第二次アラスカ遠征旅行計画書
(北極海からマッキンリー頂上へ)
JACC
日本アドベンチャーサイクリストクラブ
安東浩正 Hiromasa Andow
神奈川県藤沢市渡内3-10-12
TEL&FAX: (81) 0466-25-2462 MOBILE: 090-4436-8371
Email: andow@tim.hi-ho.ne.jp
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1. 計画趣旨
海抜ゼロから北米大陸の最高峰へ。今回の旅は、長距離自転車旅行と山岳登山を継続して行なう、ミックスツーリングを計画しました。
2002年1月から2月にかけて厳冬季のアラスカを自転車でツーリングしてきました。デナリ国立公園で無人の荒野を数日旅したとき、北米最高峰マッキンリーの存在が強く強くぼくの上にのしかかってきました。そして夜空になるとオーロラが乱舞しはじめました。そこはぼくにとっては故植村直己の魂の生きる山です。その時ぼくは、あの頂きに立たなければならないと思いました。また前回の旅では自転車で行き残していた所もあります。北極海への道を走らなければ、ぼくのアラスカの物語は完成しません。そんな思いからこの旅は計画されました。
今回の旅では、自転車ツーリングのステージ1と山岳登攀のステージ2と、大きく二つに分けることができます。ステージ1の自転車ツーリングは、前回の冬とは異なり太陽がほとんど沈むことのない白夜の走行になります。しかし4月中旬の北極圏はまだまだ辺りに雪と氷の残る寒い世界でもあると聞きます。またダートが多いルートであることも、エクストリームMTBサイクリストにとっては大きな魅力です。メーンになる北極海へ続く一本道ダルトンハイウェイは、その厳しい自然環境のためにほとんど人の住んでいないワイルドな世界、800キロ近いダートの単独行となります。またデナリハイウェイと国立公園パークロードもアラスカ山脈の大自然の只中をゆく至極のダートです。
ステージ2の北米最高峰マッキンリー(6194m)登山では、友人でアラスカ在住の時田氏と2人のパーティを組んで、ウエストバットレスルートで登ります。天候の安定する春に一般ルートで登るとはいえ、気温は零下35度まで下がることもあり、北極圏特有の強風が吹きすさぶ厳しい山であることに違いはありません。
凍てつくツンドラの原野、冬ではあまり見かけなかった野生動物たち、圧倒的スケールの氷河、北極圏の六千メートル峰など、日本にはない大自然のスケールが我々を待ちうけていることでしょう。同じ登山でも海抜ゼロの海からの登頂によって、今までになかった何かが見えてくるのではと考えています。
この計画書では主に自転車ツーリングの内容を記します。ステージ2のマッキンリーは詳しくは別紙の登山計画書を参照して下さい。
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2. 目的
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北極海から北米大陸最高峰マッキンリー峰(6194m)への登頂
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アラスカにおける自然、地理、原住民、動植物、等を観察し文章に残す
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現在の自転車、登山装備を実証テストし、悪路での走行技術と登攀技術の向上を目指す
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3. 期間及び場所
期間: 2002年4月10日〜6月25日迄の2ヶ月半
※登山の最終下山日6月15日
自転車ツーリング 4月15日〜5月15日
マッキンリー登山 5月15日〜6月15日
場所: アメリカ合衆国 アラスカ州 デナリ国立公園
ツーリング: 北極海プルドーベイ、フェアバンクス、デナリ国立公園
登山山域: アラスカ山脈 主峰デナリ(マッキンリー)峰6194m ウエストバットレスルート
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4.
日程表及びルート計画(予定) D=Total
Distance 距離 G=Gravel Road 未舗装路 P=Paved Road舗装路
STAGE1: 自転車ツーリング 北極圏からデナリ国立公園へ
2002年4月中旬
フェアバンクスにて装備食料調達、プルドーベイまで車で移動、準備
SECTION 1: DALTON HIGHWAY (D802km)
From DeadHorse to Fairbanks (G739km, P63km)
Apr.20
〜 Apr.30 (10 Days)
SECTION 2:
RICHARDSON HIGHWAY (D284km)
Fairbanks
to Paxson (P284km)
May.1 〜
May.4 (4 Days)
SECTION 3: DENALI HIGHWAY (D218km)
Paxson to Cantwell (P32km, G186km)
May.5 〜
May.7 (3 Days)
SECTION 4: DENALI NATIONAL PARK (D189km)
Cantwell to Wonderlake (P69km, G120km)
May.8 〜
May.10 (3 Days)
GRAND TOTAL: D1493km
(P448km G1045km) 20Days
Detail from DeadHorse to Fairbanks
DALTON HIGHWAY
DeadHorse→Junkshon (G666km)
ELLIOTT HIGHWAY
Junktion→Dart (G73km)
Dart → Fox (P45km)
STEESE HIGHWAY
Fox→Fiarbanks (G18km)
Semi Total from DeadHorse to
Cantwell
(D1304km: P379km G925km)
Detail of DENALI NATIONAL PARK
PARKS HIGHWAY
Cantwell→ParkEntrance (P44km)
NATIONAL PARK ROAD
ParkEntrance→Wonderlake (P25km G120km)
ツーリングルート詳細
SECTION 1: DALTON HIGHWAY (D802km)
アラスカで唯一北極海へ通じる自動車道路。北極海で採掘される北米最大の油田の為に作られた道で、路上にはほとんど定住している人がいない。その為に大量の食糧を運ぶ必要がある。ルートの北部は永久凍土のツンドラ地帯となり、高い木が生えていない荒涼とした景色である。ルート中間で究極の荒野と呼ばれるブルックス山脈を越える。北極圏の扉国立公園をすぎると針葉樹林帯に入る。魅力的な野生動物の宝庫であるが、恐ろしい熊が冬眠から覚めだす時期であり、出会う確率が非常に高いため熊対策に注意を要する。ユーコン川を渡り、北極圏ラインを通過。このラインより北は夏にはまったく太陽が沈まなくなる。この時期であれば、夜はまだ少しは暗くなるのでもしかしたらオーロラが観測できるかもしれない。
ルートは全体的に未舗装路。この時期はまだ雪が残るが、昼間溶け出した雪のために粘土状の泥道も予測される。この泥道はサイクリストにとって最悪の道でもあり、車輪とフレームに泥が詰まって押しても引いても進まないことがある。交通量は油田地帯へ向かう大型トレーラートラックが時々走っている。大型コンテナを2本連結したようなトラックが、拳大の石を蹴散らしながら高速でダートを駆け抜けてゆく。また、運転手は道路を見てはいない(交通量が少ないため注意散漫になる)らしいので、走行には注意を要する。熊より危険ではないかと思われる。このため普段はしないヘルメットを持参。たまに物好きな観光客の車も走っているらしいが、ほとんどのレンタカー会社は車が痛むのを恐れてこの道の走行を禁止している。今回のツーリングの最も厳しい区間である。
SECTION 2: RICHARDSON HIGHWAY (D284km)
フェアバンクスで休養後、デナリハイウェイへ向かうためのリエゾン区間。舗装された幹線道路のため問題はない。タナナ川沿いに走り、アラスカ山脈のヘイズ峰、デボラ峰などが美しいルート。
SECTION 3: DENALI HIGHWAY (D218km)
冬の間閉鎖されているが、5月中旬から走行可能になる。5月初旬の走行を計画しているのでタイミングが微妙である。ほとんどが未舗装で大自然のダートを楽しむことが出来る。幹線道路でないので車もさほど多くなく、遠くデナリの景色や氷河帯をまじかに見るなど、MTBサイクリストには最高の道と思われる。
SECTION 4: DENALI NATIONAL PARK ROAD
(D189km)
デナリ国立公園内を走るダートルート。一般の自動車の通行は制限されており、観光客は予約を入れたバスのみで通行可能。ルートの終端はマッキンリー峰の北麓に近く、ワンダーレイクという湖が広がっている。サイクリストはレンジャーオフィスよりバックカントリーパーミッションを取得して入域走行できる。安東は先の冬季ツーリングでこのルートを走ろうとしたが、積雪が多く、たまに犬ゾリのトレースがあるだけで雪中のラッセルとなり、公園入口から30キロほど進んだところで断念した。その5日間の間に見かけた動物はカリブー一群れとレッドフォックス一匹で、人間には出会わなかった。その行き残したルートを走り、神秘の湖の湖面に写る白く輝くマッキンリーの姿を見て、自転車の旅を終了したいと思う。
STAGE
2: マッキンリー登頂計画
自転車による走行はここまで。この後、アラスカ在住の時田氏に合流し、マッキンリーの登頂を目指す。せっかくここまで自転車で走ってきたので、できればマッキンリー登山もすべて自分の力で登っていきたいのですが、おそらく予算的な問題もあり小型飛行機でベースキャンプに入ることになると思います。海抜2200メートルの氷河上のベースキャンプまで飛ぶ方法が、もっとも安全で早く安く行く方法。できれば自転車終点のワンダーレイクより犬ぞりを使ってベースキャンプへ向かう方法を取りたいのですが、費用が40〜50万円近くかかるために予算的に恐らく無理であろうと思われます。自分たちだけで1ヵ月以上の食糧を麓から運びあげるのも難しく、下部氷河のクレバス帯の通過も困難であると思われます。よってタルキートナまで車で移動し、そこから飛行機で入山する方法を選ぶことになる可能性が高いです。
マッキンリーへの登山日程は別紙登山計画書を参照してください。
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5.装備
自転車装備
26インチMTB(マウンテンバイク) SPECIALIZED
ROCKHOPPER COMP FS
ツーリング用具一式、修理用具、予備パーツ一式
自転車装備はダイワ精工のサポートを受けています
キャンプ装備
テント(青)、重トレッキング靴、冬季登山用装備、冬季用羽毛寝袋、ガソリンコンロ、キャンプ用品一式
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6. 行動者プロフィール
安東浩正 Hiromasa Andow 血液型 RH/AB+ 1970/1/23生
経歴 JACC会員、鳥取大学山岳部OB、中国雲南省昆明登山旅遊探検協会、横断山脈研究会
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7.参考資料
The Mile Post 2001