名     命名者名

 Hebenariaは、サギソウが属するミズトンボ属を示す学名です。種小名のradiata「放射状の」を意味する形容詞です。

 次の(Thunb.)K.Spreng.は、最初、スウェーデンの植物学者で、最初の日本植物誌を著したウプサラ大学の植物学教授、ツンベリー(C.P.Thunberg)によってOrchis radiataという学名で発表されました1826年にドイツの植物学者スプレンゲル(K.Sprengel)によってミズトンボ属(Hebenaria)が、に移されたことを示しています。このように、学名を変更する場合は原命名者名は()内に示します。


Salpiglossis sinuata Ruiz et Pavon.
属名              種小名       命名者名(2人)

 命名者名で上記のような表現がされていることがあります。
 この場合、etは「および」を意味し、Ruiz氏とPavon氏の共同命名であることを示しています。etと書かれることもあります。


Begonia manicata Brongn. ex Cels
属名         種小名          命名者名

 この場合は、exは「・・・・・より」を意味し、Brongn.がこの植物に最初に名前をつけたが、発表していなかったり、記載を伴わない名前の場合、Celsが代わりに発表したことをあらわしています。


【亜種(あしゅ)、変種(へんしゅ)、品種(ひんしゅ)の場合】

 一つの種(略称sp.)が、亜種(subsp.またはssp.)変種(var.)品種(formまたはf.)に分けられる場合、種に対する学名の次に、それぞれの略称、つまりsp.やssp.などをつけ、その次に種小名に準じた語をつけます。略称はローマン体であらわします。

(例)フィロデンドロンの場合
 Philodendron scandens K.Koch et F.Sellow ssp.oxycardium(Schott) Bunt.

 種内に二つ以上の亜種や変種などがある場合、最初にその種を設立したときの種を基本種(きほんしゅ)と呼び、略称のあとに同じ種小名を繰り返し命名者は書きません。

(例)ビカクシダの場合
 Platycerium bifurcatum (Cav.)C.Chr.ssp.Bifurcatum var.bifurcatum


学名表記の基本 その2【栽培植物(園芸品種)の場合】

Prunus × yedoensis Matsumura
属名         種小名       命名者名

 同じ属内の異なる種と種の間で生じた交雑種を種間交雑種(しゅかんこうざつしゅ)といいます。野生の植物でもこのような例が多く、この場合、自然交雑種(しぜんこうざつしゅ)といいます。いずれの場合も、種小名の前に×の記号をつけて示します。

 上記はソメイヨシノの学名オオシマザクラ(Prunus speciosa)とエドヒガン(Prunus pendula f.ascendens)の交雑です。ソメイヨシノは、により生じたもので、明治初期に東京の染井村(現:東京都豊島区)の植木屋が販売したものです。

 正式に学名がつけられていない場合などは、交雑親の両親の学名を使い○○×○○とあらわします。

×Fatshedera
   人工属名

 同じ科内の異なる属間で生じた交雑種を属間交雑種(ぞくかんこうざつしゅ)といいます。この場合、自然界にない新しい人工属(じんこうぞく)ができるので、新しい属名を命名し、その属名の前に×の記号をつけて示します。

 上記はファッツヘデラの学名Fatsia(ウコギ科のヤツデ)とHedera(ウコギ科のキヅタ)の属間交雑です。これはによってできた人工属です。


 栽培植物において、形態や特性に園芸上の価値がある場合、他のもの特別できる名前が必要です。このように、園芸上区別される個体群を園芸品種といい、栽培品種ともいいます。

Browallia speciosa ‘Blue Troll’
属名       種小名      園芸品種名

 これはルリマガリバナ(ブロワリア)の学名です。この場合は命名者名は省略しています。園芸品種名は引用符‘’の中に入れて示します。

亜種や変種の品種の場合も同様に表記します。
(例)フィロデンドロンの場合(亜種)
Philodendron scandens ssp.oxycardium ‘Lime’

交雑種の場合も同様です。
(例)クリスマスカクタスの園芸品種‘リタ’の場合
Schlumbergera × buckleyi ‘Rita’ 

品種名が日本語の場合は、ローマ字で示すこともあります。
(例)トルコギキョウの園芸品種‘あすかの粧’の場合
Eustoma grandiflora ‘Asuka‐no‐yosooi’

 品種名はローマン体で表記します。また、2語以上になる場合は、それぞれの語も大文字で書き始めます。



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