単位の基礎知識

 

2001.09.17
最終更新日 2002.05.12

 

単位っていくつあるの

 文系の人が苦手なのが単位の扱いではないでしょうか。いろいろな物理量(あるいは単に量)一つ一つ対応して単位があります。また、速さのように一つの量を表すのにも、m/s、ノット、km/h など、何種類かの単位が存在する場合があります。するとそれらを変換するのに細かい計算をしなければなりません。k(キロ)やm(ミリ)などがつくとさらにややこしくなります。このため、公式は暗記しているのに、単位の換算ができないために計算問題が解けない人もいると思います。

 いったい単位っていくつあるのでしょうか。覚え切れないほどあるのは確かです。必要があれば、新しい物理量とそれに対応する単位を新たに定義していますから、数は増えていきます。しかし、理系の人でも物理量と単位をすべて覚えているわけではありません。物理系の人は化学系の物理量と単位をよく知りませんし、化学系の人は気象学系の物理量と単位をよく知りません。逆もまた同様です。基本的な物理量と単位を除き、それぞれが自分の専門分野でよく用いる単位を覚えているだけなのです。ですから文系の人もこの点に関しては安心してください。

 

 

基本となる単位はたった7つ

 世界のいろいろな国の科学者がバラバラの単位を使っていては不便であり話が通じないので、統一した単位を使おうと取り決められました。これによってできたのがSI単位です。

 例えば英語の単語を考えてください。基本となる26文字のアルファベットの組み合わせによってすべての英語の単語は表されていますよね。
 この例と同じように、すべての単位を、基本となる7つの単位(SI基本単位)と、その組み合わせによって表されるそれ以外の単位(SI誘導単位)によって表そうと取り決められました。

アルファベット26文字 → すべての英単語
SI基本単位(7種類)  → その他のすべての単位(SI誘導単位)

 

■SI基本単位

名称

長さ

質量

時間

温度

物質量

電流

光度

単位

m

kg

s

K

mol

A

Cd

読み方

メートル

キログラム

ケルビン

モル

アンペア

カンデラ

これがSI基本単位です。たった7つだけです。

 

■SI誘導単位

名称

面積

速さ

加速度

密度

エネルギー

圧力

単位

m2

m/s

m/s2

kg/m3

mkgs-2
N

m2kgs-2
J

m-1kgs-2
Pa

読み方

平方
メートル

メートル毎秒

メートル毎秒二乗

キログラム毎立方メートル

ニュートン

ジュール

パスカル
※ s-2 = 1/s2 、 m-1 = 1/m

 

 7つの基本単位の組み合わせによって表されるSI誘導単位のほんの一例を上に示しました。
 例えば、速さの単位は、これ自身は基本単位ではなく、基本単位の [m] と[s] の組み合わせによって [m/s] と表されています。

 圧力の単位もSI基本単位で表せば、[m-1kgs-2] となりますが、ふつうは [Pa] と表しています。このように、そのままSI基本単位だけで表すと複雑になってしまう場合には代わりに簡単な記号を用いて簡単に表します。他にも、力[ N ] やエネルギー[ J ] などがそうです。

 

■SI接頭語

接頭語

M

c

μ

読み方

ヘクト

キロ

メガ

センチ

ミリ

マイクロ

意味

×102

×103

×106

×10-2

×10-3

×10-6

 もし体重を g(グラム) で表すと 50,000g などとなります。これでは不便なので私達はふつう 50kg と表します。このように ”k(キロ)”や ”m(ミリ)”を用いれば、0 の数を減らして見やすくすることができます。このように単位の前につけて、数字の変わりに桁を表す文字をSI接頭語といいます。

 

例: 980hPa をPa に変換せよ。

980 hPa = 980 ×102 Pa

     = 9.8×102×102 Pa

     =9.8×104 Pa  ・・・ 答


例: 5.8×105 g をkg に変換せよ。

5.8×105 g = 5.8 ×102 ×103 g

     = 5.8 ×102 kg  ・・・ 答


例: 20cm2 をm2 に変換せよ。

20cm2 = 20 ×10-2 ×10-2 m2
             ← cm2 = cm × cm = 10-2m × 10-2m

     = 20×10-4 m2

     = 2.0×10-3 m2  ・・・ 答

 

 

共通語(SI単位)で話そう

 私達は科学の各分野でバラバラだった単位を統一し、共通に使える言葉(SI単位)を作りました。しかし、現在でもいろいろな理由によってSI単位でない単位(非SI単位)が使われています。下に示すように、一つの量に何種類かの単位が存在する場合がありますが、紫色の文字がSI単位、それ以外は非SI単位です。

長さ ・・・    m(メートル)、n.m.(海里)、mile(マイル)など
温度 ・・・    
K(絶対温度)、℃(セ氏)、V(華氏)など
速さ ・・・    
m/s(メートル毎秒)、kt(ノット)など
エネルギー ・・・
J(ジュール)、cal(カロリー)
圧力 ・・・    
Pa(パスカル)、mmHg、atm(気圧)など

 

 私達が科学の話をするときには、この科学の世界の共通語であるSI単位を使わなければいけません。非SI単位は、どこかの国の知らない言葉のようなものです。共通語での会話の中に、突然どこかの国の知らない言葉が混ざってしまうのと話が通じなくなってしまうし、その言葉を共通語に翻訳しなければならないためによけいな手間がかかってしまいますね。これと同じようにSI単位の中に非SI単位を使ってしまうと計算が複雑になってしまいます。

 具体的にどういうことかと言うと、多くの公式はSI単位によって表されています。だからある公式を用いて計算する際、SI単位で表されている数値ならばそのまま式に入れて計算できます。しかし、非SI単位で与えられた数値は、SI単位に換算せずにそのまま計算してしまうととんでもない計算結果になってしまいます。そのため問題で非SI単位の数値が与えられたときにはSI単位へ変換をしなくてはならず、その分面倒な計算が一つ増えてしまうことになります。

※ 中には非SI単位を使って表されている公式もあります。公式を覚えるときには、式中のそれぞれの物理量がどんな単位で表されているかということによく注意しましょう。

 

 例: 時速50マイル(非SI単位)で2時間走った。移動距離は何kmか?

× 50 × 2 = 100km
 50マイル/h ≒ 80km/h よって、80 × 2 = 160km

 

 余談ですが、飛行機の燃料の量について、リットルとガロンとを勘違いしたために飛行中に燃料不足になって墜落した例が実際にあるのです。

 

 

単位は式、式は単位

 速さという量について、これを求める式と単位を考えてみましょう。速さとは、1時間とか1秒間のあいだに進む距離を示すものです。具体的には、移動した距離をかかった時間で割れば求められ、式で表せば下の通りです。

速さ = 移動距離 / かかった時間

 この式のそれぞれの物理量の単位について考えると、距離の単位は[m]、時間の単位は[s]、速さの単位は[m/s] です。物理量の代わりにそれぞれの単位で上の式を表してみると、

[m/s] = [m] / [s]

となります。

 右辺を見てください。速さを求めるために [m] を [s] で割っています。
 左辺を見てください。速さの単位は [m/s] となっています・・・

 もう気づきましたね。単位の中の ”/ ”は ”割る”という意味であり、式の右辺の計算([m] を [s] で割った)が、そのまま左辺の単位( [m/s] )となっているのです。このように、単位はそれを求めるための式によって導かれているのです。

 

 もうひとつ考えてみましょう。力[ N ] はSI基本単位だけで表せば、[mkgs-2] です。この単位もやはり式から導かれます。ニュートンの運動方程式によれば力は次の式で定義されます。

力 = 質量 × 加速度

この式を単位で表すと、

  = [kg] × [m/s2]

  = [mkgs-2]  s-2 = 1/s2

となるのです。ただしこのままでは複雑な単位なので、SI誘導単位の表で説明したように、ふつうは代わりに [ N ] という記号で表しています。

 

 このようにどんな量についても、それを求めるための式がわかっていればその単位は類推できるし、逆に単位がわかっていればそれを求めるための式が類推できるのです。

 

 


 ちょっと難しいかもしれませんが、この単位の考え方をマスターしなければ、いつまでたっても計算問題を解くことができません。それに最近は学科・一般知識の試験で必ず単位に関する問題が出題されています。

 勉強を始めたばかりの頃は、今まで見たこともない物理量と単位が次々とでてきて、途方に暮れてしまうと思います。しかし、気象予報士試験で出てくる物理量と単位は数限りないわけではありません。ぜひとも頑張って覚えてください。

 

 


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