「透き通った蒼い空、青いケシの花咲く高原で、一人歌を口ずさむ少女が君を待っている」

預言者風の旅人がそう告げた・・・

 

チベットの白き道 冬季チベット高原単独自転車横断六五〇〇キロ

安東浩正・著    

 

 

そこはすべての中心、宇宙の軸だった。

 

目次の紹介

プロローグ チベットへの扉

第一章 神々の贈り物 【中央チベット・カトマンズ〜ラサルート】 1995年1月〜2月

     それゆけ天涯万里号!

     ヒマーラヤを越えて

     雪の女神に会いにゆく旅

     荒野のサイクリスト

     精霊舞う聖なる湖

     禁断の聖都ラサ

第二章 幻の白き道 【東チベット・雲南ルート】 1995年2月〜3月

     ラサ発東チベット天涯行き

     ナムチェバルワ峰見斬!

     横断山脈をゆく

     チベットの東の果て

     いにしえの茶馬古道

     多彩的少数民族風情

     バイ族の都、大理

     第二の故郷へ

第三章 荒野の果てへ 【西チベット・カイラスルート】 1995年11月〜12月

     冬期西チベットカイラスルート 一九九五年十一月〜十二月

     飽くなき挑戦

     シルクロード・エクスプレス

     遥かなる峠への道

     魔のアクサイチン

     西チベットの風

     蓮華の中の聖なる宝珠よ

     そしてぼくは今、カイラスにいる!

     聖なるマナサロワール

     完全静寂なる無人地帯

     ”地球”への帰還

自転車旅行への誘い あとがきにかえて

 

イントロダクション

そのヒマーラヤの荒野をゆく道には行きどまりがない。

その道はどこまでも果てしなく、その先はここではないどこかへ向って、地平線の彼方へと、遥かな世界へと続いている。どこまでもどこまでも、その道を進んでゆきたい衝動に駆られる。自分自身にめぐり合うための何かが、きっとそのゆき着く果てにあるに違いなかった。そこにはいったいなにがあるんだろう? そう思ったぼくは、静かにまぶたを閉じてみた・・・・。

幾つもの荒涼たる砂漠を越え、幾つもの急峻な峰々を越え、やがて見渡す限りの大平原にたどり着く。目の前には遥か荒野の地平線が続き、その彼方に白き雪の山脈がきらきらと宝石のように連なっていた。我にかえっていま来た道を振り返ってみると、そこにもやはり大平原の向こうに氷の山々が輝いていた。見上げると、限りなく宇宙に近い蒼空から、幾筋もの光が注いでくる。すべてが荘厳で圧倒的だった。

そこはすべての中心、宇宙の軸だった。果てしのない荒野に、もし目的地を見出さなければならないとすれば、それはその荒野の軸に他ならないように思われた。それでいて、そこは端っこの終着点ではなく、あらゆる方向へと延びる道の出発地点でもあった。

――― その荒野の軸に青年が独り静かに立ちはだかっている。その後ろ姿は荒野の景色の中に溶け込んでいた。彼の目は遠くあの山脈を越えて、どこまでも世界の果てを見つめていた。たとえ、時の流れでさえも彼をどこにも追いやることなどできそうになかった。

その後ろ姿は、ぼくの夢の中でたびたび現れるぼくだけの伝説の姿だった。ぼくはその荒野の軸に立たなければならないと思った。

そんな自分だけの景色を追い求めて、ぼくはある時旅に出た。自転車というフリーダムマシンを友にして、大地の感動をペダルを通して体全体で感じながら、意識は完全なる孤高を目指し、天涯へと続くヒマーラヤの道を駆け上っていった・・・・。

それは遠い、遠い、ヒマーラヤの向こうにあるという遥かな世界でのものがたり。

そしてそれは荒野を駆け抜ける風となったぼくとチャリンコの青春のものがたり。

 

 

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      公共の図書館にもだいたい置いてあると思います

 

"White Trail on Tibet"

  Japanese book published by Yama-to-Keikoku Sha Co. 1999


Hiro Andow