その1 サクラサク







■入学式■


入学式のその日、普賢は朝からずっと機嫌が悪かった。
望と手をつないで歩く帰り道も、ずっとうつむいて不貞腐れたままで、ついに一言も話さなかった。

不機嫌の原因は望にもなんとなく見当はついていたが、どう慰めればいいのか見当もつかなかった――――というよりは、もう思いつくかぎりのことはし尽くして、お手上げという状態だった。
「…またあとでね」
玉虚寺の山門での別れ際、望がそう言っても普賢は眉間にきつくしわを寄せた顔を上げなかった。なんとか慰めたくて、いつもするようにそっと頭を撫でても、普賢は態度を変えてくれなかった。
唇をぎゅっと結んで何も言わない普賢のかわりに、太乙が、
「また後でね」
そう言って、ひらひらと手を振って笑った。


うわの空で昼食を終えて、望はそそくさと本堂の縁側から庭に飛び降りた。
まだ普賢の機嫌が直っていなかったらどうしよう、と心の片隅で案じながら、それでも早く会いたくて、一緒に遊びたくて足取りは速くなる。庭を取り囲むように枝を伸ばす桜の樹々は八分咲きといったところで、午後の太陽に白く照らされて青空によく映えていた。







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